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E★エブリスタ

では、▼以下より、私の世界をお楽しみ下さい。
     

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【 悪魔ちゃんと天使くん、~ その四十九、カクテル 】

サドクが、一番始めに勧められたカクテルの名はケイブルグラム。

これはロキと酒を酌み交わし、分かったのだが。
彼は、無類の酒好きで酒豪であった。
彼は意気揚々と酒を呑む。

彼の呑む姿は、まるで砂漠に水が染み込むような、それであった。

サドクは、ロキのハイペースに巻き込まれ、自分を見失うほどに飲んでしまった。
いや、それはロキの計算であり、彼に酒を飲ませる事が修業だったのだ。
サドクは、すでに泥酔状態だった。

「イエロー・パロット」

目が虚ろになってきたサドクにロキは告げる。
しかし、完全に酔ってしまったサドクには、なにを言っているのか分からなかった。
それでも続けるロキ。

「バレンシア・コブラー」

「?」

「ケイブルグラム」

「ロキ。なんの話だ。酔っぱらっちまって、よく分かんねぇよ」

サドクの意識は、まだ、なんとか飛んでいない。
しかし、そろそろ限界域に到達し、これ以上は意識が混濁する所まできていた。
ロキは笑う。

「ブラック・アンド・ホワイト」

「だから、なんの話だよ。映画かなにかの題名か?」

ロキは、再び、自分のウィスキーグラスに視線へと落とす。
彼のグラスの中の氷が微かに揺れる。
そして言葉を続けた。

「今、挙げた名前の中にお前が一番始めに飲んだカクテルの名が入っている」

「……」

「お前が、ここに来て、一番始めに飲んだカクテルの名を当ててみろ」

そう。
ケイブルグラムが、それだ。
しかし、酒には、あまり興味がなく、カクテルの名など知らないサドクが答える。

「今、言ったのはカクテルの名前だったのか」

「そうだ」

ロキが枚挙した名。
それが、カクテルの名だったとすら知らないサドク。
ロキは、そんな彼に一番始めに飲んだカクテルの名を当てろと言ってきたのだ。
当然、サドクには分かるはずもなかった。

「なに簡単な事だ。さっきも言ったがアカシックレコードにアクセスすれば分かる」

「!」

「そうだ。検索の更に上にある段階を神の視座というんだ」

神の視座。
検索の更に上にある段階。
アカシックレコードは、アクセス、つまり検索するものではないのかと疑問に思う。
大体、彼はアカシックレコードにアクセスするのには集中を必要とする。
こんな意識がもうろうとした状態ではアクセスすら難しい。

「ま、神の視座、本来の意味ではないがな」

ロキは、そう言うと更にカクテルを注文し、更にサドクに飲ませようとする。
彼は下戸ではない。ないが、すでに許容量を超えていた。
彼の身体が前後に揺れる。

「正確に言えば、アカシックレコードを引くという言葉になるな」

引く……。
いや、それ以前にサドクはアクセスすらできない状態だった。
彼の目は真っ赤に充血し、小刻みに震えていた。

アクセスすら難しそうなサドクを見て、ロキは昔の自分を思い出していた。

「そうだぜ。俺も、元々はアカシックレコードが嫌いだったんだ」

サドクは驚く。
ロキは、昔からアカシックレコードを手足のように使っていたと思っていたからだ。
そのロキが、アカシックレコードが嫌いだったとは夢にも思わなかった。

「俺の生き甲斐はギャンブルだ」

「ああ」

「純粋にギャンブルを愉しもうと思えば、当然、アカシックレコードが嫌いになる」

「そうか。……でも、そうかもな。勝負の結果も分かるからな」

「そうだぜ。勝負の前に結果が分かるなんてのは無粋ってもんなんだぜ」

現時点で、サドクは、まだ会話の受け答えができる。
ロキは、彼に酒を勧め、飲ませる。
彼は一気に飲み干す。

一気に飲み干す。彼のこの行動は、かなりの危険信号である。

酔っぱらったあと、一気に飲み干す人がいれば、その人は酔っていないという人だ。
酔っていないと言う人ほど、酔っぱらっている人はいない。
つまり、サドクは自分を見失いつつあった。

「神(オヤジ)に神の視座を伝授されるまでアカシックレコードを封印してたんだ」

「すべては勝負を愉しむ為だけにか? 天使の特権を放棄してまで」

「ああ」

ロキは、残った酒を飲み干し、オーナーに自分のウィスキーのおかわりを注文する。
同時についでだとサドクの為にカクテルを注文する。
完全にサドクは酔っぱらっていた。

「そこを見込まれたんだよ。嫌いな天使の方が都合が良かったのさ。神にとってな」

ロキは、神との修業を懐古し、ゆっくりとサドクに告げた。
まるで、大人が子供におとぎ話を語るように。
ゆったりと落ち着き払い。

サドクは、回らない頭で考えた。
ロキの言っていた、アカシックレコードを検索するのではなく、引くという行為を。
彼が言う、引く、それが、一体、どういう意味なのか。

サドクは今まで、アカシックレコードは検索するものだと思っていた。

検索し、そこに浮かんだ無数の事実が、過去、現在、未来だと、そう理解していた。
しかしロキは、その検索という価値観を捨てろというのだ。
検索の更に上にある段階……。

それが神の視座の正体であり、引くという行為なのだと、ロキは言った。

「うぇっぷ」

サドクが嘔吐に襲われる。
なんとか思考をまとめる事はできたが、それ以上は無理だった。
ロキによって限界以上の酒を飲まされてしまって。

ゆえに今の彼にアカシックレコードにアクセスする事などは、もっての他だった。

「いいぜ。サドク。吐いてこいよ。そうしたら頭がスッキリするかもな」

ロキは、自分のグラスをテーブルに置いてサドクに告げる。
頭がふらふらしているサドクは、おもむろに立ち上がり、トイレへと向かう。
彼に言われた通りに吐こうと思ったのだ。

口を必死で抑え、なんとか汚物が戻らないよう気をつけて、トイレへと向かった。

ロキは自分のグラスを見つめて、自分と神の修業を思い出して微笑んだ。
俺が神の視座を伝授された時よりは幾分、マシなんだぜと。
グラスの端が店の間接照明によって、鈍く光った。
ロキの思惑を的確に映すように。

そして、その様子を監視する小型カメラを搭載した観測衛星のような機械があった。

それは知の国の王、ルー爺さんが研究開発したものだ。
まるでパチンコ玉のような観測衛星は、サドクと涅槃を観察し続けていたのだ。
もちろん涅槃の方にも観測衛星はある。
その片方の一体。

サドクを研究対象に観察している衛星映像の先で、ルー爺さんは言った。

「そうじゃ。頭を柔らかくする事じゃ。ホエ、ホエ、ホエ」

いつの間にか店内でかかっているジャズが、フリー・ジャズへと変わっていた。
モダン・ジャズの理論の束縛からの自由であるフリー・ジャズへと。
これこそ表現の自由だと主張するかのように。

「フエ。そうじゃ。もっと自由に。不可能から着想し、その先に答えは在るのじゃ」

と、ルー爺さんは観測衛星から随時、送られてくる画像を見つめてつぶやいた。
ただ一人、知の国にある暗い研究開発室のソファーに身を預けて。
ロキは、めざとくルー爺さんの観測衛星を見つけた。

「グット。爺さんよ。面白い二人だろ?」

「ホエ、ホエ。ロキ。お前さんが気に入った二人だ。面白くないわけがないわ」

ルー爺さんは、決して彼に届かない答えを送った。
ロキも、それを察して、微笑んだ。
グットと。

~ その四十九、カクテル、了。

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【 愛羅武、魔王、~ 其の十七、ドロメアス 】

「フゥ……」

フリチンをダンクシュートしたあと、私は一人、魔王の部屋に残っていた。
ヤツが完全に、この世から滅したかを確認したかったのだ。
フリチンは滅した。
大丈夫。

いまだ魔界の入り口は口を開けている。

魔界の入り口からは私を呑み込もうという意志が感じられる。
私は、もう二度と魔王とは関わり合いたくない。
魔界の入り口を閉じるわ。

多分、入り口を閉じるには、ハードの電源を落とせばいいんだろうと思う。

最後に確認。

もう忘れ物はないわね。

ただ一人、残された私は私に再度、確認をする。
フリチンのように、なにかを見落として、煩わされるのは御免だから。
それも大丈夫。

オッケー!

少々の高揚感を覚え、ヤツら全員が完全に滅したのを感じる。
やっと、平穏で安寧な生活を手に入れたのよ!
魔王を贖罪させるのはもういい。
どうでもいい。

来ないなら来ないで、それはそれでいい。

もう金輪際、魔王なんかと関わり合いになりたくない。

とりあえず、ゲーム機本体の電源を落として、ゲーム機本体とソフトを壊そう。
もう二度とタンク・ソウル2というゲームを起動したくないから。
間違って、事故であったとしてもだ。

魔界と関わるのは御免だ。

私が、電源コードに手をかけようとした時。

「アユナ、決シて、そこヲ動くな。今のオ前は、カなリ危険な状態なノだ」

画面の中で魔王が言っている。
危険な状態? なんの事を言っているのだろうか。
その声は、まさにボカロで、日本の音声合成技術の集大成に思えた。

「さっきから思ってたんだけど、ボカロ?」

「ボカロだト。まサか、俺ガ音声合成技術でしゃべっテいると思っているルのか?」

いや、そうじゃないの。
だってゲームを起動しただけだし。
そのボカロ声は、やっぱり、音声合成技術じゃないの?

「タンク・ソウル2は地球と魔界をリンクさセる事以外に無線でモあルのだ」

無線?
って事は、このボカロ声の主は魔王本人?
てか、だったら魔王、私の想い出の彼を汚した罪を償いなさいよ。

「魔王?」

「なンだ。アユナ」

「あんたは、私の想い出を汚したのよ。その罪を今すぐ償いなさい。いい事?」

「ダから、オ前は信じナいだろうけど、俺がソの想い出の彼なンだ」

そんなわけない。
なんで、わざわざ私を怒らせるような事を言うのさ。
夢は魔王が作ったものかもしれない。

しかし、想い出の中に残る彼は、決して魔王なんかじゃないわ。断言できる。

いい加減、そのボカロ声もムカツク。
そして、画面の中でカクカク動くドット絵の魔王にも無性に腹が立つ。
ゲームを起動したら、助けに現われるんじゃなかったの。
合図とか言って。

なんだか魔王が影に隠れているような気がするのだ。

「と二かク、お前はタンク・ソウル2を起動してしマったのだ」

だからなんなのよ。
確かに私は、あんたの警告を無視して、タンク・ソウル2を起動したわよ。
だからって、影に隠れてないで、表に出てきなさいよ。
もしかして、ケンカを売ってるの。

だったら買うわよ。

そのケンカ。

「お前ハ気づいテいない。とてモ危険な事をしタのだ。ジッとしてろ」

なによ。
ジッとしてろって? 意味が分からないわ。
魔王以下、その他諸々が、魔界に帰って、私には平穏と安寧が訪れたのよ。

「決しテ、ソの部屋を出るなヨ」

魔王、あんたに命令される覚えはないわ。
とりあえず、タンク・ソウル2をぶっ壊し、封印して、魔王の部屋を出るわ。
トイレに行きたいし。

「あ、バ鹿。タンク・ソウル2の電源を切ルな。アユナ!」

「うるさい。一切、聞く耳なし。以上」

「以上じゃネぇ!」

私は魔王の言葉を無視して、ゲームをハードから取り出す。
近くにあったハンマーでゲームとハードを叩き壊し、布でグルグル巻きにした。
そして、固く紐で縛って、出せないようにした。
よし。封印完了。

当然、魔界の入り口は、跡形もなく消え失せていた。

よし、じゃ、こんな邪な部屋には用はない。
トイレにも行きたいし、さっさと魔王の部屋をあとにして、読書でもしよう。
やっと平和が訪れたのだ。

私は、ホコリを払うように両股をはたき、邪気を払った。

もう二度と、この部屋に来る事もないだろう。
そして、もちろん、タンク・ソウル2もきっちり壊した。起動する事もないだろう。
オッケー!

そして、私は、ドアを開け、自分の部屋に戻ろうとした。

が。
が、そこで、私は魔王の言いたかった事が骨身に染みて分かった。
そう。タンク・ソウル2は、とんでもない代物であり、確かに危険だったのだ。

アンギャァ!

私の叫び声ではない。
私は、こんな突飛な叫び声は上げない。
そうね。

「あぅんぎゃぁ!!」

これが私の叫び声。
この小さい『ぅ』が重要なのよ。乙女である私にはね。
って、違う。今、私は真面目に驚いていた。

…――ここ、どこ?

目の前には、なんと形容したらいいのだろうか。凶暴な怪鳥がいた。
確か、ドロメアスという怪鳥ではないだろうか。
魔界大全という本で読んだ事がある。

魔界大全は、魔界の生き物を図解入りで説明している辞典だ。

しかし、魔界大全はファンタジーの設定資料のような辞典で、架空の設定辞書だ。
そんな本に載っていた存在するはずのない怪鳥ドロメアス。
ギリシャ語で走者を意味する怪鳥。

……ドロメアス。

そういえば、あるアイドルグループもドロメアスという題名の曲を唄っていた。

あの歌は、格好良かったな。
でも、今、目の前にいる実際に目の当たりにしたドロメアスは怖かった。
私は、不覚にも、おしっこを漏らしそうになった。
乙女失格だが。

「あぅんぎゃぁ!!」

私は再び叫び声をあげ、ドロメアスは、その自慢の脚力で逃げていった。
ドロメアスは、私の渾身の叫び声にビックリしたのだろう。
私は、慌てて辺りを見渡す。

異変は、ドロメアスだけじゃない。

魔界大全に載っていた生き物が、そこらかしこにいる。

そして空は真っ赤な雲が渦巻き、近くで、火山が噴煙をあげ噴火を繰り返している。
もしかして、ここは魔界……、考えたくないが、ここは魔界なの?
私は、頭を振って邪念を振り払う。

これは幻覚であり、魔王の作った夢を見ているのだと思い込もうとした。

「甘いな、アユナ。オ前が魔界の入り口ダと思ってイたもの……」

またボカロ声が、どこからともなく聞こえる。
タンク・ソウル2は、すでにぶっ壊し、封印したはずなのに。
その意味はすぐに分かった。

「魔界に転送さレる地点にタンク・ソウル2を置イてオいた。話ヲ聞け。アユナ」

そう。
そこには、ソフトとハードが置いてあった。
懇切丁寧に。てか、どこから、そのハードとテレビの電源をとっているのよ。

「オ前は今、色々ト疑問に思っテいるダろう。ダが、ソの話はあトだ」

ま、いいけど。
とりあえず、なんでこうなったのか説明しなさい。魔王。
私は、魔王が置いたと思われるタンク・ソウル2の画面をジッと見つめた。

「実ハ、タンク・ソウル2とイうゲームは人間界へノ入り口ヲ開くソフトなのだ」

人間界への入り口を開くソフト?
つまり、それは魔界への入り口を開くソフトの間違いではなく?
だったら、それを人間界で使ったらどうなるのよ。

「タンク・ソウル2を人間界デ使えば、部屋ゴと魔界に転送さレるのだ」

なんなのよ。それ。
聞いてないわよ。だったらアレ、魔界の入り口っぽくしないでよね。
誰だって、あれが魔界の入り口だと思うわよ。

「ま、だカら部屋二戻れ。アユナ」

魔界に置いてあるタンク・ソウル2の画面の中の魔王が、そういうが早いか。
魔界の生き物であろう、おどろおどろしい生き物がそれを壊した。
なんなのよ。ここ。

「ガー、ピー、ピュー……」

魔界に置いてあったタンク・ソウル2は、最後にそう言って、完全に破壊された。
私は、今度は失錯にも、ちょこっとだけ、おしっこを漏らしちゃった。
そして慌てて部屋に駆け込んだ。

しかし、そこには先ほど封印してしまったブツがあるだけだった。

壊すんじゃなかったよ。
あれが、まだ正常に起動していたら、人間界に即帰るのに。
と、死ぬほど後悔したが、後の祭りであった。

そして、私は魔王の決しテ、ソの部屋を出るなヨという言葉だけを頼りにしていた。

魔王なんかを頼りにするのは、すなわち生き恥を晒す事と同義だけど……。
もう、おしっこちびっちゃったしね。
それはそれという事で。

と、魔界に悪寒が止まらない自分自身を無理矢理、納得させた。

「なんで、こんな事になるのよ。始めにちゃんと説明しておきなさいよ。アホ魔王」

と私は、涙目で言った。

~ 其の十七、ドロメアス、了。

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【 資本主義 】

カネ返せ! 取り立ての苛烈な大手消費者金融。多大な負債を抱え倒産。

資本主義、了。

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【 愛羅武、魔王、~ 其の十六、タンク・ソウル2 】

*****

鮎菜へ。

ルンルンが、お前を守ってくれるだろう。
しかし万が一、ルンルンがお前の身に危害を加えるものに負けた時の保険をかける。
そうだ。鮎菜。万が一だ。

タンク・ソウル2。

このゲームをお前の身を守る手段として残しておく。

鮎菜。お前は夢の中で聞いたんだろ?
想い出の彼が、ピンチになったらゲームを起動しろと。それが合図だと。
お前は信じないかもしれないが、お前の想い出の彼は俺だ。

そして、そのゲームが、これだ。

ゲームを起動すれば、お前の身は救われるだろう。
ただし、それは最終手段だ。できれば、ルンルンが敵を倒す事を願っている。
なぜなら、このゲームは危険なのだ。

鮎菜、このゲームは、お前が住む世界、地球と魔界をリンクさせるゲームなのだ。

鮎菜……、俺はお前の悲しむ姿を決して見たくはない。
だから、できるだけ、このゲームには頼るな。
警告だ。このゲームは危険なのだ。

魔王より、愛を込めて。

*****

魔王の部屋のど真ん中にゲームソフトとハードが置いてある。

ソフトはDVD媒体で、『タンク・ソウル2』と書かれたRPGっぽいヤツ。
対してハードは、今、話題の最新機種だ。
って!

おい、おい、おいッ!

なんで、魔王が私の夢を知ってるの。
仮に魔王が想い出の彼であったとしても、昔、そんな約束をした覚えはない。
夢は一過性のものであって、私の思考以外のものではない。

それを。
なんで魔王が知ってるわけさ。
ちょっと都合が良すぎないかな。どう思う?

「いいか。少女よ」

フリチンが、私の背中越しにゲームと手紙を読んで、なにか言いたげだ。
はい。フリチン、発言を許す。
なによ?

「魔神は夢を作る事ができるのだ。魔王は、それの事を言っているんじゃないのか」

魔神。
やっぱり、フリチンたちは魔神だったんだね。
そして轟くんは、人間でありながら魔王になるまで修業したんだ。

さすが委員長。

って、その話はよくて。
なに? なに? 魔神は夢を作る事ができるの。
もしかして、魔王は、その能力を使って、私に夢を見せたとでも言うの?

「魔王は、ああ見えて用心深い。手紙にも書いてある通りに保険をかけたのだろう」

魔王はルンルンに全面的な信頼を置いている。
置いているが、それでもルンルンが敵わない敵が現われた時の事を考えたのだろう。
いや、あんなもののふが勝てる相手など、この世に存在するの?

小石につまずいて、魂が抜けるヤツだよ?

魔王が心配するもの無理はない。
そして、夢を見せた。

私は、その夢が魔王の思惑だったとは、露ほどにも思わず。

一人、舞い上がっていたというわけだ。

ちくしょう。
せっかくの想い出の彼との再会が魔王に汚されたような気がして腹が立った。
なんで、あの安心できる温かいトーンの声が魔王なのさ。
絶対にあってはならない事よ。

よし。
だったら魔王、お前を呼んで白黒ハッキリさせようじゃないの。
あんたが想い出の彼なのかどうかをさ。

魔王を目の前で、正座させて、謝らせてやるわ。

ああ。
分かったわ。分かったさ。
このゲームが、いくら危険だろうと起動してやるわよ。

警告? 知らんね。

起動するたら、起動するんだから。

「少女よ。ま、落ち着け。本当にゲームを起動するのか? 危険だと書いてあるぞ」

フリチンが、興奮した私を落ち着けるように言う。
彼は、どちらかと言えば、感情より、思考の方が先に立つタイプ。
だから余計にそう思うのだろう。

だけどね。
私は、感情が先行するタイプなのよ。
いくらフリチンが、止めようと彼との想い出を汚した罪は許しがたき罪なの。

魔王、来なさいよ。

ああ。
ピンチさ。ピンチ。
とっとと戻ってきなさいよ。

とっとと戻ってきて、罪を償いなさい。

どうにも止まらない私は、ハードをテレビに繋ぎ、電源を入れた。
そして、そのあとて画面に映ったチュートリアル通りにソフトをハードに挿入した。
さ、起動したわよ。来なさい魔王。

贖罪よッ。

画面では軽快な音楽がなり、オープニングムービーが流れている。
いや、それはいいんだけど、それだけなのだ。
魔王が来ない。

普通にゲームが始まり、そして、ゲームが始まった以外、変わった所は何一つない。

「フッ。少女よ。ま、とりあえずゲームでも楽しもうではないか」

フリチンが、ゲームに興味を覚えたようだ。
いつの間にか、テレビ画面の前でコントローラーを握りしめ、私に言う。
私は一人、唇を噛み締めた。
騙されたと。

「タンク・ソウル2。普通のゲームじゃん」

私は悔し紛れにつぶやいた。

「おわっ。なんだ、このゲーム。いきなり魔王が現われたぞ!」

フリチンがゲームを操作しながら驚いている。

魔王?
やっと現われたの。
とりあえず、細切れにして、千回くらい殺してやるわ。
……って、ああ。ゲームの中での魔王の話か。

がっかりだわ。

「あれ。あれ? コントロールが効かない。なんだ? なんなんだ、このゲーム?」

「アユナ。今、俺はテが離せナい」

おほっ。
ゲーム画面の中の魔王が、拙い日本語でしゃべっている。
それによく見ると、ゲームの中の魔王、あのアホ野郎とそっくりだ。
そう。あのアホ魔王と……。

フリチンは、一通り、操作ができないかを探って、コントローラーを放り出した。

「少女よ。ダメだ。まったくいう事をきかないぞ。このゲーム」

「タンク・ソウル2……」

私は、このゲームの題名をどこかで聞いた事がある。
ネットで『祖父が戦車でやって来る(仮題)』という小説が書かれるらしい。
その小説へのオマージュか。

このタンク・ソウル2というゲームは。

「このゲームって、祖父が戦車でやって来る(仮題)のオマージュ?」

なんとなく、私はゲームの中の魔王に問いかけた。
しかし、ゲームの中の魔王が問いに答えてくれるとは思わなかった。
ただ、そうしたかっただけだ。
しかし、答えた。

「そウだ。オマージュだ。アユナ。とりあエず、お前ヲ魔界に召喚しテやルぞ」

やっぱりそうか。
って、いや、いや、なに言ってんのあんた。魔界になんか召喚しなくていいから。
とりあえず、フリチンだけ、魔界に帰して欲しいだけだから。

「俺はマ王。決して、マモーではない。もちろんミモーでもないゾ」

今の時代、マモーやミモーを知ってるヤツはいるのか。
あんたは、何時代の人間なのよ。
あ、魔神か……。

「!」

すると不意にゲームの画面が、崩れ、そして、黒い星雲のようなモノが現われた。
まるで、全てを呑み込むようなブラックホールのようなそれが。
魔王が創り出した、あの魔界の入り口に似ていた。

「アユナ。とりあえず、魔界にまでコい。話はそレからだ」

だから私は魔界になんか行かないわよ。
でも、これはチャンスかも。
ラッキー!

すなわちフリチンを、この魔界の入り口に叩き込む。

アリウープしてやるわ。

パスを空中でキャッチして、ダンクよッ!

そう。
あの時、ルンルンを放り込んだように。
私は、フリチンの頭をバスケットボールを掴むように力を込めて掴んだ。

「行くよぉ! スーパー鮎菜。超絶必殺、アリウープ!」

と、私は叫んだ。
そしてフリチンを豪快に画面にある魔界の入り口へとダンクシュートをしてやった。
よっしゃ。よっしゃ。これにて万事解決だと、私はほくそ笑んだ。

~ 其の十六、タンク・ソウル2、了。

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【 愛羅武、魔王、~ 其の十五、ハートを狙い撃ちよぉ! 】

「ふははは。魔王なき今、世界は我が手の中に!」

フリチンが高らかに宣言する。
両手を大きく広げ、手のひらで全てを掌握するように。
彼は、私のファースト・キスを奪うどころか、ピーまでしようとしているのだ。
ピーとは、HなDVDなどでしている事を私にしようというわけだ。

馬乗りな彼は、そこに一番、近かった。

そう。ピーに。

私は必死に考えた。
このキューバ以来の危機に、どう対処するかを考えたのだ。
あっちは核戦争。こっちは乙女の貞操の危機。

そういえば、フリチンは言っていた。

私を好きではないと。
そして、バス権で二位に甘んじた自分が受けた屈辱を魔王に返せればいいと。
という事は、つまり、彼がバス権で一位になれば、私は解放?
いや、一位にならなくてもチャンスがあれば……。

そう。

バス権、つまりバスト目測選手権が、今一度、開かれれば、いいのではないのか。

あとは、フリチンが勝手に魔王と戦って一位になればいいのではないか。
そういう事だよね。受けた屈辱を返すというのは。
いや、開かれる必要はない。

フリチンに開かれると信じさせればいい。

つまり、ウソでも、彼にバス権が開かれると信じさせればいいのだ。
そうしたら頼まなくても、彼は魔界に帰るだろう。
彼にとって、バス権こそ命なのだから。
間違ってないよね。

「さ。では魔王の嫁(※注、予定)よ。俺と熱き抱擁をしようではないか」

「あのね。フリチン。私、魔王に口止めされていたんだけど……」

思わせぶりな口調で彼に告げる。
フリチンにバス権が開催される事を信じさせるには、より大げさに言う必要がある。
だから私は、うそ臭いほど言葉に抑揚をつけて彼に言葉を投げかける。

「なんだ? 少女よ」

「言ってもいいのかな。驚かない?」

「フッ。異な事を。俺を誰だと思っているんだ。バス権二位のフリチンさまだぞ?」

「そのバス権の話なの。フリチン、聞きたくない?」

上目遣いで、可愛く言う。
ちょこっとだけ首を傾げて、更に追い打ち。
フリチン! 私のウソで、あんたのハートを狙い撃ちだよぉ。

「少女よ。なにを言いたいんだ。お前はバス権に興味なかっただろうが?」

ちっ。
そんなに簡単には騙されないか。
おっ。でも、私、こんなに怖いフリチン相手に冷静になってきたぞ。

フリチンが、私の中で、いつもフリチンに戻ったのか。

って、そんな事はどうでもいい。
とにかく、今はフリチンにバス権が開かれると信じさせなくてはならない。
じゃないと、この馬乗り状態から解放されない。

もう一発、プリチィー弾を込めてフリチンのハートを狙い撃ちだ!

「あのね。興味はなかったんだけど……」

「やっぱりお前はバス権に興味がないんだろう。だったら黙ってろ。すぐ済ます」

おいっ。
フリチン、すぐ済ますって、一体、なにをすぐ済ます気だ。

キューバか? キューバなの?

違う。
ピーとファースト・キスに決まってるでしょ。
キューバってなによ?

私よ。なにを血迷っているのよ。

そんな事を考えている間にフリチンが、強行に行動へと出た。
唇を突き出し、私の唇へと向かってきたのだ。
くそがぁ。

「ちょっと待って、フリチン。バス権の話、聞きたくないの?」

私は感情を押し殺し、フリチンの突き出された唇を左手、人差し指で押さえる。
私の唇の前で、右手、人差し指を立てる。
さ、いくよぉ!

フリチン、私のウソであんたのハートを狙い撃ちだよッ!

「うふふふ。魔界でバス権が開催されるって言ったら、フリチンは信じる?」

ずっきゅぅん!
さ、フリチン、私のウソに騙されなさい。

「……少女よ。ウソだな」

くっ。
まだ信じないか。
だったらもう一発、とびっきりピンクな弾丸であんたのハートを狙ってやるわ。

「少女よ。ウソだよな?」

「?」

「ウソだろ?」

「……」

「ウソだと言ってくれ。そんな話は真っ赤なウソだと!?」

おろ?
なに、なに、何気に効いてた?
でも、なんでウソだと言わなくちゃならないわけ?

「バス権二位の俺を差し置いて、バス権が開かれるわけがない。ウソだと言えッ!」

そういう事か。
というか、フリチン、涙目になってるんですけど。
さっきまでの怖いフリチンは、一体、どこに行っちゃったの?

「ウソだ。そんなわけがない」

フリチンは頭を抱えて、顔を左右に振っている。
よっぽど衝撃的だったみたいね。
私のウソは。

「でも魔王やルンルン、一弓くんたちは魔界に帰ったのよ。おかしいと思わない?」

「確かに。確かにその通りだ。ちくしょう。不戦敗か!? オロロロン」

そのオロロロンって、悲しいって意味?
とにかく、この馬鹿者は、やっと私を馬乗りから解放した。
よし、第一段階、終了。

「俺には魔界に帰る方法がない。くそっ。やっぱり不戦敗なのかッ!」

やっぱりね。
フリチンが魔王たちを追わないという事は、彼は魔界に帰れないのだ。
その点を、どうにかしないと問題の本質は決着しない。

ネックは、どうやってフリチンを魔界に帰すか。

このフリチン野郎を魔界に返せば、それで万事全てOKだ。
そうしたら真の平和が訪れるのだ。
さて、どうしたものか。

いや、ちょっと待って。そういえば夢の中で想い出の彼が言ってったけ。

『ピンチになったらゲームを起動するんだよ。それが合図』だと。

夢の中で想い出の彼に言われた言葉。
しかし、さっきフリチンに馬乗りになられた時は、間違いなくピンチだった。
でもゲームなんて起動できる状態じゃなかったし。

大体、ピンチになった時にゲームを起動できる状態にあるわけがない。

うぅむ。ゲームか。

想い出の彼の言葉と言っても、結局、私の夢の中での言葉でしかないわけだし。
しかし次に打つ手がない私には、それ位しか考えられなかった。
そして、なんでもいいから、次の手を打ちたかった。

ただ、それだけの思いで、私は、とりあえずゲームを起動しようと思った。

でもゲームなんて、私の部屋にはない。
魔王の部屋にしかない。

まさか、ゲーマーの魔王がやっていたゲームなんか起動しても、意味はないよね。

でも、次の手も浮かばなかった私は魔王の部屋へと移動した。
いや、移動しつつも色々、考えたんだけど。
それしか思い浮かばなかった。

「少女。どこに行くんだ。バス権の話は本当か。ウソだと、ウソだと言ってくれッ」

フリチンは、そういうと魔王の部屋に向かう私のあとをついてきた。

うるさい。
ついてくるな。フリチン。
とにかく私は、思い当たるゲームを起動して想い出の彼を呼び出すんだ。
そして、魔王のいぬまに幸せをゲットするのよ!

それは、乙女の妄想に過ぎないけど。

ま、どのゲームか分からないし、本当にくるのか怪しいからね。

…――と、ここだ。

魔王と書かれた銅製のネームプレートが、銀色の鎖によってつり下げられている。
元々、お父さんの書斎で厳粛なムードがあったのだが今では魔王の部屋。
なにか言い知れぬ邪気のようなものが漂っていた。
できれば、この部屋には入りたくない。
汚されそうだ。

でもゲームは、ここにしかない。

入りたくないけど私は意を決し、魔王の部屋にあるドアをゆっくりと開けた。
果たして、そこにあったものはとても不可思議だった。
予想を超えたものがあったのだ。

ゴクリ……。

~ 其の十五、ハートを狙い撃ちよぉ! 、了。

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【 愛羅武、魔王、~ 其の十四、凶悪な死角 】

「鮎菜」

聞き覚えがある声。
誰?

私の脳内に残る微かな記憶を頼りに、この声の主の正体を探った。

もしかして。
嬉しさのあまり、涙がにじむ。
この声は、遙か昔、私が、まだ子供だった頃、聞いた声だ。
声は、温かいトーンで、とても安心できた。

そうだッ!

この声の主は……、想い出の彼。

すなわち私の想い人。
やっと、やっと、私にも運がめぐってきたってか?
魔王以下、魔王関連のヤツらが、魔界に帰って、想い人が現われたんだから。

「鮎菜」

うん?
私の胸は止まる事を忘れたように高鳴った。
やっとの事で想い出の彼と再会を果たそうとしているのだから。

可愛い表情、OK!

可愛い声、OK!

可愛い仕草、OK!

準備万端。
出発進行! ヨーソロー!
私は、ゆっくりと声のした方に顔を向ける。

残念……。

ちょうど逆光で、まぶしくて彼の顔がハッキリとは分からない。

一体、誰だったの?
魔王たちは、すべて魔界に帰っている。
という事は彼は、魔王たちではないという事になるが、一体、彼は誰なの?
私は、まぶしさから逃れるように目を細め、彼を凝視した。

ねぇ?

君は、一体、誰なの?

「鮎菜。君がピンチになったらゲームを起動するんだよ。それが合図。忘れないで」

合図?
一体、なんの合図なの?
ますます強くなる光を避けるように目を閉じる。

「合図があれば、俺は世界の果てからでも君を助けに行くからね」

そうか。
私がピンチになったらゲームを起動するのか。
それが、ピンチだという合図。

そして彼は、私から合図があれば世界の果てからでも駆けつけてくれるのか。

どうやら想い出の彼は、そう言いたいのだろう。
でもゲーム。なぜにゲームなの?
どうも嫌な予感がする。
いや、でも。

そうか。

だから魔王たちが現われても想い出の彼は現われなかったのか。

そのゲームとやらを起動していなかったから。
すなわち私は合図を忘れていて、彼に私のピンチが伝わっていなかったのだ。
そうだったのか。

うふふふっ。あはははっ。

でも、結果オーライってヤツかな?
魔王たちは魔界に帰ったし、想い出の彼も現われてくれたんだから。
今、私は、この上ないほどに幸せだったんだから。

うふふふっ。

恥ずかしがり屋さんなんだね。
逆光で彼が見えないんだったら近寄るのみさ。
私は想い出の彼に駆け寄り、彼が、一体、誰だったのかを確認した。
おほっ。

「フッ。グット、モーニング。少女」

その茶髪のロン毛で、髪を優美にかき上げるあんたは……。

「そんなに俺が好きか?」

フリチン!?
いやぁぁ!! 彼はフリチンだったの!
ハァ、ハァ、とりあえず、私の想い出を汚した罪で殴っておく。

「フッ。相変わらずな凶暴さだな。少女よ」

私に殴られてサーティーワンアイスクリームのようなコブを作ったフリチンが言う。
そのアイスクリームからは、ゆらゆらと煙が立ち上っていた。
決して冷たくはないと主張するかのよう。

どうやら私は魔王たちが魔界に帰って、安心してしまったようだ。
安心して昨日は久しぶりに熟睡というものをしたのだ。
で、夢を見ていた。

想い出の彼が出演する豪華な夢を。

そう。
先ほどの想い出の彼は夢の住人。
ちくしょう。せっかくいい感じで、彼と再会できたと思ったのに。
大体、まだフリチンという馬鹿者が残っていたのだ。

不用心すぎた。

いまだサーティーワンアイスクリームを頭に残したフリチンの口が突き出される。
アホ。フリチン。まだ私の唇を狙っているの!
性懲りもせずに。

しかし私はフリチンに押し倒された格好になっている。

このままフリチンが、私に顔を寄せれば、すなわちキッシュという事に!
私は最高の夢から最悪の事態へと向かっていた。
絶対に嫌よッ!

「フッ。いやよ、いやよも好きのうち」

だから本気で嫌なの。
確かに、あんたは顔は格好いいけど、その性格をなんとかしなさい。
しかし、ここでいつもと違う展開になった。

そう。
いつもは魔王関連の人間が、私を助けてくれていたのだ。
しかし、今は誰もいない。

彼を制するものが、いなくなってしまったのだ。

フリチンは魔界出身で、曲がりなりにも魔神(多分)なのだ。
彼の力は常人のそれを逸脱していた。
マジでか。マジッスか?

「フッ。ささっ。少女よ。俺と熱き抱擁をしようではないか。ふははは」

さっき、サーティーワンアイスクリームを作った力では無力。
結局、アイスクリームを作るくらいの力しかない。
このままフリチンとキス?

いや、いや、マジで、あり得ないですけど。

恥ずかしながら、わたくし高三になってもいまだファースト・キッスなんですけど。
それを、フリチンみたいなダークなヤツに奪われたくはない。
初キッスは、甘いレモン味じゃないと嫌よッ!
もちろん想い出の彼と月夜にね。
乙女の妄想?

てか、貞操の危機!

ちくしょう! 昨日、部屋のドアにちゃんと鍵をかけて寝るんだった。
まるで鬼の首を取ったよう、フリチンが言う。
やっと俺の願いが叶うと。

「フッ。少女。先に言っておこう」

ていうか。
その前に私は今、ベットに押し倒された格好になってるんだよ。
なに、このとても悲しい状況。

「俺はバス権での屈辱を果たせれば、それでいいのだ。お前など好きではない」

好きじゃないなら、ますますもってどいてよ。
あんたは、今ね、花も恥じらう乙女に馬乗りになっているんだよ。
フリチン、本当にどいてよ。
お願い。

この悲しい状況に、堪らず目に涙がたまってきた。

「フッ。魔王の嫁(※注、予定)が無様だな。これで、やっとヤツに借りを返せる」

「グズ。本当にそれだけの理由で、私のファースト・キスを奪うの?」

「それだけだと?」

フリチンは、途端、鬼のような形相になる。
地底の底から響くような声で、私を威圧しつつ、言葉を繋げる。
ゆっくりと。

「少女よ。それだけだと言ったのか?」

一語、一句、ゆっくりと。
いつになく真剣なフリチンが怖くて、私は言葉を失った。

「少女よ。お前の口は、それだけだと言ったのかと、そう聞いているのだが?」

だって、ファースト・キスだよ。
なによ。このフリチン。
怖いよ。

私の目から涙が零れる。

「俺の受けた屈辱が、その程度だったのかと、そう聞いているのだが?」

「グズ。だって、ファースト・キスだし、想い出の彼が……」

「お前は、少々、勘違いをしているようだ」

なんでよ。
なんで、魔王たちがいない時に限って、フリチンが怖いモードに入っているの?
いつもだったら地面にめり込んだり、真っ二つなったり、消滅なのに。
そんな立ち位置のフリチンが、なんで?

「なんだったら、このままお前をピーしてもいいんだぞ」

そのピーは、なにを消したピーなの?
家族でご飯を食べながら映画を見ていたら、みんな気まずくなった系のピー?
いやぁぁぁ。

馬乗りになっているフリチンが余計に怖い。

魔王。もう魔王でいいから、今すぐ、この状況から助け出して!
ルンルンを魔界の入り口に投げ込むじゃなかった。
そう思ったものの後の祭りだった。

グズ……。

~ 其の十四、凶悪な死角、了。

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【 フロリダより愛を込めて 】

日本の総理大臣を狙う男。アメリカは、フロリダ州在住のジョージ・マイケル。

フロリダより愛を込めて、了。

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将来、月に移住したいと思う今日この頃。現実的には一歩、一歩、着実に。基本を大事に。

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