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【 メルレポート、~ レポート四十九、お嬢と戦士 】

「行ったか?」

「……行ったようじゃぞ。もう大丈夫じゃ」

暗がりで、四人の人間が声を殺して、辺りをうかがうように言葉を交わす。
魔界の赤き月も沈み、蛍が舞い今は夜だと示していた。
夜の雪、蛍がとても幻想的な夜。
今は夏なのだろうか。

いや、魔界では蛍は珍しい生き物ではなかった。

春夏秋冬、どんな季節でも夜には蛍が舞いそれだけが魔界の夜の存在証明だった。
そんな夜という詩的な時間は悪にとっても安らぎの時間でもあった。
魔界という異世界を忘れさせるような。
風花のように舞う蛍達。

蛍の柔らかな明りに浮かび上がる幽玄な夜には似つかわしくない緊張した言葉。

「何とか助かったようだな。しかし、あんな化け物がいたなんて……」

「そうね。今の私達じゃ、手も足もでないわ」

声の主は、お馴染みのアイツらだった。
そして、ここは魔界のどこにでもある珍しくもない朽ち果てた廃墟。
そこの……。

大きな柱の裏にあの四人がいた。

そう。お馴染みのあの四人、ガンガン行こうぜな勇者達が揃って息を殺していた。
彼らは二つ目の魔神器の魔神に完膚無きなで叩きのめされたのだ。
勇者がが身震いをした。

自分達を全滅させた化け物の最後の言葉を思い出したのだ。

『くはははっ。これで勇者達は全滅だ。魔王、お前の目的もないぞ』と。

ここで疑問を覚える。
勇者達は魔神器の魔神である魔法使いによって全滅するという憂き目にあった。
勇者一行は完全に魔神器の魔法使いに殺されたのだ。

しかし、実際には彼らは、ここで生きていた。

彼らは、どうやって生き残ったのか……。

それは勇者の仲間、魔法使いの機転によって、彼らはあの難局を乗りこえたのだ。
魔王も騙された藻者守という呪文を覚えているだろうか。
自分の分身を創り出す幻術系魔法だ。

そう。魔王が勇者の寝込みを襲った時に魔法使いが使ったあの幻術系魔法だ。

それを使った。
魔神器の魔神である魔法使いに対してだ。
そして彼らは魔神器の魔神である魔法使いを藻者守で出し抜き生き残ったのだ。

「ふう。行ったみたいじゃな。またまたやらせてもらったわい」

魔法使いが冷や汗を拭う。

「藻者守、ナイスだ。魔法使い。助かったぜ」

勇者も声を殺しつつ、流れ落ちる冷や汗を拭いつつ答える。
戦士は黙ったまま先の戦闘を思い起こしている。
インテリ女僧侶は……。

「あれが二人目の魔神器の魔神なの。レベルというか格が違いすぎるわ」

と、敵の実力を推し量り、また冷や汗をかいていた。
確かに彼女の分析通りだった。
格が違いすぎる。

彼らも、この三年間、必死で修業をしていた。
一人目の魔神器の魔神、はな垂れ茶坊主にまったく敵わなかったのだから。
もちろん。

最終的には魔王を討ち果たす為にだ。

その修業は過酷を極め、ガンガン行こうぜ主義の勇者すら根をあげるほどだった。
結果、彼らは茶坊主を圧倒するまでに至ったという訳だ。
しかし、それでも……。

それでも二人目の魔神器の魔神である魔法使いにはまったく歯が立たなかった。
それほどまでに魔神器の魔法使いは格が段違いだったのだ。
住む世界が違うとも言い換えられる。

……相手が悪かった。

そう言ってしまえば、事態は簡単に解決するだろう。
するが、勇者達はこの世界を救う為に存在するとてもやっかいな存在。
そんな言葉では解決してはならない。

すなわち決して勝てない悪がいてはならない正義の味方なのだ。

いやはや、正義の味方とは如何に面倒くさいものか。

しかし戦って分かった。
魔神器の魔法使いは、自分達とは次元が違う世界に住んでいる住人だった。
それは茶坊主と初めて対峙した時ともまったくレベルが違う。
すなわち勝てない所の話ではないのだ。

戦うという形にもっていく事すら許されていないレベルの差なのである。

戦う事すら出来ない。
つまり対峙した瞬間に負けてしまっているのだ。
一人目の魔神器の魔神であった茶坊主ですら戦う事は出来たのにである。

奥歯を噛み締めた戦士の目から一筋の赤い涙が零れ落ちる。

血の涙が滲むほど戦士は後悔していたのだ。
先の魔法使いとの戦いを。
まだやれたと。

「ちくしょう。次は絶対に……」

「勝つか?」

いつになく真面目な顔をした勇者が言葉を繋ぐ。
そして今、戦士が考えていたであろう思考を否定するかのように言葉を紡ぐ。
それは無駄だと。

「残念だけど、勝つ事はおろか、戦う事すら出来ないと思うよ」

戦士はうなだれる。
勇者が紡ぎ出した言葉の意味は戦士自身も十全に理解していたのだ。
インテリ女僧侶が、黙ってうなずく。

「残念だけどね」と、厳しい表情で勇者の言葉を肯定しつつ。

『くははは。魔王にでも頼むか。勇者であるお前がな』

「魔王か……」

と、勇者が一言、小さくつぶやいた。
戦士が勇者をジッと見上げ、まだ自分には策があると言いたげだった。
勇者もうなずく。

「そうだな。俺達にはまだあいつがいる。あいつが上手くやってくれさえすれば」

「大丈夫だ。あいつは俺の一番の弟子。上手くやってくれるさ」

と戦士が力強く、勇者の肩を叩きつつ答えた。
勇者が目を静かに閉じてうなずく。
親指を立てる戦士。

「そうだな。それを信じよう」

と勇者が答えた後、勇者と戦士が赤い月が沈んだ虚空を見上げた。
そこには数匹の蛍達が舞っていた。
優美に……。

*****

「魔王と従者様。どうですか? 見習いの俺でも役に立つでございましょう?」

フウがどや顔で俺様達を見つめる。
というか、その微妙な言い回し、何とかならないか。
大体、お前は戦士見習いだろう。だったらもっと野性味溢れる言い回しをだな。

「その言い回しをやめろ。お前、戦士見習いなんだろう。フウとやら」

親指を立てるフウ。

「オホホホ。そうですわ。俺は戦士見習い(女)なのですわ」

……こいつ、俺様の話、まったく聞いてねえし。

「ま、でもさっきのはたまたまですわ。俺、弱いですしね。たまたま。オホホホ」

くう。
フウ、何だ、その勝ち誇り方は。
それは謙遜しているのか、それとも勝ち誇っているのか、どっちなんだ?
さっきまでの謙虚な姿勢は一体、どこにいっちまったんだ?

それともこれが素のお前なのか。フウよ?

ま、お嬢様系キャラってのは、高慢ちきってのが王道だからな。
やっぱり、これはこいつの素なんだろうな。
鬱陶しい。

王道だからこそ、ひねりも何も感じなくて、異様に鬱陶しいぞ。コラッ!

「魔王。そんな事より、今は魔神器に注視しなさい」

メルよ。
こんなアホが現われたのに、いやに冷静だな。
淡々と自分自身の説が正しかった事とメリットを享受しようってか?

「だけど、フウとかいうこいつ怪しいぜ」

俺様の興味は、もっかこの似非お嬢様の戦士見習いの女にあるんだぜ。
この設定過多なお嬢様戦士にな。
キャラ立ちすぎ。

その間中も魔神器は青みがかかった光を辺り一面に放っている。

が、この際、魔神器は放っておこう。
このアホの方が先決だ。
そうだろが?
メル。

「馬鹿。魔神器が青い光を放つって事はね。力を貸してくれるって事よ」

むう。
飽くまでメルは俺様の意識を魔神器に持っていきたいんだな。
でも俺様はフウの方が気になるんだ。

「メルよ。俺様は今、このフウとかいう女の方が気になるのだ。残念だがな」

「オホホホ。俺の事は気にしないで下さるかしら。空気ですわ」

うるさい。
お前がそんな事を言うから余計に気になるんだよ。
さっきの鼻汁の件もそうだが、俺様は一回、気になるとしつこい性格なんだよ。

「魔王ッ! 光が集束するわッ!」

その前にフウだ。
結局、こいつは俺様より強いのか。
そこん所、ハッキリさせないと今日は朝まで眠れないぜ。

「一つ聞きたい。フウとやら。結局、お前は俺様より強いのか。ハッキリしろ」

「だからさっきのはたまたまですわ。俺、弱いですもの。オホホホ」

ていうか、その高笑い、止めろ。
馬鹿にされているような気がして、ちくちくプライドが痛む。
ちくしょうが。

「本当にたまたまですって。俺、弱いですもの」

また謙遜モドキか。
結局、お前は、お嬢なのか、戦士なのか、よく分からんぞ。
大体、弱いと言っておきながら、臆することなく茶坊主へと向かっただろうが。

「魔王。死斑剣を見てッ!」

メル……。
お前も大概、しつこいな。飽くまで魔神器の加護の件か。
俺様も気になった事に対しては、しつこいと自負しているが、それ以上だぜ?

「!」

おわっ。
死斑剣が……、死斑剣が……。
元々、蒼白いオーラをまとっていたが、それ以上に蒼いオーラが放出されている。

「これが茶坊主の魔神器の加護の力よ。うっとりと見とれるわ」

まるで死斑剣がたった今、生まれ変わったようだ。
気になる性格の俺様だが、死斑剣がこれだけ変われば、嫌が応でも気になる。
これが魔神器の加護……。

「美しいわね。これが魔神・死斑剣なのよ」

魔神・死斑剣。
そのネーミングセンスを疑うが。
それでも、魔神器の加護を受けた死斑剣には俺様でも驚きを隠せないぜ。

「……フフフッ。喜んでいられるのも今の内ですわ」

とフウがつぶやいた。

~ レポート四十九、お嬢と戦士、了。

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【 メルレポート、~ レポート四十八、インフレ 】

花水木……。

いや、もとい。鼻水。鼻水だあぁあ!!

茶坊主が何か言葉を口にする度に気持ち悪い粘度を持った鼻水が飛び散る。
その白濁色の鼻汁は俺様の手にもかかり、めっちゃ汚い。
とにかく魔神よ。鼻をかめ。

「魔王。お前、何か勘違いしてないか? オラは魔神なんだぞ」

うるさい。
話を進める前に鼻をかめ。
話す度に、その汚い汁をまき散らすのは止めてくれないか?
というか、茶坊主。勘違いしているのは貴様だ。

俺様はお前を倒したんだぞ。……つまり俺様の方がお前より強い訳だ。

分かるか?
今、お前の主はこの俺様なのだ。
ひれ伏せとまでは言わない。が、鼻だけはかめ。飢える亀。……ウェルかめ。

「魔王?」

「何だ? メル。何か分かったのか?」

メルが青い瞳を愛らしくクリクリさせて、上目遣いで俺様を見つめる。
もちろん頭のテンコツにある癖毛は胸を張っている。
何が言いたいんだ。メルよ。

メルの瞳が赤い月光を浴びて妖しく光る。

「……テッシュ」

テッシュ? テッシュがどうかしたのか?

「こんな事もあろうかと、ディドーにもらっておいたのよ」

ディドーだと?
メルよ。相変わらず抜かりがないな。
で、そのディドーにもらっていたテッシュがどうしたというんだ?
さて、メルよ。そのテッシュを使って一体どうする?

大体、オチは分かるがな。

「茶坊主よ。これを使って鼻水を拭きなさい」

そっちね。やっぱりというか、何というか、ひねりがないぞ。

「ウサギ柄か。可愛いな。オラも好きだぞ。ウサギ。ウフフフ。サンクス」

ウサギって、乙女かよッ!
ま、でも茶坊主が鼻をかんでくれるのは地味に嬉しいかもな。
これでヤツの汚い汁が飛び散らずに済むからな。

さあ。

鼻をかめ。茶坊主よ。

「では、少女。遠慮なく使わせもらうぞ」

……ってッ!

「丁度、ウンコがちょっぴり漏れちって拭きたかった所だったんだぞ」

ケツかいッ!
鼻、鼻だよ、鼻をかめよってばさッ!
仕方がないにしろ、俺様はこんなにも馬鹿野郎に頼ろうというのか?
ほとほと自分が情けなくなって、悲しくなっちまうぜ。

やっぱり魔神器の力などいらない。

まったくいらないな。
死ね。アホ。
アホが。

「魔王。落ち着いて。聞いて」

うるさい。メルよ。お前も同罪だ。茶坊主共々、俺様に謝れ。この野郎。

「魔神がケツを拭いてる間に、ちょっとした相談があるの?」

だからケツを拭かせるな。
鼻水をかめ。
鼻だ。

「茶坊主を屈服させる方法はただ一つ。これしかないわ」

メルの癖毛がゆらゆらと揺れる。

「……メルよ。屈服させるとかさせないとか、その前に鼻だろう?」

本心だ。
いや、本心というよりは、切望に近いのかもしれないな。
それだけ、茶坊主の鼻水が気になるのだ。

いや、さっきのテッシュの件で、余計に気になって仕方がなくなったのだ。

つまり、メルよ。
お前がそうしたのだぞ。だから同罪なのだ。分かったか。
分かったら鼻水を何とかしろ。頼むから。

「屈服させるより、ケツを拭かせる前にだ。あの汚い鼻水をなんとかさせろッ!」

大声を出して唾を飛ばしてやったぜ。この野郎。
俺様に鼻汁をつけた礼だ。
ちくしょうめ。

「落ち着いて。屈服させるにはヤツに私達には敵わないと思わせるしかないの」

だから話を聞け。
俺様は今、茶坊主を屈服せる以前に鼻水の方が気になって仕方がないんだ。
とりあえず、あの汚い汁を何とかさせろ。

さっさと何とかさせろ。命令だ。

「屈服などどうでもいい。その前に鼻水だ。あの汚い白濁汁を何とかしろッ!」

「その前に屈服よ。屈服させるの」

メルは俺様の話を聞く気はまったくなさそうだ。
さすがはメルといった所か。
ちくしょう。

「……屈服。ふふふっ。その大任こそ、俺に任せては頂けないかしら?」

おほっ。
誰だ。高笑いと共に颯爽と現われたこの声の御仁は。
この忙しい時に何だって言うんだ?

「誰が呼んだか。オホホホ。俺はフウという流れの戦士見習い(女)ですのよ」

誰も呼んでない。
戦士見習いって、戦士ですらないのかよ。
ていうか、またアホが一人増えて、めでたしめでたしって訳なのか?
微妙にお嬢様言葉なのが、こいつをよく顕わしてるぜ。

「じゃ、挨拶代わりですわ。超絶必殺……」

ヤツは切り揃えた短髪の赤毛。
瞳も赤く燃える髪のように神秘的な深紅で切れ長。
まるで魔界の虚空に浮かぶ、あの真っ赤な月から放たれる月光ような輝きだ。

何となく、フェミニンなメルとはまったく対照的な印象を受ける。

しかし同時に優雅な感じもする。
妙なヤツだ。

お嬢様口調に俺という一人称がそれを如実に顕わしている。

「秘技、狐火(きつねび)」

背中に担がれていた大剣がブゥンと鈍い音を立てて、冷えた空気を切り裂く。
大剣の柄には細かい細工がされていて、業物だと認識させる。
切れ味も良さそうだ。

戦士見習いには、もったいない大剣だと思われる。

剣先が見事なほど円月状に運動する。
その後、斬撃が茶坊主の鼻先をかすめ、鼻の頭にあった絆創膏が舞い落ちる。
驚きを隠せない茶坊主。

ずずずっ。

茶坊主が咄嗟に鼻汁を吸い上げる。
おお。この戦士見習いは屈服と同時に鼻汁をも何とかするつもりか?
何をおお。

「グゥウ。何だぞ。この膨大な量の殺気は。お前のか?」

茶坊主がフウにたずねる。
フウはほくそ笑み、茶坊主の問いに答えず、再び剣戟を放つ為に大剣を構え直す。
茶坊主が語ったように火傷をしてしまうような殺気を放ちつつ。

「俺は戦士見習いですけれど、誰にも負けないのですわ」

……むう。
何だ、殺気とは裏腹な微妙な言い回しは?
いや、今は、そんな些細な事はどうでもいい。それよりだ。それより……。

「超絶必殺、其の弐ッ!」

だから、ぽっと出の新キャラが茶坊主を圧倒するのか!?
俺様ですら倒すのに三年修業をしたのにだ。
あり得ん。

しかも、戦士見習い(女)のクセにだ。

「秘技、漁り火(いさりび)」

くそッ。
信じられん。いや、信じたくない。
何で、流れの戦士見習いが、あの魔神器の魔神を圧倒できるんだ。

俺様のあの苦痛に満ちた三年間は一体、何だったんだ。

カムバック、三年ッ!!

「フッ。斬り捨て御免。バイバイ。はな垂れ坊主。もう会う事もないでしょう」

赤き少女はにこやかに手を振る。
まるで彼女の剣戟によって散っていった茶坊主を見送るように。
颯爽と……。

こいつ、手練れだ。
戦士見習い(女)というふれ込みは真っ赤なウソか?

いや、ウソだと言ってくれ。

フウの剣戟によって、茶坊主は見事に真っ二つになり、光ともに消え失せた。
その事実は俺様が無双になったという感を一気に吹き飛ばした。
ここに俺様以上に強いヤツがいると。

確かにだ。今だ六賢者のアフには勝てない気はしていた。

気はしていたが。
それでもサシでの勝負では六賢者以外には勝てるという自負があった。
しかし、その自負が傲慢だったという事だろう。

ま、俺様が傲慢だったのは今に始まった事じゃないがな。

何せ元魔王だからな。
それを差し引いても、俺様は俺様の無双感を否定しざるを得なかった。
今だ流れの戦士見習いにも遅れをとるほどだからな。

しかし、フウ……こいつは何者なんだ?

「失礼。魔王とその従者様」

フウがきびすを返し、俺様達を見据える。
その姿は、とても紳士的で彼女が生粋の戦士だと嫌でも納得させられる。
いや、戦士というより騎士といった方が的確だな。これは。

「ご挨拶が遅れましたわ。俺はフウという見習いの戦士。以後お見知りおきを」

優雅だ。
めっちゃ優雅だぞ。こいつ。
俺という一人称がちょっと気にかかるが……基本、優雅だ。

メル、お前も優雅だが、フウには負けるぞ。

「魔王ッ!」

メルが、優雅もくそもなく、素っ頓狂な声をあげる。
何だ、一体、どうした?
どうした?

「魔神器が光ってるわ。屈服した証拠よ。ブタの時も光ってたでしょ?」

「むう。屈服したのか?」

「そうよ。やったわ。これで魔神器の加護を得られるわッ!」

そうだ。
確かにブタが魔神器を行使した時も光っていた。
ブタの時は、その後、魔神器が武器へと形態変化して力を与えていたんだった。

フウという戦士見習いの赤き少女の攻撃であっさりと屈服したのか?

俺様の魔王の雷(デモンズ・サンダー)ですら屈服しなかったあの茶坊主がだ。

何か、悔しい。
自然すら味方するこの俺様を軽々と超えるのか。
しつこいようだが、戦士見習い(女)でしかないフウという少女は……。

「ちくしょう。強さのインフレしすぎ。三年間の修業は一体、何だったんだ!?」

俺様は身も蓋もない事を言ってしまった。
すなわちメタ表現ってヤツだな。
俺様自身も思う。

……思わず悔し紛れに、とほほほな発言をしてしまったと。

「フフフッ。俺はそんなに強くないですわ。たまたまですよ。いや、本当に」

頼む。
フウとやら謙遜するな。
どんどんと俺様の追い詰められ感が高まるからよ。頼む。
フウは、そんな俺様の気持ちを察したのか、黙ってにこやかに微笑んでいた。

ちくしょう。その余裕が今は死ぬほど憎らしい。

ちくしょうぅぅぅぅ!!

~ レポート四十八、インフレ、了。

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【 散々、言われてるw 】

暴力の根絶。私達の愛すべきこの地域から暴力を追放しよう。……という暴力。

散々、言われてるw、了。

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【 メルレポート、~ レポート四十七、イライラ 】

俺様達から離れる事、数百メートルの地点。
そこから物陰に隠れ、真っ直ぐな視線でにジッと見つめる一人の視線があった。
視線の主は背中に両手持ちの大剣を担いでいる少女だった。

あの戦士の中華包丁よろしく。

ニヤリとほくそ笑む、少女の口の端が上がる。
まるで獲物を見るように。
厭らしく。

「ふふふっ。探し物が見つかったわ」

と。
一方のメルには一つの思いがあるようだ。
メルのヤツは茶坊主を倒した後から何かを考えていて、ずっと黙ったままだ。
いや、黙っているのはブサメンの俺と話したくないのかもな。

……フッ、モテない男は辛いぜ。

いや、暗喩でも何でもなく、マジ直球で辛いぜ。

「……いじめられっ子、ブタピックとの戦闘を思い出していたの。気づかない?」

何がだよ。
気づかないって、メルはスマッポでアニメを見てただろう。
戦ってたのは勇者達だっての。俺様ですらねえ。

メルの頭のテンコツにある癖毛が自信満々に胸を張ってピーンと立つ。

「魔神器は所有者に莫大な力を還元するものなの」

……?

「いじめられっ子のブタが自称魔王を宣言したのは魔神器の力ありきだった訳よ」

うぬぬぬ。メルの言いたい事は何となく分かるぞ。
ブタは原初の魔王が宿っている魔神器を武器に変えるという使い方をしていた。
それで力を得ていたのだ。

つまり俺様達が倒した茶坊主の魔神器も何らかの役に立つのでは?

と考えたのだろう。
それはブタのように武器に変えるという方法かもしれない。
しかし可能性はそれだけじゃないな。

他にも、もっと何か俺様達の知らない使い方があるのかもしれない。

それに……。
ブタが原初の魔王を倒したとは思えない。
しかし俺様達は真っ正面から茶坊主を実力で倒し、魔神器を手に入れたのだ。

それだけ魔神器に対する支配力が高いと判断してもいいだろう。

「魔王。何か感じない?」

メルが言う。
多分に魔神器の隠された声を聞けとかそんな類の事を言っているんだろう。
せっかく茶坊主を倒し、魔神器を手に入れたんだからな。

メルが、もう一度言う。

「魔神器は所有者に莫大な力を還元するものなのよ」

……そうは言われてもな。
まったくもって全然、何も感じないし、何も起こる気がしないのは俺だけか?
一応、目の前に茶坊主が封印されていた魔神器はあるんだがな。

「何も感じないぞ。本当に力を還元してくれるのかよ」

これは正直な感想だ。
俺様が倒した茶坊主の魔神器は力など還元してくれないんじゃないだろうか。
ブタの件は原初の魔王の魔神器だったからじゃないだろうか。

そう。
俺様が倒したのは魔神に過ぎない茶坊主だったからな。
ブタピックが所有していたのは原初の魔王が封印されていた本物だったとか?

結局、そんなオチじゃないのか?

例の本を取り出す。
パラパラとページをめくる乾いた音が魔界の赤い月が浮かぶ虚空に木霊する。
ま、でもその本はディドーが書いたに過ぎないんだろう。

「ふむ。魔神器は所有者にその膨大なエネルギーを力に変え還元すると」

もういいよ。
どうせ力っていっても武器に変わるだけだけの話だろう。
武器は我が愛刀、死斑剣で間に合ってるぜ。

「方法は千差万別。武器に変わるものもあれば所有者に力を与えるものもあると」

俺様は冥府で修業してパワーアップしたんだぜ。
そんなうさん臭い力に頼らなくても充分な強さを手に入れたんだよ。
新技を見たろう?

自然すら俺様の前には跪くんだぜ。

「……しかし使役するには支配力が必要である」

メルが左手のひらを右拳で叩く。
うん? そのディドーが書いたうさん臭い本を読んで何か分かったのか?
最後に支配力と言っていたが、それがどうした?

「そうか、魔王、分かったわ」

「何が?」

「もう一回、茶坊主を呼び出して。そうしたら分かるわ」

呼び出すとな?
それは、あの原初の魔王を呼び出した時のように精神力を削るのか?
茶坊主だからそれほどでもないにしろな……。

ぶっちゃけ、疲れるし、めんどい。

だから、そんな力に頼らずとも俺様は強くなったし、死斑剣があるから拒否する。
それに、これ以上、無双になっても仕方がないしな。
いくらメルの頼みでも拒否する。

断固拒否。既読無視。

「いやだ。面倒くさいし、疲れる事はしない主義なのだ。俺様はな」

「うふふ。魔王。久しぶりに……」

「な、なんだよ?」

メルがまた右拳で左手のひらを叩く。
その右拳には血管の怒りマークが浮かんでいてあれを示していた。
そう……。

「私の鉄拳でも喰らいなッ!」

あははは。うふふふ。
ディドーとの三年間の修業の末、ほぼ無双となった俺様。
しかしその無双な俺様を頭ごなしにメルは鉄拳で、きっちりと、とどめをさした。

いや、もう、この人には勝てませんですよ。

はい。

それから暫しの時が流れた。
もちろん俺様はメルの鉄拳制裁によって、ボコボコにされていた。
凶暴。

メルさん。あんた。原初の魔王にも勝てるんじゃない?

「……出でよ。茶坊主よ。再び我が前に立て」

無理矢理、言わされました。はい。

「押忍。オラ、魔神」

軽ッ。
前に現われた時と同じ台詞だが、今回は軽く聞こえる。
いや、倒した今だからこそ、前と同じ台詞がとてつもなく軽く聞こえるのだろう。

「魔王。オラはお前らに倒された。もうオラに用はないだろう。違うか?」

相変わらず鼻水が汚い。

「おう。お前なんかに用はない。帰っていいぞ。気まぐれだ」

俺様が間髪入れずに答える。
メルの青い瞳がツヤを消したように鈍く光る。
同時に……。

無言の鉄拳がとんでくる。

「はい。ごめんなさい。メルさん。本当にごめんなさい」

俺様は右側頭部に大きなたんこぶを作る。
たんこぶから生々しく、衝突の衝撃で生じた熱で煙がゆらゆらと立ち上る。
もう嫌。本当に嫌。

「だから。そういう事なのよ。分かった? 魔王」

およ? 何が?

「まだ分からない? 茶坊主は今も相変わらずの態度でしょ?」

……そうだな。
確かに俺様が茶坊主を倒した。
倒したが、茶坊主はその事自体、あまり気にしていない感じがする。

「そうだな。茶坊主の俺様に対する態度は変わってないな」

「そうよ。まったく変わってないの」

「何の話だ?」

俺様とメルの会話に茶坊主が割り込んでくる。
今、茶坊主が俺様達の会話に交ざるとちょっと面倒くさいな。
俺様は茶坊主を睨む。

「むう。黙ってろってか。いやだ。オラも話に交ぜろ」

うるさい。
もう一回、倒す必要があるのか?
でも、だったらブタピックは原初の魔王を支配してたって事になるのか?

「そうね。支配力の問題よ。君は茶坊主を支配しきれてないのよ」

だからよ。その理屈で言えばさ。
ブタピックは原初の魔王を支配してたって事になるぜ。
あんなヤツがな。

「ブタの場合も考えてみたわ。あれは今と真逆の支配力があったのよ」

真逆の支配力とな?

「ブタは原初の魔王に支配されていたの」

ブタが支配されていたとな?
どういう事だ?
ぬぬ?

「この場合は逆なのよ。ブタは原初の魔王に使われていたのよ」

使われていたとな……。

うん!
何となく、メルの言いたい事が理解できた気がする。
使役するには支配力が必要なんだろう?

つまり、ブタピックは原初の魔王に支配されていて、力を使役できた訳だ。

支配力には、そんな場合も含まれている訳か。
確かに支配力さえあれば良いんだったら、その場合も考慮できるだろう。
なるほどな。

でも考えてみれば、原初の魔王が支配するブタが強くないと駒として使えない。
駒として使えなければ、そこにいる必要がまったくない事になる。
だから力を貸したと。

だから武器として変化する事でブタピックを強化したと。

うん。
ちゃんと理屈は通っている。
なるほどな。だから原初の魔王はブタピックに力を貸していた訳だ。

「何の話だよ。オラにもちゃんと分かるように話してくれ」

そして……。
俺様が倒した茶坊主は、俺様を主とは認めていない。
ブタピックの場合とはまったく真逆だが、そこに支配力が存在しない訳だ。

だから魔神器は俺様に力を貸さない訳か。

つうか。

茶坊主、一回、鼻をかめ。

鼻水が口に入っていて、それを飲んでいるようにさえも見えるぞ。
汚いな。もう本当に。頼むから鼻をかめって。
本当に、こいつ魔神か?

「魔王。一回、勝った位でいい気になるなよ。今度はオラが勝つからな」

この口ぶり。
こいつは俺様の事をライバルか何かと勘違いしてるんじゃないか?
いや、そんな事より、鼻水、鼻水……。

つうか支配力か……。
いや、魔神器の力なんかいらないが、正直、茶坊主にはイラッとするぞ。
いらないけどイラッとする。イライラ、イライラ。

「魔王。何だったら今からでも遅くはないぞ。もう一回、勝負だ。やるぞッ!」

うるさい。黙れ。
つうか、鼻水が乱れ飛んでるぞ。鼻をかめってばよ。頼むから。
俺様はイライラしながら、そんな事を思った。

~ レポート四十七、イライラ、了。

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【 一枚、足んねえ 】

俺はゲームセンターの店員。
今どきのゲーセンの花形と言えば、UFOキャッチャーにプリクラだろう。
そして今回、UFOキャッチャーの改革に乗り出す事となった。
UFOキャッチャーの改革とは。それは……。

景品を豪華にする事。

そのテーマで様々な意見が俺を含めた店員から提案された。
金の延べ棒からタワシ一年分まで様々な意見が……。
もちろん俺も言ってやったよ。
俺の趣味は骨董。

だから伊万里焼の皿や信楽焼の壺を景品にしたら流行るだろうとな。

「いや。コストパフォーマンス以前に吊り上げて落したらね。分かるだろ?」

「ケチ。だったらティファニーの食器はどうッスかね?」

「だから……死ね」

くわっ。

一枚、足んねえ、了。

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