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では、▼以下より、私の世界をお楽しみ下さい。
     

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【 勇者は死にました、レベル十一、天才的な策略 】

ハッキリと言おう。
このお話は、需要のあるお話を書こうという野心に充ち満ちた作品だ。
……というは、真っ赤なウソで、適当に書いている。

世の流れとして、需要がある話を書くのは常套手段と認知されていると思われる。

しかし、思うのだ。
需要は追うものではなく、創るものではないかと。
特に文筆家という人種には、マーケティングなど、一切、必要ないと断言しよう。

文筆家はクリエーターであり、営業職ではないのだからな。

だろッ?

と、何故、こんなお話をしたか。
それは、ひとえに、このお話を書いている作家の力量不足に起因する。
そう。

需要を追ってみたが、いつの間にか、変な話になってしまって困っているのだ。

本当は、俺と魔王が旅に出る、お話にする予定だった。
しかもチートで、無双のオマケ付きでな。
もちろんハーレムで。
俺は思う。

それが、何で、こんな事になっているんだ?

「ビチ。……私は魔王。復活の呪文を入力して下さい」

作者よ。
飽くまで、この流れのまま、このお話を完結まで書く自信はあるのか?
俺は老婆心で、出来の悪い作者を心配した。

「にしてもな……」

「ビチ。どうしました?」

魔王は、可愛らしい女の子モードだ。
というか、ここ最近、ずっと女の子モードで安心している。
オッさんは出てくんなよ。
怖いから。

「復活するのは、いいんだけどよ。すぐに死ぬから、ずっと前に進めないな」

「前に進む?」

魔王が、愛らしい声で聞き返す。
俺は頭をボリボリと掻くように、バツが悪そうに答える。

「ああ。俺にも、何か目的があるんだろうが。何か分からないけど」

魔王が叫ぶ。
力一杯、力説するように。

「ビチの目的は、魔王を倒す事ですよ」

……魔王を倒す。つまり。

「ビチは私と一緒に大冒険に出て、最終的に魔王を倒すんです」

だから、つまり。

「私も頑張りますから、初志貫徹で頑張りましょう」

頑張るな。
そんな事、頑張るなよ。魔王は君だ。
というか初志貫徹という言葉、このお話の作者に聞かせてやりたいな。

作者こそ頑張れよ。

ま、余計な事はいいか。
とりあえず、再び、毒針作戦を実行するとするか。
毒針作戦こそ、このお話を無事に完結させる事にも繋がるからな。

っと……。

し、しまったッ!

毒針を、尻に忘れてきた。
俺は街のモブどもに袋だたきに遭い、毒針を回収するのを忘れたのだ。
今だに毒針は勇者の尻に突き刺さり、揺れている事だろう。

毒針無き今、魔王を暗殺する手段がない。

「魔王。ちょっと待てッ!」

「どうしました?」

「今、突然、猛烈に便意をもよおしてきた。とりあえず、トイレに行かせろ」

「ウンコ? シッコ? それとも、オナニー?」

魔王は、笑いをこらえながら言った。
言葉には明らかに悪意があり、キッと魔王を睨み付けた。
目はないけど。

いや、当たり前だが、体が無いのだから、当然、便意に襲われる事もない。

それを知っての魔王の言葉だった。
とにかく、毒針なき今、直ちに次なる作戦を考えなくてはならなかった。
作戦がない状態で甦っても、また殺されるだけだったからな。

……そうかッ!

灯台元暗しだった。そうだよッ!

そうだ。
今度、生き返っても、殺されない方法。
ステータスが魔王好みでなくても、リセットされない方法。

無限ループから抜けだし、解脱する方法があった。

それは……。

「魔王?」

「なんですか。ビチ」

「俺が復活の呪文を入力し、次に生き返ったら……」

「はい。生き返ったら、何でしょう?」

「俺を殺すなよ。それが、復活の呪文を入力する条件だ。いいか?」

そうなんだよ。
殺さない事を条件に甦ればいい。それだけの話だ。
何て、頭がいいんだ。俺。むふふふ。

あははは。

俺ほどの天才は、この世のどこを探してもいないわ。うわははは。


……今の今まで気づかなかったのが、愚かなだけだって? 
うるへぃ。どうせアホですよだ。
分かってるよ。

「殺さない。そんな事でいいんですか?」

およっ。
魔王が、俺の条件を呑むようだ。
俺としては、殺されなければ、この無限ループから脱出できていいが。

もし、魔王好みのステータスでなくても殺さないのか。

怪しい。
猛烈に怪しいぞ。
お前、本当に正真正銘の魔王か?

「いいですよ。今度、ビチが甦ったら、殺しません。約束します」

本当に?
しつこいようだが、本当に?
魔王は相変わらず可愛い声で、俺に告げる。

「大丈夫ですよ。私の目的は魔王を倒す事。その為にできる事をしますわ」

……。
今まで、魔王好みのステータス以外の転生では、殺されてきた。
結局、それは魔王を倒す為に必要だったという訳だ。

今回、それを封じてみた。

そうしたら、あっけなく魔王は条件を呑んだ。
しかし、続く言葉で、できる事をしますわという言葉だった。
できる事をしますわ?

怪しい。

何か裏があるに違いない。

「ビチ。あまり深く考えないで。気軽に復活しましょう」

つうか。
死ぬのは俺だから、お前はそれでいいんだろう。
人間が死ぬ瞬間ってのは、それ相応の苦しみが伴うんだぜ。分かってる?

「約束します。殺しません」

「……信じよう」

俺は今だ懐疑的だったが、とりあえず魔王の言葉を信じる事にした。
信じなければ、これ以上、先には進めないからだ。
それから魔王は、君だからね。
忘れないでよ。

「ビチ。では、復活の呪文を入力して下さい」

「よかろう。入力するぞ」

こうして、俺は、遂に五回目の人生を始める事となった。
もう、二度と死にたくないと思いつつ。
それは切なる願いだった。

「クククッ」

と、魔王が、厭らしく笑った。

~ レベル十一、天才的な策略、了。

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【 信じるマン、第四十三話、酸性の毒 】

あの机の上に、美味しそうで、真っ赤なリンゴが一個あった。

机とは、研究所の手術台。
俺、一本寺真琴が改造手術を受けた手術台だ。
もちろん、怪人27号も、イエローも、あの手術台で改造手術を受けた。

「僕も、手術台の上にあったリンゴを食べたでちゅ」

……。

「おう。買ってきたリンゴは、あの手術台の上に置いておいたぞ」

やっぱり、そうか。
この馬鹿ども、二人のおかげで、混乱が生じている。
馬鹿が余計な事をしてリンゴが増殖して、どれが本物か分からなくなっている。

「……で、マコっち、リンゴ型超強力下剤を誰が食べたアルか?」

「分からんでござるな」

俺が食べたリンゴは、真っ赤で採れたて、ほやほやだったぞ。
でも、イエローが買ってきたリンゴも青森産の極上贅沢サンふじの蜜入りだよな。
多分、新鮮なリンゴだったと思われる。

「そうアル!」

なんだ?
下らん事だったら、いらんぞ。
俺は、キム・キムを睨み付けて、自分の不幸を呪った。

「リンゴ型超強力下剤は、真っ青なリンゴアル」

なにっ。マジか!
俺が食べたのは、真っ赤なリンゴ。
という事は、怪人27号が食べたブツが、それなのか!?

やった!

俺は、セーフだッ!

「ふーん。僕が食べたのは青リンゴでしゅよ」

やっぱり、お前が食べたのが、リンゴ型超強力下剤だったわけだ。ご愁傷様。

「俺が買ってきたのも、青リンゴだぜ。赤いリンゴはなかったぜ」

えっ!
ちょっと待て。
本当にちょっと待ってよ。

みんな、青リンゴだと言い張っているけど、俺が食べたのは真っ赤なリンゴだぜ?

気のせいか、お腹がグルグルいってるような気が……。
いや、キム・キムは、リンゴ型超強力下剤は、真っ青なリンゴだと言っていた。
プラシーボか!?

「あのう」

誰だ。この忙しい時に。

「手土産に僕が、一個だけ真っ赤なリンゴを買ってきましたよ」

群青色。
まだいたのか。見たいアニメがあるとか言って、帰ったんじゃなかったのか?
てか、お前、前の話で、出番が終わりのモブだろ。

なに、モブが余計な事してんだよ。

って。
お前が、買ってきたのか。
何だよ。助かった。俺は、やっぱりセーフだったのか。

「テメェ。まだ生きていやがったんでちゅか。殺すでしゅ。死ねッ!」

怪人27号……。
群青色は無害なヲタクだ。許してやれ。
というか、怪人27号、お前がリンゴ型超強力下剤を食ったんだよ。

死ぬのはお前だ。

あべしッ。

必死で、怪人27号を制していると、群青色がしれっと言った。
やっぱり、群青色はヲタクで、モブだった。
ま、その面だからな。

「じゃ、見たいアニメがあるんで、これで失礼します」

群青色よ。
もう二度と、ここに来なくていいからな。
俺は、全ての謎が解けて、満面の笑みで群青色を送り出した。

「桃軍師、そうだったアルか」

「そうでござる」

何?
そこの二人、何か怪しいお話をしない。
二人して、こそこそと何を納得しているんだよ。リンゴ事件は解決したぞ。

「真っ青は間違いだったアル。真っ赤なリンゴアルよ」

覆すなッ!
何で、真っ青なリンゴが、真っ赤になるんだ?
しかも、俺が食べた二個しかない真っ赤なリンゴになるんだよッ!

陰謀か? 陰謀なのか!!

「ん? マコっち、不思議そうな顔をしてるアルな」

ふっー!

「何を吼えているアル。ネコアルか?」

悪即斬ッ! 死ねッ!

「まあ。まあ。マコっち殿。リトマス紙というものを知っているでござるか?」

「……小学生が理科の実験で使うものだろう。知ってるよ」

桃軍師は、まだマシだ。
だから怒りながらも、質問に答えた。
で?

「リンゴ型超強力下剤は真っ青でござった。青リンゴで作ったのでござるな」

「それとリトマス紙が、どう関係あるんだ。分からんぞ」

「毒は酸性だったのでござる」

「酸性……」

「マコっち殿。貴殿が小学生の頃の理科の実験を思い出すでござる」

「信号機、青が赤になったら歩けない……」

「歩けない。アルけない。アルカリ性ではないでござるな」

うおぉぉ。
何て、小学生に優しいお話なんだ。
これで次の理科のテストは満点だぜ。オッケー?

「つまり、毒は酸性で、リンゴの表面が青から赤に変わったのでござる」

諸行無常ッ!
何それ。まったく聞いてないし。
つうか、だから毒入りのリンゴ型超強力下剤は真っ赤ってか?

リトマス林檎。

面白くもなんともない。
死んでしまえ。キム・キムと桃軍師、二人とも。
死ね。

「でも群青が持ってきたリンゴの可能性もあるでござるし、気を確かにでござる」

「そうアル。明日になれば分かるアルしな。ヨロシ?」

くそっ。
死ぬのは俺だしな。
ああ。そうさ。死ぬのは俺さ。お前ら二人は、それでいいよな。
しかも、ウンコで死ぬんだぜ。ウンコ。最低。

「しかも、これがあるアル」

「そうでござるな」

何よ。
お前ら、俺の敵決定。死ね。気安く、俺に話しかけるな。
ああ。俺はウンコで死ぬ哀れな子羊さ。

「解毒剤アル」

なっ?

「うむ。リンゴ型超強力下剤の解毒剤を作っておいて良かったでござるな」

何だよ。
解毒剤なんてものがあるんだったら、さっさと出せよ。
もう。敵なんて言ってゴメンな。あははは。

うふふふ。

「ただし!」



「リンゴ型超強力下剤を飲んでいなかったら、これが超強力下剤になるアル」

ベン・ジョンソンッ!
ここにきて、真っ赤なリンゴが二個あった事が仇になりやがった。
飲めば、解毒になるか、はたまた超強力下剤になるか。

くおっ。

お腹が、グルグルと……。

「マコっち、それはプラシーボアルよ。ヨロシ?」

よろしくねえ。
お前ら、俺を使って遊んで楽しいか?
怪人27号も、イエローも、気づいたら、いつの間にいねえし……。

くおっ。

「だからプラシーボアル。気をしっかり持つアル」

うるせえ。
誰のせいだと思ってるんだよ。ハゲッ!
しかもドロンパ商会壊滅とか意味の分からない理由で変なものを作りやがって。
俺は、くおっと中空をパクパク掴み、必死で腹の痛みと戦った。

くぅおぉぉぉぉっ。

第四十三話、酸性の毒、了。

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【 愛羅武、魔王、~ 其の二十七、メタル 】

…――今だ上下に動いて、うなずいていると思われるレータインのフランスパン。

だから!
乙女の前なのよ。
少しは自重しなさいっての。
私は、無言で拳を握り、レータインの顎にいいのを入れた。

「姫様。姫様は、本当に乙女なんですか?」

レータインが鼻血をぼたぼたと落し、泣きながら問う。

うっさい。
レータイン、露出狂のあんたが勇者という位に無謀なのは重々理解してるわよ。
それでも女は、いつまでたっても乙女でいたいものなのよ。

いや、女子高生の私は乙女でしょ?

「ぐふふ。勇者の言う事は正しいですよ。お嬢様が乙女などとは笑止千万ですね」

何なよ。あんた達。
どこから、どう見ても、乙女でしょうが。
十七歳の女の子(※注、しかも可愛い)を見て、何を言ってるのよ。

「お嬢様?」

「何よ。フラット。言いたい事があるの?」

「何を、お考えが知りませんが、自分で可愛いというと滑稽ですよ。ぐふふ」

だから、うっさい。
どMで、変態な守銭奴に言われたくないわよ。
もちろん露出狂のヒーロー気取りの馬鹿ちんにも言われたくないけど。

にしても……。

フラット、あんた、よく、ぐふふって、嫌らしい感じで笑うわよね。
首筋にゾゾって、悪寒が走るような笑い方しないで。
腹黒いあんたにはピッタリね。
どうでもいいけど。

そんな事より、レータイン、魔王に向かって、ゴーな素敵な裏技を教えてよ。

「レータイン。じゃ、とっと、その素敵な裏技を教えてよ」

「先に言っておきます」

「何?」

「今から言う事は、決して裏技ではないです」

そんな事は、どうでもいいのよ。
裏技だろうと、そうでなかろうと、一気に魔王の下に行けるんでしょ?
だった良しよ。

「分かったわよ。裏技じゃないのね。いいわ。話を先に進めて」

「……スライムです」

スライム?
さっき、あんたが戦って、勝てなかったザコ?
それが、どうしたって言うのよ?

「姫様。スライムの巣窟である洞窟に行くんです。そこで修業をするんですよ」

スライム?
だから、ザコでしょ?
いまいち話が見えてこないんですけど……。

「ぐふふ。お嬢様。スライムと言えばアレですよ。アレ。分かりませんか?」

アレ、アレ、言われても分からないものは、分からないわよ。
それ以前に、その嫌らしい笑い方、止めてよ。
背筋に冷たいものが走るわ。

「姫様。僕が言っているスライムは、経験値の王、メタルスライムです」

メタル!
そうか。やっと分かった。
あの経験値の塊であるメタルスライムの巣窟へ行くのか。
ゲームをやらないけど、メタルスライムが経験値上げに有効なのは知っている。

よし。ナイス。

じゃ、旅の支度をして、とっと、その巣窟とやらに行くわよ。

「ぐふふ。お嬢様。そう簡単に行きますかね?」

フラット。
あんた、何で、そんなに否定的なわけ?
……そうか。さっき、儲け話を一つ、失っていたわね。

それを根に持っているのか。

根暗がっ。

でも、そこまで徹底的な守銭奴な外道だと、友達もいないでしょ。
可哀想と心にもない事を思い、笑った。
そうか。カネが友達か。
あんたは。

「フラット。あんた、そんな性格じゃ、友達いないでしょ?」

「ぐふふ。友達ですか?」

「そうよ。友達よ。いるの? あんたに」

「失礼ですね。わたくしにも友達はいます。債務者という名の友達がね。ぐふふ」

債務者……。
それは友達と言わないわよ。
むしろ、借金奴隷と言った方が適切じゃないのかな。

やっぱり、どMは、普段、どSって事ね。

どMの守銭奴執事のフラットを見ていると、強く、そう思うわ。

ま、いいか。
ところで、メタルスライムの件。
腹黒フラットは、一体、何を懸念しているんだろう。

確かにレータインは素のスライムにも勝てない弱者だけどさ……。

何だろう?
うん? 何だか嫌な予感がする。
ここにきて、凶悪非童な魔王が、ずっと登場していないのが猛烈に不安になった。

寒気が止まらないわ。

「ぐふふ。お嬢様。ずばり、それですよ。それ」

何よ。
何が、それなのよ。
魔王が登場してないって事? 確かに、それは不安だけど……。

「お嬢様。二億で手を打ちませんか?」

カネかッ!
だから無いっつうの。
もう、あんたから借金をする気は、毛頭ありません。

ま、債務者が友達と言うヤツだからね。

ケッ。外道が。

何にしても、とりあえず、メタルスライムを倒す旅に出よう。
魔王の件は、とても不安だけど、洞窟に着いてから考えても遅くはないはずよ。
うん。よし。今は忘れよう。
アホ魔王の事は。

メタルスライムの巣窟へ向かって、レッツ・ゴーだべしゃ。

ごっそに向かって、いごっそ、けっぱれ、わだす。

~ 其の二十七、メタル、了。

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【 連載小説、マコちゃんの日記 】

真面目に恋愛を書いてみました。ギャグ編も書く予定。只今、十二話、以下続刊。

お話概要。

…――アンドロイドのマコ。

彼女は、世紀の天才科学者、大川宏治に創られた血の通わないロボット。
彼女は、ロボットで血が通ってなくても彼を愛している。
いや。むしろ誰にも負けない愛を持っている。
そんな科学者とロボットとの話。

~ 白。

▼マコちゃんの日記(白)、一ページ、天才科学者
http://kokolost.blog.fc2.com/blog-entry-510.html
▼マコちゃんの日記(白)、二ページ、写真立て
http://kokolost.blog.fc2.com/blog-entry-525.html
▼マコちゃんの日記(白)、三ページ、お役御免
http://kokolost.blog.fc2.com/blog-entry-526.html
▼マコちゃんの日記(白)、四ページ、流せぬ涙
http://kokolost.blog.fc2.com/blog-entry-545.html
▼マコちゃんの日記(白)、五ページ、腕時計
http://kokolost.blog.fc2.com/blog-entry-547.html

~ 黒。

▼マコちゃんの日記(黒)、一ページ、マコという女の子
http://kokolost.blog.fc2.com/blog-entry-643.html
▼マコちゃんの日記(黒)、二ページ、紅茶をコボス
http://kokolost.blog.fc2.com/blog-entry-646.html
▼マコちゃんの日記(黒)、三ページ、ユケ
http://kokolost.blog.fc2.com/blog-entry-647.html
▼マコちゃんの日記(黒)、四ページ、実験してミル
http://kokolost.blog.fc2.com/blog-entry-649.html
▼マコちゃんの日記(黒)、五ページ、用がないならケェルぞ
http://kokolost.blog.fc2.com/blog-entry-650.html
▼マコちゃんの日記(黒)、六ページ、カブとゴミ
http://kokolost.blog.fc2.com/blog-entry-651.html
▼マコちゃんの日記(黒)、七ページ、ベタな答え
http://kokolost.blog.fc2.com/blog-entry-652.html

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マコちゃんの日記、了。
     

【 マコちゃんの日記(白)、一ページ、天才科学者 】

…――私はアンドロイド。

名をマコという。
創造主は、大川宏治(おおかわ こうじ)という天才科学者の青年。
彼は独身で、私を彼女として、この世に誕生させた。

創造主をマスターと呼んでいる。

彼は、イケメン。
背は高く、科学者には珍しく、がっちりした体型で力持ち。
色黒で、その体つきから健康的な印象を受ける。
どちらかと言えば、スポーツマン。

そんな見た目からは想像もできないほどの天才的な頭脳の持ち主。

しかし、変わっている。
私というアンドロイドを開発したにも関わらず、発表しようとしないのだ。
世に発表すれば、世界がアッと驚くにも関わらず。

私には現代でいうオーバーテクノロジーと定義されるような技術が使われている。

マスターは、その理論を一人で組み上げ、そして実行したのだ。
つまり、私というアンドロイドを組み上げたのだ。
たった一人で。

千年に一人の天才科学者。

しかし、とても変わっていて、本職は科学者ではなく、漫画雑誌の編集部員。
それどころか、何を発明しても、一切、発表しようとしない。
近所の人達は誰も彼が科学者だとは思わないだろう。
それだけ、世を忍び、生きている。

「マスター?」

首を傾げ、質問する。
ダージリンを啜りながら、こちらを不思議そうに見る彼。
白いティーカップから、ほんのりとマスカットのような香りがただよってくる。

「うん。美味しいね。マコが淹れてくれた紅茶」

「はい。ありがとうございます」

褒められて、嬉しさのあまり、恥ずかしくて、うつむく。
頭の中にあるハードディスクには、四種類の紅茶の淹れ方が保存されている。
オーソドックスな淹茶式で淹れた。

「うん。で、さっき僕を呼んだだろ。何か用かい? マコ」

マスターが目を細め、私を見つめ、優しく、たずねる。
そうだ。疑問に思った事があったんだ。
顔をあげる。

「マスター。マスターは、何故、発明した品々を発表しようとしないんですか?」

そう。彼は発明したものを発表しようとしない。
いや、それどころか、自分自身が科学者だという事すら隠している。
何故だろう。

そこには、計り知れない何かが、存在するのだろうか。

「ああ。そんな事か。ふふふ。何故だと思う?」

彼がイタズラっぽく笑う。
その表情は、まだあどけなさが残る少年のように天真爛漫な感じがした。
私は、また首を傾げ、まったく分からないとアピールする。

「……」

「マコ。分からないかい?」

マスターは、両手の甲を顎に当て、微笑んでいる。

「分かりません。発表すれば、地位や名誉、富も手に入るのではないですか?」

頭の中に浮かんだ答え。
それは、マスターが発明した品々を発表した時のメリット達だけだった。
いや、デメリットは、まったく無いような気がした。

「じゃ、こうしよう」

彼は人差し指で天を指し言った。

「?」

「マコ。僕は君を発明した。だから他の品々は忘れて、君限定で考えてごらん」

「私……、限定で考えればいいのですか?」

「うん。もし、世の中に君を発表したらどうなると思う?」

私は考えた。
もし、私という存在を世の中に発表したとしたら。
しかしどれだけ考えても、メリットこそあれど、デメリットは見あたらなかった。

「マスター。どれだけ考えてもデメリットが思い浮かびませんが……」

「そう。だったら君は僕と別れても悲しくないのかい?」

ッ!
突然、頭を重苦しいハンマーで、何度も打たれたような感じがした。
マスターの予想外の言葉がハートに突き刺さったのだ。

「マコ。顔色が悪いよ。大丈夫かい?」

彼が、顔をのぞき込む。
今の私は頭がシェイクされ、思考が、絡んで、こんがらがっている。
それだけ、先ほどの言葉はショックだったのだ。

マスターと別れる。

考えただけで、悲壮感がこみ上げてくる。
絶対に嫌だ。いや、むしろ別れる位ならば、電源を切って、スクラップになる。
涙がにじんだ。

「そういう事だよ。君を発表すれば別れなくてはならないんだ」

マスター、何で、そうなるんですか?
にじんだ涙がこぼれる。
嫌ッ。

「マコ。君の製作で使用した技術は、オーバーテクノロジーなんだよ」

「それは分かっています。でも、それと別れとは……」

「一緒なんだ」

「何で、一緒なんですか?」

「発表すれば、君は研究対象として、国の研究機関に連れ去られるだろうね」

そうか。
やっと分かった。オーバーテクノロジーと別れが一緒という意味が。
そう。きっと私は分解され、研究対象となるという事か。
人々が見た事もない機械なのだから。

「だから発表しないんだよ。分かったかい?」

やっと分かった。
私の考えが甘かった。マスターは、そこまで、先を考えていたんだ。
やっぱり、彼は千年に一人の天才科学者。

多分、他の発明品にも、それぞれ何らかの理由があって発表しないんだろう。

涙を拭い、真っ直ぐ、彼を見つめた。
そこに彼の愛があり、私を慈しむ感情が溢れているような気がして。
彼は優しく微笑んでいた。

一ページ目、天才科学者、了。

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【 ジェラシック 】

やる気のないテーマパーク。土日祝祭日、休業させて頂きます。

ジェラシック、了。

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【 元アイドルという幻想 】

…――A県K市。

ここには、伝説のキャバクラがある。
元アイドルや元女優、元歌手など、芸能界で活躍した女の子を雇うキャバクラだ。
もちろん、三流の元アイドルではない。一流どこの元アイドルだ。
名前を枚挙すれば、誰にでも分かるようなキャスト。

料金は、一時間、五千円。

女の子のドリンクおよび食べ物はフリーという良心的な店としても有名だ。

しかし、これだけでは伝説にはなれない。
ゆえに、この店には、もう一つの大きな秘密が隠されていた。
それは……。

女の子の平均年齢が八十五歳なのだ。

つまり、ババア。

くわっ。

元アイドルという幻想、了。

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【 将来有望株 】

…――俺はパチプロ。

いや、パチプロというよりも、ギャンブラーと言った方が的確か。
パチンコはもちろん、競馬や競輪、競艇、麻雀までギャンブルなら何でもこなす。
今日もパチンコで、店から三十万ほど抜いてきた。

そんな俺は……、小学生。

くわっ。

将来有望株、了。

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【 観光 】

留学先に指定した場所は、アメリカのラスベガス。

観光、了。

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【 勇者は死にました、レベル十、ぷすっ 】

「魔王が復活したらしい。嗚呼、世界は終わりだ」

「でも、勇者も生まれたらしいぞ。大丈夫。勇者が魔王を倒してくれるさ」

「だといいけどな」

「大丈夫だって。心配するな。勇者に任せておけば、何とかなるって」

街の人たちが、しゃべっている声が聞こえる。
俺はゆっくりと目を開ける。
四回目……。

そう。俺は四回目の人生を歩み始めた。

もちろん、生まれ変わって、すぐにステータスを確認した。
今度は特筆すべき事もない能力だった。
変ではなかったのだ。

が、まったくチートでもなかった。

レベルは1で、他の能力も、それ相応の能力だった。
強くはない。むしろ弱い部類に入る。
これはまずい。

魔王に悟られたくない。

多分、この能力では、また死が待っていると思われるようなステータスだから。

スキルも凡庸。
これと言って、いいものは何もない。
やっぱり、魔王に知られれば、即あの世、行きだろうな。

悟られれば、今一度、魔王軍に殺され、復活の呪文を入力させられると思われる。

幸いな事に、魔王は所用で、ここには現われていない。
良し。今の内に毒針を射す練習でもしよう。
悟られる前に一撃必中だ。

これしかない。

俺は、毒針を振りながら、街の入り口でモブの仕事をこなす事とした。
街は慌ただしく、商人や旅人が行き交っている。
多分、魔王が復活した影響だろう。

俺には関係ない。

それより、無心に毒針を振る。
その内、現われるであろう魔王を一撃必中で、刺し殺す為に。
魔王よ。クビを洗って、楽しみに待ってろよッ。

ふん。ふん。

よし、予行演習は上手くいってる。
俺は調子に乗って、魔王を一撃で殺せるように更に振る。
必中と。

ふん。ふん。

毒針は、空気を切り裂き、ブンブンと音を立てる。
いい感じだ。これで魔王を倒してやる。
よし。もう少し、練習だ。

ふん。ふん。

「よう。ここは、何て街だ?」

プスッ。

おわっ。
毒針を振っていたら、偶然、話しかけてきた旅人の尻に命中してしまった。
尻に刺さった毒針は、刺さった振動で、微かに揺れている。
毒針が一撃必中と言ったかは定かではない。
が、旅人が崩れ落ちる。

慌てて、胸に耳を当てて心拍を調べ、脈を測る。

…――心臓が動いていない。脈もない。

しまった。
マジか。マジですか?
モブが、毒針で、見知らぬ旅人を射してしまったッス。

「ようこそ、始まりの街コカーラへ」と言おうと思った矢先の出来事だった。

心臓マッサージを試みる。

無駄。無駄。
毒針が、そう言ったかは分からない。
分からないが、毒針の毒は、旅人の体中をめぐり、すでに手遅れだった。

毒針……。
さすがに一撃で射した相手を倒す事のできる武器だ。
いや、今は感心している場合ではない。

何とか蘇生させねば。

モブは、モブらしく、決して世の中の流れを変えてはいけない存在なのだ。
つまり、この旅人がモブであろうと、殺してはならないのだ。
殺してしまえば、世の中の均衡が崩れる。

そう。
旅人が繰り返したであろう台詞を言うキャストが、この世からいなくなるのだ。
つまり、それが重要な情報だろと、そうでなかろうと……。

勇者が手入れるであろう情報が減ってしまうのだ。

もちろん、この旅人が重要な台詞を言うモブであれば、もっと事態は悪化する。
勇者が魔王を倒す為に進むであろう道を閉ざしてしまうのだ。
この旅人がいない事によって。

焦って、必死で心臓マッサージを続ける俺。

街の人間達が輪を作る。
遠巻きに、モブがモブを殺してしまった事件を好奇の目で眺めているのだ。
もちろん街のモブ達は誰も手を貸そうとはしない。

ヤツらも、すなわちモブなのだ。

世の中の流れを変えてはいけないの法則に従い、誰も手を貸そうとしないのだ。
多分、輪を作っている人達は、これもイベントだと思っている。
モブはイベントを静観しなくてならない。

おろろん。

違うんだよッ!
手違いで、殺しちゃったんだよ。
誰でも良いから、医者を呼んでくれ。医者だ。医者。

旅人は、毒で、この時、すでに手の施しようがない状態だったと思う。

しかし、それでも最善を尽くしたかった。
いや、モブ王を目指す俺は、手違いで殺した旅人を何とか救いたかったのだ。
モブであるがゆえに。

「……コイツ」

輪を作っているモブの内、一人が言った。
俺は、やっと救いの手がきたかと、ソイツをパッと零れるような笑顔で見つめた。
しかし……。

「やべえよ。コイツ……」

えっ、何? 何?

「勇者だ」

はあ?
何を仰るの。このモブは。
俺が偶然にも、尻に毒針を射してしまった、このお方を勇者だと。そう仰るの?

「やべえよ。コイツは魔王を倒す為に生まれた勇者だッ!」

えっ、えっ、モブが、勇者を殺しちまった?
俺、もしか、やっちった?
マジ?

「マジかよ。あり得ねえ。コイツ、魔王の手下だぜ。絶対。殺せッ!」

いやああ。違うの。
魔王を毒針で、殺そうと思って……、本当に違うの。
マジで、俺の話を聞いて。プリーズッ!

プリィィィーズゥゥゥッ!

勇者が死んだ今、世の中は混沌として、モブである俺が殺されるのも許された。
そう。それこそ、まさにイベントと化したのだ。
俺が殺されるというイベント。

勇者を手にかけた魔王軍の手先として。

モブ達は自分の立場すら忘れ、魔王軍の恐怖から逃げるように俺を襲った。
モブがモブでなくなってしまった瞬間だった。
ああ。死んだなと思った。

…――そして。

案の定、俺は死んでここにいる。
一体、俺は何回、死ねば、この無限ループとも言える状態から抜け出せるのか。
そして、魔王も所用を終えたのか、ここに戻ってきていた。

「知らない間に死んでたね。何でですか?」

「うるさい。君には関係ない」

「弱かったからね」

魔王よ。
君は、どこで俺のステータス情報を手に入れたんだ?
君は所用でいなかったはずだろ。

ま、いい。

そんな事より、街のモブ達に殺されたなんて、口が裂けても言えない。
俺は、モブ王を目指しているのだから。
モブに殺されたなんて……。

「ふふふ」

「笑うな。次こそ、上手くやるから、さっさと、あの台詞を言え」

悔し紛れに憎まれ口を叩いた。
魔王は、さも可笑しいと、声を殺して笑っていた。
ちくしょう。

「では、コホン……。私は魔王。ビチ。復活の呪文を入力して下さい」

と魔王がお決まりの文句を繰り返した。
同じ台詞を飽きもせず、何回も繰り返すなんて、君こそモブじゃねえのかよ。
と、フッと思った。

~ レベル十、ぷすっ、了。

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【 勇者は死にました、レベル九、毒針 】

俺は正義感の強い方ではない。

どちらかと言われれば、周りに流されて、悪事も行ってしまうような人間だ。
いきなり、何を言っているのかと思われよう。
しかし、これが大切なのだ。

「ビチ。あなたは安らかに眠って下さい」

魔王の思惑。
それは、俺の復活をあきらめ、新たなモブに目を付け、犠牲にするという事。
つまり、俺以外の無辜(むこ)なモブを勇者にしようというのだ。

「ビチに勇者になって欲しかったけど、時間もありませんし、他の人にしますね」

そうか。
魔王は俺の復活をあきらめたから饒舌になったのか。
やっぱり、モブには人権がないのか。

これだけ、好き勝手に殺したり、復活させたりされても文句も言えない。

ある種の怒りを覚えた。
が、魔王にとっては、しょせんモブの戯れ言だろう。
モブはモブらしく、魔王を怖がっていれば、それでいいのとでも言わぬがごとく。

「じゃ、成仏して下さいね。バイ、バイ」

バイ、バイじゃねえ。
魔王は、手を振っているのだと思う。
そして、もう迷惑をかけないと、俺の前から消えるつもりらしい。
目の前から消えてくれるのは、とてもありがたい。

ありがたいが……。

もう一度言う。俺は正義感の強い方ではない。

それでも、何も知らない俺のようなモブが犠牲になるのは、耐えられない。
特にモブだという部分が、俺を苦しめ、そこに罪悪感が生まれる。
モブである俺には、モブの気持ちがよく分かるのだ。

俺はモブ王になる人物。

なので、余計に次の犠牲者の事が気になる。
モブ王は、モブ達を統括するもの。
今、器量が試されている。

しかも俺の瞳には、今まで、自分の命を弄ばれた怒りにも似た感情が宿っていた。

モブにでも人権はあるぞと主張するように。
ささやかな反抗だった。
勝手すぎると。

「魔王。待て。俺の話を聞けッ」

「?」

自分でも不思議だったのだが、俺は魔王を呼び止めた。
もちろん魔王は、何故、呼び止められるのか、意味が分からなかったと思う。
瞳には決意の色を宿していた。

「魔王、お前に、もう一回だけ、チャンスをやるよ」

「チャンス?」

魔王の声色は疑問に満ちていた。

「復活してやるって言ってるんだ。勇者にもなってやるよ」

復活はできるが、勇者になる事は無理だと思う。
無理だとは思うが、これ位、言わないと他のモブの下に行ってしまうだろう。
それは、プライドが許さない。
魔王を見据えた。

一応、俺にはモブなりの考えがあった。

今度、復活すれば、また魔王が仲間になる為に現われるだろう。
その時、すかさず毒針で魔王の急所をひと突きにする。
毒針とは一撃で対象を倒す武器だ。

魔王を殺す。

で、魔王の悲願、他殺願望も満たされ、世界も救われるし、俺も解放される。
俺以外のモブが無理矢理、勇者にさせられる事もないしな。
みんなが幸せになる作戦なのだ。

誰も不幸にならない。

しかも都合がいい事に、生前、俺は毒針をズボンのポケットに忍ばせていた。
何故だかは分からない。何となく持っていた。
こんな事で役に立つとはな。

神の思し召しか?

「……」

魔王が、いぶかしげに黙る。
それは、そうだろう。何故なら復活を嫌がっていた俺の態度が変わったのだから。
いくら、アホな魔王だろうと、疑問に思うのは当然だ。

「復活の呪文だろ。やってやるよ」

「……」

「ただし一つ条件がある」

毅然とした態度で、魔王に望んだ。
復活した後、魔王が俺の目の前に現われなければ、作戦はおじゃんだ。
だから慎重になる。

「何でしょう。無理な条件でなければ聞きますが……」

どうやら魔王は、まだ俺が復活する事にはやぶさかではないようだ。
しかし警戒はしているようだ。
ま、いい。

どちらにしろ、飲めないような条件ではないだろう。

「三度目の人生で、お前は俺の目の前に現われただろう。また現われて欲しい」

四回目の人生でピリオドを打つ。
この悪循環から。
毒針で。

「……またビチと一緒に冒険に出て欲しいって事ですか?」

いや、違う。
お前を毒針で、暗殺するのだ。
でも正直に、そう言ってしまうと、魔王は難色を示すかもしれない。

「そうだ」

と当たり障りのないような返事を選んだ。

「できれば、そうしたいんだけど、ちょっと事情ができまして……」

おいっ。
ここまできて、それかよ。
君は、毒針の餌食になって、死ぬんだよ?

「もちろんビチの仲間にはなります。ですが、少々、お時間を頂けますか?」

……。

「すぐにでもビチの仲間になりたいんですが、事情が。ごめんなさい」

女の子に、こんなに謝られたら、引くしかない。
いくら魔王でも、女の子だからな。
男はつらいよ。

ま、始まりの街の入り口で、モブでもして時間を潰す事にするよ。

「分かった。待つよ。でも、ちゃんと合流してくれよ。それが復活の条件だ」

「はい。分かりました」

魔王は、とびっきり可愛い声で答えた。
俺は、毒針で魔王を暗殺する事に、少し後ろ髪を引かれた。
それだけ可愛かった。

「コホン。では、ビチ。復活の呪文を入力して下さい」

「分かった。呪文を入力するぜ」

と、俺は答えた。

~ レベル九、毒針、了。

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【 魔法のサプリ 】

「はい。本番です。キュッ!」

私の仕事は、テレビでやってる通販番組の司会。
今日も私の番組で、視聴者たちに、いらないものを売りつけてやるわ。
それが私の仕事。

「こんにちは。今日の商品は、こちらッ!」

出来るだけ明るく、出来るだけ大げさに、お値打ちだと商品を紹介する。
すると、馬鹿な視聴者どもが、商品に群がる。
これがテレビの力だ。

さて……。

今日の商品は?

「誰でも、ダイエットが成功する魔法のサプリですッ!」

こんなもので、ダイエットが成功するわけがない。
飲むだけで、誰でも痩せられるならば、みんな、飲むっつうの。
で、世の中のデブが消えるっつうの。

そうしたら、この商品は売れなくなって、この番組で紹介しなくなるっつうの。

でも、そんな事にはならないでしょ? つまり、これはパチもんって事よ。
そんな簡単な事も分からないのか。
馬鹿な視聴者どもは。

「注文が殺到しますので、今すぐ、お電話を」

「……カット!」

ふう。終わった。これで、私のアホらしい仕事は終わりだ。

「はい。お疲れ様です」

「お疲れさま」

ADが、お茶を差し出してくる。
お茶を受け取る。

でも、本当に馬鹿な視聴者を相手にしてると、疲れるわ。

「あ。あれ? また太ったんじゃないですか?」

ADが言う。

「そうよ。また太ったのよ。ストレスからかな? 二百キロの大台を超えたわ」

あれ?
今、収録した通販の商品は、誰でも痩せられる魔法のサプリだったわね。
し、しまった。二百キロの大台を超えた私は何なんだ?

さすがの盲目な視聴者でも……。

くわっ。

魔法のサプリ、了。

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【 勇者は死にました、レベル八、国家プロジェクト 】

「私は魔王。さて、ビチよ。復活の呪文を入力して下さい」

…――魔王よ。まず、聞きたい。

お前は俺をおちょくって、一体、何がしたいんだ?

俺は、すでに三回、死んでいて、その内、二回はお前の命令で殺されているんだ。
ちゃんと納得できる理由を説明してもらわない事には先に進めない。
いや、もう復活する気は、一切ない。

たとえ、納得できる理由を説明されたとしても。

それでも、納得できる理由を説明してもらわない事には成仏すらできない。
俺は毅然とした態度で、魔王に答える。
明朗な説明を要求する。
デモだ。デモ。

「魔王。お前は、一体、何がしたいんだ?」

「何がしたいか……。それを私に聞きますか? 本当に?」

本当に? じゃねえ。
もしここに真剣があり、目の前に魔王がいたら、真っ二つに叩き斬るところだぜ。
いや、拳銃でもいいが、とにかく、この猛烈な殺意をどうにかしたい。

「ねえ。ねえ。本当に?」

うるせえ。
説明する気なしって事でいいか?
とりあえず、魔王が事情を説明しない事には成仏もしないから。

そのつもりでいろ。

「説明しないんだったら、成仏もしないからな」

「って事は、復活してくれるって事?」

てめえ。ぶっ殺すぞ。
いや、魔王は、自分と一緒に魔王を倒す旅に出て欲しいと言ってたな。
つまり、ぶっ殺すのは、魔王の本意かもしれない。

ダメだ。

じゃあ、どうすればいいか。
やっぱり、今の魔王に一番、効くのは、復活しないって事か。
でもなあ。

復活しないのは決定事項だし逆に説明されたら復活しなくてはならない事になる。

だから復活を餌に事情の説明を求めるのは愚策だ。
しかし他の条件では、説明を引き出す事は、かなり難しいと思う。
大体、魔王、アホだし。

うーん。他の条件が思い浮かばない。

「分かりました。秘密だったんですが、お話しましょう」


話すってか。
どういう心境の変化だ。魔王?

「ビチ。私が、あなたに惚れている事は話しましたよね。アレは本当です」

惚れている……、忘れてたけど、確かに言ってた。
でも、それが本当だと?
あり得ん。

「そして、私は他殺願望者なんです」

他殺願望者?
他殺願望者とは、すなわち他人に殺されたいという願望を持つ者だ。
魔王が、それでいいの? 何それ。聞いた事ないよ。

一応、魔界の支配者で、トップでしょ?

「ゆえに……」

ゆえに?

「惚れた相手の手によって殺されたいのです。分かりますか?」

何となく、分からないでもないな。
ていうか、モブである、おいらのどこに惚れたわけさ。
会った事もないのに。
うきょ?

「分からないでもない。何となくな」

「良かった」

「でも、会った事もないモブの俺のどこに惚れたんだよ。ウソ臭えぞ?」

「モブだからこそです。そこから勇者に育て上げるんです」

ちょ、おまっ。
モブである俺を強制的に育て上げて、自分を殺させると、そう言いたいわけか?
それは酷ってもんだぜ。モブ王を目指す俺にとってさ。

「ワクワクしませんか?」

しない。
まったく、しない。
俺は、始まりの街の入り口で、ようこそと言ってるのが、似合ってるんだよ。

その俺を勇者にしようなんて、何て国家プロジェクトだ?

国家を上げて努力をしないと無理だぞ。それは。
もし、そんな事が簡単に出来るんだったら、誰でも勇者って事だぜ?
それだけ、ありふれたモブなんだよ。
俺は。

「だから私はモブの中で、格好いい人を選びました」

格好いい?
モブに格好いいも、格好悪いもないだろう。
基本、同じ顔をして、同じ言葉を繰り返すのが、モブの仕事だ。

確かに何パターンかはあるけど……。

って、何の話だ。
今は、そんな事より、その無謀とも思えるプロジェクトを本当にやる気なのか。
モブを育て上げ、勇者にジョブチェンジさせ、魔王を討つ企画をさ。

マジで?

「モブを勇者に育て上げるって、本気か?」

「本気です。だからこその復活の呪文なんです。それも説明しますね」

「手短に頼む」

というか、魔王が饒舌になってるな。
あれだけ秘密だとか、今は言えないと言っていたのに、何でだ?
何か裏があるのか?

「復活の呪文は、ハイリスク、ハイリターンなんです」

今は、魔王の説明を聞こう。

「つまり記憶媒体からのロードではなく、復活の呪文を使う事でチートるのです」

チートる?
聞いた事のない言葉だけど前後の文言から俺の力をチートするって事なんだろう。
つまり、俺のステータスをあり得ない状態にするって事だ。

だからか。
二回目、三回目の人生で、パラメータがあり得ない状況になってたって事か。
ま、二回目の人生では、最弱ともとれるパラメータだったんだけど。

で、魔王が気に入らない能力だったら殺す。

そして、再び、チートコードを入力させるというわけだな。
確かに合理的で、とても賢い作戦だな。
俺に人権はないが。

モブに人権などないか。悲しいが。

と、確かに、それだったらモブが勇者になれるかもな。

ふおぉっ。
何だか納得したら胸のもやもやがスッキリして、成仏しようって気になったぞ。
魔王よ。説明、サンクスな。俺は安らかに死ぬよ。

さらば!

今、俺に体はない。
ないが、多分、とても穏やかで、平和な笑顔だったと思う。
目を細め、にこやかに魔王を見つめた。

ここにはいない魔王を。

…――そんな気分でいさせてくれと、万物に願った。

~ レベル八、国家プロジェクト、了。

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【 愛羅武、魔王、~ 其の二十六、裏技的なアレ 】

レータイン(露出狂)とフラット(どM)を仲間にした私は考えていた。

…――そう。
魔王の下へ、一瞬で行ける方法を。

いつまでも、タンクソウル2の世界に長居をするつもりはないからだ。

私は受験生。
いつまでも、こんなゲームで、ファンタジーな世界にいるわけにはいかない。
私の夢は看護士であり、断じて世界を救う事ではない。
さっさと帰って勉強をしなくちゃだよ。

私は焦っている。

魔王の酔狂に付き合わされ、こんな世界に放り込まれた自分を憂いて。
ここにいれば、いるほど、どんどんと勉強が遅れていく。
このままでは夢は夢のままで終わってしまう。
いや、私は、絶対に看護士になる。
何とかしなくちゃ。

「ねえ。……レータイン?」

「なんでしょう」

私は上目遣いで、探りを入れるようにレータインに話しかける。
レータインはきょとんとした顔で、私を見つめ返す。
私は微笑む。

「なんか、こう、ドーンとレベルが上がる方法はないのかな? 裏技的なアレよ」

「……う、裏技ですか?」

彼は黙ってしまった。
レータインは露出狂であるが、曲がりなりにも勇者だ。
強制的にレベルを上げる裏技なんて、卑怯だとか思っているのだろうか。

レータイン。

あんたね。超弱いんだから、我が侭、言わないの。分かってる?

と言いたかったが、我慢する事にした。
今は、レータインの思考を邪魔せず、裏技を思いついて欲しかったからだ。
頼むよ。ボケコン。

「お嬢様?」

コホンと咳払いをして、フラットが口をはさむ。
その咳払いは、とても怪しかった。
外道が。なんか用?

おカネだったらないわよ。

オッケ?

「フラット。今、レータインと大切な話をしてるんだから邪魔しないで」

「いえ。レベルを上げる件ですが、一つだけ方法があります」

「!」

私は、飛び上がって喜びそうになった。
いや、待て。外道の事だ。

……カネか?

フラットの外道は守銭奴で、何かと言えば、すぐカネだ。
それは、たとえ仲間になった人間だとしても、容赦なくカネを請求する。
今だ、初めの借金を請求されているし。

やっぱり、カネか?

「情報料は、一億ゴールドでいかがでしょう?」

カネか!
もしかして、仲間になったのも、いい金づるが出来たとでも思ったのか。外道。
と、その前に。何、その恰好?

前はバーテンダーのような恰好をしていたのに……。

フラットが、どんな恰好をしていたのか。

それは執事。
白いシャツに黒いベストを合わせ、黒いネクタイをしている。
もちろんベストと合わせた黒いスラックス。

ま、この恰好でも、バーテンダーだとも言えるけど、執事の方がピッタリだ。

「お嬢様。何か?」

「フラット、何で、そんな恰好しているのよ?」

「これが、わたくしの普段着でございます。なにか問題でも?」

普段着?
お嬢様という呼称が、ずっと不思議だったけど、だから、お嬢様だったのか。
つまり、外道はバーテンダーではなく、執事だったというわけか。
レータインが勇者みたいなものかな。

「さて、話を戻しますが、わたくしの情報、買われますか?」

一億でしょ。
もう、借金、三億も四億も差して変わらないけど……、ハメられてないか?
私の綺麗な身体を売っても、一回の人生では足らないわよ?
多分、百回位、人生をやり直さないと。

って、売るかッ!

ハァ、ハァ、何をとち狂った事を考えてるんだ、私。
これは、まさに外道のペースであって、決して私のペースじゃないぞ。
しっかりしろ。鮎菜。

鉄拳制裁で、フラットの記憶を消去して、何としても純潔を守るのよ。鮎菜。

無言で、拳を握った。
おほほほ。フラットさん。死にさらせや。ボケッ!
と……。

同時に、……いや、私の鉄拳がとぶ寸前に、レータインが口を開いた。

「姫様」

何よ。
今、フラットを記憶喪失にしようと思ってたのに。
それより、大事な事?

「レベルを上げる方法。この勇者レータインに一つだけ、心当たりがあります」

「チッ」

フラットが、舌打ちをする。
せっかくの稼げるチャンスを、一つ失ったと悪態をついたのだ。
外道執事が。

でも、レータイン、よくやった。でかした。

「本当に! どんな方法なのよ。その裏技的なアレは?」

「いえ。決して裏技ではないのですが……」

レータインは言い淀んだ。
そして、そこで、フラットがするりと口をはさんできた。
せっかく浮かんだ案を否定するように。

「ぐふふ。どうせアレでしょう。アレは、ほぼ無理ですよ。それよりですね」

それよりじゃねえ。
外道が。

カネだったらねえぞ。他を当たれや。外道。

「フラット、黙ってて。レータインの話が聞きたいのよ」

「ま、いいでしょう。彼の案は、ほぼ無理でしょうからね。ぐふふ」

フラットは不敵に笑った。
フラットが言う、ほぼ無理な案とは一体、何なのだろうか。
私は無言でレータインを見つめ、うなずいた。

さあ。

教えてよと。

レータインも、うなずき返した。
ただし、レータインの股間で怒張したフランスパンがだが。

真面目にやれやッ!

死ねッ!

~ 其の二十六、裏技的なアレ、了。

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【 うぜぇw 】

痛すぎる芸人。人見知りで、恥ずかしがり屋。「あ、あの……その、あの……」

うぜぇw、了。

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【 亀淵春樹 】

スピード狂の亀が一言。「……おれらぁ“走り屋”だ」

亀淵春樹、了。

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【 勇者は死にました、レベル七、人類最強の天才 】

「うん?」

「どうしたの。ビチ」

「どこかから、お経が聞こえてくるような気がするんだが……?」

「そう? 私には聞こえないけど」

魔王と一緒に魔王を倒す為の旅に出るという何ともカオスなハメになった俺。
そんなカオス過ぎる旅に一抹の不安を覚えた。
だからお経が聞こえるのか。

…――いや、お経は幻聴の類ではない。

ハッキリと聞こえる。

リアルで、お経が聞こえるなんて、なんて、不吉なんだ。
やっぱり止めよ。魔王を倒す旅なんて。
ね。魔王さん。

「俺、モブだし、勇者なんかじゃないから、魔王を倒す旅は止めようよ」

「無理。君は勇者なんです。はりきって行こう!」

無理か。
拒否したら、魔王軍の魔物どもが、よってたかって殺しにくるし。
どうあっても魔王を倒す為の旅に出ないとダメなの?
大体、今、話してる君が魔王なんだよ。
本当に何がしたいの?

「死にたい?」

魔王は、うららかな笑顔を浮かべて、怖い事を言った。
その目は真剣で、余計に怖かった。
もう。何で俺なの?

何で、ようこそと繰り返す事だけが仕事だったモブでしかない俺なのさ?

「死にたい?」

魔王が繰り返す。
俺は、真っ赤な血の涙を流しつつ、彼女に答える。

「はい。魔王を倒す旅、頑張ります……」と。

「よろしい。じゃ、とりあえず、レベルを確認してみて下さい」

あのさ。
俺、ずっと疑問に思ってたんだけど。
口調が、やたら丁寧だったり、妙にフランクだったりしてバラバラなんだけどさ。
このお話の作者のレベルが低いせいじゃないよね。どうよ?

「魔王。お前、やたら丁寧だったり、妙にフランクだったりするけど……」

「ああ。多重人格だって言ったでしょ。その関係ですね」

「多重人格……」

凄ぇ、便利な言葉だな。おい。
お前だ。お前に言ってるんだよ。モニターの前でキーボードを叩いてるお前だよ。
コカコーラゼロを愛飲し、マルボロを吸っているお前だよ。

……へんじががない。ただのしかばねのようだ。

誤魔化したな。
モブでしかない俺を主人公にお話を書くようなヤツだ。
きっと、真性のアホだろうな。

「そんな事より、ビチ、旅に出る前に、ステータスを確認しておいてね」

アホな事を考えていた俺に、魔王が言う。
ステータスか。

前にレベル、たい焼きくんなんて、アホなステータスだったからな。

一応、今後の為にも確認しておいた方が無難だろうな。
やり方は前に魔王から教えられている。
頭の中で、思い描く。
それだけだ。

額の辺りに意識を集中させ、レベルは、どうなのよとか考えた。

すると例によって、棒グラフで視覚化されたパラメータが、頭の中に現われた。
前にみたいに棒グラフじゃなく、変な言葉が書いてありませんように。
棒グラフと数値でありますように。
と切に願った。

……レベル、99。

おわっ。
何だ、この信じがたい数値は。
俺は、街の入り口で同じ言葉を繰り返してたモブだぞッ!
レベル、99は、俺の住む世界で、この上ないほどの最高レベルなのだ!

別名、レベル、★。

信じられない事にモブでしかなかった俺が人類最強の生物となってしまったのだ。
いいのか本当に。復活の呪文を入力しただけの俺が……。
魔王が、ほくそ笑む。

零れるような愛らしい顔で。

「これを待っていたのよ。もふっ」と。

こ、これは……。
本当に俺みたいなモブが、人類最強の生物になってもいいのか。
ちくしょう。モブでも、嬉しいぜ。じゃ、力は?

力、172兆1217億3482。

ジョンッ!
何だよ。このチートぶり。
力は、ほぼ日本の国家予算レベルの数値だぜ。あり得ん。マジかよ!
だったら、知力は、一体、どうなっているんだ?
イェーイ! 文武両道を目指すぜ!

知力、310兆1659億1254。

マイケルッ!
何? 何? 俺って天才って事?
ちなみに、この数値は、世界で一位のアメリカの国家予算レベルだぜ。イェーイ!

マジ、……何これ?

うほほっ。

人類最強の生物で、世界一の天才。笑いが止まらんぜよ。

最後は体力だ。
これは、もう期待するしかないしょ。
あれ? また、どこからともなく、お経が聞こえてくるけど……。

チーン。勇者は死にました。

ベンハーッ!
何だよ。いきなり勇者は死にましたって……。
体力は、どうなったんだ?

「ビチ」

……何だよ? 魔王。

「体力は0だったのよ。すなわち死んでるって事よ」

マジかッ!
いよいよもって、涙が止まらない。
真っ赤な涙が、俺の目からとどめなく溢れるぜ。
そうか、だから、どこともなく、お経が聞こえてきたってわけだ。

彷徨える俺という魂を浄化する為に……。

お経が聞こえてきた時点で、俺の命は尽きていたと、そういうわけだな。

猛烈に血の涙が、止まらねえ。
ねえ。そんな下らないオチで、真面目に、いいのかよ?
そう考えている俺を横目に魔王は、また例によって例の言葉を言い始めやがった。
あの文言を……。

「私は魔王。さて、ビチよ。復活の呪文を入力して下さい」と。

~ レベル七、人類最強の天才、了。

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【 勇者は死にました、レベル六、君は魔王 】

俺は転生し、三度目の人生を始める事となった。

始まりの街コカーラで、ようこそと言っていたモブでしかない俺がだ。
しかし、あれだ。俺は本当に勇者なのだろうか。
魔王達は、そう睨んでいるが。

俺自身、自分が勇者だという実感はない。

しかし、毎度、毎度、魔王の命令を受けた魔物どもは、律儀に俺を殺しにくる。
俺が将来を勇者として、育つと、断定してだ。
何を基準にしているのだろう。

「ビチ?」

うん?
何だか可愛い声が、聞こえてくるぞ。
誰だ。聞いているだけで、心がほっこりしてくるような優しい声。

「約束どおり、目の前に現われたわよ。もふっ」

このもふっは……。

「私は魔王です。やっと会えましたね」

おほっ。
君は美少女魔王ではないですか!
一時は、超兄貴的存在ではないかと疑ったが、遂に目の前に現われたか。

魔王を凝視する。

髪は栗色で、肩までで切りそろえたボブカットの可愛い女の子。
魔王は、俺の知り合いだと思っていたけど……。
こんなに可愛い子、知らない。

大きな藍色の瞳が、クリクリと動いて、絶対的美少女だ。

ちょっと待て。
俺の動悸は鳴り止まらぬ早鐘のように高鳴っている。
だって、モブだし、魔王は俺に惚れていると言っていたから余計に意識するんだ。

……て、何を話せばいいんだ。

年は、十五くらいか。
今どきの十五歳くらいの年の女の子は、一体、何に興味があるんだ?
やっぱり、ゲームとかアイドルとかなのかな。

不覚にも固まってしまって、何も言葉が出せなかった。

それだけ魔王が可愛かったのだ。

童貞野郎?
ああ。そうさ。俺は筋金入りの童貞モブさ。
何せ、始まりの街の入り口でようこそとだけ言っていたモブの中のモブだからな。
そう思っていたら、魔王が飛んでもない事を言い始めやがった。

「ビチ。じゃ。死んでちょ」

ダットサン!
空しさが止まらないぜ。こんなに可愛い子が目の前にいるのに……。
なにゆえ、俺は、三度目の死を迎えるのか!

「さあ。みんな、勇者が育つ前に殺すのよ! やっておしまい」

やっておしまいじゃない。
魔王、お前は、俺に惚れているんじゃなかったのか。
いくら、おぬしが、美少女だからって、これ以上の横暴は許しませんです事よッ!

「ビチ?」

何さ。
お前に、俺の空しさが分かるのか。
この止まらない血の涙の理由(わけ)が、分かるというのか?

「死なない方法が一つだけあるんだけど。聞く?」

聞かないの選択肢はないのな。
聞かなければ、すなわち三回目の死を迎えると、そういうわけだな。
何だよ?

「これから私と一緒に旅に出て、魔王を倒しにいくのよ」

魔王、君!
魔王は君だから。自覚して。
なにゆえに魔王と一緒に魔王を倒す旅に出るわけ?

意味が分からない。

カオスすぎて、頭がイかれるちまうぜ。

でも、拒否したら、また魔王の配下どもに殺されるわけだろ。
何で、こんな色々、ギリギリな立場なわけ?
俺、モブよ。モブ。

「ビチは勇者なのよ。自覚して」

魔王、自覚と君が言うか。
お前こそ、自分は魔王だと自覚して頂きたい。
いや、それより聞き捨てならないのは、俺が勇者だと言い張った事だ。

誰が、勇者なんだ。

俺はモブだ。

誰が何と言おうとモブ以外の何者でもない。
間違っても勇者などではない。
オッケ?

「私には分かるの」

分からん。
もし仮に俺が勇者だとしても、魔王を倒す旅になんて出ない。
もちろん魔王を仲間にして、魔王を倒すなんて、カオスな事、やるきはない。

「ビチは、ここから成長して、最終的には魔王を倒す勇者だってね」

だから君が魔王なの。
真っ赤で、健康的な可愛らしい唇を尖らせて、俺に何を言おうが無駄だ。
俺は、勇者じゃないし、モブ王を目指してるんだよ。

「じゃ、一緒に魔王を倒しにいこう!」

だから勝手に決めるな。
俺は勇者なんかじゃないし、旅に出る気もない。
でも、ここで拒否したら、また魔王の配下どもが群がって、殺されるんだろうな。

「そうよ。ビチ、死にたい?」

魔王が俺の思考を読んで、ぼそりと小さくつぶやいた。
鉄仮面のような張り付いた笑顔で。
俺は、凍り付いた。

~ レベル六、君は魔王、了。

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【 メルレポート、~ レポート五、祝! アニメ化 】

「ゆくぞ」

ブタの右手に握られた魔神器が、まばゆい光を放つ。
まぶしくて、目を開けていられない。
凄まじい光だ。

どうやら、ブタのヤツ、惜しみもなく魔神器の力を解放したようだな。

「くっ。何だ、この光は……」

光で目が眩んだ、勇者が声を漏らす。
女僧侶も老齢な魔法使いも、光に、たじろぎ、固まっている。
戦士だけ、あの大きな中華包丁で、光を遮断し、攻撃するチャンスを窺っている。

「ブヒ。間抜けども。細切れにしてくるわ」

魔神器の光が集束し、大きな鎌へと形を変えていく。
あれが、魔神器の力なのか。
俺様は目をこらす。

「勇者など敵ではないわ。ブヒヒッ!」

って、ブヒ、ブヒ、うるせえな。
お前は自分で自分が、紛う事なきブタだと認めるのかよ?
ブタピック、お前、いかにもな中ボスぶりだな。

「ブヒヒッ!」

……もう、何にも言う事はねえ。

「くっ。ひるむな、みんな。僕達は光の加護を受けている。ゆくぞ!」

やっと終息した光に、勇者が剣を構え、鼓舞するように叫ぶ。
光の加護って、何、その厨二。
さすが勇者。

ま、勇者は放っておき、今は魔神器に注視しよう。

「ブヒ、ブヒ、ブヒ」

「みんな、作戦は、ガンガン行こうぜでよろしくッ!」

ブタピックの会心の一撃が、勇者達を豪快な風と共になぎ払う。

「くっ。ひるむな。ガンガン行こうぜッ!」

ブタは、ブヒ、ブヒ、言うし、勇者はガンガン行こうぜばっかりだな。
ま、俺様達の作戦は両者を疲弊させる事だからいいけど。
せいぜい頑張って下さいな。

ところで……。

魔神器。
多分、あれは武具に変身し、所有者の力を高めてくれる効果もあるのだろう。
そう考えなければ、ブタが、あんなにパワフルに動けるわけない。

元いじめられっ子だよ?

確かに中学生の時、いじめられていたヤツが高校で化ける事があるけどよ。
高校に入って、地元でも凶暴な暴走族に入ったりして……。
いわゆる高校デビューというヤツだな。
でもブタは、あの姿形だぜ。

どこから、どう見ても、肥え太ったブタだ。

あんなヤツが、凶暴化する訳がない。
むしろ年をとって、更年期障害で弱くなるタイプだな。ヤツは。
やっぱり魔神器か。

「ブヒ!」

ブタの手に握られている鎌が、勇者の頭をかする。

「くっ。何だ。この強さはッ!」

やっぱり、強いんだ。
さっきから勇者は苦戦につぐ、苦戦で、相当、力を消耗している。
ブタよ。役に立ったな。お前みたいなヤツでもよ。

「勇者よ」

老齢な魔法使いが言う。

「そうね。今の私達には、まだコイツには勝てそうもないかもね」

インテリ女僧侶が、魔法使いに続く。

「そうじゃ。残念じゃが、ここは逃げるに限るぞい」

戦士が、二人を睨む。
どうやら知的な二人は退却を望んでいるらしい。
しかし、戦士が、それに反抗する。

「ちょっと待て。俺の必殺技が、アイツを叩き斬る。もう少し時間をくれッ!」

「ダメじゃ。その少しの時間が命取りになるぞい」

老齢な魔法使いが制する。
魔法使いの判断は、きっと正しいんだろう。
状況判断に長けていると思われる、インテリ女僧侶も魔法使いの意見に賛成する。

「勇者、作戦を!」

「よし。作戦変更だッ!」

勇者は苦渋の決断だと、パーティの面々の顔を眺め、告げる。

「みんな、ガンガン行こうぜで、よろしくッ!」

あほ。
今までの流れで、それを言うか。
いや、あの脳筋勇者の頭の中には、それしかないんだろうなと思った。

「馬鹿。逃げるのよ」

インテリ女僧侶が、勇者をこづきつつ言った。

ま、妥当だわな。
今のブタピックには、お前らでは勝てん。
もちろん、元魔王であり、元魔界の支配者だった俺様でも勝てんが……。

ところで、メルさん。

ずっと静かなんだけど、どったの?

「魔王。私がしゃべる必要があるわけ?」

いや、別に必要があるとか、ないとかの話じゃなくてさ……。
一人で、ヤツらの戦いを解説してると寂しいわけよ。
出来れば、メルさんも。
ね?

「いや、あの……」

「うるさいな。今、大事なテレビを見てるのよ」

確かに彼女は、魔界のスマホ、スマッポでワンセグを見てるぞ……。

テレビ。
今、ブタピックと勇者達の戦いが、佳境をむかえているのさ。
そんな態度でいいわけ? メルさん。

「テレビって……」

「うっさいな。今、メルレポートって言うアニメを見てるのよ。邪魔しないで」

このお話やないけッ。
何、俺様達の活躍がアニメ化されてるわけ?
マジかよ。カメラはどこだ。どこから、このお話を撮ってるわけ?

「うーん。私は、この美少女メルが推しなのよね。可愛い」

自己満足ッ!
それ、思いっきり自己満足だからッ!
そう言おうと思ったらブタが、耳をつんざくような大声で叫んだ。

「ブヒッ! 死ねッ! 魔斬烈火(まざんれっか)」

鎌(魔神器)が、周りの空気を切り裂く。
どうやら、あらぬ方向に脱線している間に勇者との戦いに決着がついたらしい。
ブタの技で巻き上げられた砂塵がはれた後、勇者の姿は、なかった。
逃げたな。

そうしてヤツらの戦いが終わった後、俺様はブタを睨んだ。

次は、俺様が相手だと……。

~ レポート五、祝! アニメ化、了。

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【 チョコ、それは毒入り 】

「今年も、もうバレンタインディーか」

「うん」

今、彼氏のいない女友達と話をしている。
もちろん、俺には彼女がいる。
いわゆるリア充。

「俺は彼女からチョコをもらうけどな。お前は誰かにあげるのか?」

「その前に聞きたいけど、チョコって毒々しいよね」

「毒々しい?」

「うん。真っ黒でさ。毒々しい。本当に毒が交ざってても分からないよね」

「お前、毒でも入れるつもりか?」

「うふふ」

「あげるヤツがいないからって、それは負け惜しみだろ?」

「……ッ。リア充は死ね。死んでしまえ」

冗談だろうか。
半分、本気で、半分、冗談だろう。
いや、それにしては彼女の目は真剣そのものだった。

「私、あんた大嫌い。気が遣えないヤツは死んでしまえ。リア充は死ね」

彼女の目は真剣そのものだ。
どうやら彼女の逆鱗に触れてしまったらしい。
怖い。

「くくくっ。はい。チョコあげる」

チョコって、お前……。

くわっ。

チョコ、それは毒入り、了。

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【 愛羅武、魔王、~ 其の二十五、どMと露出狂 】

今、おっぱい村にいる。

おっぱい村とは、家々に貧乳の看板が掲げてある、何とも怪奇な村。
巨乳ではなく、貧乳というところが怪奇過ぎる。
私は自分の胸を確認する。

貧乳だぁ……。

おっぱい村に掲げてある看板に書いてあるバストより、貧乳。
大体、この村の住人は、どれだけ奇特なんだ。
何ゆえ巨乳じゃなくて、貧乳?
よりにもよってさ。

「時間いっぱいです。これにて、バス権を終了します」

わあと、村の中央で歓声があがる。
一人の男が、満足げに観客に手を振って、自分が優勝した事を触れ回っている。
今、この村では、噂のバス権が開かれていたのだ。

バス権。

バスト目測選手権の略。
他人より早く、美乳を見つけ、即座に目測する。
美乳を目測した時点で、目測をした人物にポイントが加算される。

公式大会のバス権二位のフリチンが私を見つけた途端、バストを目測したように。

って?
そういえば、不思議に思ったんだけど。
一位の魔王は私のバストを目測していなかったわね。
三位のルンルンも……。

あの二人は、ペチャパイ同盟の同志だとは言っていたけど、目測されてないぞ。

今、勝ち名乗りをあげているフラットやフリチンには目測されたのに。
私のバストって、一応、彼らの価値観では美乳なのよね。
何でだろ?

「姫様、どうかしました?」

レータインが、その勇者な恰好で、微笑む。
もちろん、股間のイチモツは、フランスパンで怒張していた。
パンツくらいはけつうの。
乙女の前だよ?

「レータイン。魔王はバス権、一位なのよね?」

「僕はバス権の事は、あまりよく知りませんが、確か、そう言っていましたね」

「私、魔王やルンルンに目測された覚えがないのよ。不思議じゃない?」

「確かに不思議ですね……」

レータインが、腕を組んで、考える。
私も、何でだろうと、魔界の真っ赤な雲を見上げ、考えた。
何でだろう?

「お嬢様。可愛い顔をしかめ、何をお考えで?」

うおっ。
私が、思案にふけていたら、フラットの馬鹿が話しかけてきやがった。
お前は、バス権の優勝パレードでもしてなよ。寄るなッ!
咄嗟に胸を腕で覆い隠した。

「あははは。お嬢様、大丈夫ですよ」

と爽やかな笑顔で答えた。
レータインが、いぶかしげな顔で、フラットを牽制した。
私は、その爽やかな笑顔にイラッとした。

「何が、大丈夫なのよ?」

「もう目測はしませんよ。だから胸を隠さなくても大丈夫だと言ったのです」

「本当に?」

靴屋のフラットは、また春風のような笑顔で続ける。

「目測は、もう済んでいます。一度、目測したバストは脳に焼き付きますからね」

ぐっは。
脳に焼き付けるなッ!
お前の遺言は、それでいいのか? いいの?

「ぐふふ。それにお嬢様ほどの美乳であれば、一生、忘れられませんね」

忘れろ。今すぐ。
お前の記憶から消去しろ。死にたいの?
思わず、着ていた洋服が弾け飛んで、七つの傷を露出するところだった。

「姫様。すなわち、お前はすでに死んでいるの領域ですね」

思考を察したレータインが言った。
そうよ。そう。その通り。
ケンシロウ。

「それにしても、今日、優勝できたのはお嬢様のおかげです。礼を言わなくては」

うっさい。
どうせ、その貧乳に乾杯ッ! とか言うんでしょ?
それ以上、しゃべくったら、あの真っ赤な雲まで吹っ飛ばすぞ。

「その貧乳に乾杯ッ!」

言いやがった……。一語一句、違わず、そのまま。
無言で、靴屋のフラットを殴った。
地面にめり込む。

「ぐふふ。お嬢様、いいですね。いいですよ。それ最高です」

何?
狂ったか。フラットの馬鹿。
彼は、頭から血を吹き出しつつ、どこか快楽に酔っていた。

「私、実は、どMなんですよ。お嬢様のその凶暴さと美乳に惚れました」

「もっかい殴るぞ」

「どうぞ。どうぞ。痛くして下さいよ」

Mかッ!
魔王やルンルンもその気がありそうだけど、ここまでハッキリ言われると引くわ。
思わず、レータインと目が合い、二人してうなずく。
レータイン、殺っておしまい!

ついでに借金も誤魔化してしまえ! GO!

「どMの変態野郎が。勇者である、この僕が滅してくれるわッ!」

いや。
吹っかけといてなんだけど……。
レータイン、あんた、股間がフランスパンの露出狂だからね。

どMも、露出狂も、大して変わらないッス。

…――と、これが靴屋で金貸しのフラットとの思い出したくもない出会いだった。
そして、この後、フラットと一緒に旅を続ける事となった。
どMと露出狂を仲間にして。

何なのよッ!

どこかにまともで格好いい男はいないのッ!

私の心は、悲痛に叫び続けた。

~ 其の二十五、どMと露出狂、了。

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【 勇者は死にました、レベル五、死守する所存 】

甦った俺は再び、死んだ。

いや、殺されたと言った方が妥当なのかもしれない。
体力、死なない程度の瀕死のモブに、無数の魔物どもが群がったのだから。
魔王の命令で。

大声で叫びたい。魔王、君は何がしたいんだと。

で、死んだ後、また、ここに来た。
こことは、今だ充分に理解してきれていないが、多分、死後の世界だと思う。
何もない世界。

俺自身も意識体で、体というものを持っていない。

「さて、復活の呪文を入力して下さい」

ふぉおっ。
と鼻から大きな音を立てて、鼻息が漏れる。
ちょうど月面に着陸する時のアポロ宇宙船の逆噴射のように。

「ビチ。復活の呪文を……」

魔王か。
また魔王が、あの忌まわしき言葉を繰り返し始めたのか。
だから人間、一回死ねば、それで充分なんだよ。
俺は一回どころか、二回死んだっての。

誰のせいだろうね。

魔王さん?

「魔王、次はないと約束しただろ」

「クスン。ダメなの?」

「今度は泣いたってダメだぞ。俺は、このまま安らかに死ぬんだ。邪魔するな」

大体、何がしたいんだ。
二回目の死も、魔王の命令で、モブである俺が標的にされ、殺された。
惚れているとか言っていたけど、何で殺す必要がある?
本当に惚れているのか……、疑わしいぞ。

とてつもなく、疑わしい。

「クスン。ごめんなさい。私、本当にビチに惚れてるんです」


ちょっと待て。
今、とんでもなく怖い妄想が俺の頭の中を駆け巡ったぞ。
魔王は、自分の事を女だと言っていた。

でも、あるいは……。そう、まったく無い可能性ではない。
実際の魔王を見た事はないのだから。
俺は、何を思ったのか。
それは……。

魔王が、女の子の声色を作る事のできる厳ついオッさんかもしれないという事。

しかも、怖いのは、ここからだ。
その厳ついオッさんは、実の所、ホモで、俺のケツを狙っているとしたら。
うおお。ちょっと考えただけで、さぶいぼが猛烈に止まらねえ。
そう考えると、その声色すら、きしょく思える。

「どうしたの? ビチ」

気安く呼ぶな。
俺は、俺のケツを死んでも死守する所存。
可愛い声色を使ったって無駄だぞ。似非美少女の超兄貴的存在が。

「何を考えているの? ビチ」

知った事か。
もし、お前が超兄貴的存在じゃないんだったら証拠を見せろ。
そうだな。次に俺が甦ったら目の前に現われろ。

「……魔王。俺が生き返ったら俺の目の前に現われる事ができるか?」

「えっ」

ほら、みろ。
言わんこっちゃない。出来ないだろ? 魔王は超兄貴的存在決定。
俺は、俺のケツをがっちりと死守するぜ。

「いいの。本当にいいの」

「?」

いいのって……。
何がいいのなんだ。お前は、俺のケツを狙う魔物じゃないのか?
ちょっと話が見えて、こないんですけど。

「次はないと言ってだけど、また復活してくれるの。魔王(わたし)、嬉しい」

そっちか!
し、しまった。確かに次はないと約束していたはずだった。
超兄貴的存在の事ばかり考えて忘れてたぜ。

男に二言は、格好悪いな。
二回も、三回も、あまり変わらないしな。
それに……、魔王が超兄貴的存在じゃないなら、どれだけの美少女かも気になる。
よかろう。

「コホン。……俺の目の前に現われる事を交換条件に復活の呪文を入力しよう」

「分かった。甦ったら、すぐに駆けつけるよ。それでいいでしょ?」

それにしても、魔王は超兄貴的存在ではないのか。
甦ったら、すぐに駆けつけるとは。
それは、それでいいが。
釈然としない。

「じゃ、改めて。ビチよ。復活の呪文を入力して下さい」

俺は魔王に促されるまま、頭の中にランダムで文字列を完成させ、思い浮かべた。
今度こそ、まともなモブになれるよう、心の中で祈りつつ。
そして、死なないようにと願いつつ。

また目の前がフラッシュして、真っ白になった。

~ レベル五、死守する所存、了。

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【 勇者は死にました、レベル四、線路は続くよ 】

俺は、転生したのか。

自分の手をまじまじと確認した後、ゆっくりと周りを見渡す。
あの怪しい魔王が言う通り、頭の中に意味のない文字列を適当に思い浮かべた。
すると、目の前がフラッシュし……。

真っ白なトンネルらしき所を通って、ここに来た。

ここは始まりの街コカーラ。
うん。俺の記憶にあるコカーラと寸分違わないコカーラの街だ。
例によって、街の入り口で、俺は訪問者に対して、ようこそと言っているモブ。

「無事に復活したね。よかった。よかった」

頭に直接、言葉が届く。
コイツは、先ほどまで、しつこく、復活の呪文をと言っていた魔王だ。
で魔王、聞くが、俺は復活して何をやればいいんだ?

「魔王。俺は何をすればいい?」

「これから、魔王軍が始まりの街コカーラを襲撃するわ。勇者を殺す為に」

おほっ。
それはまさに、前の人生で俺が死んだ、その時じゃないか。
次はないと言っておいたよな。死なないよな?

「そこで、君は死ぬの」

おい。おい。
違うだろ。それじゃ、約束が違うッ!
くそ。もしかして俺は、このアホな魔王に騙されたのか?

「でも、今回は違うわ。レベルを確認してみて」

レベル?
モブである俺にレベルなんてあるのか?
大体、どうやってレベルを確認するんだよ。俺、モブだし。分からない。

「何、簡単な事じゃ」

魔王の声質が、ドスの利いたヤクザ魔王に変わった。
やっぱり、魔王は多重人格なのか?
ちょっと怖い。

「これも頭の中で、レベルを知りたいと思えば、確認出来るのだ。やってみろ」

やってみろって。魔王、簡単に言うけどさ。
俺はモブで、勇者なんかじゃないから、そんな事には慣れていない。
一応、やってみるけどさ。

レベルを知りたい。

と、教えられた通りに、そう思った。
すると、頭の中に直接、パラメーターのような視覚情報が流れ込んでくる。
なるほど。

本物の勇者は、こんな便利な機能を備えて生まれてくるわけか。

ま、俺は、間違っても勇者じゃないけどな。
とにかく、俺は、その便利な視覚情報化されたパラメーターを確認する。
まずはレベルだ。

レベル、たい焼きくん。

おい。
たい焼きくんって、さかなクンかよッ!
何だ。このパラメーターは。

レベルが、たい焼きくんと知って、怖かったが他の数値(?)も確認してみた。

力、箸以上の重たいものを持った事がないレベル。

体力、死なない程度の瀕死。

知力、ガリレオの家の隣に住んでいたニュートンの友達の知人レベル。

があッ!
何だ、このパラメーターは。馬鹿にしてるのか?
知力に至っては、それが、一体、どれ位なのか、まったく予想が立たんぞ。

ま、レベル、たい焼きくんの時点で、薄々は、気づいていたけどな。

それにしても、転生ものって言えば、すなわちチートだろ?
いや、チートでないにしても、前のモブ人生より、酷いモブになってしまったぞ。
モブにもモブなりにプライドがある。
どう責任を取る?

「魔王。何だよ。このふざけたパラメーターは。答えろッ!」

真っ赤な顔で、頭の中の魔王に詰め寄った。
今度は可愛らしい声で言う。
今は女の子だな。
よし。

「スキルを確認してみてよ。ちゃんとこの上ないから。ファティン!」

スキル?
そうだ。何も基本能力だけがパラメーターの全てではない。
期待してもいいのか。魔王よ?

「うふっ」

そのうふが怖い。
だってレベル、たい焼きくんだぜ。
疑うなっていう方が、どだい無理な話ってもんだぜ?

スキルだな。
スキル。

スキル、一切、なし。

色即是空ッ!
一切、なしって何だよ。俺は、生まれ育った母国語すら話せないレベルなのか。
魔王、ちょっと、ここに降臨しろ。ぶっ殺す。

「だから慌てるでない」

い、いくらドスの利いた悪魔のサイドの魔王が出てきても、こ、怖くないぞ。
それだけ衝撃的なパラメーターだったんだからな。
どう責任を取るつもりだ。

「だから、今すぐ魔王軍を派遣して、お前を殺すから、待っておれ」

だから。
もう二度目はないの。
俺を殺したら、それこそ復活なんてしないからな。

「いやん。勇者ちゃん、そんな事言っちゃダメよ。ダメ。ダメ」

魔王よ。可愛く、お茶目に、そんな事、言っても絶対に、誤魔化されないぞ。
何せ、レベル、たい焼きくんだからな。
泳ぐぜ。

「いやん。ビチのエッチ」

エッチじゃねえ。
別に何もしてねえし、むしろ、憤慨しております。
やい。やい。美少女魔王、このオトシマエは、どうつけてくれるんだ?

「お前が、魔王様の言う勇者か?」

おお。
モンスターが現われよった。
この光景は忘れもしない忌まわしの記憶。
そう。生前、俺が勇者と勘違いされ、殺された、その時だ。

「死んでもらうぞ!」

もちろん体力、死なない程度の瀕死の俺は為す術なくトレースするように死んだ。
そういえば、この話の題名は、すなわち勇者は死にましただったな。
そうか。もしかして……。

もしかしてだが、俺は死に続けるという話なのか?

何だよ。その話。
猛烈に抗議します。死にたくないッス。いや、復活したくない。
どうせ殺されるだからさ。もう止めて。

と俺は、心の底から願った。

しかし、それでも、このお話は続いていくのであった。
魔王の本当の思惑を闇に漂わせ。
魔王の思惑とは。

「吾輩の思惑だと? ふははは。それは未定だがな。すわ行き当たりばったりだ」

くわっ。

~ レベル四、線路は続くよ、了。

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【 勇者は死にました、レベル三、それ以上でもなく 】

「私が誰か?」

魔王が、大事な事を告げるように、一旦、拍を置く。
俺も俺なりに魔王が誰か考えた。
魔王の声を頼りに。

インポ軍の総大将、トゥパク・アルル。

彼女は、少女でありながらインポ軍をまとめる切れ長の優しげな目を持った少女。
いや、いや、間違っても、そんな有名人が俺に惚れる訳がない。
それに、こんな声じゃなかった。

大体、インポ軍なんて、コンドルに失礼だ。謝れ。俺。

次は……、ミヤ・S・ユキ。

ミヤちゃんと呼ばれる始まりの街コカーラのマスコット的存在。
彼女は酒場で働いていて、生前、俺も彼女目当てに酒場に、よく通ったものだ。
ミヤちゃんはSの一族で、Dとは関係ない。
あ、サディストでもない。
悪しからず。

と、ミヤちゃんの声も脳内で再生し、確認してみたが違う。

ちょっと都合のいい方向に考え過ぎかもしれない。
俺に惚れたと言っても、それだけで、魔王が美人と決定したわけではない。
ブスの確率もあるのだ。

俺は、俺の記憶にある汚物を検索してみた。

一千万パワーズのバファリーマン。

女でありながらモサモサのちぢれ毛に角を二本、生やしている兵(つわもの)。
いや、その時点で、彼女は、すでに女を捨てているのかもしれない。
それは分からないが、ともかく兵。

しかも、彼女は、一千万パワーズという、コンビ芸人だ。

やはり女を捨てているのか。
俺は、激しく、そう思えて、どうしようもない。
彼女が魔王……。

止めてくれ。マジ、勘弁して欲しい。

いくら女だからって、誰でもいいわけじゃないぞ。
俺にも選ぶ権利はあるはずだ。
吐き気がした。

魔王が誰か……、もう考えるのはよそう。

やっぱり俺は、彼女いない歴、年齢で、思い当たる女の子はいない。
本当に魔王は、一体、誰なんだ。
惚れているって。

「私は……」

誰だ?
女の子にモテた事がない俺の気は急いた。
早く。早く。誰なのさ?

「魔王。それ以上でもなく、それ以下でもなく。中間もなく」

だあぁ。
だから魔王なのは知ってるよ。
そうじゃなくて。魔王になる前は誰だったのって話。

「私は魔王」

ああ。そうかい。そうかい。よく分かったよ。分かった。もういいよ。
復活の呪文の件はなかった事で。
じゃ、な。

期待していた分、落胆も大きく、すねて魔王を突き放した。

「では、ビチ、復活の呪文を入力して下さい」

うるさい。
俺は、今、ご機嫌ナナメなの。
復活の呪文? アホらしい。今は、それどころじゃないね。

「ビチ?」

「何だよ。魔王。まだ何か用があるのか?」

素っ気なく、答える。
魔王、お前は本当に俺に惚れているのか。それとも、やっぱり、ウソだったのか。
ま、どちらにしろ、俺は、まったく復活する気がなくなったがな。
これは、俺の正直な気持ちだった。

「真面目にダメなの? どうしても復活してくれないの?」

「うるさい。黙れ」

遂に魔王が泣き出した。
いや、スンスンと泣き声が聞こえたから、泣き出したんだと思われる。
もしかして、女の子を泣かせてしまった俺は悪者?

だあぁ!

「分かったよ。分かった。だから泣くな」

「本当? 復活してくれるの?」

不本意だが、女の子を泣かせるのも俺の本意ではない。
仕方がないが、魔王の言う通り復活の呪文を入力し、復活する事としよう。
でも、すぐに殺されたら次はないぞ。
安らかに死ぬからな。

分かったか?

「分かったよ。お前の言う通り復活するよ。でも次はないからな?」

「次?」

「ああ。復活しても、すぐに殺されたら、もう復活はしない」

「うん。分かった。魔王(わたし)も頑張る」

何を頑張るんだか。
復活する事を決めた俺は、魔王に言われた通りに適当に文字を思い浮かべた。
すると、目の前がフラッシュして、その後、真っ白になった。
どうやら無事に復活の呪文が入力されようだ。

俺は現世へと移送された。

「おほほほ。嘘泣きもしてみるものね。お馬鹿さん」と、魔王が言った。

~ レベル三、それ以上でもなく、了。

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【 勇者は死にました、レベル二、多重人格 】

「ビチ、復活の呪文を入力して下さい」

ビチってのは俺の名前な。
で、さっきから復活の呪文を入力して下さいと言ってるのが、自称魔王。
声のトーンからして、少女っぽいけど魔王なのだ。

で、ヤツの命令で、俺は殺された。

始まりの街コカーラという場所で、ようこそとだけ言っていたモブである俺が。
勇者が育つ前に踏みつぶしておけと魔王が命令したのだ。
で、俺はここにいる。

俺が勇者だったという証拠はない。

単に、このお話の主人公が俺だったと、それだけの理由で殺されたのだ。
俺を殺す命令を出した魔王が俺を復活させようとしている。
意味が分からない。

もちろん、この謎のナレーションにも聞いたよ。

俺を殺す命令を出しておいて、俺を復活させるなんて何がしたいんだと。
しかし、その質問には答えられませんだとよ。
いかにも我が侭な魔王らしい。

「私は魔王。ビチ、早く復活の呪文を入力して下さい」

早くじゃねえ。
どうせ復活しても、また死ぬだけだろうが。
しかも、お前の命令で蠢く、魔王軍の精鋭達に細切れにされ……。

考えただけで、身震いがするぜ。

「後生です。ビチ、早く復活の呪文を」

うるさい。
俺は、人生で二度も死ぬなんて耐えられない。
次に死んでも、どうせ、また復活の呪文を入力して下さいって言われるんだろ。

モブでしかない俺が、一体、何回、死ねば楽になれるんだよ。

だったら今、このまま復活しないを選ぶ。
どうせ復活しても死ぬんだったら、このまま死んでいても変わらないからな。
本当に何がしたの。

君は?

「私は魔王。しかし、その前に一人の女なのです」

女?
魔王が女だとは、一概には信じがたい。
ま、ない話じゃないけど、魔王と言えばオッさんだと相場が決まっている。

「そして、あなたに惚れたのです」

思いっきり、うそ臭せえ。
確かに、この復活の呪文がどうのこうのとしつこい魔王は少女なのかもしれない。
が、魔王が、俺に惚れたというは真っ赤なウソだ。

本当だったら殺す命令なんて出さない。

「今は信じて下さい。本当に私は、あなたに惚れたのです」

だったら殺すなよ。
いくら勇者かもしれない人間でも殺すなよ。
アレか。自分はサイコで、ヤンデレ系の人間だとでも言いたいのか?

「惚れたんだったら殺すなよ」

「……」

ほれ、黙った。
都合が悪いと、すぐ黙るのはウソをついている証拠だ。
とにかく、もう二度と殺されたくない。
だから復活なんてしない。

「……分かりました。本当の事を言います。だから復活して下さい」

本当の事?
今さら、何を言おうというんだ。
何を言われようが、俺の決意は変わらないし、復活する予定はないぞ。

「私の中には二人の人格が存在するのです」

はい。ウソ決定。
何が二人の人格が存在するのですだ。
もしかして、その内の一人が俺に惚れたとか言い出すんじゃないだろうな。

甘い。甘い。

多重人格は、よくあるお話みたいに切り替わるものじゃないんだよ。
常に多数の人格が、せめぎ合い相互に作用し続けるんだよ。
だから、他人格の意見が無視される事はない。

つまり、ある人格が俺に惚れていれば、他の人格が殺すと言っても実行できない。

人格が切り替わっても、俺に惚れている人格の意見が尊重されるからな。
って、何で俺がこんな事を知っているのかって?
ま、モブでも人生色々ってこった。

「はい。はい。ウソ決定。俺は、そんなウソには騙されないぜ」

「……本当にうぜえな。お前」

うほっ。
また本性が出たか。
魔王よ。お前の本性は、その粗暴な口ぶりだろう。

「分からんか。余は真面目に、多重人格なのだ。多重人格は人それぞれだろが」

声は可愛らしい。
が、今までとは違い、端々にドスが利いた声で魔王が言う。
まさに、さっきまでの彼女とまるで違った。

「……」

確かに一概に多重人格と言っても人それぞれな部分はある。
もちろん他人格の意見を尊重してでも、俺を殺す命令は出せるかもしれない。
意見を尊重しない多重人格もあるかもな。

「そうなんです。私には魔王と少女という人格が存在するのです」

また可愛らしい声に戻った。
そうか。少しだけ、魔王と話して彼女の不幸が分かった。
でも……。

そうしたら魔王は一体、誰なんだ?

俺に惚れているって事は、俺の知る人物だろう。
しかし、生まれて、この方、俺は女の子に惚れられた事なんてない。
ましてや魔王になんてだ。

「一つ、聞きたい」

「はい。何でしょう。私に答えられる範囲の質問であれば……」

俺は唾を飲み込んで、魔王にたずねた。
君は、一体、誰なんだと。
魔王は微笑んだ。

「魔王。君は誰なんだ。僕の知っている人物なのか?」

~ レベル二、多重人格、了。

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【 メルレポート、~ レポート四、ファイト一発! 】

ブタピックの姿は、まさにブタそのもの。
潰れた大きな鼻が特徴の猪八戒。
醜く太っている。

「ブヒ」

その鳴き声も、狙ったようにブタにそっくりだった。
ゆえに俺様が魔王だった時は、みんなにいじめられる存在だったブタ。
そんなブタに軽くみられる俺様。
情けない。

何で、こんな事になってしまったんだ。

全ては、あのアホ勇者が悪い。
あんな脳筋パーティに倒され、魔王の座を失ってしまった事が全ての元凶だった。
負けてしまった今、どうのこうの言っても始まらないが。

「ブヒ。ハンサムな魔王様が、ここに何用でございましょう?」

ブタの余裕をかました一言、一言に悪意を感じ、異様にむかつきを覚える。
今、この場で叩き斬ってやろうか。
死斑剣を構える。

「魔王。今は無理よ。アイツは魔神器を持っているの」

メル、分かってるよ。
悔しいけど、今のブタピックは俺様を凌ぐ力を手にしているんだろ。
だから、俺様を差し置き魔界の支配者に名乗りを上げていると、そういう訳だ。

「悔しいけどね」

メルの声も震えている。
あんな醜いブタ野郎に大きな顔をされている事に憤りを感じているのだろう。
やっぱり、メルは腐っても俺様の腹心だな。

「魔王!」

そこへ、息を切らせ勇者が現われた。
ま、ここは当初の予定通り、メルが考えた勇者とブタをぶつける作戦でいこう。
どちらにしろ、その作戦以外、ヤツらに勝つ方法はないからな。

「むぅ。なんだ、このブタは?」

勇者がブタに気づく。

「ブヒ。何者だ。ブタとは失礼な。吾輩はブタピック。現魔界の支配者なり!」

ブタの野郎、魔界の支配者だって。
どの口が言うんだ。
おお?

とは、口には出せず、悲しいかな、心の中で強く思った。

勇者に続き、女僧侶と老齢な魔法使いが追いつく。
戦士は、ばかでかい剣が邪魔で、かなり遅れて、ここにたどり着く。
勇者ご一行の到着だ。

「勇者よ。どうやらヤツが今の魔界の支配者らしいですね」

女僧侶が言う。
女僧侶は、知的なインテリ。
青い眼鏡が、また知的な雰囲気を高めている。

「そうじゃな。ブタピックか? こやつから邪悪で邪なオーラを感じるわい」

老齢な魔法使いが答える。
女僧侶と老齢な魔法使い、この二人はパーティの知恵袋のようだ。
しかし、勇者と戦士。この二人が癌だ。

「何でもいいぜ。全部、ぶっ叩けばいいんだろ?」

戦士が言う。
筋骨隆々な戦士は、担がなければ持てないような大きな中華包丁を持っている。
いや、中華包丁とは乱暴な言い方だが、そうとしか見えない。
殺傷力マックスな中華包丁……。

「ファイト一発ッ!」

最後に青く光るサーベルを持った勇者が締める。
いやはや、ファイト一発とは、いかにも脳筋な勇者らしい発言だ。
もちろん作戦は……。

「じゃ、みんな、作戦はガンガン行こうぜでよろしくッ!」

「はい。はい」

「ま、なんでもいいわい」

女僧侶が、面倒くさいと答える。
それに、老齢な魔法使いも、やれやれだと続く。
しかし戦士だけは、勇者に追随するように、中華包丁を担ぎ上げ言う。

「ファイト一発ッ!」

とにかく、これで無事に勇者ご一行とブタが戦う事となった。
よし、メルが考えた作戦通りになった。
魔神器の力を見極める。

「ブヒ。何だか知らんが。吾輩に剣を向けるとは、馬鹿な事をしたものだな」

うん? ブタの右手には、何かが握れている。
あれがヤツの手に入れた魔神器か。
俺様はブタを注視した。

原初の魔王を呼び出せるという魔神器の真の実力に。

「ブヒ。吾輩の力を甘くみるなよ。ゆくぞッ!」

と、ブタが言った。
いや、吾輩の力というより、魔神器の力だろうがと思った。

~ レポート四、ファイト一発! 、了。

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【 信じるマン、第四十二話、青森産 】

さて、ここに一個のリンゴがある。

誰のものか、分からない。
しかし、この研究所にあるものは、みんなのものだ。
ゆえに食べる。

ま、リンゴを食った位で、怒らないだろう。

誰のものだろうとな。
俺、一本寺真琴は、リンゴが食べ物の中で、一番、大好きなのだから。
リンゴが置いてあれば食べるのが自然の流れというものだ。

頂きます!

「アイヤー!」

うるさい。
俺は、今、自分が信じるマンだという事を忘れて、リンゴを食べるんだ。
この至福の時を邪魔するヤツは死刑だ。

「ないアル。ないアルよ!」

キム・キムは、何かを探しているようだな。
だが、今の俺には関係ない。
死ね。

キム・キムなど無視して、大きな口を開けてリンゴを頬張る。

美味い。
なに、このリンゴ。
普通のリンゴとは、まったく違う芳醇な味わいが、じわっと口いっぱいに拡がる。

「ないアルよ。マコっち、知らないアルか?」

何がだよ。
至福の時を邪魔しないでもらいたい。
さて、もっと、この美味いリンゴを味わうとしようか。

「キム・キム殿!」

桃軍師?
俺はリンゴを頬張りながら桃軍師を見つめる。
ま、この二人は、いつもあくどい事を考えているから素無視でいいけどな。

「なくしてしまったのでござるか」

俺は、シャリ、シャリと音を立てて、リンゴを味わう。
慌てる桃軍師とキム・キムを横目に。
美味い。

どったの? 二人とも。

「不覚でござる」

「ないアル。不覚アル。あんな大切なものどこにいったアルか……」

完全に他人事で、ぼぉーっと二人を見つめる。
どうやら、とても大切なものをなくしてしまったようだな。
更にリンゴを頬張る。

本当に何、このリンゴ。美味っ。

「リンゴ型超強力下剤がないアル。ここに置いておいたのに」

うん。
リンゴ型超強力下剤がなくなったのか。
また、シャリ、シャリと音を立てて、リンゴを頬張る。

「……うん?」

リンゴ型超強力下剤……。

「ああ!」

キム・キムが叫ぶ。
続いて、桃軍師が俺を見つめ、キム・キム以上の大声で叫ぶ。
マコっち、お前、ちょっ、ちょっと待てと。

「ゲッ」

「それアル。それアルよ!」

俺、もしかして……。
もしかして、このアホ二人が開発したリンゴ型超強力下剤を食っちゃった?
ノー! マジかよ。リンゴが置いてあるのが不思議だったんだ。
でも、普通に俺の好物だったし……プレゼントかと。
ただのリンゴにしか見えなかったし。

まさか桃軍師とキム・キムが開発したリンゴ型超強力下剤なんて思うはずがない。

「マコっち殿。まさか食べたのではござらんよね」

ござらんよねって……、超美味かったよ。
俺の目から涙が溢れた。
どどっと。

「ノー! アル。マコっち。大丈夫アルか? ウンコしたくないアルか?」

キム・キム、お前は美少女なんだ。ウンコなんて言うな。
って、そんな事はどうでもいい。
ウンコ……したくない。

いや、多分、このリンゴは、リンゴ型超強力下剤ではなかったというオチだろ。

「桃軍師?」

だから、大丈夫だって。
別にウンコしたくないし、リンゴ型超強力下剤の話しは何かの間違いじゃないの。
俺は、普通に美味しいリンゴを食べただけだって。

「……一日後に効果が現われるのでござる」

「そうアルか。でも、どれ位の効果なのアル。しおしおになるレベルアルか?」

「しおしおどころの話ではござらん。命に関わるレベルでござる」

命ッ!
ウンコで死ぬの?
あり得ない。どんだけ強力な下剤なわけ?

「その分、リンゴ型超強力下剤は美味いのでござる。天国から地獄へと」

「押忍ッ。どうしたのでちゅ?」

怪人27号が合流した。
いや、お前、今は忙しいから邪魔をするな。
俺はウンコで死すというレベルの話しをしているんだからな。

「マコっちがリンゴ型超強力下剤を食べてしまったアルよ。ヤバイアル!」

「ふーんでちゅ」

怪人27号、お前、まったく興味がないな。
ヤツは、鼻くそをほじりながら、キム・キムに生返事をした。
何しに来たんだ。
去れ。

「でも、僕もここにあったリンゴを食べたでちゅよ」

おほっ。
他にもリンゴあったのか。
リンゴ型超強力下剤は、二個あったのか?

「よう。みんな、お揃いでどうした。俺が買ってきたリンゴ食べたか?」

イエローが、鼻歌交じりに現われた。
てか、お前が、リンゴを買って置いておいたのか。
紛らわしい事するな。

「青森産、極上贅沢サンふじ。蜜入りだ」

うあっ。
イエローが余計な事をするから、どれが本物の超強力下剤か分からなくなった。
俺が食べたのが、そうか、それとも怪人27号が食べたものが……。

「ま、一日後に分かるアル」

だから死ぬんだろ?
ウンコで死ぬなんて、最悪だ。
今すぐ吐き出す。吐き出せば、それで、セーフだろ?

「今すぐ吐き出す。それでオッケーだろ?」

「甘いアル。超強力下剤はドロンパ商会を壊滅させる為に作ったアル」

「そうでござる」

どういう事?
大体、ドロンパ商会は存在しない団体だろ?
そのドロンパ商会を壊滅させる為に作ったって、超無駄な事をしたな。

「リンゴ型超強力下剤は、ハイパー吸収素材で作ったアル」

「つまり、口にした瞬間に体に取り込まれるよう設計して作ったのでござる」

あほっ。
存在しない団体を叩き潰す為に、そこまでするか。
そして、このタイミングでリンゴを差し入れるイエローもどうかと思う。

死にたくねえよ。

しかもウンコで死ぬなんて、最低だな。

俺は、桃軍師とキム・キムを睨んで、そう思ったが後の祭りだった。
二人は、仕方ないとうつむいていた。
うつむくな!

なんだか俺が死ぬのが決定したみたいで、嫌すぎる。嫌ぁ!!

怪人27号とイエローは、のほほんと笑っていた。
お前ら二人も当事者なんだよ。
と、そう思った。

第四十二話、青森産、了。

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【 ブラック企業 】

俺はブラック企業に勤めている。

一日、十二時間以上、働かされるし、もちろん残業代は付かない。
年の半分は出張で、地方都市に派遣される。
ま、旅費は出るが。

それでも出張に継ぐ、出張で、地元の友達も遊べない。

給料は年俸制で、活躍した分だけもらえる。
年俸制は、やっただけもらえるので、いいように思えるだろう。
しかし、ここに落とし穴がある。

そう。
年俸制とは。
使えなくなったり、迷惑をかけたら、即クビなのだ。
だから年中、クビを恐れ、休む間も惜しみ、仕事に打ち込ませざるを得ないのだ。

そんな俺の職業はプロ野球選手。

くわっ。

ブラック企業、了。

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【 メルレポート、~ レポート三、我慢を重ねる 】

図書館を出た俺様達は、一路、ブタピックを目指して旅へと出た。
ブタピックが持つ魔神器を奪う為に。
果たして魔神器とは……。

まさか、魔神器は、真っ白な真珠じゃないだろうな。
流れから言ってさ。
違うか。

とにかく、そうして、俺様達が魔界の荒野を旅する事、三日……。

そこで、面倒くさいヤツらに捕まってしまった。
ブタピックまで、後、一歩という所で、アホ面をしたアイツらに捕まったのだ。
とことんツイてないな。

「見つけたぞ。魔王! お前、また何か企んでいるらしいな」

ゲッ。
俺様達を待ち受けていたのは、勇者ご一行だった。
俺様は、一度、勇者に敗れている。

メルがまずいと、可愛い青い瞳を、不安そうにクリクリさせ俺様を見つめる。

「魔王、その悪巧み。ここで成敗し、阻止してやるッ!」

メルの目の色が焦りを帯び始める。
しかし、勇者から逃げだす事は、俺様の魔王としてのプライドが許さない。
俺様は、無言で、ゆっくりと愛刀、死斑剣を鞘から抜く。

死斑剣の朱色の刀身が露わになる。

ゆらゆらと陽炎のように、オーラが立ち上る。
前に、勇者の命を喰い損ねたと、再び、彼らの命を欲するように。
メルも慌てて幻魔の杖を構える。
行くぜ?

「よっしゃ。じゃ、みんな、作戦はガンガン行こうぜで、よろしくッ!」

勇者が叫ぶ。
それに呼応し勇者のパーティの女僧侶が答える。
その脳筋ぶり、何とかしてよと。

「ていうか、君は、いつもガンガン行こうぜでしょうが。呆れるわ。まったく」

勇者のパーティの保護者であろう魔法使いが、女僧侶に続く。

「本当に、その脳筋ぶり何とかしろ。付いていくワシらの身にもなれ」

どうやら勇者の作戦は、いつでもガンガン行こうぜだったらしい。
そんなファイト一発な勇者に負けた自分が悔しい。
最後にパーティの戦士が言う。

「ファイト、一発ッ!」

戦士、お前もか。
つくづく、こんな脳筋なパーティに敗れた自分が情けない。
しかし、今のままでは、また敗れるだろう。

今、現状、悔しいが、松岡修造な勇者と、その一行は俺様達の力を凌いでる。

何とか、この窮地を凌がねば。
死斑剣を構え、はて、どうしたものかと考えた。
そこで、メルが何かを思いついたのか、小さな声で、俺様に囁く。

「ブタピック」

ブタ?
いじめられっ子のブタが、どうかしたのか?
俺様は、ブタピックの名前が、メルの口から発せられ、不思議に思った。

「ブタは魔神器を持っているわ」

「だろうな。でも、それが今の状況と、どうリンクするんだ?」

俺様の疑問は、もっともだろう。
ブタが、俺様達の最終目標、原初の魔王を呼び出す為の魔神器を所有している。
それは分かっている。

が、それが目の前にいる勇者達と、どう繋がるんだ。

メルの目が、イタズラっぽく、微笑む。
そして、彼女の可憐な口から、信じられない言葉が発せられる。
マジ?

「逃げるのよッ!」

だから、逃げるのは魔王としてのプライドが許さんのだ。
俺は彼女に、そう抗議しようとした。
が……。

「これは戦略的撤退なの」

「撤退?」

「そうよ。魔神器を持つブタピックの所まで逃げきるのよッ!」


そうか。
魔神器を持つブタまで逃げるという事は、すなわち!

「魔王。ブタピックと勇者をぶつけるのよ。魔神器の実力も計れるわッ!」

なるほど。
俺様達を上回るであろう力を持つ、勇者。
そして、多分だが、魔神器を手に入れ、俺様を凌ぐ力を手に入れたブタピック。
その俺様より強い両者をぶつけて、漁夫の利を得る訳だな。

天才だな。メル?

「魔王。君がアホなだけよ。とにかく、ブタピックの前まで逃げるわよッ!」

アホって……。
俺様は、元魔界の支配者、魔王なの。君、腹心。
って、言っても無駄か。俺様、最近、全然、いいところ見せてないし。

本当に情けなくて、涙が出るぜ。

愛刀、死斑剣も行き場を無くして、寂しそうだった。
ま、でも、とにかく今は、メルの提案した漁夫の利作戦でいくしかないな。
俺様は、勇者に背を向け、逃走した。
プライドをかなぐり捨て。

これは戦略的撤退だと、強く、自分自身に言い聞かせ。

「魔王。逃げるのか。情けないぞ。僕達と正々堂々、勝負しろッ!」

背後で、勇者が何か叫んでいたが、今の俺様には聞くだけの余裕がなかった。
自分のプライドを慰める事に必死だったのだから。
俺様達はブタの前に着いた。

ブタの醜い口の端が、ニヤリとつり上がる。

「ブヒ。ブヒ。元魔王様、ようこそ、ここへ。歓迎致しますぞ」

ブタの口調は余裕だった。
プライドを必死で慰める俺様とは、まったく対照的に。
元魔界で一の実力を持ち、支配者であった魔王である俺様の心を打ち砕くように。

まるで、現魔王は自分だと言わぬがばかりに。

俺様は、ブタの態度にカチンときた。
が、情けない事に今は、その怒りすらぶつけられなかった。
メルが言う。

「今は我慢するのよ。我慢よ。魔王。耐えるの」

と慰めるように。

~ レポート三、我慢を重ねる、了。

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【 メルレポート、~ レポート二、厨二な魔神器 】

勇者に破れ、魔界の支配者、魔王の座を追われ、俺様は落ちぶれた。
魔界に再び戦国時代がおとずれたのだ。
その中で……。

ブタピックという悪魔が実力をつけ、魔界の支配者を自認するまでになった。

ブタはいじめられっ子だった。
それが何の間違いか、魔界の支配者を名乗っているのだ。
勇者に敗れた俺様が批判するのは、お門違いだが、それでも気に入らなかった。

いつかブタを倒し、魔界の支配者に返り咲く。

そう心の中で誓っていた。
そして、今、俺様と腹心のメルは、図書館で本を探していた。
原初の魔王を呼び出し、再び、魔界に覇を唱えようと画策していたのだ。

「超図解。漫画で見る魔界の全貌……」

魔界にも漫画家がいるのか。
俺様は青い背表紙の本を手に取り、魔界にも漫画家がいた事に妙に感心する。
漫画家などという職業は、人間界の専売特許だと思っていた。

「春画大全」

うほっ。
何て本を見つけてしまったんだ。俺様は。素晴らしい。
早速、メルに報告しなくては……。

「死ね」

メルはピクリとも表情を変えず、俺様を殴った。
いやね。メル……、俺様、一応、元魔界一の実力者で、支配者な訳よ。
で、君は腹心。

「そんな馬鹿な本、見てないで、さっさと探すのよ」

だから俺様は、元支配者なの。
で、君、腹心さ。
オッケ?

「それにしても、ないわね。原初の魔王を呼び出す方法が書かれた本」

うぅん。
これだけ探しても無いって事は、伝説は伝説じゃないのか。
結局、民間伝承の与太話じゃないのかな。

「おっ」

「どうしたの、魔王?」

「これは! ……徹底攻略、魔界の風俗。今、ここが一番、エロい」

言うまでもなく、またメルの鉄拳が飛んできた。
俺様は、頭に大きなコブができた。
凶暴だな。メルさんは。

「本当に馬鹿ばっかり言ってないで、さっさと見つけるのよ」

メルの目つきは、とても真剣だった。
いや。俺様だって真剣なんだよ。でもね、その前に一人の男だって事なのよ。
大体、この図書館、エロい本が、何で、こんなにあるんだよって話。
公共の図書館なのにさ。

それが問題なの。

わかるかなあ?
わかんねえだろうな。……鶴家 千とせ。

メルが、埃の被った歴史を感じさせる本を手に取る。
その本は、緑色の背表紙で、表題はかすんで、よく見えなかった。
本をめくる手が止まる。

どったの?

「やったわ。やったのよ。遂に見つけたわッ!」

メルが大声で叫ぶ。
相変わらず、エロそうな本を見つけては、俺様は、ニヤニヤしていた所だった。
彼女の歓喜の声に背筋が伸び、思わず、飛び上がりそうだった。

「これよ。魔王。遂に見つけたわ」

官能小説?
そういえば、最近、DR.博士という作者がエロい話を書いているらしいな。
もちろん俺様好みのマニアックでエロティックな官能小説を……。

って!

「そうよ。原書の魔王を呼び出す方法が書かれた本よッ!」

伝説は伝説で終わらなかったのか。
まさか、こんなに簡単に見つかるとは思わなかった。
ラッキーだ。

メルは、本をめくる。

俺様は、ドキドキしながら、メルの言葉を待つ。
ページをめくっていくメル。
ゆっくりと進む。

「ふむ。ふむ。なるほどね。うん。うん」

メルは、一人言をつぶやきながら、妙に納得してうなずいている。
ページをめくる度に埃が舞う。
古い本だな。

「魔王。分かったわ。原初の魔王を呼び出す方法が」

五分ほど、本を読んでいたメルが言う。
まださわりの部分しか読んでないと思うが、本当に分かったのか。
呼び出す方法が。

「原初の魔王を呼び出すには、魔神器(まじんぎ)が必要なのよ。分かったわ」

魔神器?
何だ、それは。魔神器なんて、どことなく厨二臭い気が。
大丈夫か。本当に、その本。

「魔王。君が倒された後、魔界で勢力範囲を伸ばしてきた悪魔がいるでしょう」

「ああ。ブタピックだな。調子に乗ってやがる悪魔だ」

「そそ。そのブタが手に入れたのよ」

「何を?」

「分からない? 魔神器をよ。それで力をつけてきているのよ」

「手に入れただけで力を得るのか? 魔神器って」

「そうよ。これに書いてあるわ」

メルは、そう言うと自信満々に埃まみれの本を掲げあげた。
なるほど。その話、納得出来ない話じゃない。
ブタはいじめられっ子だった。

それが最近、ヤツは、何故か、調子に乗って魔界の支配者を名乗っている。

その裏には、魔神器なるものがあったのか。
メルの言葉にうなずいた。
で、どうする?

「魔神器が、どういったものかは書かれていないわ。けど、それを奪えば……」

なるほど。
ブタから強奪するんだな。その魔神器を。
曲がりなりにも俺様は元魔王。魔界で一の実力者で、支配者だ。

強奪など、造作もない事。

待ってろ。ブタ。
今から本拠地に乗り込み奪ってやるぜ。
俺様のピンク色の筋肉が盛り上がり、闘いに喜びを感じ、打ち震えた。

「じゃ、辛気くさい図書館とはおさらばだ。行くぜ。メル」

メルは、小さくうなずいた。

~ レポート二、厨二な魔神器、了。

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四草めぐる

Author:四草めぐる
将来、月に移住したいと思う今日この頃。現実的には一歩、一歩、着実に。基本を大事に。

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