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E★エブリスタ

では、▼以下より、私の世界をお楽しみ下さい。
     

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【 俺(アホ)が主人公だッ! 、レベル一、アホ 】

誰かが言った。
アホになれんヤツがほんまのアホやと……。

ビチ「只今、東京タワーのてっぺんから、落下中」

通行人「うわああ。アホだ。アホが落ちたぞ。誰か何とかしろッ!」

ビチ「……さて、何から話したらいいのか。とりあえず時間を十分前に戻そう。そこから俺の話は始まる。アホな俺のお話がな」

*****

……今から十分前。

ビチ「俺は異世界で主人公になりたいモブ。そんな俺は今、東京タワーに不法侵入して、てっぺんに立っている。スカイツリーじゃないのがお洒落だろう?」

通行人「おい。お前、危ないぞ。そこから降りろッ!」

ビチ「通行人が何か言っているな。遠すぎて何も聞こえないがな。ふははは」

警部「降りてこい。そんなバランスの悪い所にいるな。落ちるぞ」

ビチ「何? バランスが悪いだと。確かにな」

通行人「聞こえてんじゃん」

ビチ「……確かにな。だが、一つだけ言っておこう。俺はアホだ。生粋のアホだ」

警部「アホな事言ってないで、さっさと降りてこいッ!」

ビチ「だから俺はアホだと言っておろうが」

警部「うっ。アホにアホと言っても無駄か。だからあんな所にいるんだしな」

ビチ「うむ。分かったか。俺はアホなのだ。アホを武器に成り上がる」

通行人「成り上がる?」

ビチ「いまだかつて聞いた事があるだろうか。アホを武器に主人公にまで成り上がる異世界転生ファンタジーを。それを成すのが俺なのどうあッ!」

通行人の子供「パパ、アホがアホな事言ってるよ」

ビチ「ふははは。その通り。俺はアホなのだ。ゆえにアホな事しか言わない」

警部「うむ。どうやら説得は不可能な様だ。プランAの準備を」

ビチ「ちなみに俺のあだ名は師匠だ」

警部「総員配置につけ。準備が整い次第作戦を敢行する。プロジェクトA捕獲作戦」

ビチ「うむ。アホかく作戦か。俺にピッタリな作戦名だな」

通行人「ていうか、全部聞こえてるのかよ」

ビチ「アホだからな。アホはアホな分、無駄に身体機能が高いんだよ。デビルイヤーってか。かかかっ」

通行人「てか師匠の話はどうなった。何であだ名が師匠なんだよ」

ビチ「かかかっ。そう急くな。今から教えよう。ていうか、通行人のオッさんもアホだな。俺の声が聞こえてるって事はさ」

通行人「ウッ……。アホな割には無駄に鋭いな。痛い所を……」

ビチ「師匠の話だったな。よし、解説しよう。解説ってほどでもないがな」

通行人「……」

ビチ「俺の名字は坂田なのだ。それだけだ」

通行人「それだけ? アホは全然関係無いじゃないか。騙されたぜ」

ビチ「今、試しに小さい声でしゃべってみたが、聞こえているようで嬉しいぜ。通行人のオッさん。やっぱりお前も仲間だな。アホ仲間」

通行人「……」

ビチ「ま、今は師匠の話だな」

通行人「そうだぜ。お前は話が脱線しすぎる。納得いく説明を簡潔に頼む」

ビチ「アホで坂田。何か思い起こせないか? アホ、坂田」

通行人「あっ、アホの坂田……」

ビチ「だろう? 師匠だろう。ワイルドだぜえ~」

通行人「いや、古いから。そもそもアホの坂田関係無いし。アホがあ」

ビチ「かかかっ。その通り、間違いない」

通行人「それ化石」

警官A「警部、準備が整いました。命令があり次第、突入します」

警部「うむ。全員に通達。そのまま命令を待て」

ビチ「とにかく俺はアホという武器で異世界ハーレムの主人公になるのどうあッ!」

通行人「チートはいいのかよ?」

ビチ「ちちちっ。分かってないね。お前。チートは御法度だ」

通行人「?」

ビチ「チートってヤツは賢いヤツに任せてる」

通行人「賢いヤツに任せてる? 何でだ? チートでもいいだろう?」

ビチ「分かってないな。チートって事は知力も高いんだぜ」

通行人「あ。確かにチートだと知力も高い事になるな。そうか。だから賢いヤツに任せてるって事だな?」

ビチ「そうだ。それに魔王を倒そうとか、魔物を狩ろうとか思ってない。俺は飽くまで主人公になりたいだけなのどうあッ!」

通行人「いやに潔いヤツだな。普通はチートもってなるのにな」

ビチ「チートは本末転倒だ。俺は飽くまでアホのまま主人公になりたいのだ。いや、アホだからこそ主人公になれたと言いたいのだ。アホだからな」

通行人「……師匠か。確かにお前は師匠だ」

ビチ「じゃ、そろそろ坂田ビチ、異世界転生ハーレムの旅へと旅立ちますッ!」

警部「総員、突入。行け、行け、突っ込め。アホを確保だッ!」

……と、ここまでが俺が落ちる経緯だ。
この後、警官部隊が突入したみたいだが一歩遅く、俺は落下して死んだ。

異世界を目指し。

しかし、ここで異変が起こった。
俺は死んだのだが、神様はこう言いはなった。

神さま「異世界転生ハーレムな話は間に合っておる。お前、転生なし。死ね」

ビチ「そんなアホな……」

神さま「アホの坂田だけにな。ふおふおふおふお」

くわっ。

レベル一、アホ、了。

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【 勇者は死にました、レベル十九、真理 】

てな訳で、遂に当たりを引いた俺だがそれから一時間後、ここにいる。
こことはいつものあの陽の当たらない場所だ。
そう。

「ビチ。あなたは勇者。私は魔王。復活の呪文を入力して下さい」

と香恋ちゃんがのたまうあの場所だ。
俺は魔王城の前で、レベル最強チートで復活したにも関わらずここにいる。
もうこれ以上はない。

すなわち七回目の人生が待ち望んでいた最高で最強の人生だったのだ。

「もう無理だよ。止めようよ。香恋ちゃん」

泣き言を吐く俺。
目には一杯、涙をため、口からはため息が漏れてしまう。
だってそうだろう。魔王城の前で最強になって甦ったんだぜ。これ以上はない。

それなのに無情にも死んでしまったのだ。

どうしようもない。

原因は明確だ。理不尽に殺された。しかもオッさん魔王に……。
俺はきっちりと魔王を倒そうと香恋ちゃんとオッさん魔王の三人で挑んだのだ。
俺以外、魔王なんだが、敢えて触れなかった。

そして魔王の元へと急いだ。

「オッさん魔王?」

「吾輩はジョンドットソン五世だ。香恋、お前までオッさん魔王というのか?」

「そんな事はどうでもいいですう。それより……」

俺が急いでいると、香恋ちゃんとオッさん魔王がひそひそ話を始めた。
二人が何を話しているのか聞こえなかった。
しかし、この後。

「ローン。それ高め。ちょっと高いぞ。耳をかっぽじって聞け」

と、オッさん魔王がまた意味不明な事を言った。
だから意味不明な事を言うな。
と……。

オッさん魔王のその意味不明な言葉は実の所、呪文の詠唱だったのだ。

ドラクエで言うザラキ。つまり、オッさん魔王が現われた時も魔法だったのだ。
そして死へのカウントダウンが始まった。
へっ。何で?

何で、俺は最強最後の復活の呪文を見つけたのに死ななくちゃならない訳?

「ふははは。その意味はすぐに知る事になろうぞ。ケツを貸すぞ?」

ケツは貸さなくていい。
それより、何で俺はまた死ななくちゃならない訳さ。
やっぱりあれだろう。お前ら、二人とも本当に魔王でさ。俺で遊んだんだろうッ!

「ビチ。ごめんなさい。本当は……」

香恋ちゃん、君は謝らなくていい。きっと何か深い理由があるんだろう。
だったら後できちんと話してくれればいいさ。
俺はモブ王になる男だ。

モブ王は女には優しいのだ。真理だ。

……そこで俺の意識は無くなり、またここにいるという訳だ。

「ビチ? 聞いてます? あなたは勇者。私は魔王。復活の呪文を入力して……」

てか、理由の説明を簡潔に頼む。
いくらモブ王を目指す俺でも、理由を聞かねば優しくもなれない。
で、理由は?

「香恋ちゃん。その前に。何で死ななくちゃならなかった訳?」

「……」

黙りか。何か、いつも都合が悪くなると黙るよな。

「ビチ……」

お、今回は素直に理由を吐く気になったのか。香恋ちゃんにしては珍しい。

「あなたは勇者。私は魔王。復活の呪文を入力して下さい」

おいッ!

「だから、その前に理由の説明をプリーズッ!」

「そんな事より、ケツを貸すぞ」

オッさん魔王、うるさい。今、俺は香恋ちゃんと話してるの。邪魔するな。
俺は怒りのあまり屁がぷすぷすと漏れた。
理由の説明、プリーズッ!

「ビチ?」

おっ。何だ。話す気になったか?

「あなたは勇者。私は魔王。復活の呪文を入力して下さい」

ジョン万次郎。
香恋ちゃん、理由ってやつ、まったく話す気ない訳ね。殺され損か。クソがあ。
もうモブ王は止めだ。女だからといって容赦しねえ。

「復活してやるよ。復活すればいいんだろう。やってやるよ。後悔するな」

怒りのあまり鼻息で竜巻を起こし、唾をまき散らし言い放った。
もちろんそれ位のつもりだ。体がないからな。
そして念じた。

香恋ちゃんとオッさん魔王、この二人の魔王を滅しない事には俺の安息ないと。

「復活の呪文を受諾しました。それでは復活します……」

そして俺は復活した。
魔王達に弄ばれて、遂に八回目の人生をやり直す事となったのだ。
しかし、そこはコカーラの街の入り口だった。

「あれ?」

俺は香恋ちゃんを探す。
今までのように香恋ちゃんが現われ、オッさん魔王が現われて……。
いや、何か様子がおかしい。今までと違う。何だ?

「よう。この街は何て言う街だ?」

「ようこそ。ここは始まりの街コカーラです。ごゆっくとくつろぎ下さい」

うおっ。
これは俺が待ち望んだ街の入り口のモブだった俺だ。
そうか。やっと俺は勇者の任を解かれ、モブの中のモブへと戻れたんだな。
そうか。だからか……。

だからここには香恋ちゃんもいなくて、オッさん魔王もいないと。そういう訳か。

やっとモブ王を目指す事ができるようになった訳だ。
やったぞ。やった。長かった。
本当に長かった。

俺は嬉しさのあまり、目から大量の涙を流し、今の状況を喜んだ。

ただちょっとだけ。
本当にちょっとだけ、寂しくなった。
もう香恋ちゃんにも、そしてあのケツ魔人であるジョンドットソン五世にも……。

今は何故だか感傷に耽って、ちょっとだけ悲しい気がした。

でも、これこそが俺のあるがままだ。
と自分を納得させた。

空は、そんな俺もお構いなしに快晴でとてもよく澄んだ秋の空だった。

「ふふふっ。ビチもやっとモブに戻れたわね」

「そうじゃな。ヤツにケツを貸せなかったのが唯一の心残りじゃが。無事な」

俺から遠く離れた所で、香恋ちゃんとオッさん魔王が密かに言った。
二人は二度と俺の前に現われないつもりだろう。
最後にこう言った。

「アディオス。アミーゴ」と……。

*****

「にしても大成功だったわね。オッさん魔王?」

「だから吾輩はジョンドットソン五世と言っておろうが。ビチのが移ったか?」

いつものあの場所で、魔王の二人が話している。
香恋ちゃんは、どこか嬉しそうで自分の企みが上手くいった事を喜んでいる。
オッさん魔王は相変わらず。

「本物の勇者の為に最強最後の復活の呪文を探し出そう作戦はね」

えっ……。

「じゃな。実は我々も魔王ではないしな」

魔王じゃないの? だったら何だったっていうのさ?

「私は僧侶」

僧侶?

「吾輩は賢者じゃ。死んでしまった勇者のパーティではな。では……」

オッさん魔王が賢者? あり得ん。でもザラキを唱えていたしな。そうか……。

「そうね。そろそろ勇者を復活させましょうか」

勇者だと?

「じゃな。最強最後の復活の呪文でな」

俺が見つけた呪文じゃないかッ!

「はいですう」

殺すッ!

「感謝しておるぞ。ビチ。また会えたら今度こそケツを貸そうぞ。ふははは」

いらんわ。ケツなど勇者に貸してろ。

「ビチ、愛してるわ。愛羅武、魔王って感じかしらね。うふふふっ」

愛してるって、そういう事か。クソがあッ!

そんな会話が繰り広げられた。決して今の俺には聞こえないあの場所で……。
そして、無事にこのお話は完結するのであった。
ちゃんちゃんと。

てか、あの最強呪文で甦った俺が倒せば良かったんじゃねえの。クソがあッ!!

~ レベル十九、真理、了。

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【 マコちゃんの日記(黒)、七ページ、ベタな答え 】

 ボクのAIはエロガッパを愛するように組まれている。人間でいう所の本能レベルでの話なのだ。でも正直な所、エロガッパへの愛は感じないし、とっととのたれ死ねとか思っている。でも心の奥底にある本音ではどう思っているんだろう。

 一定不偏なものが見つからない今、ボクは愛という答えに辿り着いたのだ。よく愛は永遠だとか言うが、あれは真実なのだろうか。そう思ったらボクはボクの本音を知りたくなったのだ。ボクの本音は……。

「うぬぬ。それにしても予想通りの結果に終わったな」

 エロガッパが呻き声をあげる。ボクの一言、『だから、ボクは博士が嫌いですって言ってるんですよ。今すぐ死んで下さい』から始まった一定不偏なものを探す実験は終わりを迎えようとしていた。ボクは思う。この世の中に一定不偏なものがあるとするなら、それはやっぱり。

……愛なのか?

「もっと実験したい所だが、検体は三つで充分だ」

 うむ。充分だ。間違いない。

「とか、油断させて最後の実験どうああ。覚悟しろマコッ!」

 覚悟!? ……エロガッパ、何をするつもり。

 あれぇええぇ。

 エロガッパは最後の実験とばかりにススムライトの光をボクに照射してきやがった。一番始めにエロガッパの頭髪に照射した事を根に持っているのか。ま、でもいいや。好きにさせるか。ボクはアンドロイドだからボクの時間が進んだ所で、何も変わらないのが落ちだろうからね。やれやれ、無駄な事を。

「!」

 ボクはボクの時間が進んで絶句する。

「ふははは。そういう事だ」

 対してエロガッパは当たり前だとばかりに胸を張っている。

 何が起こったのか。ボクはアンドロイドだ。つまり機械。故障はすれど老化などというものとは無縁だと思っていた。思っていたが、何故かしわしわのお婆ちゃんになってしまったのだ。髪は白髪。腰も曲がっている。何が起こったの?

「人間は老化する。もちろんアンドロイドにもそれは当てはまる」

 当てはまらない。当てはまらないよ。適当な事、ぶっこくな。

「ていうのはウソだ。俺だけお爺ちゃんになるのは解せんからな。ある程度の周期で老化という改造手術を行う事を決めていたんだよ」

 やりやがったな。自分だけが老化するのを許せず、ボクもその都度、老化するように改造手術した訳だ。いらない事を。ていうか勝手に老化して死ねよ。ボクを道連れにするな。寿命の前に撲殺するぞ。

「博士ッ!」

「分かっている。分かっている。俺の愛を感じるんだろう」

 愛? ふざけんな。もうボクの本音を考えるのは止めだ。ボクはこいつが大嫌いだ。てか愛というより嫌がらせの間違いじゃないのか。ボクはアンドロイドだからその辺はノーマークだったんだ。そのボクが何で老化しなくちゃいけないんだ。やっぱり撲殺してやる。いや、またエロえもんの刑に処すか?

 ボクは永遠の少女なんだよ。

「かかかっ。死ぬ時は一緒だぞ。マコよ」

 嫌だね。勝手に一人で死んでろよ。ボクを道連れにしないで。

「ま、あれだ。これで一定不偏なものはないと分かっただろう。マコの憎まれ口もその内、俺への愛と変わるのだッ」

 くっ。それが言いたいが為に今回の実験を敢行した訳か。それにしても腰が痛い。いまだお婆ちゃんになったままだからね。にしても老化は見た目だけじゃなく、腰が痛いとか余計な機能を付けやがったんだな。アホが。

 あれ……。

 記憶障害か。今まで経験してきた(※注、実際にはしてないけど)過去が走馬燈のように頭の中を巡って……。何だか泪が……。ああ。何だか気持ちいい。何だろう。心にこんがらがって絡みついていた糸がほどかれていくわ。心がありのままの姿を取り戻したの。ああ、気持ちいい。

「マコ。しっかりしろ」

 エロガッパが肩を掴みボクを掲げあげる。嗚呼、その言葉も遠き日の思い出になるんだろうね。エロガッパ、ありがとう、そして今までゴメン。ボク、ちょっとエロガッパにきつく当たりすぎたかも。最後に一言だけ言いたい。

「博士?」

「何だ。マコ。もうしゃべるな。疲れただろう?」

 エロガッパの顔が妙に優しく見える。

「いえ。最後にこれだけは言わせて下さい。言わないときっと後悔するので」

「マコおお、マコおお」

 エロガッパが号泣している。そうか。分かった。ボクは死ぬんだ。ボクの寿命はここで尽きたんだね。ああ。でもいいか。充分に生きたいし。

「今までありがとうございました。そして……」

「マコ。お前がそんな殊勝な事を言うなんて。もうお前はダメなのか?」

 そう。ボクはもうダメなんだ。

「博士を愛していました。これまでも、これからもずっと……」

 これがボクの本音。そうなんだ。やっと分かった。ボクはエロガッパを愛する為に生まれてきたアンドロイド。エロガッパがどれだけエロかろうと、どれだけボクとの初Hを望んでいようと……、ボクはエロガッパが好きなんだ。

 愛しているんだ。

 死に瀕してやっと素直になれた。死んで下さいとか、撲殺するとか、本当に心にもない事を言ってごめんなさい。

 エロガッパ? これから先もボクの事を忘れないで下さいね。

 そしてボクを愛して下さい。お願いです……。

 さようなら……。さようなら……。

「くははっ。じゃ、Hでもするか。遂に俺の童貞を捨てる日がきたのどうあッ!」

 ぐほっ。せっかくいい感じで素直になった矢先にこれか。ていうか、ボクはもう寿命が尽きて死ぬの。Hなんてできる訳がないでしょ。大体、君が作ったアンドロイドだよ。アソコはツルツルテンです。

「博士。ボクは死ぬんですよ」

「訳ないだろう。馬鹿。ススムライトを戻すにして照射済みだ」

 あれ? 確かに。白髪がない。腰も曲がっていない。ボクがまた瑠璃色の瞳と藍色の髪を取り戻していた。そうか。しまった。エロガッパの臭い演技に騙されて、ススムライトの効果だという事を忘れてしまってた。何だよ。戻すんだったら戻すって言えよ。

 とりあえず撲殺しておく。

「うむ。初Hはおあずけだが、マコの本音を聞けて嬉しいぞ」

 エロガッパは頭頂部に大きなコブを作って瞳から涙を流しつつ言う。いや、てかあれは気の迷いで本音じゃない。人間、誰でも病気をしたりすると気弱になるって言うでしょ。あれの酷いヤツなんだわさ。

「ま、でもあれだな」

「何です?」

「今まで実験してきて思ったが、やはり一定不偏ものはないのか」

 ううん。無いんじゃないかな。これだけ実験して見つからなかったんだからさ。ボクのエロガッパに対する嫌悪感だって……。

「うっ! あったぞ」

 ……。アホな事を言うつもりだな。大体、分かる。ベタ過ぎ。

「俺のマコに対する愛だ。俺の愛は永遠だ」

 だろうね。聞き飽きた。

「博士、臭すぎます。今のボクの気持ちを例えるならば一年履き続けた靴下の臭いを嗅いだサンタクロースの気分です」

 サンタも仕事だからね。ま、頑張ってくれたまえ。

「ちくしょう。俺は真剣なんだよ。俺はいつまでもマコを愛し続けるぞ」

 はい。はい。勝手にやっててちょ。

 ……以上。

七ページ、ベタな答え、了。

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【 マコちゃんの日記(黒)、六ページ、カブとゴミ 】

 エロガッパが辺りを物色している。ススムライトの次なる検体を探し求めいるのだ。あまりに慎重に探している為、ボクはつまらなくなった。だから何となくほかごとを考えた。そういえば明日は燃えないゴミの日だ。ためてあるゴミを出さないとと思った時……。

「うむ。次は人類には必要不可欠なこれを検体としよう」

 エロガッパが次なる検体を決めたようだ。さて頭髪、林檎ときて次は何だ?

「やっと決まりましたか博士。で、何で実験をするんですか?」

 ボクはワクワクする気持ちを隠し、至って冷静に聞いた。もちろんエロガッパがまた何かをやらかしてくれるんじゃないだろうかと期待しているのだ。

「カネだ。お金だよ。マコ」

 エロガッパが笑いながら百万円の札束を指さす。くおっ。どこから盗んできたんだ。エロガッパはしがないサラリーマン。建設会社の営業をやっている。営業成績はそこそこで次期係長を視野に入れ日々戦っているが、それでもこんな大金手に入れられる訳がない。どこから盗んだッ! 吐けッ!

「いやな。ちょっと思う所があってな。昨日、銀行で下ろしてきたんだよ。それを思い出して今、ここに持ってきた」

 そうか。盗んだんじゃないんだな。なけなしの貯金か。よろしい。にしても、お金か……。確かに腐りもしないし、加工のしようがない。いや、加工したらその時点で偽札となり、お金としての価値を失う。つまり、お金とは一定不偏なものに一番近いものなのかもしれない。エロガッパのヤツ、よく考えたな。君にしてはなかなか鋭い視点だわ。うむ。つまらないぞ。そんな真面目なもの。

「では、照射しようか」

 ボクは何も起こらないなとがっかりして、失望からか欠伸が出た。

「とうッ!」

 エロガッパがかけ声と共にお金にススムライトを照射した。ボクはあまり興味がないと、何となくまた燃えないゴミの事を考えた。そういえば、燃えないゴミ、あまりたまってなかったわさ。明日はパスしてもいいかなとか思った。ただこの後、パスできない状況になるとも知らずに……。

「うむ。予想通りだ。買おうとしていたものになったな」

 買うだと? お金自体の変化だけじゃなく買うものにまでススムライトは効果があるのか。……だとしたら、ちょっと面白いかも。エロガッパは今、照射したお金で何を買ったんだ。エロ本か? エログッズか? 百万もあれば山のようなエログッズがあるはず。そうなんでしょ?

「株券だ」

 株券だと。エロ主体の脳で株券なんかに興味を持ってたのか。ああ。そうか。エロサイトを主催する企業の株券を買って、優待を手にすべく株券を購入したのか。優待が手に入れば、格安で商品を買ったりできるしね。エロサイトであれば無料で利用できる時間が獲得できるかもしれない。うむ。納得。

「“今夜のうっふん”を主催する企業、エロの殿堂社の株券だ。ふははは」

 やっぱりな。予想通り。ここで石頭堅キチ商会の株券とか言ったらそれはそれで面白いが、ひねりすぎな気がする。ここはストレートにエロネタで攻めた方が正解だろう。にしても、エロガッパ、そんなサイトをいつも見てるの?

「優待狙いだ。あるいは投機」

 当然だわさ。

「優待狙いの方が確率が高いですね。ただ優待狙いじゃなければ投機の可能性も捨てきれません。投資という確率は限りなく低いんじゃないんですか」

「うっさいわ。自分の事くらい分かるわ」

 エロガッパが吐き捨てる。

「そのエロ脳から言えば、やっぱり優待狙いの確率が一番、高いです」

「エロ脳ゆうな。俺も真面目に投資するわ。マコのアホ」

 ……投機とは短期での利ざやを狙い、株券を売買する方法だ。投資とは違い短期で利ざやを狙う為、企業にとっては利益は薄い。投機家自体は短期でがっつり儲けられるんだけどね。とか考えていると、エロガッパは株券に向かってススムライトの光を照射した。

「……」

 エロガッパが期待している。

「……ゴミですね。紛う事なきゴミですね」

 ボクはあ然とする。お金が株券に変わり、次にゴミになったのだ。どういう事だろう。いや、“今夜のうっふん”なんて怪しいサイトを主催している企業なのだ。不正が発覚して株券が大暴落したのだろうか。そして遂には倒産し、株券の価値がなくなり、ゴミになったと……多分、そんな所だと思う。

「うむ。この情報はとても有意義だ」

 エロガッパが顎に手を当てて、おもむろに言う。そうなのだ。この情報はとても有意義だ。何せお金がゴミになるのだから株券を買わなければいい。たとえ優待狙いだとしても企業が倒産するんだから手を出さなければいい。倒産してしまえば優待も何もあったもんじゃないからね。サイト自体が消滅する。

 ああ。何だか、つまらない流れだな。

 エロガッパはエロガッパの発明で危機を乗り切るし、どこにも落し所が見あたらない。今回はそんなつまらない流れでうだうだとやる回か? いや、ここからだ。ここからエロガッパはきっとやってくれる。何かしらアホな事を……。

「よし。決めたぞ。株券を買うのは止めだ。この百万でエログッズを気の向くまま思う存分、買うとしよう。どうせゴミになるカネだからな。未来は変えられん」

 いや、エロガッパ、それもゴミだからね……。

 エロガッパは意気揚々とPCをネットに繋ぎエロサイトを開きネット通販でエログッズの注文を始めた。ここでは書けないようなマニアックなものから、王道のエロ本、エロDVDなど、本当にアホなものを注文し始めた。

「今夜はフィーバー。止まらんぜよ」

 アホが……。

「かかかっ。本当は固く株券でも買って、将来に備えようと思ったんだが、ゴミになるんじゃな。エログッズを百万分買う。これはこれで楽しいぞ」

 アホや。アホがいる。

「さて百万分の注文も終わったし、ついでだ。エロの殿堂社がどう潰れるのかを見てやろうではないか。大暴落は始まっているのかな?」

 うむ。本当にこのまま終わりそうだ。つまらなすぎて欠伸が出てくるよ。少し期待したけどね。つまらないわさ。

「うおっ!」

 何? 何よ。何かあったの? ボクはまたアホな事をやったのかと期待して素っ頓狂な声をあげたエロガッパを見つめる。何? 何? わくわく。

「エロの殿堂社の株価が……、株価が……」

 うふふふ。やった。何かをやらかしてくれたわ。エロガッパ。

「大暴騰してる。百円で一株だったのが、今や一万円で一株になってる。百倍だぞ。百倍。あり得ん。分割すら視野に入れる状況になってるぞ。やられたああ」

 そう。エロガッパが買おうと思っていた企業が新製品オナ兄さんを開発して、これが流行っているようのだ。そして株価はうなぎ登りで上昇してる。百円で一株買ったら、それが一万円の価値になったのだ。エロガッパも言ったけど百倍なのだ。百倍。下手なパチンコや競馬より儲かっているのだ。(ちなみに作者は千六百円台で買おうと思った企業の株がどんどん上がり三千円を突破した経験を持つ。もちろん買えなかったがな。ぎゃふん)。

 ……大暴騰。

 しかし、それは後の祭り。目の前にあった株券を買おうと下ろしてきた百万円は全てエログッズに姿を変えていたのだ。うははは。アホが。

「ああ。注文したエログッズがゴミに見える」

 だから言ったでしょ。それはゴミだって。そうか。分かったぞ。ススムライトで株券を照射したらゴミになった件が。あそこで未来が変わったんだ。エロガッパが株券を買うのを止めた時点でゴミになる事が決定づけられたんだ。なるほど。

 そうなんだ。本来ならば株券にススムライトを照射しても株券のままだったんだ。でも、ゴミになった。つまりお金の未来がエログッズを買い漁るという未来に変更されたという事だ。だからゴミになった。

 エログッズというゴミに……。

 もちろんエログッズを注文したのはススムライトでも戻せない。ススムライトを照射してエログッズになった訳じゃないからね。うははは。

 株券がゴミになる未来を見てしまったのが敗因だな。アレを見なければ、今頃、ウハウハだったのにね。エロ猿脳の分際で株で儲けようなんてスケベ心を起こすからこんな事になるんだよ。アホが。

「ゴミかよ。とほほ」

「ゴミです。ちょうど良かったです。明日の燃えないゴミに日に出しましょうね」

 ボクは、またやらかしたなとほくそ笑んだ。

六ページ、カブとゴミ、了。

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【 マコちゃんの日記(黒)、五ページ、用がないならケェルぞ 】

「ハア、ハア、マコ、お前に殺意を覚えたのは今回が初めてじゃないぞ」

 ボクを睨み付け怒りながら言う。その息は荒い。かなり怒っているようだ。でもね。全然、怖くないけど。というか殺意を覚えた回数で言えばボクの方が遙に多いと思うぞ。けど、ボクは大人だから敢えて静観するけどね。

 そそ。ススムライトにはひねるタイプの切り替えスイッチが付いていて、戻るにひねって対象物を照射すると対象物の時間が今に戻る。かかかっ。エロガッパはエロえもんのままでも良かったが、ちょっとだけ可哀想に思ったので慈悲を与えた。元に戻してあげたって事。ボクって優しい。

「……ま、いい。じゃ、当初の予定通り、一定不偏なものを探そうぞ」

 そういえばそうだったわね。エロガッパは何故か、一定不偏なものがあるかどうか気になって仕方がないらしい。それを見つける為にススムライトを作ったんだった。エロえもんにウケて、その事を綺麗さっぱり忘れていたわさ。

「博士?」

 ボクは上目遣いでエロガッパを見つめる。精一杯のエロい表情で。何だったら嬌声もあげてあげようか。大サービスしちゃうわよ。

「何だ。マコ。そのエロい顔は。……そんな顔をしてもお前には貸さないぞ」

 ボクはエロガッパから視線を外し舌打ちをする。チッ。せっかく大サービスしてやったのに、引っかからないか。ま、いいわ。とっととその哲学ちっくな命題を追求しな。ボクは充分に楽しんだからさ。

「うむ。まずはこの林檎だ」

 林檎か。つまらない。結果は見えてる。腐るだけじゃないの。うん? わははは。いや、もしかしたらとんでもない所に着陸し、またエロえもんのように機械化して機械仕掛けの林檎になるかもしれない。ここにあるものは全てエロガッパの実験道具のようなもんだからね。その可能性は決して捨てられないわ。わくわく。

 エロガッパが林檎にススムライトを照射する。

「うおっ」

 エロガッパが目を見開き驚く。

「あははは。確かにそうですわ。当たり前と言えば当たり前ですね」

 ボクは笑う。

 林檎に照射すると、まず六等分に切り分けられた。皮も丁寧に剥いてある。これはボクの仕事だわさ。丁寧だからね。エロガッパだったらこうも綺麗にはいかないだろう。だからこそボクの仕事だと分かる。

 と、ここまでは普通だわさ。その後よ。その後。その後、凄い事になった。どうなったって?

 (※注、食事中の方はとばして読んで下さい)……ウンコ。それもシャビシャビの下痢ウンコ。どうやらエロガッパのらしい。この鼻が曲がりそうな悪臭はそれ以外、考えられない。何故、そうなったのか。大体は想像できるけど。

 ヒントはこの穴。林檎に開いた小さな穴。

 エロガッパが慌てて林檎の時間を戻す。さすがに下痢ウンコをずっと直視する気にはなれないらしい。自分のでもね。ウンコが消え林檎の時間が戻る。

「この林檎……」

 エロガッパは言葉少なく呻く。

「そのようですね。ボクが林檎を切って博士が食べるなんて、普通じゃないです」

 ボクが影を背負いほくそ笑みエロガッパに答える。そうなんだ。ボクが切り分けた林檎をエロガッパが食べるなんて、何かあるのだ。だって買い出しに行ってもエロガッパが嫌いなものでボクが好きなものを買ってくるって言ったでしょ。それに紅茶だって自分の分しか淹れなかったボクがだよ?

 ボクはエロガッパの為になんて、絶対に働かない。断言出来る。

 そんなボクが切り分けた林檎をエロガッパが食べるとは何かあるのだ。もう腐ってるとか、毒が注入された毒林檎だとかね。

「マコ。その言い方。お前、この林檎が普通じゃないって事を知ってたのか?」

「いえ、知りませんでした。でも今だったら分かります。これです」

 ボクは笑いながら林檎に開いていた小さな穴を指さす。

「うおっ。これは……」

 エロガッパが言葉を失う。この穴は……。

「何だよ。うっせいな。何か、用か? こっちは忙しいんだよ」

 ボクたちの会話が聞こえたのか穴から虫が迷惑そうな顔をして、むにゅむにゅと体をくねらせ出てくる。毒々しい緑色をした芋虫のような虫。

「む、虫ッ!」

 エロガッパが虫を凝視しつつ、大口を開け驚いて絶句している。それを見た虫はやれやれという表情になり、一言、こう言った。

「ケッ。用がないなら帰るぞ」

 虫はそれだけ言うと穴の中にもぞもぞと帰っていった。ボクは林檎が下痢ウンコに変わった時に悟ったんだ。この小さな穴を見つけてね。そして納得した。この林檎の中には下痢ウンコの原因である虫がいると。

 だからボクはにこやかに切り分けたんだ。この虫入り林檎を……。それが顛末。そしてその未来(てんまつ)を守る為にボクは無言で虫の帰った林檎を丁寧に切り分けた。うっししし。

「はい。博士。美味しいですよ。召し上がれ」

「いるか。ボケッ」

 エロガッパは口から牙を生やし鬼の目で睨み付け、ボクの手から林檎をはたき落とした。ボクは笑顔のまま、おでこに怒りマークを浮かび上がらせた。そして、虫入り林檎を無理矢理、エロガッパの口に放り込んで口を閉じ鼻をつまんだ。……その後、エロガッパがトイレに籠城したのは言うまでもない。

「ハア、ハア、マコ、お前に殺意を覚えたのは今回が初めてじゃないぞ」

 トイレから水の流れる音が聞こえ、エロガッパが用を足し出てくる。どうやら無事に下痢ウンコを出産したらしい。うむ。これで未来は守られた訳だわさ。良かった。良かった。

 ……それにしても本日、二回目の殺意だわね。同じ事を言うなんて、なんてボキャブラリーの乏しいヤツ。大体、今回が初めてじゃないってさっきも言ってたから言わなくても分かるでしょうが。

「ちくしょう。一定不偏なものを探す実験が一向に進まないぞ」

 うむ。いい傾向だわさ。エロガッパの思惑通りに物事が進むと何かムカツクんだよね。だから今の流れはボクにとって最善だよ。うふふふ。

「くそっ。マコ。次は何がいいと思う?」

 ボクに聞くか。このボクに聞くのか。馬鹿め。ボクがエロガッパの質問にまともな答えると思ってるのか。わははは。地獄に誘ってやるわ。

「いや、やっぱりいい。自分で考える。またお前に殺意を覚えそうだからな」

 チッ。エロ猿も学習するんだな。

「さて、次は一体、何を実験体とするか……」

 とエロガッパが周りを一通り、見渡し一言、つぶやいた。ボクは今は黙っているべき時だと思い、静かにジッとエロガッパを見つめていた。また何かやらかしてくれないかと期待しつつ。

 ……! そういえば時間が経っても変わらないものがあったぞ。

『ハア、ハア、マコ、お前に殺意を覚えたのは今回が初めてじゃないぞ』

 エロ猿の脳みそ。あははは。ま、未来永劫変わらないって事はないだろうけど、少なくとも今は変わってないわさ。ボクは思った。エロガッパは、また同じ台詞を吐くんだろうなと。少しは進化しなさいよ。エロガッパ、……何て事を思った。

五ページ、用がないならケェルぞ、了。

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【 マコちゃんの日記(黒)、四ページ、実験してミル 】

「おっほん。失敬。失敬。こっちだったよ」

 エロガッパが誤魔化すように咳払いをして発明品を取り出す。持っているのは懐中電灯。その姿はさながら往年のエロえもんのようで何ともいやはやだ。ボクはおび太じゃないけどね。

 エロガッパ、お前は将来エロえもんにでもなるつもりか?

 ま、脳の大半がエロで占められているエロガッパにはお似合いの未来かもしれない。が、ボクはおび太になるつもりは毛頭ない。……うん? 毛頭? 毛の頭。確か時間を進めるような発明品を作るような事を言っていたし、あれあれ、これもしかして使えるかもよ。よし、よし。今回はそれでいこう。

 名付けて西インド諸島海賊毛頭作戦。

 しかし今、発明品の懐中電灯を自信満々に掲げ挙げるエロガッパを見ていると将来、エロえもんになりたいとしか思えない。むぷぷぷっと笑っちゃうわ。どうでもいいけどさ。それより、毛頭だ。毛の頭。

 ボクは発明品を見る。百円ショップで売っていそうな小さな懐中電灯。本体は鈍い灰色で上と思しき場所にスイッチだろうか、黒い突起物がある。まさに小さな懐中電灯だ。

「ススムライトという。照らしたものの時間を進めるのどうああッ」

「対象物の時間を進めるからススムライトですか?」

「そうだ。どうだ、凄いだろう」

 ……時間を進める? 成長促進剤のようなものなの? それの万能型? エロガッパは変態でエロが擬人化したようなヤツだけど発明品だけはとんでもないものを作る。時代考証って何? それって美味いの? と言いたくなるようなとんでもないものを作る。今回も例に漏れず、そのとんでもないものだろう。

「マコ。栄誉ある最初の使用権をお前に与えようぞ」

「……ボクが使ってもいいですか?」

「ああ。使い方を教えよう」

「!」

 エロガッパが僕の手にそっとエロい手を添える。その手つきが妙にエロい。そうか。そういう事か。使用権がどうのこうの言う前にエロガッパはボクの白魚のような手に触れたかったんだな。当然、つねる。力一杯。

「痛いッ、痛いッ、痛いッ、痛いッ」

「おほほほ。博士。単なる懐中電灯でしょ? 使い方は大体分かりますわ」

 敢えて上品に振る舞った。ま、あれだ。照射したものの時間を進めるというだけで、後は普通の懐中電灯と変わりがないんでしょ。だったら使い方は大方、分かる。懐中電灯を使う感覚で使用すればいい。暗い所を照らす代わりに時間を進めたいものを照らせばいいんでしょうが。大体、理解したわ。エロガッパ、きしょいから触るな。お触り禁止。

 触ってもいいけど、一分、三十億円ね。キャッシュで揃えろよ。

「う、うむ。使い方は分かるか。では実験を始めようか」

 ……。

 とエロガッパが言うが早いか、ボクは間髪入れず、あるものをススムライトで照射した。そのあるものとは……。

「って、うおッ!」

 エロガッパの生え際が後退している髪。毛の頭。毛頭。

「あははは。禿げろ。そして朽ち果てろエロティック外道があッ!」

 エロガッパは真っ赤な短髪を立てている。パンクが好きな彼らしい。しかし、その真っ赤な髪は年々薄さを増している。禿げるんだろうね。そんな事は容易に想像ができる。ゆえに薄くなる髪にトドメをさしてやろうと思ったのだ。

「やめれ。やめれ。そんなものを照らすな。やめれって」

「あははは。やめません。禿げろッ!」

 わははは。止めろと言われれば余計にやりたくなるのが人間ってもので……、ってボクはアンドロイドか。ええい。そんな細かい事はこの際どうでもいいわ。その真っ赤な髪にトドメをさしてくれる。ゆけッ! ススムライトッ!

「ああ。髪の毛が抜けていく。どんどん抜けていく……」

 フェイドアウトするようにエロガッパの声が段々と小さくなっていく。その声と比例するようにヤツの髪の毛は抜け落ちてつるぴかに近づいた。うむ。予想通りの結果だな。何のひねりもない。面白いと言えば面白いが、これと言って驚くべき事が何一つない。よし。もう実験は終了としようぞ。

 と!

「あれ? 何でか黒々とした健康的な髪の毛が生えてきたぞ」

 エロガッパが素っ頓狂な声をあげ喜んでいる。ヤツが喜ぶと嫌に心がちくちくと痛み不快になるのは勘違いじゃないだろう。ていうか、何で黒々とした髪が生えてくる訳さ。ああ。あれか。この先の未来、髪の毛が生える発明品でも作って髪を取り戻したのか。つまらん。

「……あ、この髪、アートネイチャンだ」

 うほっ。そっちか。アートネイチャンに頼んだのか。自分で育毛剤でも作ればいいのにさ。何故か、アートネイチャンか。ま、それも一興だね。ただ効く育毛剤を作ればノーベル賞も夢じゃないらしいしよ。そっちの方が良くない? とか油断させて更にどんッ!

「うお。マコ。そんなものを照らすなって。やめれ。やめれって」

 ボクはエロガッパの言葉など聞かず、更にヤツの頭髪を照射し続けた。すると今度は黒々とした髪が抜け落ち、ついでに肉も剥がれ落ち、真っ白な頭蓋骨が現われた。所々にアートネイチャンの残骸がある。

 つまり頭の髪があった部分だけが死んだのだろう。

 もちろん脳みそも……。

 まるで頭頂部だけの九相図を見ているようだった。いや、エロガッパの九相図なんて死んでも見たくない。アホグロの極地だと思う。アホグロという言葉があるのかどうかはまったく知らないけどね。知りたければググって。

「俺、死んだのか? 意識はあるけど」

 元々、脳みそにはエロが大半だから脳が死に果てても生きていられるんだよ。まるでゴキブリか線虫の様にしつこいヤツね。でも更に照射したらどうなるだろう。何だか、ちょっとだけ面白くなってきたよ。あははは。どんッ!

「俺で遊ぶなッ」

「くっ」

 エロガッパがボクの手からススムライトを奪った。……ちぇっ、せっかく面白くなってきた所のに。もう少しエロガッパの頭頂部を照射したら、やっぱり、骨も朽ち果て頭だけなくなるのかな。シュールだ。ちょっと見たいかな。

「もう、お前には貸さない。俺が使って一定不偏なものを探し出す」

 とぉうッ!

 ボクは一瞬、ボクから視線を外したエロガッパの隙をつきススムライトを奪い返した。そして当然の如く、また頭に照射した。さて、どうなる?

「ガガガ……、俺ハ、ロボ博士。通称エロエモン」

 そこには何やらハイテクな脳(むしろローテクか?)が様々な光を放っていた。目からは迸る閃光。鼻からは蒸気が噴き出していた。……ぐはっ。そうきたか。やっぱりエロガッパは未来のエロえもんだったんだね。納得したわ。

 ボクは面白くて、お腹を抱え大笑いをした。

四ページ、実験してミル、了。

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【 何でもない話 】

……大体の人は働きたくないと言う。

みんな、毎朝、通勤電車に揺られ仕事場に通い、夜遅くまで仕事をしている。
終電で帰る事も珍しくはなく、家に帰ったら風呂に入り眠る。
そしてまた朝が来る。

たまの休みはと言えば家族にせがまれ、家族サービス。

そんな人生を送っている人が大半。
そして、そんな人はみんな揃って、働きたくないと口にする。
でも……。

本当に働かなくても良くなったらどう思う?

私は心の病を患い入退院を繰り返し、一時期、働けなくなった。
もちろん周りも働けない人ばかりだ。
そんな人達がいう事。

「働きたい」

生きている意味が欲しいだとか、もっと収入があればだとか様々な理由で。
とにかく、どんな理由にしろ働きたいと言っている。
私もそんな一人だった。

……人は働いていれば働きたくないと言い、働けなくなれば働きたいと言う。

無いものねだりなのだろうか。
幸い、私は社会復帰を果たし、毎朝、満員電車に揺られ仕事場に向かっている。
そして、また例によって働きたくないと思ってしまっている。

人間とは如何に我が侭な生き物なのだろうか。

そうだ。今度、働きたくないと言う前にちょっと考えてみよう。
働きたくても働けない人がいる事を。
そう思った。

何でもない話、了。

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【 マコちゃんの日記(黒)、三ページ、ゆけ 】

「うほっ。ええのう。ええのう。マコ、ここがええんか?」

 ……? 研究室から怪しい声が漏れてくる。エロガッパのヤツ、何をやっているんだ。発明品を作ってるんじゃないの? ボクの名前も聞こえてきたんですけど?

「いくでえええッ!」

……?

 エロガッパが自分の研究室に篭もっている間中、ボクは一人、紅茶を愉しみ、この前の買い出しで買っておいたお菓子を頬張っていた。もちろんエロガッパの分はない。仮にあったとしてもボクのお腹の中だ。大体、エロガッパは好き嫌いが激しく、今、ボクが食べている甘辛い法被ターンも嫌いだった。嫌いなものを食べると吐くしね。本当にしょうもないヤツ。

 もちろん法被ターンはエロガッパが嫌いだから買ったのだ。

 ボクは買い出しでエロガッパが嫌いなものでボクが好きなものを買うよう心がけている。エロガッパが好きなものを買うと、いつの間にか盗まれて全部自分一人で食べてしまうからだ。ヤツは卑しい。

 ……にしても、法被ターンが嫌いなエロガッパ。

 ボクも初めてその事実を知った時、へえ。法被ターンが嫌いな人っているんだと思った。それだけ日本国民に愛されていると言っても過言ではない法被ターン。当然、ボクも大好きだ。むしろ三食、法被ターンでも何の問題もないとさえ思っている位だ。それだけ好きなお菓子だ。法被ターンはね。

 ?

 ああ。そうか。ボクはアンドロイド。アンドロイドのボクがお菓子を食べるのかって? そうだよ。ボクは食物を口に放り込み食物からエネルギーを摂取するタイプのアンドロイドなんだ。だから紅茶も飲んでいただろう? エロガッパがより人間に近いようにと設計したらしい。……いや、設計とか計画とか無頓着で適当が命なエロガッパが、そんな高度な事を考えていたのには驚いたけどね。

 とにかくボクは人間と同じく食事をするんだ。

 信じたくはないがエロガッパがそう作った。だから美味しいとも感じるし、逆に不味いとも感じる。だから好きな食べ物ものもあるし、嫌いな食べ物だってちゃんとあるんだよ。ただし太らないし、病気にもならない。人間は大変だよね。甘いものを食べれば太るし、食事のバランスが悪ければ病気にもなる。その心配がないのがボクなんだ。だから法被ターンで三食を補ってもいいわけだ。

 どう? 羨ましいでしょ?

「どっぴゅッ!」

 ……?

「ふう。スッキリしたぜ。いい夢をありがとう」

 ……と食事談義をしていたらエロガッパが研究室から出てきた。どうやら発明品の製作は無事に終わったようだ。ボクは飲みかけの紅茶をグイッと一気に飲み干し、残りの法被ターンをザザッと乱暴に口へと放り込んだ。

「博士。発明品はできたんですか?」

「ああ。無事に完成した。これで一定不偏なものを見つけるぞッ」

 あれが発明品?

 ……そう言ったエロガッパの手にはエロ本が握られていた。おい。そんなベタなオチ、目の肥えた読者は絶対に許さないぞ。いや、たとえ読者が許したとしてもボクが許さない。何でエロ本な訳さ。詳しい説明を頼む。

「あ。しまった。久しぶりに一人になったから発明品を作った後、ちょっとだけな。どっぴゅっと、ぐふふっ」

 ちょっとだけって何をちょっとだけなの。あれ? あれなの? どぴゅっって、やっぱりあれなの? さっきから怪しいあれが聞こえてきたけど、それはあれなの? あれ、それ、アレ? それこそちょっと研究室のゴミ箱を確認させなさい。テッシュにくるまったあれがあるはず。オナ兄さんでしょ。

 って、良く見たら……。

 そのエロ本の女、何でボクなんだよ。そんなもの撮影した覚えがないし、ましてや発刊した覚えもない。どこで手に入れたんだよ。アホか。没収。ボクはサッとエロガッパの手からエロ本を奪った。

「嗚呼、何でだよ。マコが好きなんだよ。画像加工でエロ本を作るほどによ」

 そういう事か。納得。エロガッパが自主製作したエロ本な訳ね。そんなヒマがあるんだったら働きなさい。こんなものを作るなんて、きしょいわ。この人、どうしよう……。本当にどうしよもないわ。とにかく、こんなものびりびりに破いてやるわ。ふわははは。後悔せよッ!

「嗚呼、俺の愛蔵書がびりびりになってゆく……」

「ゆくじゃなく逝け(ゆけ)」

 とボクはびりびりになったエロ本に火をつけて燃やした。その後、塩をかけ清め成仏するように念仏を唱えた。まるで心霊写真を供養する様に。にしてもある意味、心霊写真以上に衝撃的な写真だったわ。そんなものまで作るなんてね。さすがエロガッパと言った所だわ。

 ……本当にどうしよう。どうしようもないゲスだわ。

 と一人、呆れ果てた。その横で、エロガッパはいつまでもいつまでも目から大粒の涙を流し、エロ本がこの世から消えた事を悲しんでいた。最後にいい夢をありがとうとエロ本に敬礼しつつ。

 ボクは一つだけ残っていた法被ターンをエロガッパの口に終始無言で荒々しく放り込んだ。これでも喰らえと。

「こ、これは法被ターン。ぐほっ。何てものを……」

 エロ、エロ、エロ、エロ、エロ。

 その後、エロガッパが嫌いな法被ターンを食べて盛大にリバースしたのは言うまでもない。もちろんエロガッパらしく、エロ、エロと。でもあんなに美味しい法被ターンで吐くヤツも珍しいけどね。とにかく死ね。死んでしまえ……。

三ページ、ゆけ、了。

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【 マコちゃんの日記(黒)、二ページ、紅茶をコボス 】

「博士。一つ言っていいですか?」

 ある晴れた秋の午後。紅茶を淹れながらエロガッパに言った。エロガッパの事を普段、便宜上、博士と呼んでいる。さすがに面と向かってエロガッパとは言えないからね。ボクの質問を聞いたエロガッパはソファーに座ったまま、テレビから目を離さず面倒くさそうに「ああ」とだけ短く答えた。

 エロガッパのヤツ、何に集中してるんだ。こんな午後の時間帯にやってる番組なんてワイドショー位のもんだろう。また衝撃的な殺人事件でも起こったのか。最近の世の中は物騒だからね。

「聞いてます? 博士が大嫌いです。正直、死んで欲しいです」

 淹れたての紅茶から湯気が立ち上り辺りにベルガモットのいい香りを充満させる。アールグレーだ。ボクはアールグレイの落ち着きのある香りが大好きなのだ。その香りを楽しみつつ、白いティーカップに紅茶を注ぐ。もちろんエロガッパの分はない。一つだけ。エロガッパ、飲みたければ自分で淹れろ。

 魅惑的なアールグレイの香りもなんのその。今だテレビから視線を外さないエロガッパ。ボクの発言を聞いているのか、聞いていないのか、それすらも分からなかった。が、無視されるのは腹が立つ。エロガッパの分際でだ。ボクはエロガッパの顔を両手で挟み無理矢理、こちらに向かせる。

 ギギギッと錆びた鉄が軋むような重苦しい音が響く。

「痛ッ、痛ッ、痛ッ、痛ッ、痛ッ、痛い」

「うふふふ。博士。テレビなんか見てないで、ボクの話聞いていますか?」

 目の下辺りまで影を背負い、にこやかに微笑んでいるボク。その笑顔は決して愛くるしくなく、逆にく怖い部類に入る。ゴゴゴッという威圧するような音を響かせつつ。ボクはにこやかにエロガッパを睨んでいた。邪悪な顔。今の表情を表現するならばそれが一番、的確な表現だろう。エロガッパもボクの怒りを察したのか、一旦、テレビから意識を逸らした。

「せっかくいい所だったのに。何だよ。マコ?」

「だから、ボクは博士が嫌いですって言ってるんですよ。今すぐ死んで下さい」

 エロガッパは頭を掻いて、いかにも面倒くさいなあと答える。

「お前な。いつも言ってて飽きないのか?」

 そう。ボクの発言はいつもの事。事ある毎にエロガッパに言っている事だった。しかし、それがボクの正直な心の内なんだからしょうがない。今すぐ、この社会のゴミに死んで欲しい。本当に一秒たりとも待てないのだ。一秒でももったいない位だ。何だったらボクが殺してあげようか? このまま首の骨をへし折ってさ。

「……そうか。いつもか」

 ううん? エロガッパのヤツが何かに気づいたようだぞ。

「マコ。お前は一定不偏なものを信じるか。この世で未来永劫変わらないものがあると思うか? 俺はそんなものはないと思うが……」

「一定不偏なものですか?」

「そうだ。だったら早速、製作に取りかかろう。一定不偏なものを探すのだ」

 うおっ。エロガッパの発明魂に火がついてしまった。エロガッパは、その気になったらとんでもないものを発明するんだ。その発明は時代を陵駕し、マジ信じられないものを作り上げる。今回もとんでもないものを作る気だぞ。

 でもロクなもんじゃないけどね。

 ボクは紅茶を床にこぼす。また何を作るつもりなのかは知らないがロクでもないものには間違いないと思いつつ。あ然としたのだ。

「あ。マコ。テレビ消しておいてくれ」

 ボクはテレビに視線を移す。そこには……、ボクの着替えシーンが赤裸々に映っていた。パ、パンツに手をかけている。ボクの貞操が……貞操が。テメエ、いつの間に盗撮したんだ。油断も隙もあったもんじゃない。やっぱり、次の瞬間に死んではくれまいか。いや、瞬間でも甘い。意識する前に死んでよ。社会のゴミがあ。 また、ボクは紅茶を床にこぼしてしまった。

 その後、ワイドショーで放送されるような衝撃的な殺人事件が起こった。被害者は発明好きの中年男。ホシはもちろんボクだった……。

 本当に最近の世の中は物騒だなと思った。

二ページ、紅茶をコボス、了。

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【 自由って一体、なんだい? 】

風邪で学校を休んだ。辛いけど自由だ。やったぜ。にしてもヒマだな。何しよう?

自由って一体、なんだい? 、了。

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【 思いとどまれ 】

幸せな人と不幸な人がいる。知ってるかい。日本に生まれただけで幸せなんだよ。

思いとどまれ、了。

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【 マコちゃんの日記(黒)、一ページ、マコという女の子 】

 ボクはエロガッパ、大川宏治(おおかわ こうじ)に創られたアンドロイド。

 ここは西暦2015年の地球、日本、東京都の某所。今の日本の技術ではアンドロイドはおろか自立思考のAIすら組めない。でもボクは創られた。だからボクはエロ博士に聞いたんだ。どこぞの国の国家機密をハッキングして技術を盗んだのかってね。…――返ってきた答え。

「いやあ。適当に創ったらできちゃってさ。俺って天才かもね。知ってたけど」

 それでいいのか。本当にそれでいいのかと再度、エロ博士に問いただした。そしたら、何て答えが返ってきたと思う?

「西から昇ったお日様が東に沈む。真理だ。これでいいのだ」

 何故かイヤミのシェーのポーズをして、自信満々にそうのたまわったのだ。意味不明だし。妙に楽しげなのが、異様にムカツクんですけど。真面目に殴ってもいいかな? ていうか。それ、バカボンのパパね。君が今、やってるポーズは違う人だから。いや、確かにパパみたいな顔をしてるけど本当に適当な男だな。こんな適当な奴でも出来るんだから私を創るのは大した事じゃないのかもね。

 そう納得した。

 とっと……。話が逸れたわ。ゴメンね。とにかく私はこのアホでエロく、自己中の大川宏治に創られたアンドロイド。彼を愛する為に。もっと言及すればボクは童貞である彼の初Hの相手として創られたのだ。そう。彼のエロパワーによって起こった奇跡によってボクができた。ボク自身、彼を嫌っているけどね。だってエロいし、妙にムカツク不細工な顔をしているし、足が臭いし……。

「……マコ。今、お前、俺に対して失礼な妄想していないか?」

 うるさい。変に鋭い勘はいらないわよ。とにかく、ボクはこのエロ博士が死ぬほど大嫌いだ。

「マコ。やっぱお前のAIを組む時、エロサイトを開いていたのが悪かったか?」

……エロサイト。そんなものを開きつつ、ボクのAIを組んだの? 殺すぞ。ごらあッ! やっぱり、こんなエロガッパ好きにはなれないわ。ボクは彼を愛する為に創られた。ボクの唯一で最大の後悔というか、汚点。絶対にこのエロガッパを愛する事なんて死んだって無理だろう。もちろんHなんて……。

「やっぱりあっちだったか」

 あっち?

「幼妻の昼の情事は古すぎたな。JK秘密の花園にすべきだったか」

 どっちも古そうなタイトルだな。ぎゃふん。

 って、何の話だ。ごらあッ! もしかしてボクのAIを組んでいた時に開いていたサイトの話じゃないだろうな。どっちにしろ、ボクのAIはこうなっていたさ。ああ。そうさ。そうだよ。何がJK秘密の花園だ、ごらあッ!

 ハア、ハア。

 エロガッパの話を聞いていると話が進まない。一旦、このエロの権化は放っておいて、とっとと話を先に進ませよう。

 とにかくこのエロの権化を愛する為にボクは生まれた訳だが。エロガッパには秘密があった。いや、JK秘密の花園じゃないぞ。秘密だけに。と……。ボクの方が脱線させてるのか? いや、ま、いい。エロガッパに隠された秘密とは、すなわち重度の不治の病に冒されている事だ。天才とは薄弱で、体が弱いものだとは思う。(勝手な想像)。例に漏れずエロガッパも病に冒されていた。一昔前の携帯小説で主役を張れるほどの不治の病……、ではない。

 命には別状ない病気。

 そう。エロガッパは重度の二次ヲタだったのだ。妹とか血の繋がらない姉とか、ロリサドとか、まさにどストライクな二次ヲタ。

 エロガッパの年齢は四十三歳。童貞エロガッパは魔法使いの域を越え、大魔導士にまでレベルアップしている。それがエロガッパ、大川宏治の正体なのどうあ。ふははは。次は魔法帝だね。あはっ。

 そんな大魔導士に創られたボクは彼の好みを強要された容姿を持っている。……瞳は瑠璃色で、藍色の髪。目は垂れてて、甘えん坊な感じを強調している。髪型はゆるふわボブ。いかにも優しく膝枕で耳掃除をしてくれそうな妹って感じな顔立ち。背は高くなく、それがまた幼い感じを助長している。そのくせに何故か巨乳ときたもんだ。あり得ないでしょ? まさに二次ヲタであるエロガッパの妄想を具現化したのがボクだった。何か男に媚びているようでムカツク。自分自身がムカツク。

 くそっ。エロガッパ、君、君、そこでにやついてないのッ!

「ぐふふふ。マコ。膝枕で耳掃除。耳掃除」

 殺すぞ? ああん?

「はい。マコさん、ごめんなさい」

 宜しい。

 だからこそ好きな服装はオーバーオールで、中に黒いTシャツを合わせる。足元は服に合うようなスニーカーを履いている。スカートは絶対に履かない。敢えてボーイッシュな感じが、エロガッパを失望させそうで好きなのだ。大体、スカートを履いたらエロガッパに盗撮されるからね。油断も隙もあったもんじゃない。やれやれだぜ。ジョジョ風。

 ……と、そんなボクだけど、これから少しの間、よろしくお願いしますッ!

「誰に言ってるんだ。俺か? 俺にか? 初Hぃぃ! ウリィィ!」

 ない。それは絶対にない。ボクはボクの人生を愉しむんだ。だから邪魔するな。二次ヲタがあッ!

「ぐふふふ。妹萌ッ。ハア、ハア、ロリサド最高ッ!」

 千回ほど死ねッ。いや、万回、ボク自身が君を殺す。殺ッ!  ……いや、万回じゃ足りん。億だな。億回。死んでよ。マジ、頼むからさ。ゴミがあッ!

「ゴミがあッ!」

「ハア、ハア、ゴミ最高ッ! ゴミですう」

 キモッ。マジ、キモイわ。引くわ。どうしよう。本当にどうしよう。この人……。救いようがないッス。

「ハア、ハア。マコ様、もっと罵って下さい。ハア、ハア」

 性格崩壊。作者も連載一回目にて、この先を書けるのかどうか不安になってきてるみたいね。本当にトホホで残念な人だよ。このエロガッパは……。

 とにかくお目汚し、よろしくですッ!

 以上。

一ページ、マコという女の子、了。

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【 運命の神の話 】

…――やっとだ。やっと俺にも運命の神が微笑んだ。

苦節三十年。
ひたすら自分を信じ続け、作品を書き続けプロ作家になれる事となった。
色々あった。本当に色々あった。

今、考えればとても看過できないような事もあった。

小説に没頭するあまり、妻にも逃げられ子供達とも泣く泣く離ればなれになった。
徹夜して書いた作品を目の前でシュレッダーにかけられた事もあった。
才能ないよは当たり前。

出版社の若造編集に正直、迷惑なんですよとまで言われた。

そんな事、挙げればきりがないほどあった。
それでも作家になる事をあきらめず、なにくそと頑張った。
そして……。

そして遂に実を結んだのだ。

今度、俺の作品が某有名出版社から発刊される事となった。

やったぞ。
遂にやってやったんだ。
妻よ。そして子供達よ。俺の活躍を見てくれ。父さんは遂にやったんだ。

そして、あわよくば俺の下に戻ってきてはくれまいか。

そんな事を考えた。
しかしここまで来るには本当に長かった。
俺に才能がないとのたまわったあのクソ編集達よ。ざまあみろだッ!

あはははっ。

これからは俺の時代だ。俺の時代が遂に来たんだ。ありがとう。運命の神よッ!

「神様。また下らない三文小説をお書きで?」

くだらない三文小説だと!?

「あなたは人間の夢を叶える仕事があるんですよ。ちゃんと仕事をして下さい」

天使よ。
今、とても気分がいいのだ。
気が変わらない内にどこかに消えてしまえ。しっし!

「あなたがちゃんと仕事をしないと夢に挫折する人が増えてしまいます」

あ、……そうだった。

「あなたは運命の神なんですからね。どうか、ご自覚を」

くわっ。

*****

後日談……、運命の神の作品を出版しようとした出版社は出版前に倒産しました。

運命の神の話、了。

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【 意味深なお話 】

書いて、書いて、かいて、書いて、書いて、かく。

…――俺は小説家のタマゴ。
小説家になるまで女性との交際は禁止と決めて、はや十数年が経つ。
今だ小説家になれる気配は一向に見えてこない。

俺は、このまま女性と関わる事なく、人生を枯れ果てるのか。

ゆえにかく、かく、書く、かく、かく。

セックスしてえ。
俺はセックスを知らぬ童貞のまま小説家になるという夢を目指す道に入った。
そして夢が叶うまで一切の女性との交際を禁止したのだ。
セックスをしたいというのは普通だろう。

いや、四十歳になってもセックスを知らないのは異常とも言える。

ゆえに書く、かく、書く、かく。

テ、テッシュ。
俺は逝きそうになって、慌ててテッシュに手を伸ばす。
そう。俺は小説家になるという夢を叶えるまで女性との交際は一切、禁止なのだ。

ゆえにかく、かく、書く、かく、かく、書く。

DVDがオカズだ。

そして今日も書く、かく、書く……。

くわっ。

意味深なお話、了。

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【 メルレポート、~ レポート五十五、奇跡をものにできるもの 】

*****

雪がちらつく冬。
いや、冬というよりは万年雪がちらつく地方と言った方が的確だろう。
魔界には決まった季節というものがないのだから。
とにかく雪がちらつく、ある日。

…――小雪は育ての親でもある師匠に拾われた。

そう。
小雪は孤児だったのだ。
もちろん、そこで生涯の強敵(とも)であるフウという少女とも出会う。
粉雪が舞うその日に拾われた小雪は小雪という名をもらう。

「貴男。お腹が減ってるんでしょう?」

「……俺に構うな」

小雪はこの頃、親に捨てられた事で自暴自棄になり、世の中を憎んでいた。
孤児にとっては世間の風は冷たすぎたのだ。
この雪が降る地方以上に。

身寄りのない子供に興味を持つものはいなかった。

大人達は孤児などどこかでの垂れ死ねばいいとさえ思っていた。
誰にも頼る事が出来ないか弱き孤児。
それが小雪だった。

つまり、その日の生活も幼い小雪自身でどうにかしなくてはならなかったのだ。

誰も助けてはくれない。
食べるもの。着るもの。寒さをしのぐ場所など。
それら全てを自分一人で何とかしないと本当にの垂れ死んでしまう。

日々の生活に生死を賭けていた。

盗みだってやったし、不法侵入だってへっちゃらだった。
それらがバレて半殺しにもなった。
半殺し……。

殺されなかっただけ、小雪は運が良かったのかもしれない。

孤児である小雪を哀れむものなどいない魔界。
そして弱肉強食にあって真っ先に淘汰されるべきか弱き存在である小雪。
だからだ。

だからこそ半殺しで済んだのは小雪の運の太さをよく示している。

いや、それ以上に師匠に拾われた事は奇跡だった。

……奇跡。
それが頭上に舞い降りてくるものは、ほんの一握りの強運を持つものだけ。
そしてその奇跡をものにできるものはもっと少ない。
選ばれたものにしかそれはできなかった。

奇跡とは安くない。

「貴男。孤児でしょう。さあ、お握りです。食べていいんですよ」

「……だから俺に構うな」

小雪達の師匠はその奇跡をものにできる天賦の運と才覚を探し求めていた。
小雪は始め、師匠にその資質なしと判断されそうだった。
何せ全てに噛みつく狂犬だったのだから。

「いいんですか?」

「何がだよ。とっとと行けよ。俺に構うな。俺は一人で生きていくんだ。邪魔だ」

師匠が小雪に声をかけたのは単なる気まぐれだった。
気まぐれを起こしたのが運の始まり。
小雪の運の始まり。

しかし、ここまでのやり取りで師匠は小雪にはその資質なしと判断していた。

が……。

「へへへ。ガキが。見つけたぜ。ぶっ殺してやるッ! 覚悟しろ」

そこに悪党が現われた。
そこから運の流れが一気に小雪の懐へと流入していった。
小雪が悪党に何をしたのか、それは分からなかったが、確実に運を引き寄せた。

「ふむ。動かない方が身の為ですよ」

師匠が刀に手をかけた。

「何を。てめえはこのガキの何なんだ。関係ないヤツは引っ込んでろッ!」

無言の師匠。
対照的に怒り狂って今にも師匠に襲いかかりそうな悪党。
師匠の指に力がこもり、刀を握る。

「関係? どうでもいいでしょう。それより、動かぬ方が貴男の身の為ですよ」

「うるせえ。かばうならてめえから挽肉にしてやるぜッ!」

襲いかかる悪党。
一瞬、刀を握った手にグッと力がこもり、その後、刀から手を離す師匠。
そして、何事もなかったように小雪に向き直り、微笑む。

途端、悪党の動きがピタリと止まる。

「て、てめえ……」

「フフフッ。だから言ったでしょ。動かぬ方が貴男の為ですと。お忘れですか?」

小雪には一体、何が起こったのか理解できなかった。
師匠のそれは抜刀術だった。
研ぎ澄まされた。

抜くところさえ見せぬ、美しいとさえ思えるほどの抜刀術。

小雪の心は完全にこの技に奪われた。

「……」

「うん。どうしました?」

再び、微かにだが小雪に興味を覚えた師匠。
この時すでに運は強運へと姿を変え、小雪を飲み込んでいた。
ゆえに興味を覚えたのだ。
その強運に。

「……あの技。俺も修業したらできるかな。なあ。なあ。できるかな?」

あれほどまでに心を閉ざしていた小雪が心を開いたのだ。
小雪の剣術への強烈なる憧れ。
これが才覚。

そして奇跡をものにできる運はタイミングと才覚。
その両方が小雪に微笑んだのだ。
微笑む師匠。

今の小雪を見て、先ほどまでの自分自身の目が曇っていた事を知ったのだ。

「ああ。できますよ。ただし修業は辛いですが。耐えられますか?」

タイミング。
この時が絶好のタイミングだった。
絶好のタイミングとは、好機(チャンス)とも言い換えられるもの。
奇跡をものにするものは、この好機を逃さないのだ。

……好機を逃す。

いや、逃すというより好機に気づかない。
気づかないがゆえに限られた選ばれたものしか奇跡をものにできないのだ。
もちろん……。

「今まで辛酸は嫌ってほど舐めてきた。どんな辛い修業でも耐えられるぜッ!」

「ふふふっ。頼もしいですね。いいでしょう。一緒に来なさい」

小雪は二つ返事で、この好機をものにした。
しかも小雪の強運は、これで終わりになった訳ではなかった。
そう。フウという存在。

実はこの時、すでに師匠には一人の弟子がいたのだ。

一人いれば弟子はもうとらない。
が、これもたまたまだが師匠は弟子を二人欲しいと考えていたのだ。
だから、その二人の弟子の内の一人に選ばれたのだ。

運と才覚以外、何も持たない孤児が。

いや、運と才覚しかなかったからこそ選ばれたとも言えるかもしれない。
師匠は、その二つ以外、何も求めていなかったのだから。
それも小雪の幸運だった。

「貴男。名前、ないんでしょう?」

「ああ。ない」

「ふむ。それは不便ですね。そうだ。私が決めてあげましょう」

師匠は優しい目つきで粉雪の降る天を仰ぐ。

「粉雪。ふむ。なかなかどうして。……貴男の名前、小雪でどうでしょうか?」

粉雪(こゆき)が舞う天候。
小雪は小雪となり、そして生涯の強敵(とも)フウと出会う事となる。
小雪とフウ。

二人はお互いをライバルと認め、研鑽し舞い上がっていく。

互いの師匠すら遙に越えんと遠く、遠く、高く。

これすらも小雪の強運だった。
そして彼らの師匠が望み思い描いた弟子達の成長への策だったのだ。
そして……。

「小雪。貴男は魔神器の魔神ニートスの下に行きなさい」

相変わらず柔和な師匠。
対して、師匠の言葉に驚きを隠せない小雪。
小雪はこの頃、様々な剣技を師匠より仕込まれ、人生観も師匠色に染まっていた。

ゆえに師匠に絶対の忠誠を誓っていた。

そんな小雪に下された師匠からの納得できない命令。
小雪は自分の命は魔神ニートスのものではなく師匠のものだと思っていた。
それが……。

「魔神ニートスでござるか?」

「そうです。ニートスの部下となりなさい。もちろん私のスパイとしてです」

納得がいった。
師匠は魔神器の魔神ニートスを裏からコントロールするつもりなのだ。
その為に動ける駒をニートスの下に送るという訳だ。
師匠に期待されていると思った。

「スパイ……」

しかし小雪は言い淀んだ。
何故なら彼には不安要素があったのだから。
そう。小雪は師匠とフウと生活する内に魔人には珍しく真面目になったのだ。

「拙者の様な真面目なものに務まりますかな。いささか疑問でござる」

「貴男だからこそですよ。その真面目さが武器になります」

「……そうでござるか」

「はい。貴男のような真面目な魔人が部下にいれば安心できますからね」

魔界では基本的に安心とは非日常なのだ。
裏切り、下克上、ウソ、欺瞞、嫉妬など、それが日常の世界なのだ。
その世界にあって……。

安心できる。

それは魔界に存在する魔人達が求めて止まないものだった。
師匠は安心の大切さを熟知していた。
ゆえに物腰が柔らかい。

そして、熟知していたからこそ一人の弟子、小雪にそれを仕込んだのだ。

「師匠の考えには反対できないでござる。承ったでござる」

*****

……そんな経緯で今に至る。
そして小雪は魔神ニートスの部下として魔王とメルの前に現われたのだ。
もちろん師匠からの特命、スパイとしての任務も忘れず。

「魔神ニートス様の命に従い、貴殿らの命、拙者が頂戴致す。覚悟ッ!」

と小雪が魔界に響き渡る声で叫んだ。

~ レポート五十五、奇跡をものにできるもの、了。

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【 過去からの来訪者 】

…――愛車を運転している。

西暦2054年、世の中全般が機械化されて久しい。

しかし庶民の生活は昔と何も変わらない。
毎朝、渋滞にはまりつつも愛車を運転し会社へと通勤する毎日だし。
休みは……。

家族サービスで、また愛車を運転しドライブをする。

私は子供頃、思い描いていた。
未来の移動手段は車ではなく、ドアを開ければ目的地へと簡単に着くアレだと。
キラキラとした瞳で思っていた。アレで、どこへでも行けると。

しかし今という未来に来てみて、つくづく思う。

あっけなかったと……。
そして、人間がやる事など何も変わらないと……。
もちろん彼は作られなかったし、アレも発明される気配もなかった。

「おや? 手洗い洗車だと。今どき珍しいな」

私は“大好評、手洗い洗車”と看板が出ていたガソリンスタンドへと車を向ける。
愛車は毎朝、会社に通いボロボロになった私と同じく汚れていた。
たまには贅沢させてやってもいいかなと思った。

機械化された今の世の中で、昔ながらの丁寧であろう手洗いには好感が持てた。

「君、君。手洗い洗車と頼むよ」

私が愛車の鍵をつまみながら店員を呼ぶ。

「はい。毎度あり」

スタンドの店員は愛想良く笑い、鍵を受け取り車を洗車場へと移動させる。
私は店内に入り、トイレに行ってタバコを吸うつもりだった。
そう。そうする予定だったが……。

ブロン。ギュイン。チュウン、チュウン、チュウン、チュウン……。

という奇っ怪な音が大音響で響き渡ったから慌てたのだ。
しかも愛車が置かれた洗車場の方から。
耳を疑う。

何せ、その奇っ怪な不協和音は機械が動く、それだったのだから。

手洗い洗車じゃなかったのか?
看板はウソなのか?
詐欺?

愛車を任せたのは間違いだったのか?

私は混乱してしまった頭で、急いで洗車場へと走っていった。
手洗いだったから愛車を任せたんだぞ。
それを機械が……。

果たして私が洗車場で見たものは?

「……ウィィン。私は洗車ロボ。私の手デ洗ってイますよ。手洗イ。手洗い」

ヒトガタ……。

ぐわっ。

過去からの来訪者、了。

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【 メルレポート、~ レポート五十四、悪の世界へようこそ 】

絆。
それは様々な形がある。
例えば、親子の絆であったり、仲間同士の絆であったり、多種多様だろう。
もちろん俺様とメルは恋人同士のラブラブな絆があるがな。
そして、そんな絆にはこんな形もある。

人生を共に生き、同じ志の下、己の技を磨き合ったライバルとしての絆……。

そう。
俺様は後になってから知るのだが、フウと小雪はそんな関係だった。
フウと小雪の師匠はただ一人。

ヤツらは同じ師の下で修業をしたライバル同士だったのだ。

つまり、二人には戦友としての絆があった。

だからか。
フウは俺様の死斑剣を奪い、そしてその後を受け小雪が襲撃してきたのは。
偶然ではなく、それこそ必然とでも言うべきか。
ゆえに小雪は戦うのだろうか。

自分に背中を任せてくれた真の強敵(とも)との絆を守る為に……。

とか格好いい事を言ってみたが、俺様にはまったく似合わんな。
俺様は馬鹿な事を言ってる方が性に合う。
しかしあれだ。

この小雪だか、故逝きだか知らんおっさんは引く気はないようだな。

しかも今は状況が思わしくない。
俺様は死斑剣をフウに奪われ、まさに丸腰状態なのだ。
戦う術がない。

うむ。小雪よ。謝って許してくれんか?

「魔王。八方塞がりね。こんな時、アフだったらどうすると思う?」

メルが叫ぶ。
おい。おい。この距離で叫ぶなよ。耳が痛いぜ。
俺様とメルは囁きや吐息さえも耳に届く、ゼロ距離に立っているんだぞ。

「うるせえな。メル。耳が痛いぜ」

というか。
アフの名前を出すな。お前がフウを嫌いな様に俺様はアフが嫌いなんだ。
またフウを可愛いとか言っちゃうぞ?

そんな俺様とは裏腹にメルは満面の笑顔で俺様を見つめている。

なんだよ。
俺様の答えに期待しているのか?
無駄だぜ。俺様の灰色の脳はショートしていて何も考えられないぞ。

特にアフの事などな。

あれだ。
フウの巨乳を揉む件についてはショートしていても全力を尽くすがな。
いや、メルの美乳も捨てがたいが……。
ここは巨乳ちゃんだな。

でへへへ。

「魔王。いつもそうだけど……今、命の危機なんだよ」

なぬを。
メルは俺様の思考を読んだのか?
俺様は巨乳を揉むと考えただけで、一切、口にしていないと言うのに。

「うむ。メルよ。お前は俺様の心を読んだのか?」

「つうか君の考えてる事、だだ漏れ」

何、だだ漏れだと?
何故だ?

「何故だ。俺様は真面目にだな。あの小雪とかいうおっさんの事をだな……」

嫌悪たっぷりの表情でメルが答える。

「そのだらしない顔。どうせオッパイの事を考えていたんでしょ?」

くっ。
バレていたか。俺様とした事が。
俺様はバツが悪そうに、チッと舌打ちをするとキッと小雪と向かい合った。
そろそろ真面目にやらねばメルに殴られると思ったのだ。

くわばら。くわばら。

「……貴殿、よもや拙者をなめてござらんか」

小雪。
お前、魔人のくせにいいヤツだな。
俺様の命を狙っているくせに俺様の妄想が終わるまで待ってくれるとはな。
しかし感謝はしねえぞ。俺様は悪逆外道な元魔王なんだからな。

「やれやれ。ここに刀を立てておくでござるぞ」

おもむろに刀を魔界の砂丘に立てる。
小雪よ。降伏する気か?
刀を捨てて。

何をやっているんだ? 意味が分からんぞ。

「今、貴殿には刀がないのでござろう。ゆえに刀の奪い合いでござる」

奪い合い?

「この砂丘に立てた刀は貴殿にも使う権利があるのでござる」

つまり、こういう事か。
せいので勝負を始めて、まずはその砂丘に立てた一本の刀をお互いが奪い合う。
そして先に奪った方が奪った刀を使い、それで相手を倒すと……。

くははは。笑いが止まらんぞ。アホか。こいつ。

せっかく丸腰の俺様を襲っているのに俺様にチャンスを献上するというのか。
どこまでお人好しなんだ。本当に魔人なのか。こいつ。
あり得んほどアホだな。

「では、魔王殿。正々堂々と勝負でござる」

魔人が正々堂々とか言うな。

……うるせえし。
お前ごとき、お人好しに本気になる俺様じゃねえぜ。
さて、どうやって殺してやろうか。色んな殺し方が頭に浮かんで目移りするぜ。

いい人が、絶望して崩れ落ちる姿ほど見ていて楽しいものはねえぜ。

「魔王?」

突然、メルが小さな声になった。
その囁く声は、まさに悪魔的で甘美な知恵の林檎だった。
うっとりとする。

その甘い吐息が悩ましいぜ。発情するせ?

「馬鹿。またアホな事を考えてるわね。ちょっとは緊張感ってものを持って」

うほっ。うほっ。
俺様が発情した時に踊るゴリダンスが出た。
両拳を握り、両腕を下げ、前屈みになってウホウホ踊るのがゴリダンス。

「死ね。てか死んだ上に更に十回ほど殺戮し尽くす。殺殺殺殺」

メルの目が怖い。
当然、あのコースに一直線だがな。
また俺様の頭に大きなコブができて煙が狼煙のようにゆらゆらと立ち上った。

「馬鹿は終わりよ。そんな事より聞いて。あいつを倒す方法」

メルの癖毛がぴこんと顔を出す。
うむ。小雪を叩きのめす妙案が浮かんだんだな。
聞こうぞ。

「倒す方法。実はもう仕込んであるの。さっき叫んだ時にね。だから……」

だからなんだ?

「ちょっとだけ時間を稼いで欲しいの。時間がかかるのよ」

時間を稼げばいいのか。
時間を稼ぐ位の事ならば、簡単だと思うぞ。
何せ……。

小雪は魔人には珍しく俺様の妄想にも付き合って攻撃してこなかったらからな。

大概の魔人は技の名前を叫んでる最中に襲ってくるもんだ。
それを妄想にすら付き合ってくれたのだ。
任せろ。

時間を稼ぐぜ。

小雪が準備してくれた砂丘の上に刺した刀も、せっかくだがいらねえ。
何せ俺様には刀以上の攻撃手段を持っている。
小雪には言わないが。

魔王の雷だ。

あの技は帯電した腕を避雷針のように使い、自然災害である雷を誘導し落すのだ。
つまり刀がなくても発動するし、それどころか攻撃もできる。
もしかしらメルが仕込んだ罠も無駄かもな。

魔王の雷で仕留めるからな。

ま、仕留められるにしろ、られないにしろ、どちらにしろ時間は稼いでやる。
そしてメルの作戦と俺様の魔王の雷の二本柱で万全だろう。
小雪といういい人を仕留めるには。

もちろん魔王の雷の発動にも少々、時間がかかる。

しかし今、この瞬間、雷雲を作る為の行動はすでに完了しているのだ。
つまり次の瞬間にもヤツの頭上に雷を落とせる。
準備は万端だ。

大体、相談している間、攻撃の手を止め馬鹿正直に待っている方がアホなのだ。

お前が相手にしているのは凶悪非道な元魔王とその従者なんだぞ。
真っ正直な勇者や聖者なんかじゃねえ。
アホが。

馬鹿は死ななきゃ直らないってな。

「もし?」

小雪が待ちきれないと申し訳なさそうに手を挙げて言葉を発する。

「相談は終わったでござるか? 拙者、もうそろそろ戦いたいんでござるが……」

うははは。
とんだ刺客だな。わざわざ断らずとも襲いかかってこればいいものを。
小雪、お前は心の底からいいヤツだな。

そんないいヤツが嫌いだ。

反吐が出る。

良かろう。小雪よ。魔界ではそんなヤツから真っ先に命を落すんだぜ。
お前に世間の厳しさってヤツを教えてやるぜ。
覚悟しな。

「おっほん。待たせたな」

俺様はわざと咳払いをして小雪を見下ろす。

「やれやれ、本当に待ったでござるよ。そろそろいざ尋常に勝負でござる」

と小雪が言ったが早いか……。

「はい。はあい。いきなりの魔王の雷ッ!!」

俺様は魔王の雷をお見舞いした。
地響きが轟き、魔界の虚空がぐつぐつと沸きたちまぶしい閃光と共に雷が落ちる。
死ねッ! 死ねッ! 死ねッ! 死ねッ! 小雪。

あははは。

「……そうくると思ったでござるよ。拙者もただのアホではござらん」

小雪が、悠然と魔界の黒く煤けた砂丘を指さす。
そこには光るあの刀があった。
小雪が刺した刀が。

「あれはチャンスを献上したのではござらんよ。それこそ避雷針でござる」

小雪が不敵に告げる。
そして小雪の頭上に落ちるはずだった雷が、砂丘に刺した刀へと向かっていく。
俺様は小雪といういい人仮面を被った策士にやられたのだ。

いや、実際にはいい人なのかもしなれい。

むしろ小雪はいい人だからこそ、この魔界での生き方を熟知していたのだろう。
不意打ち、闇討ち、だまし討ちが当たり前のこの世界での。
俺様はまんまとハメ返されたのだ。

唾棄すべきいい人に。

ちくしょう。そんな意味があったのかよ。騙されたッ!

くそがっ。小雪はもう二度と魔王の雷を仕込む時間は与えてくれねえだろうな。
唯一で、最後のチャンスを無駄にしちまったぜ。
俺様は地団駄を踏んだ。

「ま、それ位は出来てくれないと張り合いがないわよね」とメルがほくそ笑んだ。

~ レポート五十四、悪の世界へようこそ、了。

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【 恐怖、都市伝説 】

「……ねえ。私、綺麗?」

俺は宅配人。
今日も今日とて、軽やかに荷物を運び人々を幸せにしている。
しかし今夜、とても怖い体験をした。

配達先の暗い玄関で不幸な事に都市伝説であるあの女と遭遇してしまったのだ。

「ねえ。私、綺麗?」

今日、夜。たった今、行った配達先で会ってしまったのだ。
恐怖の対象、この台詞を吐く女と。
口先女ではないぞ。

「……ねえ。私、綺麗?」

肝が冷えた。
心臓が飛び出る位に、びびった。
暗がりの配達先で、長く黒い髪を垂らした女がボソッと一言言ったのだ。

「ねえ。私、綺麗?」

「綺麗だ。綺麗だから消えてくれッ!」

言ったぞ。
綺麗だと言ったぞ。だから頼む。頼むから。消えてくれ。俺は祈った。
そして、その女に拝むように、その場に崩れ落ちた。

「よかった。ありがとう。私、綺麗なのね。自信が湧いたわ」

そう。目の前には、都市伝説であるセーラー服を着たおじいさんがいたのだ。
俺は都市伝説のセーラーおじさんと遭遇してしまったのだ。
そして、そのキモイ姿にびびった。
いい人だったがな。

くわっ。

恐怖、都市伝説、了。

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【 いいのか? 】

花粉症のソムリエ。なにくわぬ顔してテイスティング。ううん。いい香りです。

いいのか? 、了。

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【 メルレポート、~ レポート五十三、バットタイミング 】

「それにしても、フウのヤツはどうやって俺様から死斑剣を奪ったんだろうな」

フウを追いつつ、何気なく言葉を漏らす。
誰に言うとでもなく、本当に何気ない一人言のつもりだった。
答えも求めてなかった。

「魔王。あんた、ちゃんと脳みそ入ってる?」

途端、吊り上がるメルの青い瞳。
尖った口から次々と吐き出される罵詈雑言の数々。
角でも生えたか?

バージョン、鬼モードのメル。

「フウは言ってたでしょう。『もう遅いですわ。詰んでますわ』ってさ」

分からん。
確かに言ってはいたが、そんな情報で何が分かる。
分かる事は、あの時、すでにフウの奸計は完遂していたという事くらいだ。

「だから。本当に脳みそ、ミジンコ?」

ミジンコだと?
ここで普通のギャグ系の話だとミジンコに失礼だとか言うんだろうな。
メルレポートは高尚だからそんな事は言わないけどな。

「あ。ミトコンドリアだったか」

どっちでもいいッ!

ちくしょう。
こうなったら、ちょっとメルを弄ってやるか。
いつも冷静沈着なメルがフウに対しては言い知れぬ怒りを覚えているからな。
その心の隙をちょこっとな。

「それにしても……」

「何よ。魔王。その顔。キモイすぎよ」

メルが珍しくうろたえている。

俺様は顎に親指と人差し指を当てて、何かを考えるような仕草をとって言う。
目は邪悪で口から噛み合わせた白い歯が顔を覗かせている。
まさに外道な表情。

「フウのヤツ、可愛かったよな……」

俺様は遠い目で言う。
これはメルを牽制し弄る為に言ったんだが、実際にフウは可愛かったのだ。
……捕まえる為にも、ここでおさらいしておこう。

切り揃えた短髪の赤毛。
瞳も赤く燃える髪のように神秘的な深紅で切れ長。
唇は熟れた果実のように甘く、柔らかそうで新鮮なピンク色をしていた。

背格好は中肉中背。

しかし戦士として鍛え上げられて、しまった体。
胸はメルとは対照的に巨乳だった。
ああ。揉みてえ。

い、いかん。フウの巨乳を想像したらよだれが出てきた。

「魔王。このお話のヒロインは私なのよ」

でへへへ。

「馬ッ鹿じゃないの。あんな小娘のどこがいいのよ。野生児だしさ」

うへへへ。

ガンと大きな音がして、俺様の頭に大きなコブができた。
ま、いつも例のアレだな。アレ。
煙が上っている。

「魔王。君、今度、フウの事を可愛いって言ったら絶交だからね。分かった?」

いや、でも実際、可愛かったのは可愛かったんだから。
でも、絶交とはな。そこまでメルはフウに対して対抗心を燃やしているのか。
うむむ。うかつな事は言えんな。
でへへへ。

巨乳は揉む為にあるのだッ!

「チッ。それしてもムカツクわ。あの小娘があッ」

メルさん。
小娘、小娘、言ってるけどメルさんもあちらさんから見れば小娘だからね。
でも、話は戻るけど、死斑剣はどうやって奪われたんだ?

「メルよ。一つ聞きたい」

「何よ?」

メルが怪訝そうな顔をして、俺様を見つめ返す。

「フウはどうやって死斑剣を奪ったんだ。知っているんだろう?」

これは多分だが、メルはフウがどうやって死斑剣を奪ったのかを知っている。
どれだけ考えても俺様にはさっぱり分からない。
奪われた感覚さえなかった。

感覚すらなく、しっかりと握っていた死斑剣を奪われるか?
そこまで間抜けじゃない。
分からんぞ。

奪われたなら、フウはどうやって奪ったのだ?

そんな俺様さえも気づけなかったトリックをメルは見抜いているのだ。
飽くまで多分でしかないが、多分、メルは知っている。
こんな事を言っていたしな。

『フフフッ。君が死斑剣を手に入れた手順で私達も死斑剣を取り戻してみせるわ』

だろ?
こんな言葉が吐けるという事は知っているで、間違いないだろう。
メルよ。もったいぶらず、とっとと教えろ。

「魔王。フウがどうやって奪ったのか、知りたい? どうしても知りたい?」

顎を突き出し、俺様を見下ろすメル。

……メルよ。
さっき、お前を弄ったのを根に持っているな。
だからわざとどうでもいい事をもったいぶって答えを先延ばしにしてるんだろう。

「ピーンポン。ここでメルクイズ」

メルクイズだと?

「魔王の知りたい事はメルクイズに正解したら教えてあげるわ」

くう。
お前の性格の悪さは知っていたが、ここまでとはな。
そのメルクイズとか言うアレは、どこまでアレなアレなんだよ。アレアレ?

「メルクイズに挑戦する?」

……聞くな。
俺様が選ぶような選択肢は用意されていないだろう。
大体、その血管が浮きまくった拳は何の為に用意しているんだ。メルさんよ。

「はい。挑戦させて頂きます」

「宜しい」

敢えて漢字で『宜しい』とは、無機質さが強調されていて余計に悲しいッス。

「魔神器の魔神、茶坊主は誰に屈服したのでしょうか?」

誰にだと?
そんなの決まっているだろう。
魔神器の魔神、茶坊主を倒したのは、すなわちこの俺様だ。

「俺様じゃないのか。魔王の雷で茶坊主を倒した俺様に屈服したんじゃないのか」

「ぶぶうッ!」

メルが両頬を膨らませ口から空気を漏らしつつ、不正解を告げる。

「フウの秘技、狐火によって屈服したのデエス」

……待てよ?

「はい。はい。何かに気づいたようデスネ。そうなんデスよ。そう。正解デエス」

そのカタカナ……。

何か馬鹿にされているような気がするぞ。
メルのヤツ、やっぱり、さっき弄ったのをまだ根に持ってやがるな。
めっちゃムカツクぜ。

でもメルのヒント(?)で、何となく分かったぞ。

「分かったでしょ。そういう事なのよ」

だな。
大体、分かった。
確かにその方法だったら俺様に気づかれずに死斑剣を奪う事ができるな。

「とにかく今はフウを追うのよ。死斑剣を取り戻すの」

にしても……。
フウという少女はとてつもなく強かだ。
俺様達の役に立つと言っておいて、その実、それが死斑剣を奪う算段だとはな。

「フフフッ。ここで魔神器の魔神が現われれば貴方方は死ですね」

不思議な声が響く。
声のトーンは軋むようで暗く重苦しい。
この声、トーンが違い一瞬、間違いそうになるが聞いた事のある声だ。

声の主が親指と中指をこすって、パチンと音を出す。

「フウの出番はここまでです。さあ、次は貴男の番ですよ。行きなさい。小雪」

声の主は間髪入れず、続ける。

「魔王の首をとってきなさい。期待してますよ」

「はい。はい。呼ばれて飛び出しじゃじゃじゃん。小雪たん登場ッ!」

いや。
俺様の聞き間違いか。
小雪とかいうちっこいおっさんが現われたぞ。

こんなおっさん、会った事もないし、お初にお目にかかるって感じだぜ。

でも、その顔で小雪って……。
いや、万歩譲って小雪という名前でも良かろう。
が、たんは何があっても許せん。小雪たんって、それこそヒロイン候補な名前だ。

小雪たんというより、故逝き(こゆき)たんだな。

……故人は逝け。

「拙者、魔神器の魔神ニートス様の部下。小雪と申します」

申さんでいい。
小雪という名を聞く度に頭が痛くなる。
というか、茶坊主は名前がなかったのに次の魔神には名前があるのか。
作者の適当な性格が、いかんなく発揮されているな。

「早速で恐縮でござるが……」

何だよ。
俺様達は今、フウに奪われた死斑剣を取り戻す為に忙しいんだよ。
小雪たんだか故逝きたんだか知らんが去れッ!

「拙者の使命。魔王殿のお命頂戴ッ」

だろうな。
魔神器の魔神の部下であれば、そうなるのは必然の流れだと言えよう。
が、今はちょっとタイミングが悪い。

死斑剣がフウに奪われて、俺様の武器は何もないんだぜ。

そんな丸腰の俺様を襲おうと言うのか?
お前は悪なのか?
悪か?

「問答無用。ゆきますぞ」

小雪が、切れ味抜群そうな日本刀を立てて厳かに構える。

悪だな。
その小さな体から発せられる殺気は本物だ。
死斑剣がなく無力な俺様を有無を言わさず、斬り捨てるつもりだろう。

先生。悪がいます。悪です。

「魔王。君、何かアホな事考えてない? 命の危機なのよ」

……いや。
アホな事でも言わなきゃやってられない。
何で、フウに死斑剣を奪われた、このタイミングで魔神の部下が来るんだ?

誰かの謀略だとしか思えん。

「くくく。貴男が冥府に来た時点で詰んでるんですよ」

と悪の張本人が言ったとか言わないとか。
どっちだ!? この野郎。
ぎゃふん。

~ レポート五十三、バットタイミング、了。

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【 だよね 】

減煙だと五ミリのタバコを一ミリに変える。でも五倍の本数吸っちゃう。

だよね、了。

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【 メルレポート、~ レポート五十二、間抜けなメル 】

「おほほほ。私の目的は死斑剣のみ。魔王、貴男の首には興味がありませんわ」

俺様の予想通り、フウがあいつの弟子だったらそんな事は言わない。
あいつとは勇者一行のファイト一発な戦士。
あいつの弟子じゃないのか?

ヤツの弟子であれば世界を救う為に是が非でも俺様の首を欲しがるだろうと思う。

だから俺様の導き出した答えは矛盾していたのだ。
たとえフウが魔人じゃなく人間だとしても、俺様の首を欲しがるからだ。
下手の考え休み似たりか……。

悔しいがメルの言う通りなのかもしれないな。

「死斑剣さえ手に入れば、それでいいのですわ。喰らいなさい」

フウが死斑剣を構える。
魔神・死斑剣と化した死斑剣の蒼白いオーラは危険なほど優美だった。
そういえば、メルは始め、フウを気にしていなかったな。
それなのに突然、フウに突っかかった。

もしかしてどこかでフウの怪しさに気づきあいつは危険だと突っかかったのか?

今、こうなると問題が浮き彫りになり、よく分かる。
でも、メルのヤツ、どこで気づいた。
怪しい所はなかったぞ。

「メル。お前、始めっからフウは怪しいと思っていたのか?」

「当然よ」

メルは自信満々に胸をはる。
メルはどこでフウの危うさに気づいたんだろう。
俺様は、フウの怪しさに最後の最後まで気づかなかったというのに……。

「始めは死斑剣の方が大事だと思ってたけど考え方を変えたの」

ま、メルのその判断はナイスなんだが……。
しかし、結局、死斑剣は奪われて、フウの思惑通りにいってしまったがな。
でもどこで気づいた?

「メルよ。どこで正体に気づいた?」

俺様は上目遣いで答えを求めるようにメルを見つめる。
メルは俺の気づかなかった小さな差違を見つけてフウの正体に気づいたんだろう。
どんな差違があった?

『失礼。魔王とその従者様』

『お話は終わりましたか。魔王、そして従者様』

『おほほほ。私の目的は死斑剣のみ。魔王、貴男の首には興味がありませんわ』

「フウはずっと君の事を『魔王』と呼称していたのよ。私は様付けでね」

はい? それだけ?

「驚いた顔しない。魔人だったら『魔王』じゃないわ。『魔王様』が基本なのよ」

うむむ。
確かに首を狙われているとは言え、大概は魔王様と呼ぶな。
かのブタピックもそうだったようにな。

それはたとえ馬鹿にしているとしても魔王様がデフォルトで間違いないだろう。

むしろ自分が支配されていた分、蔑むように様を付けるんだろうな。
つまり俺様が魔界の支配者である魔王だった時の名残だ。
やっぱりフウのヤツは人間なのか?

人間だったら魔王に会ったとしても様は付けない。

何せ俺様が支配していたのは、魔界に住む魔人だけなんだからな。
支配された事のない人間は様を付けないだろう。
やっぱり、あいつの弟子か?
この小娘は。

それにしても、そんな小さな差違に気づいていたのか。

……さすがメルと言いたい所だが。
その鋭敏な洞察力も、結局、死斑剣を奪われた事で残念な事になっている。
フウを見つめる。

切り揃えたヤツの短髪の赤毛が上昇気流に乗って舞っている。

今や、死斑剣だけではなく、フウの体全体から蒼白いオーラが立ち上っている。
これが魔神・死斑剣の真の実力なのか。
フフフッと笑うフウ。

「魔神・死斑剣の実力をとくとお見せしましょう。嘆きなさい」

深紅で切れ長な瞳がより一層、細くなる。
フウのヤツ、何をする気だ。
構える俺様。

「ほほほ。何もしませんわよ。唯々、厳かに魔神・死斑剣を振るだけですわ」

と、言うが早いか、フウは右手一本で器用に死斑剣を振り下ろした。
彼女が宣言した様にゆっくりと唯々、厳かに。
ただそれだけ。

途端、真っ黒に煤けた砂漠が波打ち三十メートルほど真っ二つになる。

信じられない切れ味だ。
しかし、その威力とは裏腹にどうやらフウに俺様達を斬るつもりはないらしい。
フウは俺様達に当たらない様に斬撃を調整していたのだから。

太陽の代わりである赤い月が妖しく光る。

魔界の夜の静けさはフウの斬撃で破られ、周りには慌ただしく蛍が舞っている。
今まで魔界の夜を満喫していた赤い月が飛び起きる。
太陽の出る魔界の夜。

そのアンバランスな平和はフウの一撃によって、無残にも破られてしまった。

「魔界が平和なんてのは、それこそ一大事なんだけどね。ま。いっか」

メルが茶化す。
フウの斬撃に関わらず空に浮かぶ真っ赤な月は静かに幽玄なる月光を湛えていた。
それにしても魔神・死斑剣、何て威力だ。

「おほほほ。痛感しました? 俺を捕まえようとなんて思わない方がいいですわ」

狙いはこれか。
やっぱり、ヤツは今、俺様達を殺す気はないらしい。
ゆえに魔神・死斑剣の威力だけ俺様達の脳裏に焼き付け、逃げ切るつもりらしい。

「……アッハハハ。愚かね」

先ほどまで茶化していたメルがつぶやく。

「?」

意味が分からない俺様。

「知恵者を前にした時は、威圧しない方がいいのよ。知らないの?」

知恵者?
もしかして、それは、もしかしてメルさん自身の事を言っているのかな?
確かにメルの頭脳はスーパーコンピュータ並だが……。
自分で知恵者とか言うなよ。

悲しくなる。

「強いってのは、それだけで弱点なのよ」

……あの?
ほくそ笑んで格好つけてる所、とっても悪いんですけど。
メルさん? ねえ。ねえ。メルさん。

「フフフッ。君が死斑剣を手に入れた手順で私達も死斑剣を取り戻してみせるわ」

目を閉じて人差し指を突き立て、勝ち誇ったようにメルが言う。

「あの~。メルさん。ちょっといいですか?」

俺様がそろりと挙手をして言う。
だってさ。だって、メルさん、格好つけてるけど、当のフウはさ……。
聞いてよ。

「何よ。魔王。うっさいわね。いい所なんだからッ!」

「だから聞いてよ。メル。フウはもうどこにもいないよ。逃げちゃったよ」

だから言っただろう。
格好つけてる所、悪いけどってさ。
フウのヤツはとっくに魔神・死斑剣を持って逃げちゃったんだよ。

「フフフッ。アッハハハ。……なるほどね」

メルが目を手で押さえて、いやに不敵で格好良く、天を仰ぎつつ高笑う。
メルさん、飽くまで格好をつけ続けるおつもりか?
もう、遅いでござるぞ。

「やっぱりあいつは気に入らないわ。初めて会った時からそうだったけどね」

「……」

……初めて会った時から気に入らない?

やっぱりな。
何か怪しいと思ってたんだ。
当然よとか言ってたけど、本当はただ怒っていただけだったんだね。

魔弾をぶち込んだ時は真剣に怒っていた。

それが本心。
さっきのあれはメルの心の逆鱗に触れ、メル自身、心の底から怒りが湧いた訳だ。
演技にしては鬼気迫るものがあったからな。

なるほど、そういう事か。

で、怒ったついでに抜け目なく呪文を詠唱し、腹いせに魔弾をぶち込んだ訳だ。
つまり魔弾は八つ当たりの策略バージョンだったって訳か。
いかにも策略家のメルらしい八つ当たりだ。

それにしてもフウという少女は、メルを本気で怒らせるほどの逸材か。

美少女としての逸材ね。
メル自身がこのお話でのヒロインの座を脅かされると思ってしまうほどの。
確かに粗野だったが、可愛い事は可愛かったからね。

うむむ。

「魔王。すぐに追うわよ」

しかし俺様は俺様の死斑剣が伝説の剣だと思った事はないが、あれがないと寂しい。
たとえ、死斑剣がなまくらだろうと手元に置いておきたい。
別に親の形見とかじゃないけどな。

「了解……」

とメルの意見に同意した。

~ レポート五十二、間抜けなメル、了。

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【 メルレポート、~ レポート五十一、カリカリと粒子砲 】

「お話は終わりましたか。魔王、そして従者様」

恭しくフウがたずねる。
フウは今どきの魔人には珍しいほど、俺様達に尊敬の念を持っているようだ。
そうなのだ。

魔王という地位を追われ、魔界中の魔人達から首を狙われている。

その中にあって、フウという少女は俺様に最大限の敬意を払ってくれている。
うむ。その態度、とても好感が持てるぞ。フウよ。
ただし、お前が魔人ならばな。

そうなのだ。
フウは自分の事を戦士見習い(女)と言っていた。
その言葉が正しいというのならば、戦士と言えばあいつしかいないだろう。

「ハァ、ハックションッ」

「どうした。戦士。風邪でもひいたか?」

「そうかもな。でも風邪なんか気合いだ。ファ、ファイト一発ッ!」

……のあいつ。
敢えて詳しくは書かないが、あいつだ。
もし仮にあいつがフウの師匠であれば、フウは人間という事になる。

「どうしました? 魔王。俺の顔に何かついていますか?」

うむ。
フウよ。お前は可愛いな。
が、メルの方が千倍可愛い。残念だったな。

およ? メル?

「……灰燼と化せ。疾風の如く……」

メルのヤツ、俺様達を無視して何やらむにゅ、むにゅやってるぞ。
何だ。どうした。おい。メル。大丈夫か?
メルがウインクをする。

「?」

「魔王。この子、魔神をたった二撃で屈服させたのよ。ここは私に任せて」

そうだった。
フウは可愛い顔をしているが、俺様の三年間をたったの二撃で否定したんだった。
謙遜していたが、こいつは十把一絡げのモブなんかじゃない。

「チッ。何よ。ちょっと強いからって……。こっちは三年間も苦労したのよ」

し、舌打ち……。

メルよ。
お前、何か知らんがフウに対して態度が冷たくないか?
俺様の気のせいなんだろうか……。

「フフフッ。そんなに構えないで下さる。俺は戦う気はありませんわ」

苦笑いを浮かべ、フウが戦う気はないと言う。
もしフウが魔人だったら今、現状、魔王の首は喉から手が出るほど欲しいはずだ。
それを欲しがらない。

という事は、フウが人間である可能性はかなり高い。

しかも戦士見習い。
やっぱり、ヤツの弟子じゃないのか?
しかし、だとするならば、俺様の答えに矛盾が発生する事にもなるがな。

「魔王。君が難しい顔で思考する時は、下手の考え休むに似たりって言うのよ」

俺様が難しい顔をしているとメルが八つ当たりをする。
何か、カリカリしてるな。
今のメルは。

何だよ。メル、お前が八つ当たりなんて、本当に珍しいな。どうした?

てか、下手とか言うな。
俺様だってな。たまには真面目に考えたりするんだよ。
確かに今もそうだが、考えた所で、その答えが矛盾を抱えたりするさ。

でも考えたい時だってあるんだいッ!

「フウと言ったからしら」

メルがフウに対抗するように優雅にたずねる。

「はい。戦士見習い(女)のフウと申します。よろしくお願いしますわ」

対して別に気にもしていないフウ。
やっぱりだ。もしかして女の譲れない戦いが勃発しているのか?
でも今回の勝負。

フウが気にしていない所を見ると、メルが一歩リードされているようだ。

メルがフウに勝手に突っかかってる感じか。
恐る恐るメルの目を見る。
も、燃えてる。

「あら。私の勘違いかしら。どこか殺気のようなものを感じたけど」

メルよ。
あらとか、お前のキャラじゃねえだろう。
あちらさんは、まったく気にしてねえぞ。お前の一人相撲だぜ。

「申し訳ありませんが、何の話か分かりかねますわ」

フウがまた恭しく頭を下げて言う。

フウよ。
上手く誤魔化したな。
でも珍しいな。メルが対抗心を燃やし、突っかかるなんて。

いつも冷静沈着で、正確な判断を下すメルがな。

「はん。どうだか。大方、私達を油断させて首を取ろうって所かしら」

だから、はんとかかしらは止めい。
やっぱり、どう考えてもメルのキャラじゃないし、とどのつまり一人相撲だぜ。
頭を冷やせ。

「ややや。そんな事はないですわ。俺は本当に敵対するつもりはありませんわ」

完全に困ってしまって、何とかその場を落ち着かせようとするフウ。
でもメルは何でフウに対して怒ってるんだろう。
何に引っかかった?

「君ね。ちょっと可愛いからって、何でも正義になると思ったら大間違いよ」

正義……。
聞き間違い? まさよしじゃないよな?
メルよ。遂にそんな魔人には似つかわしくなく、好ましくない言葉まで吐くか。

確かにメルとはベクトルがまったく違うがフウは可愛い。

そしてメルにはない優雅さを持っている。



そうか。
その優雅さに引っかかったんだな。
メルは凶暴で、口の悪さは天下一品だと言っても過言じゃない。

そんなメルの前に……。
メルと同じく粗暴だが、しかし同時に優雅さを合わせ持ったフウが現われた。
同じ臭いを感じ、それ以上を行くような優雅さを感じた訳だ。

メル、もしかして焦ってる?
ヒロインの座を明け渡す時がきたとか思ってる?
ふははは。

メルもヤツも初のう。初ぞ。

「まあ、まあ。メルよ。そんなに鼻息を荒くするな。お前は充分、可愛いぞッ!」

メルの肩を叩きつつ、俺様は安心しろと言った。
メルが俺様をキッと睨む。
こ、怖い。

「魔王。うっさいわね。ここは任せてよ」

メルが鉄拳を握り、拳に血管を浮かせつつ、俺様を威嚇する。
はい。どうも、すみません。メルさん。
俺様は土下座した。

「本当に敵対する気はありませんわ。俺は剣を探しているだけなんですから」

……剣?

「剣を探してるの。本当かしら。どんな剣なのよ?」

メルがまた突っかかる。
その顔は、まさに般若であり、美少女でも怒るとこんな顔になるのかと思った。
フウは、また困った顔をして、ゆっくりと答える。

「伝説の剣ですわ。師匠に探すよう言われたのです。本当ですわ」

フウは、サッと諸手を挙げて降参のポーズをとった。
どうやら本当に戦う気はないらしい。
信じてやれよ。
メル。

……でも伝説の剣だと?

「伝説? 何よ、その怪しいセンスは。伝説って電設の誤字(まちがい)?」

いや、いや、電設の方が伝説より、よっぽど誤字っぽいぞ。
電設の剣って、何だ……。
エレキテル。

「伝説の剣ですわ。特徴があるので、すぐに分かると師匠は言っていました」

「伝説って君ね。はん。特徴? 何よ。言ってみなさいよ」

そうカリカリするなよ。メル。
お前らしくない。
頼むよ。

ま、何か言ったら、速攻鉄拳が飛んでくるから何も言わないがな。

「まず、刀身が朱色で蒼白いオーラを放つ……」

うむ。
いかにも伝説っぽいな。
でも、どこから、その厨二っぽい設定は来るんだ。作者の灰色の脳か?

「次ぎに敗者の魂を喰らい尽くす悪魔の剣」

魂を喰らうだと。
確か、そんな剣をどこかで聞いた事があるが、どこだったか。
それにしても、ありがちな設定の伝説の剣だな。

「そして最後の特徴として……」

最後の特徴して?

「魔王がその剣を所持しているのですわ。おほほほ」

フウが、ここぞとばかりに手を口に当て、かん高い声で高笑いをする。

おほほほ。
そうか。そうか。魔王が、その伝説とやらを所持しているのか。
魔王のヤツ。とんでもないものを持ってやがるな。

……うん?

……俺様、魔王。魔王だよな?

……って、魔王って俺様だし。その伝説の剣、死斑剣だし。

「愚かね。やっと正体を現したって訳。フウッ!」

メルが言う。
メルの握っていた鉄拳から放たれた小さな真球粒子がフウめがけて襲いかかる。
メルはこうなる事を見越して、仕込んでいたのだ。

「魔弾、粒子砲(りゅうしほう)」

そう。
珍しく怒っているようなふりをして、気づかれないように密かに。
そうだったのか。俺様もまんまと騙されたぜ。

さすがはメルだッ!

『魔王。この子、魔神をたった二撃で屈服させたのよ。ここは私に任せて』

メルの策略は、あの時から始まっていたのだ。
だから柄にもなく怒ってみせて相手を油断させ、密かに呪文を詠唱していたのだ。
始めっから分かっていたのだ。

この娘(ガキ)は、俺様達にとって害悪でしかないと。

魔弾が被弾する。
小さな粒子だけあり、フウ自身の姿は確認出来る。
が、いくら小さな粒子だろうと、威力はそれなりにあると思われる。

……蜂の巣になるフウ。

ふらふらと左右に揺れるフウの影。
少々、その慣性運動を続け、ピッタリと動きが止まる。
殺ったか?

「……愚かなのはどちらでしょう。もう遅いですわ。詰んでます。おほほほ」

えっ?

「もう終わっていますの。言ったでしょう。貴方達と敵対しないと」

フウ……。
お前は何を言っているんだ。
今、お前はメルの魔法、粒子砲に蜂の巣にされて……。

「真球粒子砲? そんなものは、この死斑剣と大剣で完全に防御しましたわ」

死斑剣がフウの右手に握られている。
左手は、あの両手で担いでいた大剣が軽々と握られている。
両手で器用に、ちょうど死斑剣と大剣をクロスするように粒子砲を防御していた。

「名付けて、偉大な十字架(グランド・クロス)ですわ。おほほほ」

偉大な十字架(グランド・クロス)……、何だ、そのセンス。
色んな意味、脱帽だぜ。
てかッ!

いつの間に死斑剣を盗られたんだッ!

「おほほほ。魔神器の魔神。茶坊主を倒した時にすでに勝負は終わってましたの」

何だと。
フウ。どういう意味だ。
魔神器の魔神を倒した時に勝負はすでに終わっていただとッ!

「安心なさって。その意味はすぐに分かりますから」

「くっ。そういう事か。や、やられたわ」

とメルが、地団駄を踏んだ。
悔しそうに……。

~ レポート五十一、カリカリと粒子砲、了。

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【 稼業と家業 】

「将来の夢か……」

俺は小学生の時、書いた作文を読んでいる。
題材は将来の夢という、いかにも小学校で書かされそうな作文。
懐かしい。

「……あれ? 何、読んでるの。昔、書いた作文?」

俺の彼女が首を突っ込む。

「ああ。小学生の時、書かされた将来の夢を語る作文だよ」

「ふーん。で、君はどんな将来を夢見てたの?」

そうだ。
俺は小学生の時、どんな将来を夢見ていたのか。
そして、その夢は今現在、どこまで達成されているのか。少々、気になった。

「僕は将来、親の稼業を継ぎたいです」

稼業。誤字じゃないよな……。

「ふーん。でも本当に小学生の時から君は親の稼業を継ぎたかったの?」

でもの意味は分からんが、小学生の時、そう考えていたらしい。
確かに今現在、無事にか、親の稼業を継いでいる。
小学生の時の夢を叶えた訳だ。

「僕の両親は……」

「だよね。本当に継ぎたかった訳。稼業? だって君の両親は……」

「よう。相棒、仕事だぜ。準備は出来てるか?」

仕事の相棒が部屋に入ってきた。
俺と彼女は、相棒を見て、黙って静かにうなずく。
そう。

俺達は前科十六犯の詐欺師グループ。

『僕は将来、親の稼業を継ぎたいです。僕の両親は前科二十四犯の詐欺師です』

くわっ。

稼業と家業、了。

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【 たまにはお知らせでもw 】

|電柱|・ω・`)ノ ヤァ
読者の皆さん、ちょこっとしたお知らせがあります。
雑記も書こうと思った四草めぐるです。

今、猛烈に悩んでいまして、漫画を描く為のプロットがあるんです。

このままネームに落して漫画を描けばいいんですが、小説も書きたいんですよ。
で、そのプロットを小説にしようか悩んでいます。
小説は漫画に必要ありません。

ただ、細部までカチッと決めてネームを描けばいいものが出来るような気がして。

ついでに、その小説をこのブログで発表しようかと悩んでいまして……。
やっぱり発表したものは賞に応募してはダメですかね。
うむむっ。

兎にも角にも発表するには小説なので、漫画は未発表作品にならないですかね。

色々、悩んでいて先に進めないでいます。

とりあず書いてから考えると決めていますが、なかなか重い腰があがりません。
ま、一応、報告までに更新しておきます。
では、では。

草々。
     

【 汚い話とハマちゃん 】

「くおっ……」

猛烈にトイレに行きたい。
突然、下痢が襲ってきて、ゴロゴロとお腹が鳴っている。
汚い話だが、ウンコが漏れそうでたまらない。

今日に限って下痢とかマジあり得ないが、それでも生理現象なので仕方がない

「くそっ。急いでるのに。死にそうだ。トイレ、トイレ。ウンコッ!」

公園を通り抜ける。
もちろん公園には、公衆便所があって、ウンコができそうな雰囲気だった。
それでも気力で公園を通り抜け、目的地へと歩を進める。
甘い誘惑に負けたら、それでアウトだ。

「まだ何とか大丈夫だ。もう少し。あと少し……」

目の前にコンビニが見えてきた。
読者諸氏、公園がダメならコンビニでトイレを借りればいいと思われよう。
今はいい。

いや、もちろんウンコはしたいのだが、今は銀行へと急がなくてはならないのだ。

……銀行。
銀行には防犯上の理由からトイレがない。
それは一般常識として、知っているが、それでも銀行なのだッ!
急がなくてはウンコが漏れる。

「ウ、ウンコ。ウンコがしたい。漏れそう」

やっと着いた。
ギリギリセーフでウンコも何とか我慢出来たし、遅刻もしなかったぞ。
とにかくタイムカードを押したら即効、ウンコだ。

遅刻……。

そう。俺は銀行員。

そして、銀行に急いでいたのは寝坊をしてしまって遅刻しそうだったからだ。
もちろん銀行に客用のトイレはないが行員用のトイレはあるのだ。
そこに行けばいいのだ。

「ウンコッ!」

汚い話とハマちゃん、了。

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【 メルレポート、~ レポート五十、原初の魔王、再び 】

蛍が舞う魔界の夜。
そんな幻想的な夜という時間に似つかわしくないような大きな声が響く。
厳かでいて、期待感を持った豪快な笑い声と共に。
ヤツか、ヤツがまた現われたのか!

「ふはは。我は原初の魔王なり。魔王とその従者よ。我の言葉を聞いておるか?」

やっぱりかッ!

「魔王。やばいわ。原初の魔王よ」

分かってる。
メルが焦っているのも、ちゃんと理由がある。
俺様はお世辞にも頭がいいとは言わないし、記憶力もない方だと自負している。

が、そんな俺様でも覚えている。

『汝らに成長するチャンスなど与えない』

と言い放ったのを。
そう聞いていたのに冥府に逃げ込み、三年間も修業をしてしまった。
いや、その前に死斑剣を鍛え直したのだが……。

それは魔神器の魔神達が俺様達を探し出せなかったがゆえに向こうの手違いだ。
しかし冥府に逃げ込んだのはNGかもしれない。
冥府という場所は、魔界の神域。

さすがの原初の魔王や魔神器の魔神達とて、手を出せないのだろう。
冥府に隠れて、ヤツらから姿をくらませていたのだ。
更に三年間も雲隠れしていたのだ。
ヤツは怒っている。

今現在の力で、魔神器の魔神を倒せと宣言した原初の魔王は怒っているのだろう。

「どうする? メル。いいわけも思いつかないぜ」

メルの青い瞳が、ゆらゆらと微かに揺れる。
癖毛もしおれているし。
ヤバイか?

「大丈夫よ。多分、大丈夫だと思うわ。まだ流れはこっちのものよ」

本当に大丈夫か? 俺様の額は冷や汗がだだ漏れだぞ。

「汝らも冥府に向かうとは考えたな」

来た。
このまま怒濤の追い込みで、俺様達を追い詰めるつもりだろう。
ちくしょう。せっかく魔神を一人倒したのに……。

「ふははは。我の力も冥府までは及ばぬのだ。しかも三年間という時間もな」

原初の魔王は悠久の時を生きてるんじゃなかったのか。
三年間もとか言うなよ。ケツ臭いな。
もとい、ケチくさい。

「しかしだ。冥府で冥府の六賢者の一人、ディドーに会ったのであろう?」

おろ?

「ディドーは我が魔神器の主である」

メルの青い瞳に力が宿る。
さっきの大丈夫は、原初の魔王の魔神器がディドーのものだと読んでいたのか。
その読みが的中して、多分が確信に変わったんだな。

「もちろん我の主という訳ではないが、それでも我はディドーに大恩がある身」

「原初の魔王様。私達はそのディドーに鍛えられていたのです」

やっとメルの癖毛が復活したぞ。
間髪入れずに原初の魔王をやり込めようと行動を開始したし。
メルは原初の魔王が封印されていた魔神器の主、ディドーをやり込めたんだぞ。

「うむ。分かっておる」

原初の魔王はそう言ったきり、黙ってしまった。
前に宣言した器を測りたいという考えは変わっていないんだろう。
しかしディドーが認めたのだ。

原初の魔王が封印されていた魔神器の主、ディドーがだ。

暫しの間。
その後、原初の魔王がゆっくりと口を開いた。
辺りに舞っていた魔界の夜の象徴、蛍達がリズムをとるように瞬いた。

「……それにしても冥府とは、本当によく考えたものだ」

もう少しか?
あと少しで、原初の魔王が折れるぞ。
だが、俺様もメルも、そのあと一歩の寄せが上手くいかない。
詰め将棋でいうならば、あと一手足りず、王将を捕まえられないもどかしさだ。

歩でいい。

歩でいいから、持ち駒を一つ増やしてくれ。

「原初の魔王様?」

メルよ。お前には王将を追い詰める手段があるのか?

「これで世界の滅亡は無しですか?」

ないんだな。
やっぱり、あと一手、王将を追い詰める持ち駒はない訳か。
将棋でいう寄せが上手くいかない。

「今、それを考えておった。汝らは我の警告を無視し成長してしまったからな」

ちくしょう。逃げられた。

だけど……。
思い出したぞ。冥府にはアフの馬鹿が誘ったんだ。
俺様は行きたくもなかったのにだ。

ちくしょう。

アフの野郎は、どことなく怪しかったんだ。
いやに紳士的だと思えば、突然、田舎のヤンキーになったりしてさ。
ヤツにはめられたぜ。

ヤツは原初の魔王の忠告を知っていたな。

だから嫌がる俺様を無理矢理、冥府へと誘った訳だ。
クレームだ。クレームを入れてやる。
アフを糾弾するぞ。

「……ま、よかろう。今回は大目に見てやろう。ディドーの思惑では仕方がない」

え?

「魔王とその従者よ」

メルが親指を立てて、俺様にウィンクをする。

「汝らの今回の修業の件は不問にいたそう。しかしだ。次はないと思え」

投了だ。
まだ原初の魔王という王将に逃げ道はあるのに投了しやがった。
ラッキーを拾ったのか。やったぜッ!

「では、世界の滅亡はこのまま続行させてもらえるのですね」

意気揚々とメルが言う。
原初の魔王は迷いを断ち切り、即座に返事を返す。

「うむ。よかろう。汝らの器を見せてみよ」

俺様とメルは嬉しくて、互いに腕を絡ませ、力強くガッツポーズをする。
そんな俺様達を見て、戦士見習い(女)のフウが笑った。

「フフフッ。こうなる事は分かってましたわ。やっと次の段階に進めますわ」と。

フウには目的があった。
それは、このあと、俺様達も知る事となるのだが。
今は無邪気に笑い合う俺様とメルの二人には知るよしもなかった。

*****

……今から三年前。
魔王達がディドーの下で修業をし始めた、あの三年前。
戦士見習い(女)のフウは、ある男の下で修業に明け暮れる日々だった。

「フウ。詰めが甘いですよ。ダメです」

「ハァ、ハァ、ハァ、師匠。一体、何でダメなんですか?」

フウは迷っていた。
自分の剣で、目の前の敵を真っ二つにする事を。
そう。自身の剣で命の灯火をかき消す覚悟がなく、躊躇してしまっていたのだ。

それがフウの太刀筋を鈍らせていた。

しかし、敵の命を奪う覚悟ない事を自身では理解していなかった。
ゆえに何度、剣を振り下ろそうと師匠は納得しなかった。
迷いのある剣では誰も護れぬと。

「ハァ、ハァ、ハァ」

何千回、剣を振り下ろしただろう。
フウの腕はパンパンに腫れ上がり、疲労もピークに達していた。
何がダメなの?

そんな言葉が彼女の頭の中をリフレインしていた。

「フウ。時には非情になる事も必要ですよ。貴女の剣は迷いばかりです」

師匠にこう言われても、フウ自身は何がダメなのか、まったく分からなかった。
むしろ彼女は混乱してしまい、ますます剣に迷いが生じた。
汗を拭い、無心に剣を振るフウ。

いつか師匠が、認めてくれると素直に信じて。

「そうですね」

師匠がゆっくりと声をかける。

「貴女の迷いをなくす為に伝説の剣でも探してみますか? 魔界の名刀ですよ」

魔界の名刀?
自分の迷いを断ち切る為に伝説の名刀を探しにいくとは、どういう事か?
零れ落ちる汗を拭い、フウが師匠の言葉を待つ。

「フフッ。名刀はやっかいなヤツが持っています。修業にうってつけでしょう」

名刀を見つければ、己が剣の迷いが断ち切れる。
その上、師匠にも認めてもらえる。
一石二鳥だ。

「はい。師匠。不肖、フウ。もちろん喜んで探させて頂きますわ」

「フフフッ。そう言ってくれると思っていましたよ。では早速、旅立ちなさい」

師匠は、何かを考えるように腕組みをして笑った。
どうやら師匠には師匠の思惑があり、名刀を探させるつもりなのだろう。
しかしフウの心は躍っていた。

名刀とは一体、どういうものなのか。

そして、自分自身の剣から迷いが断ち切れるその瞬間を夢見て。

フウの旅は三年に及んだ。
その果て、彼女は魔王とメルに出会ったのだ。
そう。

伝説の名刀、死斑剣を見つけて……。

「フフフッ。フウ?」

今だ、フウの師匠は笑っていた。

「貴女は戦士見習い(女)ではなく、剣士見習い(女)ですよ」と……。

~ レポート五十、原初の魔王、再び、了。

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