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E★エブリスタ

では、▼以下より、私の世界をお楽しみ下さい。
     

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【 悪魔ちゃんと天使くん、~ その四十八、ケイブルグラム 】

今、ロキとサドクは夜の国のネオンを避けた街はずれにいた。
ネオン街を外れたには場末にバーが在ったのだ。
ロキは、店のオーナに借りがあった。
時間はもちろん深夜。

彼は、この場末のバーを貸し切りにして、サドクとの修業をする事としたのだ。

バーには、木で作ったハンドメイドのカウンター席と、テーブル席があった。
照明は間接照明で窓がない分、薄暗い店内が更に幻想的だった。
店内で、かかっている音楽は、ジャズ。
オーナー意向だ。

そのバーは、なんとも洒落たバーであった。

ロキは、サドクにカクテルを勧める。
ケイブルグラムだ。

ケイブルグラムは、ウイスキーをベースにした冷たいタイプのカクテルである。

アメリカで誕生したカクテルで、海底電信という意味がある。

自分はウイスキーをすする。
店のオーナは、彼らの修業を邪魔しないように静かにたたずんでいた。
今回、オーナは脇役であり、背景の一つであった。

ロキのグラスにある氷が、カランと軽快な音を立てて溶けた。

「サドク。神の視座とはどういうモノだと思う?」

ロキが、おもむろにサドクに告げた。
その横顔は、つかみ所のない飄々とした表情だった。

ポーカーフェイス。

そう言えば、とても便利だが、そんな言葉では表現できないような表情だった。

笑っているような、それでいて怒っているような表情だった。
ロキが、あの創の国の王、アルダムとダブった。
ロキ。彼のオーラは……。

見るものによって、その姿を変える変幻自在なオーラであった。

見るものが一番、嫌悪しているものになるオーラ。
いや、ロキのそれは、オーラという枠組みで表現できる次元ではなかった。
彼の持つ雰囲気、オーラは……。

すべてを呑み込む力。

場をすべて掌握し、そして、自在に操る力であった。

それは、たとえ、勝負の相手だろうとだ。
つまり、一流のギャンブラーは、自分自身の手さえ把握していればいい。
しかし、これが超一流となると対戦相手を始め、すべてを……。

そう。

場に存在するすべてをコントロールするのである。

ゆえにロキのオーラとは呼べない、それは見たものの一番、嫌悪する姿となるのだ。
サドクは、再び、ロキに気圧され、なにも答えられなくなった。
彼は、一流の策士であるはずなのに。

「グット。ヘルメス・ディ・カイト。噂は聞いているぜ」

ロキが言う。
それでも、サドクの足はすくみ、そして、言葉を吐こうにも上手くいかない。
先ほどロキと存在を賭けたギャンブルをしていた時、以上に。
それだけ、ロキは真剣だったのだ。

「お前は、創の国をひっくり返したいらしいな」

サドクは、ロキにそこまで言われて、ようやく言葉をなんとか吐き出せた。
その声はとても弱々しく、そして、焦りに満ちていた。
決してサドクらしくないトーンだった。

「な、なんで、その事を……」

「アカシックレコードさ。お前の事は、すべて把握してるぜ」

「だから俺の過去も筒抜けなのか。俺が天使に転生した経緯もすべてお見通しか」

「グット。その通りだ。すべて分かっている」

「それが神の視座。アカシックレコードから必要な時に必要な情報を得る力か」

「グット」

サドクの言ったそれは正確には正解ではない。
しかし、神の視座を持つロキですら、それ以上の的確な答えを持っていなかった。
彼が、神に伝授された時も、そうとしか理解できなかったのだ。

ロキがゆっくりとグラスを揺らす。

氷が軽い音を立てる。
サドクは、ロキが注文し、勧められたカクテルを飲もうとはしなかった。
いや、正確には飲もうとはしなかったのではなく飲めなかった。

それだけ彼は、ロキに気圧されていた。

完全にロキに呑まれていたのだ。
また彼が、ウイスキーの入ったグラスをゆっくりと揺らす。

「ま、サドク、飲めよ。お前、酒はダメか?」

サドクは、酒がダメな方ではない。
が、決して強い方でもない。
ゆえ躊躇した。

「神の視座を伝授するには、酒は不可欠なんだよ。ま、飲めよ。サドク」

ロキが、サドクの飲むものをカクテルにしたのには意味があった。
彼は知っていたのだ。サドクが酒が強い方ではない事を。
ゆえに飲みやすいカクテルにした。

「俺が神から神の視座を伝授された時は七日間、徹夜したあとに伝授されたんだぜ」

「七日間の徹夜のあとだと!? 眠かっただろう?」

「ああ。とんでもなく眠かったぜ」

「……」

「それに比べれば、酒なんて、全然、可愛いもんだろう?」

サドクは考えた。
七日間の徹夜と酒、一体、どう繋がるのかと。
不意にかかっているジャズの音量が大きくなったような気がした。

「サドク。飲めよ。これも修業だ」

酒を飲む事が修業。
そんな話、いままで聞いた事がないとサドクは思った。
しかし、ロキにそう言われた以上、酒を飲む事が修業になるのだろう。

サドクは、カクテルに一口、口を付けた。

ロキはサドクの方を向かず、自分のグラスを見つめていた。
グラスの中には、サドクの困惑した顔が、しっかりと映りこんでいた。
そして、更に酒を勧める。

「カクテルだからジュース感覚で飲めるだろ。ま、飲め。飲め」

修業と言われるのだから仕方がない。

彼は、更に酒に口をつける。
ロキに言われるがままに、喉を鳴らしつつ。
本当にこれは修業なのかと、頭の片隅では疑問に思いつつも。

サドクは下戸ではない。

下戸ではないが、それでも強い方ではない。
彼の顔は、どんどんと紅潮し始め、酒が回ってきていた。
ロキがほくそ笑む。

「どんどん飲め。サドク。オーナ、おかわりだ」

どんなカクテルをどれだけ注文され飲まされたのかサドクは分からなくなっていた。
今、彼は完全に泥酔状態で、意識がもうろうとしてきていた。
フフフッとロキが笑う。

「グット! そろそろ頃合いか」

サドクは思った。
一体、なにが頃合いなのだろうかと。
そのもうろうとした意識の下、なんとか意識を保とうと。

そんなサドクを見て、不意にロキは言った。

「その状態でアカシックレコードにアクセスしてみろ。そうしたら分かる」と。

サドクはアカシックレコードのアクセスに慣れていない。
ゆえにアクセスするには集中を必要とする。
泥酔状態では無理だった。

「バット。俺は七日間、徹夜の末にアクセスさせられたんだぜ!」

そうか。
サドクがロキに無理に酒を飲まされたのには、そういう意味があったのか。
意識が混濁している状態でアクセスするという意味がだ。

そう思ったが、彼はアクセスできないでいた。

集中できなかったのだ。
酒を飲み交わし、神の視座を伝授する。
いかにも不敗のギャンブラー、ロキらしい伝授の仕方だった。

「サドクよ。もう一杯、飲むか?」

ロキが笑いながら言った。

~ その四十八、ケイブルグラム、了。

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【 愛羅武、魔王、~ 其の十三、魔界の入り口 】

「オラをなめるでねぇぞ。勇者、レータイン!」

一弓くんが口を開く。
彼の得意技であり、最終奥義である漆黒の光球を口の前で集束し始めたのだ。
この技は魔王に破れているが、魔王レーザに匹敵する強力な技だ。

「フッ」

勇者は、一つ笑うとサーベルを抜いた。

「貴様は僕に、そんなチープな技が通用すると思ったのかッ!」

サーベルは蒼い神々しいオーラをまとっていた。
煙のように立ち上る蒼いオーラ。
彼は本気だ。

そして、また流れるように勇者は漆黒の光球を鈍い音を立てて、斬った。

一弓くんの漆黒の光球は真っ二つにされ、霧散した。
まるで魔王レーザが当たった時のように。
一弓くんは、あ然とする。

勇者は、前魔王である一弓くんをまるで相手にしないほど強かった。

「ぞんな。勇者、おめぇさは。一体、なにものだっぺ!?」

「僕が何者かだと? 僕は勇者、レータイン」

「お、オラはバス権の特別審査員を務める一弓だっぺ。そのオラが、オラが……」

一弓くんは自分の技が魔王以外に破られた事が信じられないようだ。
というか、バス権の特別審査員って、凄いの? それ。
だってバス権二位がフリチンだよ?

「勇者、レータインよ」

魔王。
一弓くんが現われた時のように、また魔王に借りをつくるの。
それだけは避けたかったが、仕方がなかった。

「ヘーイ! ペチャガール。このルンルンさまが、勇者を倒すのだよ。オッケー?」

もののふか。
お前は当てにならないから引っ込んでて。
魔王は、いつになく真剣な顔をして、私の顔をのぞき込んでいた。

「やっぱり、一度、魔界に戻った方がいいな」

なによ?
魔界に戻る手土産に地球を滅ぼすの?
それとも、人間を千人ほど奴隷として、魔界に連れて帰るとか。
魔王の考えそうな事だ。

「俺は一時、魔界に帰る。勇者を連れてな。鮎菜よ。暫しの別れだ。すまぬ」

いや、なにもすまなくないから。
むしろ地球を滅ぼすとか、奴隷を連れていくとか言わないのが魔王にしては殊勝だ。
感謝したい。

そして、もう二度と、この世界に戻ってこないでねッ!

「フッ。魔王よ。再び、魔界で、この僕と勝負しようという事か?」

勇者が、うつむき加減でいう。
もう慣れてきたけど、彼ってフリチンなんだよね。
しかも、あそこだけ、まるでモザイクのようにフランスパンだし。
ともかく!

アホは、アホで集まって勝手にやってよ。

「で、ルンルン。お前に頼みたいんだが。俺がいない間、鮎菜の身を守って欲しい」

いや、その台詞、格好いいけど……。
ていうか、ルンルンも一緒に魔界に帰るんじゃないの?
親指立てるなッ!

「よかろう。僕はペチャパイ同盟の同志として、立派に任を全うするのだよ」

だから、もののふ、力強く親指を立てて格好をつけるなっちゅに。
せっかく、やっと魔王と別れられるのに。
オマケも持って帰れッ!

「ルンルン。お前だからこそ、俺の嫁(※注、予定)を任せられんだぜ」

「任せておくのだよ。魔王。安心して魔界に帰れ」

「頼んだぞ」

うほっ。
やっぱり、ルンルンは置いて帰るわけ?
そうだ。ここは一弓くんに頼んで、ルンルンを消滅させよう。

「オラも魔界に帰るだぁ!」

待ってよ。
プリーズ! 一弓くん、君だけが私の望みなんだから。
……でも、そっか。仕方がないよね。

一弓くんの気持ちを大事にしよう。彼は魔王ラブな乙女なんだから仕方がない。

「オラ、里美さんを連れてくるだ。魔王さま、連れていってげれっ」

おほっ。
里美まで、魔界に連れていくってか。
里美の代わりにルンルンを連れて帰ってくんないかな。

「開門!」

魔王が、空に向かって手を挙げ、手のひらを開き、気を集中させる。
真っ黒に空間が歪み、ぽっかりと穴が開いた。
空に開いた穴。

あれが魔界の入り口……。

そうだ!
魔王たちが、あの穴に入ったあと、もののふを投げ込めばッ!
そうじゃん。そうだよ。万事解決だッ!

私は頃合いを見計らって、ルンルンを魔界の入り口に投げ込む算段を立てた。

「里美さんを呼んできたっぺ。さぁ、行くっぺよ。魔王さま。勇者よ」

里美。
本当に魔界に行くんだね。
……轟くんに会ったら謝っといてね。

「鮎菜。きっと魔王さまを手に入れるからね。応援してて。そっちも頑張ってね!」

いや、魔界にまで行くって、里美、あんた、凄いよ。
私ですら、その勇気は皆無だよ。
本当に感服だよ。

ま、そんな里美だったから私とも仲良くなれたんだけどね。

とにかく、頑張ってね。
私は、魔王と別れ、ルンルンを始末したら、晴れて無罪放免だからさ。
やっと、こんな非日常から解放され平和になるんだから。

「では、ゆくぞ。勇者レータインよ」

「フッ。魔王よ。お前の死に場所は魔界だというのだな。よかろう。相手になるぞ」

と二人は、にらみ合い、格好いい場面になっていた。
が、周りがどうにもしまらなかった。
里美と一弓くんが。

「魔界だっぺ。魔界。やっと帰れるっぺ。やれやれだっぺさ。モサモサ」

「魔王さまが支配する世界か。ドキドキ」

いや、二人ともモサモサとかドキドキとか口で言うなや。
大体、モサモサって、一体、なによ?

ワキワキ。

そして……。私は、四人が魔界の入り口を通り抜けた、その瞬間を見逃さなかった。
ルンルンの頭を、砲丸投げの砲丸を持つように掴んだ。
そして、豪快一線、彼を投げた。

「あんたも、魔王と一緒に魔界に帰れッ!」

と。
そして、ルンルンを含め、五人が無事に魔界の入り口を通り抜けたあと穴は閉じた。
やった。やったわ。これで、私に平和が訪れるのよッ! と思った。

しかし、それは、とても甘い考えであった。

ベリー、スウィーツと。

そんな言葉が、私の頭の中で、いつまでもリフレインしていた。
魔王、ヤツは、この世で最低、最悪であった。

~ 其の十三、魔界の入り口、了。

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【 UFOの日 】

目の前に緑色した生物がいる。
額には触覚があり、目はアーモンド状の大きな目。
宇宙人……か?

「う、宇宙人。宇宙人ですよね?」

その緑色をした宇宙人らしき生物が答える。

「※♂♭@※♭‡」

その言葉は聞いた事がなく、彼が宇宙人だいう事を明確に示していた。

「おっと……、万能翻訳機を使うのを忘れたぜ」

「!」

更に驚く事に、なんと宇宙人は日本語を流ちょうにしゃべった。
その万能翻訳機とやらを使ってだが。
僕は、宇宙人に尋ねる。
恐る恐る。

「……宇宙人、ですよね?」

「宇宙人じゃねぇよ。お前こそ、宇宙人だろ?」

宇宙人から思わぬ答えが返ってきた。
彼は、自分の事を宇宙人ではないと言う。そして、僕が宇宙人だと。
そう言ったのだ。

僕はれっきとした人間。
決して宇宙人ではないと断言できる。
僕は、宇宙人に宇宙人と言われた事に、ちょっとムッとした。

「僕は、生粋の地球人です。あなたは宇宙人だ」

「フッ。お前、馬鹿だな」

「なにがです!」

「俺は、れっきとしたピタゴラ星人だ。宇宙人じゃねぇよ。地球人よ」

ピタゴラ星人にとっての宇宙人、……確かに。

くわっ。

UFOの日、了。

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【 悪魔ちゃんと天使くん、~ その四十七、悪魔と策士 】

…――涅槃はキングのカードを見つめていた。

そこに鈴音の深い心の闇があるような気がしていたのだ。
しかし、そのカードは、どこにでもあるような普通のカードでしかなかった。
涅槃はカードを手に取る。

「お嬢さん。そのカードに仕掛けはありませんよ」

ディーラーの天使が口をはさむ。
カードに仕掛けがあるか、ないか、そんな事は問題ではなかった。
彼女は鈴音の深遠なる心の闇を理解したかったのだ。

先ほど激昂した涅槃。

そして、鈴音を理解したいという涅槃。

彼女は、まさしく悪魔であった。
あの時、鈴音は何気なく、このカードを抜き取り、裏返し伏せて置いた。
涅槃は、その時、鈴音から言いしれぬ闇を感じ取ったのだ。

「主は、余の闇を理解しようとしてくれるのか?」

鈴音がおもむろに言った。
その声は、とてもゆっくりと落ち着いているが、どこか悲しかった。
それが涅槃には痛いほど分かるから、辛かった。

涅槃自身、今まで目を向けてこなかった世界に知らない事がやまほどあった。

その経験から、鈴音を闇の底から救い出せるような気がした。
しかし、鈴音は涅槃の思いを無碍に斬り捨てる。
闇に関わらせたくなかったのだ。

「余の心の闇は、主らでは決して理解できない範囲にあるのじゃよ。あきらめよ」

と。
鈴音は自分を理解しようとしてくれるだけで充分だった。
以上に涅槃が自分が抱える闇に呑み込まれないか、それだけが心配だったのだ。

彼女の心の闇は、とんでもなく大きかった。

だから、まるで冷たい人間のように涅槃を近づけまいとしたのだ。
しかし、涅槃はサドクに救われていた。
彼女の心の闇を溶かし。

サドクが、すなわちヘルメス・ディ・カイトであるか、どうかは問題ではない。

サドクという天使が現われ、彼女は救われたのだ。
涅槃は、その恩を、今度は鈴音という少女に返したいと思ったのだ。
彼もきっと、それを望んでいると。

「無理じゃ。余の心の闇は、誰にも理解できぬ。たとえ神や魔王じゃろうとな」

それでも拒む、鈴音。
再び、キングのカードに目を移す、涅槃。
やはり、手がかりは、鈴音がおもむろに裏を向けて伏せたこのカードだ。

彼女はなにを思い、このカードを伏せて置いたのか。

涅槃は、その類い希なる頭脳で、あらゆる可能性を検索し、考えた。
キングとは、自分の事を言っているのではないだろうか。
すべての上に立つ王さま。

すべての上に立つがゆえに孤独で、理解されない存在である王。

鈴音は、他人の思考の醜さが分かると言っていた。
人は計算高く、打算的な部分がある。
それなのだろうか。

しかし、正解ではないような気がした。

なぜなら醜い部分が見えるのならば同時に素晴らしい部分も見えるはずだと思った。
それを見れば、彼女の心はたとえ闇に閉ざされても光が射し込むはずだ。
人は、決して醜い部分だけではないのだから。

「お嬢さん。それ以上は、あちらの方に失礼ですよ。おやめなさい」

ディーラーの天使が釘を刺す。
確かに、いくら鈴音の為とはいえ、これ以上は。
そう思った涅槃は、鈴音の心の闇を探るのは、止める事にした。

いくら彼女の為でも、心に土足で踏み込んでは意味がないと思い直したのだ。

「それから……」

ディーラーの天使が、告げる。

「ロキさまよりお言付けです。あなたさまの相方の修業が終わったとの事ですよ」

「うむ。主は旅を続けていたのじゃろう。そちらを優先せよ」

鈴音が、また涅槃を突き放した。
まるで涅槃が人間だった頃、他人をすべからく突き放していたように。
涅槃は、はたとキングのカードを手から落とし、言った。

「終わったの!」

と。
そして、ディーラーの天使を見つめる。
彼は相変わらず飄々としていて、また手を扇状に拡げて応えた。

「わたくしはロキさまの一番弟子でございます」

そうか。
だから夜の国に現われた鈴音という化け物を退治する為に彼は勝負を挑んだだと。
ロキが不在の今、一番弟子である彼は夜の国を一任されていたのだ。

「ま、一番弟子とは言っても、逆にロキさまの看板に泥を塗っただけですがね」

とディーラーの天使は鈴音を見て、苦笑いをした。
結局、この化け物は倒せなかったと。
鈴音はフッと笑った。

「余が唯一、思い通り勝てなかった相手。それがロキじゃ」

「鈴音、ロキとも戦った事があるの!?」

「うむ。じゃが今、ヤツも幾分か隙があるはずじゃ。久しぶりに勝負をするかのう」

「鈴音。なんで、そんな事が言えるの? ロキに隙なんてないわ……」

「ヤツは敗北の余韻に浸っておる。今が勝ちどきじゃろうな」

「!」

そう。
鈴音はロキとサドク、涅槃の勝負を知っていた。
そして、彼は今、敗北の余韻に浸っていると、そう推察したのだ。

鈴音、彼女は一体……。

涅槃は、そう思ったが、考えるのを止めた。
先ほど天使に釘を刺されたように、これ以上は、鈴音の心に土足で踏み込む行為だ。
そして、なにより、サドクが神の視座伝授の修業が終わったのだ。

彼女の心は、はやった。

サドクの馬鹿ちんが、修業を無事に終えた事を喜んだのだ。
そして神の視座を手に入れた事を喜んだ。
よくやったねと。

ここまでで、涅槃と鈴音の小さな冒険は幕が閉じた。

無の国の王、鈴音と悪魔、涅槃の冒険が。
それは涅槃にとって、とても刺激的で有意義な冒険であった。
さて。

視点をサドクに戻そう。

彼は一体、ロキとどんな修業をしたのだろうか?

そうして、ロキとサドクの修業という物語の幕がゆっくりと開けていった。
それはサドクにとって、とても、信じられないような修業だった。
ロキは、王の任を離れ、彼に付き添った。

彼に神の視座を伝える為に。

サドクは思った。
これは一筋縄ではいかねぇぞと。
彼は、また星埜銀杏と出会った時のように策士として、存在し得るしかなかった。
考えるのは、面倒くせぇなと、心の中でつぶやきつつ。

しかし、そこには確かに一流の策士がいた。

~ その四十七、悪魔と策士、了。

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【 RM、~ その三、モノ 】

今日は彼の仕事はお休みだ。

そう。
今日は一日中、マスターと一緒にいられるのだ。
生憎、外は小雨がばらついていた。

「マコ。いつも寂しい思いをさせて、ゴメンね。今日は、一日、一緒にいようね」

マスターが、私に優しい眼差しと共に温かい言葉をかけてくれる。
私は、それだけで胸がいっぱいになり、嬉しくなる。
かごの中の鳥である私の幸せ。

冷蔵庫から、フルーツジュースを取り出し、クッキーの包みを開ける。
私は食べられないが、これはマスターの好物だ。
テーブルに並べる。

「さて、今日はなにをしようか」

彼がフルーツジュースを一口、口に含み、クッキーをほおばる。
私は、彼さえいれば、なにをやっていてもいい。
微笑みながら彼を見つめる。

「マコ。なにかしたい事はあるかい?」

私は、ゆっくりと私の頭をマスターの肩に乗せる。
そして、彼の右手を優しく掴む。
ゆびを絡める。

「マスター。このまま。もう少し、このままで、幸せを実感したいです」

「うん。そうだね。いつも寂しい思いをさせているんだからね」

「はい。でも今の私は幸せです」

「僕もだよ」

絡めたゆびから彼の温もりを感じる事はできない。
しかし、それでも、私の心は確かに彼の温かい心を感じ取り、幸せだった。

私は機械。

しかし、感情があり、心もある。
だから彼の心の温もりを感じる事ができるし、幸せも実感できる。
私はそっと潤んだ瞳で、マスターを見つめる。

人間とは欲深い生き物だ。

もちろん私はロボットだが、それでも人間のような感情と心がある。
だから、もっとと欲深く、彼を求めてしまう。
それは叶わぬ願いでもだ。

「マスター。私、前から聞きたかった事があるんですが、聞いてもいいですか?」

「なんだい? マコ」

やっぱり、私は欲深い女だ。
今、ここでマスターに聞きたい事は、それ以上を望む心の表れ。
彼の身体の温もりを感じたいという願望の表れ。

「なんでマスターは私をクローンではなく、アンドロイドとして、創ったのですか」

それ以上を望めば、自ずと疑問に思う事。
しかし、マスターは微笑みを崩さず、ゆっくりと私に応える。
まるで、心を包むよう。

「マコは、僕の身体の温もりを感じたいのかい?」

「はい。クローンであれば、私はマスターの温もりを身体で感じられたと」

「いいかい。マコ」

「はい」

「この世界で、一番、尊い愛は、お互いを想い合う事なんだよ」

「尊い愛? でも……私はマスターの愛を身体全体で感じたいと思ってしまいます」

やっぱり私は欲深い女なのだろうか。
それでも、私はマスターの温もりを感じたいと思うし、それ以上を望んでしまう。
そんな私を彼は、また温かな笑顔で包み込み、言葉を続けた。

「マコは、これでいいんだとは思えないかい?」

「はい。どうしても次へ、次へと」

「ふふふっ。それだけ、僕の事を愛してくれているんだろうと思うよ。でもね」

「はい」

「僕はマコに汚れて欲しくないんだ。僕のわがままだけど」

「汚れる? 愛し合う事は汚いのですか?」

「そうとは言わないよ。でも、僕はどうしても君には綺麗なままでいて欲しいんだ」

私には、マスターの言っている事の意味が、いまいち分からなかった。
なぜ、愛し合う事が、私が汚れる事になるんだろう。
綺麗なままでいるってなに?

「僕は君と手を握って、そして君が微笑んでくれれば、それでいい」

プラトニック。
私の頭の中に、そんな言葉が浮かんだ。
でも、私は彼の身体を受け入れたいし、その温かさを感じたい。

「それにね。マコは一つ、見落としているよ」

見落としている?
マスターは、なにが言いたいのだろう。
私は、亜鉛緑色した瞳で、不思議そうに彼を見つめた。

「その時がくれば、僕は君をクローンとして造り直すよ。それじゃダメかい?」

私は疑問に思う。
マスターは、私をロボットからクローンに造り直すという。
造り直す。マスターは、私をモノ扱いしている。

「マスター。私は悲しいです」

「なんでだい?」

「マスターにとって、私はモノ以外のなにものでもないんですね」

「そんな事はないよ。君は僕の恋人だ。マコ。君は、なぜ、そんな事を思うんだい」

「造り直すって、そういう事じゃないのですか」

「あ。言葉が悪かったね」

マスターは、私の思わぬ反応に慌てて、私の頭をなでながら謝った。
頭をなでられたのは、正直、嬉しかった。
しかし、悲しかった。

彼に、造り直すと言われて、心がガラスのようひび割れた。

「時がきたら、君を生まれ変わらせるよ。ゴメンね。言い方が悪かった。ゴメン」

私にとってマスターはすべてだ。
ひび割れたガラスのハートは、元に戻らなかった。
私のすべてである彼が、造り直すと、とても悲しい事を口走ったのだから。
そんなものなんだと。

「マコ?」

「マスター。私はモノではありません。私はモノでは……」

私はロボットだから涙が零れない。
でも、悲しいという感情は確かにもっていて、今、私の心はそれに支配されていた。
上目遣いで彼を見る。

「モノでは、ないです。モノなんて言わないで」

「マコ。ゴメン。本当にゴメンよ」

「マスター……」

「マコ。君はモノじゃないよ。君は確かに人間なんだ。言葉が悪かったよ。ゴメン」

マスターは、そう言うとフルーツジュースに手を伸ばした。
そして、一口、口に含むと喉を鳴らし飲み干した。
きっと喉が乾いたのだろう。

「どうやら僕の想いが、まだまだ弱いみたいだね。ゴメンね。マコ」

「?」

「この世で一番、尊い愛はお互いを想い合う事だと言ったね」

「はい。マスター」

「どうやら、僕は、まだマコの愛に応えるだけの資格がないって事なんだよ」

「言っている言葉の意味がいまいち分かりませんが」

「僕は君をモノ扱いしてしまった。そうだね。今はまだ僕の君を想う力が弱いんだ」

そうか。
なんとなく分かった。
マスターが、私が汚れるのを嫌い、綺麗なままでいて欲しいと言った意味が。

彼は自分の欲望を敢えて自分で制約しいるんだ。

彼自身が私の愛に応えられるまで。

そう思ったら心の鎖が解き放たれ、自然と悲しいという感情が薄れた。
彼は、間違いなく、私の事を愛そうとしてくれていると。
そう思えたから。

「君と温もりが交わり合う時は、僕の愛が君に応えられるようになってからだよ」

彼は、力強くそう言ってくれた。
そう言った彼の瞳には確かに私への愛が宿っていた。
嬉しかった。

素直に。

顔がほころんだ。
そして、いつまでも、このままでいたいと心の底から願った。
マスター。私はマスターを愛していますと。

~ その三、モノ、了。

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【 惜しい人を亡くしました 】

長寿の秘密。
人間は、なぜ短命と長寿に分かれるのか。長寿の秘密に迫る。

私が書いたベストセラーになった本の題名だ。
私は、自分の人生すべてを賭け、この本の執筆に己の全身全霊を傾けた。
結果、ベストセラー。

満足だった。

しかし、満足した幸せと共に私に死が訪れた。
文字通り、私は、この本の執筆に我が人生すべてを賭けたのだ。
ま、満足したのでよかったが。

享年十二歳。

くわっ。

惜しい人を亡くしました、了。

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【 信じるマン、第三十九話、マハトマ 】

「たとえば、お前が天才だったとしよう」

イエローが、いつになく真面目な顔をして、俺に話しかけている。
キム・キムに低脳と言われた俺が天才だと言っている。
ま、たとえばの話なんだけど。

「その才能は、一体、どこからきたのだと思う?」

俺は、もっこりフランスパンを抑える為に必要に迫れ難しい本を読みあさった。
そして読書好きになり、それから俺の知能はめきめきと成長した。
つまり、努力の人なのだ。

今までの人生、俺は読書などしてこなかった。

しかし、キム・キムの極悪改造手術で、必要に迫られ、読書を始めたのだ。
始めは本当に仕方なく努力を続け、そしてここまできた。
今では成長する自分が楽しみなのだ。

「そういう事だ」

確かに、今では勉強をする事が自体が楽しい。
自分自身が成長する事を楽しんで、どんなに難しい本でも読むようになっている。
努力とは自身が努力をしていると思っていては、それは努力ではない。

努力の本来の姿は、その行為を楽しんでいる状態を言うのだ。

俺は努力の人。
確かにいまだにイエローには勝てない。
しかし、それはイエローもまた俺と一緒で、楽しんで成長しているのだと思う。
俺は今、自分が一体、どこまでの事をできるか、それを楽しんでいる。

「だがな。希に正真正銘の天才が存在するんだ」

イエローは、また真剣な顔で言う。
この世には努力で作られる天才ではない、正真正銘の天才が存在するのか。
俺は、イエローの言葉をうなずき、興味深く聞いていた。

「アイヤー。照れるアルな。私の事アルか?」

うるさい。
キム・キム、お前はお呼びじゃないの。
今は、イエローの話が、楽しくて、お前の話なんか聞きたくない。

「そうだ。レッド」

おろ?
イエローよ。今、天才の話をしているんじゃないの。
なんで、そこで、そうだになるのさ?

「キム・キムは生まれた時から天才なんだよ。俺たちでは勝てないんだ」

なぬを?
キム・キムが、天才?
イエロー、いくら俺より頭のいいお前が言う事でも信じられないぞ。

「それより、魔空空間アル。エマジェーシーアル」

魔空空間なんて言うアホの間違いじゃ……。
確かに彼女は、俺たちを信じるマンなんてものに改造手術を施したけど。
それでも納得できない。

「天才と狂気は紙一重と言うだろう」

イエロー、今回は、いつになく真面目な展開だな。
大体、二重人格であるお前の頭のいい方しか発言していないしな。
いいの?

「ドロンパ商会の怪人27号が、攻めてきたアル。信じるマン、出動アル。ヨロシ」

うるさい。
だから、そのドロンパ商会は、ブルーだろうが。
とりあえず、俺は信じるマンに変身するつもりは毛頭ないから。
今はイエローの話が気になる。

「たとえばだ」

再び、イエローが大真面目な顔をして言う。
俺は、そのイエローの真剣な顔に呑み込まれるよう彼の顔を凝視する。
彼は大事な事を告げている。

「俺たちが努力の人だとするならば、希有な天才に勝てないんだ」

「イエローよ。なにが言いたい? 勝てるだろ?」

「俺たちが努力するように生まれついての天才も、また自然に努力しているのだ」

そうか!
俺が、どれだけ難しい本を読んで勉強しようともイエローには勝てないように。
生まれついての天才も、また努力をしているのだ。

生まれた瞬間から、あるアドバンテージを天才は維持し続ける。

また努力をする事によって。

イエローは、そう言いたいのだろう。
だからといって、キム・キムが生まれついての天才だとは信じられないが。
大体、信じるマンなんて変態を創ろうという発想がアウトだ。

「てか、カレーないか?」

うおっ。
イエロー、真面目な話をしていていたんじゃ……。

「カレーパワーが不足し始めた。カレー食わせろ。インド人もビックリ。マハトマ」

イエローが壊れた。
アホな方のイエローが、現われたぞ。
とにかく、真面目なイエローが今まで言った事をまとめよう。

この世には、生まれついての天才が存在する。

そして、天才も、また努力をする事によって、成長を続けている。
努力で天才になった人物が、いくら努力を続けようが決して天才には追いつけない。
なにせ生まれた瞬間に差がついているのだから。

その差を維持し続けられる。

確かに天才が努力を怠れば、俺たちでも追いつける。
しかし、希有な天才は、自分の才能を伸ばす事が楽しいと知っている。
ゆえに努力を怠らない。

すると、いつまでたっても、生まれついての天才には追いつけないという事になる。

俺が、いまだにイエローに追いつけないように。
イエローは、自分自身は努力の人と位置づけているようだ。
そして、こともあろうか。

生まれついての希有な天才が、キム・キムだと。

そう言っているのだ。
いくらイエローの発言だろうとキム・キムが、それだとは思わない。
いや、だからこそ、キム・キムがそれなのかもしれない。
イエローは、さっき言っていた。

天才と狂気は紙一重と。

「マハトマ」

ていうか、イエロー、お前はカレーが切れるとアホイエローに入れ換わるのか?

「無抵抗主義。ついていけない」

やっぱり、そのようだな。
とりあえずアホになったイエローは放っておいて。
彼が言ったようにキム・キムが生まれついての天才だとして、本当に勝てないのか。

「レッドしゃん。もう一人の天才を忘れてるでしゅよ。僕でしゅ」

ない。ない。
怪人27号、お前は俺より頭が悪い。
そんな事より、キム・キムには本当に勝てないのか。

「うむ。拙者から言わせれば、生まれついての天才などいないと言い切れるわい」

ピンクよ。
頭のいいイエローに比べれば、いくらか劣るが信頼に足る発言だ。
俺も、その意見に賛成だ。

「ふぉふぉふぉ。生まれついての王は、ここにいるがな」

グリーンか。
確かにグリーンは資産家の息子で、王の風格がある。
しかも、グリーンのそれは無条件に俺たちを平伏させるだけの威力がある。

という事は、生まれついての天才が存在してもおかしくはない。

しかし、それがキム・キムだとは言えない。
いや、キム・キムであって欲しくはないと俺は思っていた。
これから先、彼女に勝てないと白旗を挙げたくないと考えていたからだ。

俺はキム・キムを倒す。

それが俺の存在意義なのであり、目標なのだ。
その為には、なんでもやってやる。
手段は選ばない。

「仮にだ。俺がカレーパワーを手にしたとして、マハトマだ」

イエローよ。
お前の弱点はカレーパワーだな。
はからずも、カレーパワーが切れて、壊れ、お前の弱点を晒したな。

「マハトマ」

「ていうか、マハトマの意味知ってる?」

「フフフッ。レッドしゃん。僕は知ってるでちゅよ。マハトマの真の意味」

狂ったイエローの代わりにブルーが、口をはさんできた。
ブルーよ、お前の話など聞きたくない。
大体、分かる。

「偉大なる魂でちゅよ」

えっ。意外な事に、ブルーこと、怪人27号が言った事は本当っぽかった。
しかし、続く言葉で、すべてをぶちこわした。
やっぱりアホや。

「すなわち魔空空間の事でちゅね」

「マハトマ」

そして、イエローが、カレーを追い求め、またマハトマと言った。
イエロー、そしてブルー、ガンジーに謝れ。
てか、シリアスだったな。
今回は。

第三十九話、マハトマ、了。

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【 愛羅武、魔王、~ 其の十二、世界が違う勇者 】

「グホッ!」

「姫さま。姫さま。勇者です」

軽く窓をノックしつつ、あの変態露出狂の勇者が現われた。
まるで魔物が現われるように彼は現われた。
私の作戦は……。

当然、ガンガンいこうぜ、だった。

むしろ命令させろで、勇者に対して聖水でもふりまくか。
いや、聖水は絶対にダメだ。
相手は露出狂。

変態。

聖水は、あっちの聖水だと思って、余計に興奮するに違いない。
どっちの聖水とは聞かないでね。
聖水は聖水だから。

それ以上でもなく、それ以下でもなく。中間もない。

聖水……。

私よ。
一体、なにを口走っているの。
変態に感化された?

ま、勇者を倒した所で、どうせ経験値は五ポイントと言ったところか。

「姫さま。お話があります。どうぞ窓をお開け下さい」

私の部屋は、自宅の二階右角。
つまり彼は私の家の二階の窓に張り付いているのだ。
しかもヤモリよろしく、大の字になって、フランスパンを強調するかのように。

「勉強の邪魔」

私は一言、そう言うと窓を思いっきり開け放った。
もちろん窓に張り付いていた勇者は、弾き飛ばされるように落下していった。
あんたは魔王以上にない。

「僕の名前は、レータインです。姫さま。記憶にございませんか?」

勇者は二階から落ちて、豪快な音を立てて地面にめり込んだ。
レータインって、どちらのレータインさまよ。
どの面さげて、レータインなの。
あヘンタインか。
納得。

「そうですね。なにから話せばいいのか。話は長くなりますが、よろしいですか?」

ていうかね。
別にあんたと話したくないから。
今、私は看護士になる為に勉強を頑張っていたんだから邪魔しないで。

「アレは三日前。そう、僕は遂に魔王と対峙したのです」

勇者は、いまだ深々と地面にめり込んだままだ。
不意に勇者の身体が、宙に浮き始めた。
むくむくと二階に向かって。

なに?

そのキモイ動き。

「そして魔王を倒し、僕は世界を救ったのです」

短ッ!
それだけ? 長くないし。
見るべき話は、どこにもないしって!

むくむく。

勇者のそのフランスパンが怒張し、どんどんとでかくなっていった。
そして自然と二階に向かって彼の身体は浮いてきた。
もちろん倒れたまま。

キモッ!

「姫さま。お忘れですか、このレータインを」

なんと表現していいものか。
ちょうどマジックで、寝ている人物が空を浮く空中浮遊のような感じ。
空中浮遊の場合、仰向けてねているが、まったくその逆。
彼はうつぶせたまま、二階に向かっている。

まるで、エクソシストのあのシーンを彷彿とさせるような動き。

やっぱり、聖水か?

「鮎菜。でっかい音がしたんだが。大丈夫か!?」

はい。はい。
魔王、ノックを忘れていますよ。
あんたは今、乙女の部屋に乱入しているわけで、大丈夫もなにもない。

「ヘーイ! ペチャ、ガール。。君のルンルンがきたよ!」

お前も同罪。
そこに正座しなさい。
今から足の上に石を置いて、反省させるから。

「姫さま。レータインです。レータイン。魔王を倒し、魔界より帰還いたしました」

お前も座れ。
みんな正座して、反省しなさい。
あんたたちは、乙女の部屋に乱入しているのよ。自覚してるの?

「やっぱり、勇者か。お前、帰る場所を間違えているぞ」

魔王が、きっぱりと言う。
よく分からないけど、勇者は違う世界の人なの?
そう聞こえる。

「そうだ。勇者レータイン。お前の帰る場所は変態王国アユーナの町だろう?」

変態王国って。アユーナって。
タハハハ。

「そうだ。悪党ども。僕は魔王を倒し、アユーナの町に帰ってきたのだ」

いや、ここ違うから。
ここは地球で日本だから。変態王国アユーナなんて町は存在しない。
あったら逆に怖い。多分、ないと思うけど。

勇者は魔王たちの言う通り、間違えて帰ってきたんだね。

ていうか、みんな、さっさと正座して。

はい。そこに並んで。
今から足の上に石を置くからね。
はい。はい。あんたら、さっさと乙女の部屋に乱入した罪を贖罪する。

「魔王よ。やはり世界の均衡は崩れつつあるな。これは不味い事になっているぞ」

「ルンルン。こうなったらこの世界の地球を滅亡させるか?」

魔王よ。何気に怖い事を。
しかし魔王は勇者に敗れているでしょ?
しかも、その魔王を倒した勇者が目の前にいるわけで。変態だけど……。

「フハハハッ。勇者よ。お前が倒した魔王は魔王轟でしかない。俺ではないのだ!」

えっ。
今、なんて、言った?
もしもし? 私の耳がおかしくなったのかな?

あんた、魔王轟って、そう言ったの?

轟くん!
魔王にビーフをジュッと焼かれて、そんな事になっていたの。
しかも、この変態勇者に倒されてしまったの。

別に轟くんに特別な感情はないけど、それでも重いプレッシャーを感じる。

だって私のせいだもん。
魔王が、この世にきたのも、轟くんのビーフがジュッと焼かれてしまったのもさ。
元をただせば、すべて私のせい。ゴメンね。轟くん。巻き込んで。

「鮎菜。悲しむな。俺が仇をとるぜ」

ていうか。
あんたが焼いたの。以上。

「フッ。バス権二位の俺さまを忘れるな。フリチンさま、ご登場ォ!」

ヤツが例によって、お約束のように上空から颯爽と現われた。
しかもヤツは、二体に増殖していた。
フリチンが二匹。

「勇者に真っ二つにされ、増殖したのだ。ふはははっ」

「少女。Aカップ。バストとアンダーバストの差が10.7センチの美乳と見た!」

一人は増殖した理由を。
そして、もう一人は、再び、私の個人情報を開示していた。
勇者、魔王、やっちゃって、二匹のフリチンを。

「滅魔斬壊閃!」

「魔王レーザーッ! 滅!!」

魔王と勇者の共闘。
その強力なタッグに、さしものの二匹のフリチンは消滅した。
さすがに消滅すれば、もう現われはしないだろう。

ていうか、なんで部屋で看護士の勉強をしていただけで、こんな事になるの?

誰か、納得のいく答えをちょうだい。

「残るは悪党、二人だな」

と、そこに。

「待つだ。オラを忘れるでねぇ。オラはフリチンさまのようにはいがねぇぞ」

おお。
元魔王の一弓くん。
魔王関連の人間関係で唯一、心が安らぐ存在だ。

「悪党どものオールキャストか。いいだろう。このレータインが相手になってやる」

手のひらで来いと合図をする。
って、格好つけてるけど。彼、フリチンなんだよね。
名前じゃなくて、すなわち格好がフリチン。

「変態王国アユーナ、騎士団長、レータインの力をとくと味わうがいい」

一応、乙女の前だから自重してよ。
そう言いたかったが、彼には言っても無駄だろうと思った。
次元が違うんだろうね。
そう思った。

だって彼の住む世界は変態王国なんだものと……。

~ 其の十二、世界が違う勇者、了。

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【 いいわけない 】

20XX年、FIFA、日本ワールドカップ開催。

俺は人員不足で、急きょ、FIFA、日本ワールドカップに出場が決まった。
確かに、日本シリーズやオールスターに出場した経験はある。
しかしそれは野球での話。

FIFA、日本ワールドカップは、サッカーだ。

いくら人員不足だからと言って、俺のようなものが出場してもいいものだろうか。
俺より、適任なヤツは、たくさんいる。
本当にいいのか?

「ットラィーク、ツゥー!」

ま、そんなに悩んでも、俺は選ばれてしまったのだ。
選ばれた以上、全力を尽くす。
俺は審判。

「ットラィーク。バッターアゥット!?」

くわっ。

いいわけない、了。

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【 悪魔ちゃんと天使くん、~ その四十六、K 】

鈴音が裏を向けて伏せたカードに人差し指を添えるディーラーの天使。
真剣な眼差しで威圧するよう腹の底から響く声をしぼり出す。
一瞬、空気が切り裂かれたような気がした。
気迫。そう思えた。

「……お嬢さん。このカードは七以下だと思いますか。それとも七以上でしょうか」

鈴音が、何気なく選び卓に裏を向け伏せて置いたカード。
ディーラーの天使も数を知らない。
しかし……。

彼は、アカシックレコードにアクセスできるのだ。

ゆえに知っていると同義。
そんな事を考えて、答えるのを躊躇していた涅槃に向け、更に天使は続ける。
張り付いたような凍てついた口調で。たたみかけるように。

「一旦、アカシックレコードの事は忘れましょう」

「忘れる?」

「そうです。アカシックレコードの弱点も知っておられるのでしょう?」

涅槃には、ディーラーの天使の言いたい事が、よく分かっていた。
先ほど鈴音とディーラーの天使のギャンブルを見ていて、学んでいたのだから。
アカシックレコードの弱点を。

たとえ正確な過去や今、そして未来やが分かったとしても。

読み解く天使によって解釈が異なるという事実を。

「どうです。お嬢さん。確率五十%です。一つ、賭けをしませんか?」

天使は手を扇状に拡げ、言う。
涅槃は黒のベストに赤いネクタイをした彼が、まるでマジシャンのように感じた。
次になにをやってくるのか予測不可能なマジシャンに。

鈴音が、可憐な少女とは、まるで違うどう猛な生物に見えたよう。

「ギ、ギャンブルは、お断りよッ。絶対に嫌よ」

言葉が上ずる。
それだけ、彼女は目の前にいるディーラーの天使が、大きく見えたのだ。
彼女は、完全に呑まれていた。

これは星埜銀杏だった頃には、体感した事のない感覚だった。

いや、体感しようとしなかった感覚だった。
涅槃は、大人を小馬鹿にしていた。
希有な才覚があったから。

そして、世の中を知った気になって、絶望していたのだ。

しかし現状はどうだ。
今まで、目を向けようとしなかった世界に彼女以上の人は腐るほどいるのだ。
もちろん不敗のギャンブラー、ロキもそうだが。

鈴音に敗れたディーラーの天使すら、彼女は歯が立たないのだ。

「ギャンブルですか?」

「そうよ。ギャンブルは御免だわ。他を当たって」

「これはギャンブルではありませんよ。強いて言うならば弱肉強食、捕食ですね」

「弱肉強食!? どういう意味よッ!」

ディーラーの天使は、右拳を口の前にもっていき、一旦、間をとった。
そのあと、ほくそ笑む。まるで子供をからかう大人のよう。
彼は彼女を相手にしていなかった。

「言葉のままですよ。わたくしはあちらの方への負け分を回収したいだけです」

「馬鹿にしないで。私は、これでも、世界が望んだ才覚をもつ……」

「世界? 笑わせないで下さい。目の前のわたくしにも勝てないあなたがですか?」

ディーラーの天使は、なにが言いたいのだろうか。
彼は、鈴音の負け分である、勝負師特有の勘を涅槃に教える気はないのだろうか。
その言葉通り、涅槃から負け分を回収しようと考えているのだろうか。
どんどと口調が悪くなっている。
いや、それ以上に。

涅槃のプライドが、ナイフで滅多刺しになっていた。

生まれて、この方、彼女のプライドが、これだけ傷つけられたのは初めてだ。
そして、悪魔に染まり始めていた彼女は、暴走し始めた。
そう。彼の提案に乗ったのだ。

「いいわよ。賭けてやるわ。七以上か、七以下かよね。七以下に賭けるわ」

彼女は激昂していた。
なにがあっても冷静沈着が売りな彼女がだ。
涅槃の今の姿をサドクが見たら、なにを言われるか分からない。

それほど、我を忘れ、怒っていた。

「ま、ま、お嬢さん。落ち着いて。フフフッ。これが勝負師特有の勘ですよ」

「じゃな」

鈴音が、ディーラーの天使に追随する。

「ま、勘というより、正確に言えば、しのぎ方ですがね」

涅槃は、ディーラーの天使の言っている事の意味が分からなかった。
これが、勝負師特有の勘。しのぎ方? と。
怒りが一気にしぼんだ。

「お嬢さん。わたくしがマジシャンに見えませんでしたか?」

「えっ。ええ」

「一流の勝負師は、それぞれオーラを持っています。わたくしのそれは……」

「マ、マジシャン。なにをやってくるか分からないマジシャン」

「そうでござます。あちらの方はもっと怖いのですが」

そう。
鈴音のそれは、どう猛な生物だった。
しかも、それは、どんな生き物かも分からない真の恐怖である象徴である生物。

「そして、わたくしのしのぎ方は仕草や口で相手をハメるのでございます」

涅槃は考えた。
そういえば、鈴音との勝負の時も……。

『勝負の前に確認を。わたくしは、アカシックレコードにアクセスできます』

『知っておるよ。アクセスは許す。主の最善を尽くせ』

『お忘れかと思いまして……』

『大丈夫じゃ』

わざわざ、アカシックレコードにアクセスできる事を宣言していたと。
そのあとも、色々、口をはさんでいた。
彼のしのぎ方は、すなわち。

口も八丁手も八丁。

だからディーラーの天使はマジシャンのようなオーラなのだと。
なにが飛び出すか分からないマジシャン。
涅槃は感心した。

いや、感心せざるを得なかった。

彼女自身、あそこまで我を忘れ、怒り狂った事は初めてだったのだから。

しかし彼女には一つの疑問が頭の中に浮かんだ。
それは、あの生死ギリギリの勝負を繰り広げた不敗のギャンブラー、ロキの事。
彼のオーラはと。

あの時、サドクと涅槃に余裕はなかった。

ただ勝ちたいと切望し、そして、がむしゃらに闘った。
ゆえに感じる事ができなかったのだ。
彼のオーラを。

「うむ。疑問に答えよう。ロキのオーラじゃろう?」

鈴音が彼女の疑問を察する。
ロキほどの人物であれば、とんでもないオーラを持っているのではないかと。
鈴音ですら正体不明のどう猛な生物なのだから。

「う、うん。一体、ロキのオーラは……」

「オーラは無い。次元が違うのじゃ。すべてを呑み込む。ゆえに不敗だったのじゃ」

そうだったのかと涅槃が思う。
このディーラーの天使にすら手玉にとられるのに、本当によく勝てたなと。
やっぱり、ロキに勝ったのは、奇跡だと改めて思い知った。

「やっぱりギャンブルは性に合わないわ」

「じゃろうな。ただし、このしのぎ方は今後も役に立つじゃろうて」

「そうね」

涅槃は、そういうと天使と鈴音にお辞儀をした。
ギャンブラーにとって手の内を晒す事は、生死にも関わる事だと痛感していたのだ。
微笑む、ディーラーの天使。
目を閉じる鈴音。

「ま、主が体得するには、まだまだ時間がかかるがな」

「そうでございます。そう簡単に体得されては、わたくしたちの立場がありません」

「でも、ギャンブルはやらない!」

「……と申しましても、先ほど私の口車に乗ったのは、どなたでしょうか?」

「あっ!」

「フフフッ。さて……」

涅槃は自分が勝負に乗った事を思い出した。
そして、しきりに後悔し、恥ずかし紛れに鈴音を見つめる。
面白そうに笑う鈴音。

「これが勝負の結果です」

と、ディーラーの天使が、鈴音が伏せて置いたカードを表にめくった。

「キングでございます。わたくしの勝ちですね。フフフッ」

涅槃は右手を目に当て天を仰いだ。
やっぱり、私にはギャンブルは向いていないと。
ディーラーの天使と鈴音は、さも面白いと、お互いを見つめ笑い合った。

~ その四十六、K、了。

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【 邪魔者 】

今日は、サマンサと初デートだ。
俺は、生粋の日本人。つまり、俺の彼女は金髪ガールなのさッ!
ヒャッハッ!

「Sorry,I made you wait.I am sorry I have kept you waiting(お待たせ!)」

皆までいうな。分かっておる。
って、アレ?
誰?

「Samantha(サマンサ)」

いや、そうじゃなくて、隣りにいる男。
俺の知らないヤツだけど。
初デートだよ?

もしかして、サマンサ、君は、もう付き合っている人がいるの。

でも、普通、初デートの日に連れくるか。
俺、もう泣いちゃうよ。
誰なのさ。

「translator...」

なんなのさ。
俺、英語ダメなの知ってるでしょ。
ちゃんと日本語訳をつけてくれないと意味が分からないよ。

「translator...、ワシは、その和訳を付ける通訳じゃ」

くわっ。

邪魔者、了。

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【 愛羅武、魔王、~ 其の十一、勇者登場 】

魔王たちが現われてから、季節は、いつの間にか初夏になっていた。
梅雨に入り、雨の日も多くなってきた。
雨が降ると憂鬱だ。

普通の人以上に憂鬱になる。

魔王とルンルンの二人が、とてつもなく鬱陶しいのだ。

なぜか、もじもじと、傘を私に差し出すのだ。
もちろん、自分たちと相合い傘になりたいわけなのだが。この二人は。
死ね。

あんたらと相合い傘するくらいなら、轟くんと入れ換えて欲しい。

そう。
轟くんは、あの朝、魔王レーザーにビーフをジュッと焼かれてから見かけていない。
学校では、フリチンの馬鹿ちんが、轟くんを演じている。
彼は本当に魔界で修業しているのだろうか。

大体、なんで、みんな轟くんが大変な事になっているのが分からないわけ。

里美だけは理解者だ。
ただね。里美は、いつも私の後ろを付いてきて、魔王を狙っている。
魔王さま、ラブなのだ。一弓くんと一緒で。

そそ。
一弓くんも、あれから、私たちの仲良しグループに加入した。
いや、私は友達が多い方じゃないから。

里美と私、そして、一弓くんという面子だったのだが。

彼、乙女だもん。
学校でお昼ご飯を食べる時も、学校から帰る時も、私らは一緒で仲良くなった。
ただし里美と一弓くんは、魔王を奪い合うライバルだ。
でも、同盟のような感じになっている。

不文律で、抜け駆けしないと誓い合ったようで、二人はとても仲がいい。

いや、むしろ男の好みが合っていて、話が弾んじゃってる。
里美も、一弓くんも、どちらも器用なタイプじゃないから、ウソじゃなだろうね。
里美と一弓くんの友情は。
どちらにしろ。

どちらか早く魔王をお持ち帰りしてよぉ。

私の切実なお願いだ。

そして言い忘れたが、里美と私は、今年で高校三年生になる。
もちろん普通の人並みに進路にも悩むし、大学にいくのならなば受験勉強は必須だ。
それを、ことごとく邪魔をするのは……。

魔王とルンルンの二人だ。

魔王曰く。

「お前は魔界の支配者たる俺の嫁(※注、予定)だ。進路など悩まなくていい」

だから、嫌なのよ。それだけは。
それに、こんな境遇の私だけど、ちゃんとした夢を持ってるんだから。
ルンルン(そこ)、私の顔を見て笑わないッ。
渾身の裏拳が飛ぶ。

「フッ。ヘーイ! 相変わらずの剛拳だな。ペチャガール?」

彼が鼻血を垂らしつつ、私に言う。
死ね。死んでしまえ。
以上。

そう。そう。私の夢は、看護士になる事。

看護士になるには、進学するつもりだし、国家試験の勉強もしなくちゃならない。
魔王とルンルンのアホ、二人を相手にしている時間はないのだ。
それでも絡んでくる二人。

「鮎菜。お前の夢は看護士になる事だろう?」

魔王が話しかけてくる。
彼には、私の夢を話していないが、それでも分かる位に頑張っている。
それだけ真剣に私は、私の夢を追っているのだ。

魔王!

分かっているなら、邪魔するなッ!

「ハァ。ハァ。ペチャガールのナース姿、……めっさ萌ッ」

萌じゃねぇ!
ルンルン(そこ)、邪悪な妄想しない。
想像上の話だろうと、あんたなんかには、犯されたくないわよ。

「鮎菜。ハァ。ハァ。俺が患者役をやるよ。看護してくれ」

「ハァ。魔王よ。僕は医者をやるよ」

テメェら。
本当に私を怒らせたいの?
二人ともマリアナ海溝にコンクリート詰めで、沈めるわよッ。

「相変わらずの間抜け面だな。魔王。ルンルン」

フリチン?
ここで、フリチンが登場してもおかしくないところだが。
私の予想は、見事に外れた。

「おめぇさは!」

一弓くんが、驚きわなないている。
魔王とルンルンが、目を見開き、ゆっくりと声のした方へと顔を向ける。
彼らには、今、誰が言葉を吐いたのか分かっていたのだ。

「勇者! テメェ、生きていたのか!?」

「魔王に激しく賛同!?」

えっ。
勇者って、……勇者さまッ!
もちろん私の想い人ではないが、それでも勇者の存在はありがたい。

私が、彼ら二人をマリアナ海溝に沈めるまでもなくなるから。

当然、記憶の中に残る私の想い人であればなおいい。

そして例によって……。
遙か上空から雲を突き破り、唇を突き出し私の唇を狙うフリチンが登場しやがった。
今回は登場は、一歩、遅かったけど、お約束ね。

そこで勇者の目の端が、光る。

「滅魔斬壊閃(めつまざんかいせん)!」

彼は背負っていた蒼いオーラをまとったサーベルをスラッと抜いたのだ。
まるで紙を斬るように滑らかな動きで、フリチンを斬る。
その中二な台詞と共に。

……勇者。

待ち望んでいた。
でも言い切れる。やっぱり、こんなヤツが、私の想い人なんかじゃない。
大体、その変態チックな格好なんとかしてよ。
やられるフリチンもフリチンだ。

…――勇者、彼は、一体、どんな格好をしていたのか。

それこそフリチンだ。

背中に背負ったサーベル以外は、なにも身につけていない。
お巡りさん、ここに露出狂がいます。
逮捕して下さい。

更に不謹慎な事に勇者のアソコは、たくましげなフランスパンだった。

あれ?
この設定、どこかで聞いた事があるぞ。
確か、信じるマンとか、なんとか言ったような気がするけど……。

でも、これも、お約束なんだけど勇者の顔は格好いい。

顔の格好良さで言えば、一番かも。

切れ長の優しげな目。
そして、深い翠色をした流れるような長髪。
いやだから、その格好良さが、姿とミスマッチで余計に滑稽なんだけどさ。

「姫さま。この勇者がきたからには、魔王の好きにさせませぬ」

勇者は、そのがっちりとした体躯を屈め跪き、言う。
彼は、私の左手を、そっと右手で掴む。
そして、手の甲にキッス。
キモッ!

「勇者は魔王を倒す為に存在するのです。安心して下さいませ。姫さま」

姫さまとは、秘めさまとでも言う気?
いや、その前に服、着てよ。
ある意味……。

このフリチン野郎、まさに真の勇者かもね。

魔界より、この世界に降り立った豪傑するぎる真の勇者なのかも。

というか。
お巡りさん、ここに素っ裸の変態がいまぁすぅ。
さっさと逮捕してちょ。

あんた、魔王関連の人脈の中で最悪を突き抜けた、もっとデンジャラスなヤツだわ。

「魔王、覚悟!」

その前に、あんたが覚悟しなさい。
勇者の、その勇姿は覚悟なき犯行に思えて仕方がない。
豚箱に逝け。

「君、君。さっき通報を受けて来たんだけど。ちょっと話を聞いてもいいかな?」

ルンルンが親指を立ててる。
どうやら彼が、お巡りさんに通報したらしい。
魔王も、それは仕方がない事だと、しきりにうなずいている。

「いや、無理ッス」

「時間はとらせないよ。いいかな?」

「いや、僕、ちょっと忙しいッス。待ち合わせしていて、では。アデュー。姫さま」

「ちょっと待ちなさい。君。待ちなさい。署まで、きてもらうよ?」

勇者は投げキッス共に去った。
もう一生、現われなくていいからね。勇者くん。
バイバイ!

「勇者まで、この世界にくるとはな。これでは世界の均衡が崩れる。魔界の危機だ」

「だな。魔王。一時、我らは魔界に帰るか。どうする? 魔王」

とルンルンが、魔王と相談をしていた。
その言葉は聞こえなかったが。
勇者か。

とんでもないモノが現われたモンだなと思った。

~ 其の十一、勇者登場、了。

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【 RM、~ その二、かごの中の鳥 】

六月の梅雨空の下、私は窓から外を見つめていた。
今頃、マスターは、私が朝、作ったお弁当を食べているのかなと。
今日は晴れている。

まぶしい太陽の光が、私たちの住む部屋を照らし出す。

私は一人、微笑む。
彼が、私の作ったお弁当を見て、驚き、喜ぶ、姿を想像したのだ。
一羽の鳥が、大空を自由に飛び回っている。

私は、自由に外出できない。

しかし、それは今に始まった事じゃない。
私は、ロボットとして生まれた瞬間から、ずっと自由に外出できない存在なのだ。
それは覚悟しているし、絶対に彼を悲しませたくはない。

私はかごの中の鳥。

フッと思う。
私が外出したとしても、もしかしたらバレないかもしれないと。
私の外観は、人間のそれと一緒だったのだから。

しかし万が一という事も考えられる。

マスターは、万が一を考えて、私の外出を制限しているのだろう。
外出して、万が一、私がロボットだとバレたら、人々の研究対象にされてしまう。
でも……。

私は覚悟していたつもりだったが、外の世界を知りたいと思ってしまう。

マスターが働いている外の世界を。
それは、外の世界で働く彼を理解する事だし、なにより好奇心がうずいている。
私が生まれたのは、ちょうど一年前の雨の降る六月のある日だった。

私が生まれた日は、朝から時雨れていた日。

細かい雨粒が空から降り注ぎ、まるで天が泣いているような日だった。
私たちが住む部屋の窓からは正面に用水路が見える。
そこに鳥が一羽、立ってた。

そして、私が生まれた瞬間、鳥は飛び立った。

用水路から大きな白い羽根を羽ばたかせ、鳥は大空へと飛び立ったのだ。
もちろん、降りしきる小雨など、まるで関係なく、力強く。
私が生まれて初めて見たものは鳥だった。
空を自由に飛び回る鳥。

しかし、私が生まれてからほどなくして、マスターにやんわりと忠告された。
外の世界を知りたいと思う私の心を知っているかのよう。
外出を禁じられたのだ。

そして私はかごの中の鳥となった。

私が生まれた日、空に飛び立った鳥のように自由に空を飛び回る鳥。
その存在が、とても羨ましく、そして、悲しかった。
私は覚悟をしている……つもりだった。

しかし、それでも、大空を自由に飛び回る鳥を見ていると、私の心は悲しくなった。

やはり、私は覚悟をしているつもりでしかないのだろう。
結局、つもりでしかないから悲しくなる。
外の世界を知りたいと。

マスターが仕事で家にいない平日の昼間は、特にそう思ってしまう。
私の背に大空を自由に飛び回る真っ白な羽根があればと。
私は、一人、孤独に、うつむき、考える。

私は、かごの中の鳥。

私がロボットである以上、それは避けられない現実。
確かに彼の言う通り、万が一、私というロボットが存在している事がバレれば……。
世の中の好奇の目に晒される。
ここでも思う。

なぜ、私はクローンとして創られなかったのかと。

クローンであれば、マスターの身体の温もりを感じられるし、外出もできる。
なぜマスターは、私をアンドロイドとして創ったのだろうかと。
彼の気持ちが分からない。

気持ちが分からないという事は、とても悲しい事だ。

私は彼の温もりを心でしか感じられない。
ゆえに彼の気持ちが分からないという事は、私にとっては致命傷なのだ。
鳥が大空で旋回している。

まるで、外出のできない、かごの中の鳥をあざ笑うかのよう。

今日のような晴れ渡った空が、逆に憎らしく思える。
天気すらも私をあざ笑っているかのよう。
私は嫌な事を考えている。

自分でも、それが分かるから、余計に苦しい。

マスター?

私は、なぜロボットなのですか?

私は答えの出ない問いを、ここにいない彼に問いかける。
マスターほどの天才であれば、クローンを創る事だって不可能じゃないはずだ。
なぜと。

私は脳内に組み込まれた無線ルーターで、ネットへとアクセスする。

そこには答えがないと知っていても。
もしかしたら、そこに答えが在るかもしれないと。
検索する。

検索キーワードは、愛。

とんでないほどの情報量が脳裏に浮かぶ。
しかし、どれも、これも、私が望む答えではなく、単に時間を浪費しただけだった。
やっぱり、マスターがいない時間帯は私にとって苦痛でしかない。

マスター、早く帰ってきて。

私自身の脳がショートして、爆発してしまう前に。

私は、また大空を旋回している鳥を見る。
かごの中の鳥が、羨ましく彼らを見つめるような眼差しで。
切ない。苦しい。

私は、この世界に存在してはいけないの。

私の心を知ってか、晴れ渡った空に雲が一つ浮かんでいて、太陽を覆い隠した。
太陽光がさえぎられ少しばかりの影が私が存在する、ここに堕つる。
その影の中、私は想った。

私の記憶の中に確かに存在する彼の笑顔を。

彼の笑顔は枯れない。
どんな雲に覆われようと、私に温かさを、温もりを伝えてくれる。
今、雲に覆われ、さえぎられた太陽とは違い。

先ほど愛というワードで検索した。

しかし、どれも、これも、私の望んだ答えではなかった。
とはいえ、私の心の中にある彼の笑顔という太陽は、私の望む答えだった。
それだけが真実だった。

真実。

私は、かごの中の鳥でしかない。
しかし彼は確かに私自身を愛してくれていると思えたのだ。
いくらクローンではなく、アンドロイドとして創られた存在だとしても。

多分、今は彼が仕事でいなから、悲しい気持ちになったのだろう。

私は大空を飛び回る鳥に聞きたかった。
君には好きな人がいるの?
愛されているのと。

そう思ったらかごの中の鳥である私も、少しは救われた。

私の心の中には、確かに彼から想われている私自身があったのだから。
大空を自由に飛び回れなくてもいい。
彼さえいれば。

雲は、いつの間にか晴れて、また温かい太陽が私を照らした。

まるで、安心して、マコ。君には僕がいるんだよと。
そう言われたような気がした。
私は微笑んだ。

「マスター。早く帰ってきて下さいね。私はマスターを愛しています」

私は、照らしてくれる温かい太陽(えがお)にそう応えた。

~ その二、かごの中の鳥、了。

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【 みんな人間なんだ 】

俺は宅配人。
お中元で、仕事が殺人的に忙しい。
さ、さっさと次の家に行こう。次は最高級松阪牛を配達するのだ。

そういえば……、この家、昨日も配達にきたな。

昨日は、金粉入りの日本酒を配達した。
お金持ちには見えないが。
あ。思い出した。

そういえば一昨日も、この家に配達にきたぞ。

その時は、なにかの漫画のような同人誌っぽいものを配達した記憶が……。
アレは、ストレートにエロ本だったのではないだろうか。
宅配人が勘ぐってはいけないが。
そう思う。

そして、その家はお寺。

もちろん荷受け人は、お寺のお坊さん。

くわっ。

みんな人間なんだ、了。

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【 傾向と対策という矛盾 】

ネットをさ迷っていると不思議に思う事がある。

小説家になりたい人がたくさんいる。
それは、まったく不思議な事ではないのだが、その人たちに向けた文章が不思議。
出版社別に、そして、今の流行を傾向と対策した文章があるのだ。

とても不思議だ。

まず、言いたい事は、自分は売れたいのか、デビューしたいのかという事。

単にデビューをするだけであれば、その傾向と対策は役に立つ。
しかし、売れるものを書くとなれば、果たして、それらは役に立つのか疑問だ。
売れるものを書く為の正解がないのだから。
それに、言ってしまえば。
そんな傾向と対策の文章を読んで、研究してまでも。
どうしてもデビューをしたいのであれば、…――自費出版をお勧めする。

私は、デビューが目標で、物語を紡いでいても売れない作家で終わるだけだと思う。

多分に物語を書いている人は、より多くの人に読んでもらいモノだと思う。
そして、物語を書く事が、なにより好きな人だと思う。
その気持ちは、とても大切なものだ。

しかし、デビューする為だけに、お話を書くとするならば、それは苦しい作業だ。

傾向と対策が示され、ひたすら読者の希望に応えていくだけの作業。
自分自身を殺し、書く楽しみを奪われる。
需要とかいうヤツだ。

ともすれば、物語を書く事が嫌いになってしまうだろう。

それでは本末転倒。
確かに需要に応える事は、商業作家にとって、ごく当たり前の事であると思う。
しかし、私は売れる作家とは需要を追わない作家だと思う。
需要の先頭を走る作家だと思う。

すなわち需要を生み出し、読者を追わせる作家が売れる作家なんだと思う。

だから、その傾向と対策など、まるで意味がない。
なぜなら需要を生み出す為には荒野を進み、読者に道を示すものだと思うのだから。
そこに需要が生まれるのだと思う。
考えて欲しい。

あなたは、単にデビューがしたいのか、売れる作家になりたいのか。

売れる作家とは、それだけ自分の書くモノが、多くの人に読まれる作家という事。
少なくとも私は売れる作家になりたいと思っている。
果たして、あなたはどちらか。

傾向と対策を見て、みんな、デビューが目標なのかなと思ったので。

では、では。
草々。

傾向と対策という矛盾、了。

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【 ひねくれ者 】

雨が降らなきゃ、虹はでない。…――でも雨が降ったら、霧がでる。

ひねくれ者、了。

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【 官能小説 】

官能の世界にようこそ。
日常を忘れ、淫靡で、めくるめく快感をあなたに。

そう帯に書かれた官能小説を手に取った。

「ちょっと。それ十八禁よ」

近くにいた如何にも固そうな眼鏡をかけた女の人に注意された。
確かにその官能小説は十八禁だった。
私は十四歳。

「あの……でも、」

「いいわけをしない。あなたには早いわ。その本を棚に戻しなさいッ」

「あの、でも……この小説……」

「だから、あなた、まだ子供でしょ。その本は早いわ。早く棚に戻しなさいッ」

「実は、私、この官能小説の作者なんです。ぐずっ」

くわっ。

官能小説、了。

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【 悪魔ちゃんと天使くん、~ その四十五、悪魔というモノ 】

「余は二億五千万ペルにあと一億ペル、レイズじゃ」

「!」

ディーラーの天使は焦った。
確かに始めの張り金を見せ合った時、彼女は二億五千万ペルしか持っていなかった。
それは、万全を期し、アカシックレコードでも確認した紛う事なき事実だ。

彼女は、あの時点で二億五千万ペルしか持っていなかった。

しかし、それでも彼女はレイズをしてきた。

ディーラーの天使が見落としたのだ。
そう。つまり彼女の張り金は、二億五千万ペル以外にも、まだ一億ペルあったのだ。
張り金を見せ合った時、彼女は一億ペルを隠していたのだ。
やられたと思った。

レイズされれば張り金のないディーラーの天使はドロップせざるを得ない。

先ほどの強行的なコールは、この為だったのだ。
レイズして、ドロップさせる。それを狙ってのコールだったのだ。
ディーラーの天使は後悔した。

自分の命のすべてを賭けても、彼女には勝てないのかと。

これ以上、勝負を続けても意味はない。
ディーラーの天使は、張り金が溶けているのだから。
涅槃は、天使を見て思った。

アカシックレコードは、どこを見るかによって、その人の個性が出るんだなと。

ゆえにアカシックレコードも、また決して万能ではないと。

そう思った。
しかし、そこで鈴音が、とんでもない事を言い出した。
そう。彼女は始めに見せた二億五千万ペルは、その時点で、それ以外なかったと。

「うむ。余の命の金額は間違いなく二億五千万ペルしかなかったぞ」

「では、なぜ?」

「主の言いたい事は分かる。では、なぜ、ここで一億ペルレイズできるのかじゃな」

「そうでございます。なぜ、あなたは、ここでレイズできるのですか?」

「余は同時にあちらの卓でも勝負しておったのじゃよ」

鈴音はルーレットの卓を指さす。
そこには、鈴音がポーカー卓と同時にルーレット卓の赤へ一億ペルベットしていた。
そして、ルーレット卓では、彼女の狙い通り、赤がきていた。

そこには鈴音に百連敗した偽ロキがいて、彼女の指示に従ってベットしていた。

彼は、負け分の支払いの為、彼女の下で働いていたのだ。
そうして、鈴音はポーカーと同時にルーレットでも勝負していたのだ。
もちろん現金で。

しかし、それにしても危ない橋を渡る。

涅槃は、もし仮にルーレット卓で、赤がきていなければと考えたのだ。
そうするとポーカーとルーレットの両方で負ける事となる。
つまり、コールも無効となる。

命が尽きる。

…――これが勝負師か。

「余はな。決して負けられない勝負ではなにをしても勝つよ。ロキ直伝じゃ」

「そうですね。あなたには勝てない。嫌と言うほど分かりました」

ディーラーの天使が素直に負けを認めた。
彼も、また一流の勝負師であり、命を張った勝負に負けても、負けに素直に従った。
偽ロキとは大違いだ。

しかし、涅槃は疑問に思った。

そんなルーレット卓で、危ない勝負をして、ポーカーで勝たなくてもと思ったのだ。
そう。始め、張り金を見せ合った時点で、一億隠していればと思ったのだ。
それは甘い考えだった。

「鈴音、そんな危ない橋を渡らないでも一億を隠していれば良かったんじゃない?」

「もし、余が一億を隠しておったら……」

「ですね。わたくしとて勝負師の端くれ。また違った勝負になったでしょうね」

「じゃろうな。主にブラフは効かぬ事くらい分かっておるよ」

勝負師……。
涅槃には、ますますもって分からない領域の話だった。
しかし、これで一つ分かった事があった。

アカシックレコードは読み解く天使によって解釈が違ってくる。

という事は、その人物が大枠で事実(もの)を見られる事のできる人物であれば。
神のように大空から大地を見渡すよう読み解ければ。
そう。神の視座を持っていれば……。

アカシックレコードを百%働かせる事ができるのではないかと。

そう思ったのだ。
すなわち神の視座を持ってして、真のアカシックレコードは完成すると。
涅槃には、そう思えて仕方がなかった。

「涅槃よ。どうじゃ?」

一人、思索にふけていた涅槃に鈴音に声をかける。
涅槃はハッとして、鈴音を見つめる。
そこには。

先ほどまでのどう猛な生物ではなく、一人の可憐な少女がいた。

「なにがよ。……なにがどうじゃなの?」

「余に負けた天使にもチャンスをやろうと思ってな。涅槃、力を貸してくれんか?」

「力を貸してくれ? ギャンブル以外だったら、別にいいけど……」

「主は知りたくはないか」

「なにをよ?」

「神の視座とまではいかぬが、勝負師特有の勘をじゃ」

「はい。わたくしで良ければ、お教え致しましょう。どうでございましょう?」

ディーラーの天使は命のすべてをスっていた。
ゆえに自分の手の内である勝負師特有の勘を教える事もやぶさかではなかったのだ。
しかし、涅槃は不思議に思った。

ディーラーの天使の態度は、負けたのだから、それでいいと思う。

しかし鈴音は、つい先ほどあったばかりの女の子だ。
その鈴音がディーラーの天使から受け取るであろう勝ち分をなぜ私に譲るのだと。
ほとんど見ず知らずの私に。

「余はな。世の中に絶望しておるのじゃよ」

やはり始めに受けた印象どおり、彼女は涅槃が人間だった頃の星埜銀杏と似ていた。
いや、それ以上に、もっと深い所に彼女の心の闇があるような気がした。
鈴音が、カードを一枚、裏を向け卓の上に伏せておく。

「ギャンブルでも、なんでも、勝ちたいと思った時には勝つ」

「なにが言いたいの?」

「いやな。余にとって人も、そうなんじゃ」

「人も?」

「そうじゃ。人の思考が手に取るように分かるんじゃ。醜い部分も自ずと見える」

そう言った鈴音の横顔は暗かった。
涅槃が人間だった頃、すなわち星埜銀杏が抱えていた闇など可愛いモノであった。
それだけ鈴音という少女の心の闇は深かったのだ。

「ま、その話は、置いておいて、わたくしの手の内をお教え致しましょう」

ディーラーの天使が言う。
鈴音とは対象的に爽やかに微笑みつつ。
いや、ディーラーの天使は、今、沈んでしまった場の空気を変えたかったのだ。
場の空気が淀めば、ツキも離れていってしまうのだから。

「そうじゃな。暗い話は今度でいいじゃろう。では、始めてくれ」

「かしこまりました」

ディーラーの天使は畏まって、お辞儀をした。
涅槃は鈴音の心の闇が、一体、なんだったのか、その正体を知りたかった。
それは悪魔らしい思考だった。

そう思いつつも彼女は促されまま鈴音に換わり、卓へと座った。

そして、先ほど鈴音が裏返して伏せたカードを見た。
そこに求める答えがあるような気がして。
彼女は確実に悪魔だった。

「では」

と、ディーラーの天使が、ゆっくりと落ち着き、涅槃たちに告げた。

~ その四十五、悪魔というモノ、了。

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【 信じるマン、第三十八話、プラ 】

「大変アル。一大事アル!」

はい。
そこ静かに。騒がない。
どうせ大した事じゃないだろうし、大方、予想はついている。

「マコっち。ドロンパ商会が攻めてきたアル」

だろうな。
だって、ブルーは、ずっとヒーロー製作研究所にいるし、アレがドロンパなんだろ?
ま、ミン・ミン一派が、悪の秘密結社じゃなくてよかったと思うよ。

「攻めてきたでちゅ」

怪人27号が、キム・キムに追随する。
って、だから悪の秘密結社、ドロンパ商会は、とどのつまり、お前だろッ。
突っ込まないぞ。

「レッド。ブルーとキム・キムの二人は、どうにもヒーローごっこが好きらしいな」

イエローこと、さすらいのジョーがさらっと言う。
ヤツも呆れ果てているのだろう。
グリーンとピンクは?

「ふほほほ。余は王なり。皆のものひれ伏せぃ。王のご登場だ」

「王よ。プラチナはまだでござるか?」

相変わらずだな。
とりあえず、俺はもっこりフランスパンが起動しないように難しい本に目を移す。
キム・キムの言う事など無視して、平和な日常を満喫しようとしたのだ。

そそ。

最近、本ばっかり読んでいたから本好きになったのだ。

「ボンジュール。皆の衆!」

ブルーが、大げさに自分の存在をアピールした。
怪人27号という顔と、信じるマン、ブルーという立場を使い分けて。
読書の邪魔をしないで欲しい。

俺はブルーとキム・キムを一瞥して、のち視線を本へと移す。

「だから、ドロンパ商会が攻めてきたアルよ!」

そこうるさい。
ちょっとは静かにできんのかね。
グリーンは、カンフーの鍛錬に戻ったし、ピンクも筋トレマシーンに乗っている。

「でちゅ!」

信じるマンの中で、怪人27号ことブルーだけはやる気のようだ。
もちろんもイエローは怪人27号とキム・キムの二人を無視してカレーを食ってる。
本当にカレー好きになったんだな。
イエローよ。

でも怪人27号も大変だな。

自分で攻めて、自分で守らなければならないのだから。

貧すれば鈍するとまでは言わないが。
が、それでも、ヤツはオフェンスもディフェンスを一人でやるんだから。
ある意味、天才かも。

大体、ヒーローの軍団の中に悪の秘密結社がある事自体、無理があるというものだ。

ブルーのヤツが、一体、どこまで頑張れるのか。
ちょっとだけ興味が湧いてきた。
本から視線を移す。

ブルーとキム・キムの二人芝居の方へ。

「変身でちゅ!」

ブルーが、青色のオーラ―をまとい素っ裸になっていく。
そういえば、今まで気づかなかったが。
ブルーの甘エビは……。

超凶悪サイズ。

それこそ顔面まで反り返るという超ビッグサイズだ。

いや、違う。
気づかなかったのではなく、キム・キムに改造手術を受けたのだろう。
再び、ドロンパ商会の刺客となる為に。

そう考えないと、あのビッグサイズが説明がつかない。

隠しても隠しきれないのだから。

あれだけでかいと膨張したら、さすらいのジョーの再来だな。
ブルーは、赤ちゃんだから身体が小さい。
ゆえに独楽になる。

とにかく今は萎えている事が、救いだろうと思う。

「怪人27号! お前の野望は、この信じるマンブルーが阻止してみせるでちゅ!」

だから、お前、お前に言ってるんだよ?
野望って……分かってる?
脳筋?

確かに俺は低脳かもしれない。が、間違いなくブルーだけには負けない。

そんな気がした。
それでも、ブルーは、ただ一人、信じるマンとしてドロンパ商会と戦い続けていた。
グリーンは、一人でカンフーをしてるし、ピンクは筋トレ。
もちろんイエローはカレーを食ってる。

みんな素無視。

ここまでくると逆にブルーの事が可哀想くなってきた。
だって、いくらブルーがなにを言おうと、みんな、素通りの素無視だったのだから。
右耳から入って、左耳に抜ける。
そんな状態。

「うぉー! 信じるマンブルーよ。お前、かなり強いなでちゅ!!」

「僕らの双肩に世界の平和がかかっているのでちゅからね」

「こうなったら仕方がない……」

「なんでちゅ?」

この会話、全部、ブルーの台詞ね。
一人で、ドロンパ商会と信じるマンブルーの二役を演じているのさ。
いや、一人じゃない。

キム・キムが、援護するように絶句している。

一応、あっちサイドは、それなりにシリアスな展開が繰り広げられているらしいよ。
こっちサイドは読書とカンフー、そして筋トレ、カレー。
いいのかな。本当に。

「ヤツらを魔空空間に引きずり込めぇ!」

なんだよ?
その中二的な魔空空間ってさ。
って、ヤツらって、こっちサイドの俺たちも入ってるわけ?

「魔空空間とは? 私が説明するアル。ヨロシ?」

というか俺たちを巻き込むな。
悲しいかもしれないが、二人でやってろ。
説明もいらない。

「バミューダトライアングルによるピラミッドのキャップストーンによる……」

だから、うるさいし、説明するな。
そんなうさん臭いのこっちサイドの人間は、誰も反応しないから。
そこんとこ四露死苦。

俺は、ブルーが可哀想だったけど、みるべき所なしと再び本に視線を移した。

「だから、みんな聞いてくれでちゅ。悲しいでちゅよ!」

うるさい。
やっと本音が出たな。
ブルーの本音は、集団無視されて、悲しかったんだな。

そこでカレーを食べ終わったイエローが、驚くべき事を告げた。

いや、俺には、どうでもいい事だったんだけど。
またかって感じ。頼むよ。本当に。
作者も低脳だな。

「やっときたぜッ!」

もしかして、アレでしょうか?
例のブツでしょうか。俺以外の信じるマン皆さん待望のアレでしょうか?
ていうか、もうそのネタは、止めましょうよ。
底が知れる。

「住所不明でさ迷っているのかと思ったぜ。よかった。よかった」

「おお。きたでござるか」

筋トレに励んでいたピンクも反応する。
もちろん自信満々なグリーンが、架空の髭を撫でて、みんなを見下ろす。
あっちサイドは……。

「それより、魔空空間でちゅよ。みんな、燃えないでちゅか?」

「そんな事は、どうでもいい。それよりだ」

イエローが怪人27号こと、ブルーを見事に斬り捨てる。
俺からしてみれば、なんで、皆、そこまで、そのネタを引っ張るのか分からない。
そうなのだ。

アレしかないだろう。

プラ……。

手ブラ。手ブラジーンズ、キム・キムの。

プラとブラじゃまったく違うし。見たいけど見たくない。
絶対にタダじゃないだろうからな。
大金をふんだくられる。

プラ……。

見事な伊勢エビのテンプラって、違うし。

確かにプラとテンプラは、似てるかもしれないけど、違うし。全然、違うし。
アレなんだろ? アレしかないだろ?
引っ張るか? 普通。

「悪は、即、叩き斬るってくれるわッ!!」

ブルーが涙を呑んで、プラ……を信じるマンパワーで、ぶん殴った。
いや、君もプラ……を待っていたんじゃないの?
なんで、そんな事するの?

「テメェ、よく分かったよ。お前が悪の秘密結社だな!」

イエローがキレる。
グリーンとピンクも怒りに身を任せる。
っていうかさ。なんで、君ら、そのプラ……に、そんだけ執着があるわけ?

しかも悪の秘密結社とか言っちゃってるし。逝った?

しかし、そのプラ……ブルーのパンチで割れて、みんな悟ったようだ。
そう。今、来たモノは、プラスチック製の紛い物だったと。
プラだけに。

…――プラスチック。

上手くないって。スンマソン。

そのあと何事もなかったように、こっちサイドの皆さんは、冷静に日常へと戻った。
ていうか、そのプラ……が、本当に待ち遠しいんだね。
俺はそう思った。

「ていうか、魔空空間アルッ!」

「でちゅ!」

第三十八話、プラ、了。

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【 RM、~ その一、心で感じる温もり 】

…――午前五時。

ポップコーンが弾けるような軽い音を立てて、私の電源が入る。
私は、マスターに創られたロボット。
名をマコという。

暗闇の中、私の大きな亜鉛緑色をした瞳が左右に動く。

よし。
今日も私たちの住む、この部屋に異常はなし。
私の瞳には暗闇だろうと見通せる暗視装置が組み込まれている。
電気をつけなくてもいい。

電気をつけないのは、マスターが寝ているから。

マスターを起こしたら悪いし、できるだけマスターに負担をかけたくない。
私は彼を愛している。心の底から。
キッチンへと向かう。

これから彼が食べるであろう、お昼ご飯であるお弁当をつくるのだ。

さすがにキッチンでは、電気をつける。
寝室ではないし、暗視装置を通した視界で弁当を作るのは困難を極めるからだ。
マスターを起こさないよう、できるだけ物音を立てないようにする。
まるで小さな子ネコのよう。

マスターは科学者ではあるが、普通の会社員である。

夜遅くまで仕事をしている。
多分に私が目覚める四時間くらい前に彼は会社から帰ってきて寝るのだ。
私はキッチンから寝室を眺め、マスターの寝顔を見つめる。

マスターは気持ちよさそうに眠っていた。

頬が自然とゆるむ。
今日も、彼は私の下に帰ってきてくれて、そして安心したように寝ているのだから。
これを幸せと言わずして、なにを幸せと言うのだろう。

私は、小さな身体を揺すりつつ、お弁当作りの作業へと入った。

マスターと私が住む部屋のキッチンは狭い。
なにせ身長の低い私でも手を伸ばせば周りにあるものすべてに手が届くのだから。
私の身長は低い方だ。

しかし、私は本当に背が低いのか分からない。

この部屋以外、世界を知らない。

私の存在が、いわゆるオーバーテクノロジーなので、外出を禁じられているのだ。
もし私がマスターの言いつけを守らず、外出したとしたら……。
すぐに世間の好奇の目に晒されるだろう。
それは分かっている。

マスターは苦しそうな表情で、辛そうに言った。

「マコ。本当は自由に生きて欲しいと思う。だけど世の中がそれを許さないんだ」

マスターの言いたい事はよく分かる。
外の世界に興味はある。
しかし……。

私は、覚悟を決め、この部屋に存在している。

いや、この部屋以外では、私は決して存在してはならぬのだと思っている。
マスターが、それだけ天才であり、仕方がない事なのだと。
マスターに迷惑をかけたくない。

そう思っているのだ。

だけど、私は、それでもいいとも思っている。
なぜならマスターは、必ず、戻ってきてくれるし、私を愛してくれるのだから。
それ以上、なにを望むのだ。

決意に満ちた私の藍色の長い髪が風になびき、柔らかく、揺れる。

…――マスターの愛以外、なにもいらないと。

ただ不満もある。
私は、なぜアンドロイドとして創られたのだろうか。
クローンという選択肢ではなく、アンドロイドとして、この世に存在するのだろう。

身体が鋼鉄なのだ。

確かにそれがすべてとは言わない。

しかし、アンドロイドではマスターの温もりを感じる事ができない。

私は身体全体で、マスターの愛に包まれたい。
しかし、この鋼鉄の身体では、マスターの温もりを感じる事は叶わぬ夢だ。
マスターが愛おしい。

またキッチンから寝室を眺め、マスターの寝顔を確認する。

彼は、まるで子供のように安心しきった寝顔。
今、感じた不満が吹き飛ぶ。
頬がゆるむ。

うん。きっと大丈夫。

確かにマスターの温もり感じたいと思う私は存在する。
しかし、それ以上に私とマスターの間には愛という絆が存在するのだから。
心が温もりを感じてくれる。

愛という温もりを。

それだけあれば、私は充分に幸せだと思う。
私は、その愛に応えるよう、ありったけの愛情を込めて、お弁当を作った。
弁当づくりも終盤にかかった。

外では空がしらみ始め、時計は午前六時をさしていた。

そろそろ彼が起きてくる時間だ。
私は急いで、弁当作りを終え、そして朝食の準備に取りかかる事にした。
弁当箱を開けた時のマスターの満面の笑顔を思い描き。

「おはよう。マコ」

「あ。おはようございます。マスター」

マスターに挨拶をする。
彼は、眠たそうに目をこすりつつ、また、いつもと変わらぬ笑顔をくれた。
私は彼の笑顔が、とても嬉しい贈り物で微笑み返した。

「いつも、いつも、ごめんね」

「マスター。私はマスターの笑顔が見られれば、それだけで幸せです」

受付に置いてある呼び出しベルのような音が鳴る。
先ほどオーブントースターにかけたトーストが焼き上がったのだ。
ほんのりとしたきつね色だった。
私はポッドを見る。

朝食用の紅茶を淹れる為に。

「僕も君だけがいれば、他になにもいらない」

彼が小さな声で言う。
聞き逃しそうな小さな声だったが、確かに私に届いた。
私は、また嬉しくなり、微笑む。

そう。
私はアンドロイドだけど、心で彼の温もりを感じる事ができる。
そして彼は私だけを愛してくれている。
それで充分なんだ。

私は、彼に創られたロボット。

ロボットだけど彼の心を感じる事ができるし、それで幸せなんだと思う。
究極的に愛とは、お互いの心と心の絆だと思うから。

私は彼を愛している。

そして、彼も、また私を愛してくれているのだと心が感じている。

それだけで充分。
その絆が永遠に続けばいいなと思った。
焼き上がったトーストに苺ジャムを塗りつつ、また微笑んだ。

降り注ぐ愛にしっかと応え。

苺ジャムを塗り終えたあと、紅茶をカップに注いだ。
部屋一杯に爽やかで甘い香りが充満した。
まるで私たちの愛のように。

ずっと、ここのまま、お互いに想い合っていければいいなと思った。

~ その一、心で感じる温もり、了。

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【 コロシアイ、~ 十五の巻、お姉ぇさん 】

今、僕は不可思議な空間にいる。
いると言ってもいいのだろうか。それすらも分からない。
誰かと出会って、フィールドが構築されたのだが、そこが摩訶不思議だったのだ。

「ふふふっ」

不意に他人の笑い声が聞こえる。
声は女の人のようにも聞こえる男の高いトーンの笑い声だった。
僕は身構える。

「あははは。ボク、無駄よ。無駄なのよぅ!」

声はあざけり笑うよう僕を突き刺す。
今、僕は、上も下もない、もちろん右も左もない真っ暗な空間に浮いていた。
真っ暗なのだ。

「いい事? あっちしの能力の前にひれ伏しなさい。ボク」

こいつは、もしかして……。

オカマか。

しかし、仮に、そうだとしても、このフィールドの意味がまったく分からない。
なんで、なんにもない真っ黒な空間が、バトルフィールドなんだ。
このオカマの職業が関係あるのか。

「オカマ……ですか?」

僕は、恐る恐る、彼(※注、彼女か? 以下、略)に聞いた。

「オカマですって。あっちしがオカマですって。ボク、あり得ないゎよぅ!?」

僕の親指が霞む。
僕はオカマに、なにもされていないのに親指にダメージを喰らった。
親指は完全には消えていないが、霞んだのだ。

そして、怪我を負った。

まるでテレビの画像が乱れるように僕の親指は霞んだのだ。

これが、オカマの能力なのか。
この能力で、次に僕の首でも霞まされたら……。
僕は退場だろう。

つまり、死ぬって事だ。

僕は一体、オカマがどこにいるのか、虚空を凝視した。
しかし、一向に目は慣れず、むしろ逆に闇が深くなってきて、僕は不安を覚えた。
大体、このフィールドはなんなんだ?
上も下もない真っ暗。

「あっちしは、れっきとした女なのよぅ。オカマって言わないでよぅ」

いや。
その大げさなほどのかん高い声は、オカマにしか聞こえない。
しかし、ここで彼を刺激したら殺されかねない。

「済みません。女の方でしたか」

僕は下手にでて、透る声で、機嫌をとった。

「分かればいいのよぅ」

どうやらオカマは納得したようだ。
彼を納得させた僕の能力が、相手の心に響き、透る声でよかったと思った。
しかし、僕にとって事態は、好転したとは言い難い。

なぜ、こんな所にいるのか?

その謎を解いていないし、彼がどこにいるのか見つけていない。

「で、ボクは、あっちしにどうやって殺してほしいの? 望みはある?」

おほっ。
どれだけ聞いても、彼のわざとらしい声のトーンには慣れない。
またもや彼にオカマと答えそうになった。

「オカ……、あ、いや」

「なによぅ?」

「お姉ぇさんの名前はなんて言うんですか? 僕は高垣凉です」

「名前なんて聞いて、どうするのよぅ。あっちしたちは殺し合っているのよぅ?」

オカマの言う事は的を射ていた。
しかし、僕は殺し合うなんて事をしたくなかった。
できれば、彼に仲間になって欲しかったし、ダメだったら逃げたかった。

「うぅん?」

彼に投げかけた言葉がじわじわと彼の心の中心に刺さってゆく。
彼の中で、僕の言葉が科学反応を起こしたのだ。
それが僕の能力なのだから。

「ま、あっちしが名乗った所で、なにかが変わるわけでもないし、いいっかな?」

よし。
オカマのヤツが、僕の土俵に上がってきた。
このまま、彼を丸め込んで、今の状態を好転させよう。

「あっ!」

「どうしたんですか?」

「ボク、あっちしをハメようとしているでしょ?」

オカマは、なにが言いたいんだ?
ハメるって、一体? ……僕の方には、なにもないんだが。
なんだ?

「ずばり、ボクの能力は名前が発動条件なんでしょ? 騙されないわよぅ」

違うって。勘違い。

次の瞬間、僕の足のもも辺りが霞む。
またあのテレビの画像が乱れるように僕の足が霞んだのだ。
正直、痛い。

でも、ここで痛がっていたら彼に殺されるだろう。

彼が僕の首を狙ってこない所を見ると、今の段階では自分の能力を試しているのだ。
つまり、彼は僕が、殺し合いで初めての相手なんだろうと思う。
そして、能力が執行されているのか試しているのだ。
確実に殺す為に。

いきなり首を狙って、能力が上手く発動できなかったら後手に回るだろうから。

彼の能力は暗殺系だ。
ゆえに相手に自分の能力を悟られる事なく、相手を始末したいのだろう。
いま彼が首を狙ってこないのが、いい証拠だ。

いや、もし彼が自分の能力が確実に執行されると分かっていたら、まず首を狙う。

そうしないという事は、確実に執行される保証がないのだ。
オカ……、いや、いや、彼の中で。
僕は痛みを我慢する。

「なんでよぅ。ボクは痛くないの? あっちしの能力は効いていないの?」

やっぱりだ。
彼は、いまだ自分の能力に自信がないのだ。
とにもかくにも彼を僕の土俵に上げない事には話にならない。

「僕の能力に名前は関係ありません」

「そうなの。信じられないわね。じゃ、なんで名前なんて聞くのよぅ?」

「僕は殺し合いなんてしたくないんです。だから話し合いで解決したいと思ってて」

「甘いわねぇ」

「甘い? なにがですか?」

「あっちしたちは、なにもランダムで現世から選ばれたわけじゃないのよぅ」

ランダムではない?
オカマは一体、なにが言いたいんだ?
もしかして、殺し合いが好きで仕方がない人間が選ばれたとでも……。

少なくとも僕は今でも殺し合いたいとは思っていない。

「は~い♪ 殺し合いストップですぅ」

ここで、アナウンスが入った。
あの軽快で、弾むようなノリで、小馬鹿にしたようなアナウンスが。
なんだ?

僕は、アナウンスに対して、少なからず苛立った。

僕らは真剣に生きているんだぞと。

「岡麻力(おかお りき)さん、ちょっとだけ言葉が過ぎますねぇ。消えますか?」

岡麻力とは、オカ……、いや、お姉ぇさんの本名だろう。
というか、このアナウンス、僕と岡麻さんにしか聞こえていないのか?
そんなマクロで干渉できるのか。

「会話を聞いていたのか?」

「高垣凉くん、鋭い考察ですね。そうですよぅ~♪」

やっぱり。
という事は、僕の言動すべてが管理者に筒抜けという事か。
僕は、先生たちとのやり取りを思い出した。
アレは、不味かったと。

「私たち管理者は、マクロな殺し合いをクローズアップできるのですぅ~♪」

この感じ……。
まだ僕と霧崎さんや石崎先生、大川浩平くんの事はバレていないようだ。
つまり管理者は任意の戦いをクローズアップしているだけだ。
油断はならないが、少し、安心した。

「で、たまたま、本当にたまたま岡麻力さんをクローズアップしたわけですぅ~♪」

くそっ。
そのたまたまが怪しい。
もし、管理者に目を付けられた霧崎さんたちとも会えなくなってしまう。

「そうしたら岡麻さんが禁止語句を発しそうになったのですぅ」

「あっちし、死ぬのぅ。あり得ないわ!」

「お二人さん。気をつけて下さいね。禁止語句は無数にありますから。あはっ☆」

「分かったわよぅ。あっちしは、絶対に生き残るのよぅ。すなわち愛の為」

「では、では~★」

アナウンスが流れ、事態は悪化しただけだった。
禁止語句という、言葉を駆使する僕の能力に枷がかかる事実が分かった事。
そして、なにより管理者がマクロの視点で監視している事。
この二点が分かった。

しかし、そこには光明もあった。

それは、お姉ぇさんの名が岡麻力という分かったのと、愛の為にという言葉だった。

~ 十五の巻、お姉ぇさん、了。

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【 タマゴ 】

俺は、ぼぉ~と、庭を見つめていた。
ここ最近、小説家としての自分が、どうしようもなく小さなモノに思えて。
そうなのだ。

俺は、小説家としての自分自身に疲れていたのかもしれない。

庭には、ひよこが一匹。そしてニワトリが一匹。

俺はなにげなく見つめていた。
ひよこは、あっちによちよち、こっちによちよち、足元がおぼつかない。
ま、ひよこだから仕方がないのかなと思っていた。
すると。

ニワトリが自慢げにタマゴを産んだ。

「ひよこよ。お前にはタマゴを産む事はできないだろ。どうだ」と。

それをみたひよこは……。
必死になってタマゴを産もうと頑張っていた。
本当に何気なく見ていた、ひよことニワトリの何気ない日常。
でも……。

俺は無性にひよこを応援したくなった。

ひよこは、それだけ真剣で必死にタマゴを産もうとしていたのだ。
ひよこにタマゴを産む事は不可能かもしれない。
それでも応援したくなったのだ。
すると!

なんと、コロッと、ひよこから金のタマゴが産まれたのだ。

ひよこはビックリしている。
しかし、ニワトリは、優しく微笑み、ひよこに、こう言ったような気がした。

「ひよこ。ナイス! やればできるじゃん」

と。
そこで俺の意識がなくなった。
そう。これは……。

夢だったのだ。

俺はベットの上で目覚めて、思った。

「ははっ。俺は小説家のタマゴ。まだひよこにもなってないよ。頑張るしかねぇな」

あのひよこのように。
そして、ニワトリが力強く言っていたようにやればできると。
そう思ったら俺の心は救われたような気がした。

タマゴ、了。

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【 悪魔ちゃんと天使くん、~ その四十四、コール 】

「では」

ディーラーの天使が慣れた手つきでカードをシャッフルする。
このポーカー卓で行われているギャンブルはファイブスタッドポーカーだ。
ルールは、以下のようにして行われる。

一枚目のカードを伏せ、二枚目は表にして各自に配る。

ローカードの人から第一ベット。

次に三枚目は表にして各自に配り、ハイハンドの人から第二ベット。

四枚目は表にして各自に配り、ディーラー側から第三ベット。

最後に五枚目は表にして配って、客側から第四ベットを開始して、勝負。

このベットを続ける間に、どちらかがドロップすれば、その時点で勝負を終える。
つまり、どちらかの持ち金が溶ければ、そこで勝負は終わるのだ。
ディーラーの天使も命を張ると言っていた。

彼も、また張り金に限界があると考えても問題がない。

心配そうに場を見つめる涅槃。
先ほどの悪夢が、彼女を追い詰めていたのだ。
そう。

夜の国の王、不敗のギャンブラー、ロキとの勝負が頭をよぎったのだ。

「始めにどれだけの張り金があるのか確認致しましょう」

「うむ。そうじゃな」

鈴音と天使が、お互い、張り金を見せ合う。
この世界での現金は、ペルといい、一ペルで一円と考えてもよい。

鈴音は、二億五千万ペル。

ディーラーの天使も、二億五千万ペル。

鈴音と天使。
まったく同じであった。
しかし、命の価値が、たったの三億円前後だとはと、涅槃は呆れた。

なぜなら彼女は星埜銀杏だった頃、国家予算を超える資産を保有していたのだから。

「参加料はどう致します?」

ディーラーの天使が、微笑を浮かべながら言う。
確かに彼は優しく微笑んでいる。
目が笑ってないが。

「一千万ペル辺りではどうじゃろう?」

「はい。かしこまりました」

一千万!?
参加料だけで、一千万では、粘っても三十回以内に雌雄は決する。
涅槃は命の価値が、そんなモノでいいのかと思った。

軋む音がして、札束がポットに置かれる。

参加料の一千万ペルが、鈴音側とディーラーの天使側からポットに置かれたのだ。

「では、配らせて頂きます」

「うむ。頼む」

一枚目の伏せカードが、鈴音と天使に配られる。

「勝負の前に確認を。わたくしは、アカシックレコードにアクセスできます」

「知っておるよ。アクセスは許す。主の最善を尽くせ」

「お忘れかと思いまして……」

「大丈夫じゃ」

そうなのだ。
ディーラーの天使はアカシックレコードにアクセスできる。
過去、今、未来が見通せる。

という事は、この伏せカードに意味はない。
伏せカードが表になる時をアカシックレコードで確認すればいいだけの事だから。
更に言えば、ブラフでレイズをしたところで、降りる事はないだろう。
言及すれば……。

天使には配られるカードすらも、分かる。

しかも、このポーカーはファイブスタッド。チェンジがない。
つまり、ディーラーの天使には、自分と相手の最終的な手役すらも筒抜けなのだ。
未来を見ればいいのだ。

勝負をする時のすべてが表なった未来を。

対して、鈴音の勝算は、まったくと言っていいほどない。
涅槃は思わず目をつむった。
動悸が早くなる。

「フフフッ。では、二枚目を配りますよ」

「うむ」

それでも余裕の鈴音。
その表情を眺めつつ、ディーラーの天使が不思議そうに二枚目を配る。
ここまで余裕だと彼でなくとも不思議に思うだろう。
なにかあるのではないだろうかと。

「お嬢さん。本当に、いいんですか?」

「なにがじゃ?」

「わたくしには、あなたの最終手役も分かっていますし、自分の最終手役も……」

「ほほほっ。余を誰じゃと思っておる。主には負けんよ」

これだ。
この余裕がどこからくるのか。
涅槃は、つむった目を少しだけ開け、鈴音を見る。

「いいでしょう。ローカードはわたくしですね。では、ベット致します」

また重厚な軋むような音を残し、札束がポットへと置かれる。
ディーラーの天使がベットしたのだ。
その額……。

なんと! 二億四千万ペル。

残りの張り金すべてをベットしたのだ。
ディーラーの天使は、目を細め鈴音を見下ろしていた。
自身の勝利を確信して。

「よいのか?」

「なにが、よいかなのでございます?」

「主は、主の命を張っておるのじゃぞ。大胆すぎはしないか?」

「わたくしは、双方の最終手役を知っております」

「つまり、余が降りると?」

「はい。然様で」

涅槃の視線が、鈴音の姿を捉える。
真っ赤なオーラが、彼女を包み込み、彼女が大きく見えた。
そこには少女はおろか、まったく別のどう猛な生物がいるような感じがした。

「甘いのう」

「フフフッ。お客さま。果たして甘いのは、どちらでございましょう?」

鳥が飛び立つような音が、鳴り響く。
なにが起こったのかと、あ然とするディーラーの天使と涅槃。
そう。

「コールじゃ。勝負を続けるぞ。よいな?」

鈴音が、彼女の張り金の全額、二億四千万ペルをポットに投げ込んだのだ。
ディーラーの天使には、双方の最終手役が分かっている。
にも関わらず……。

鈴音は勝負続行を選んできたのだ。

しかも、命の全額である張り金、すべてを賭けて。

「よろしいので。本当によろしいので?」

ポーカーフェイスであったディーラーの天使の表情が、明らかに狼狽している。
彼の余裕は鈴音によって削られた。
あり得ないと。

最終手役は、ディーラーの天使がエースとジャックのツーペア。

そして、鈴音は三のワンペア。

つまり、ディーラーの天使の勝ちは決まっているのだ。
鈴音が降りれば、彼女は参加料の一千万ペルの損失で済んでいた局面だった。
天使は、彼女が降りると思っていた。
しかし。

彼女は、その全額を賭けて、コールしてきたのだ。

ディーラーの天使は彼女がドロップをして、自分が勝つイメージしかなかったのだ。
鈴音が、ディーラーの天使に促す。
相変わらずの余裕で。

「さて、固まっていないで、三枚目をよろしく頼む」

「……本当によろしいので?」

「くどい」

それでも、固まってしまったディーラーの天使。
それは、そうだろう。なにせお互いに命を張ったギャンブルであったのだから。
彼でなくても、そうなる。

無言のまま、三枚目のカードが配られる。

「うむ。ハイハンドは、余じゃな。余からベットするぞ」

ディーラーの天使のハンドは、ブタであり、鈴音の三がワンペアになったいた。
つまり、この時点では鈴音の方が手役がよかったのだ。
涅槃には、鈴音の思惑が分からなかった。

どうやって勝つの?

と思った。

~ その四十四、コール、了。

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【 サラリーマンというモノ 】

「ヘイ! テメェら、サラリーマンなんてやって、つまんなくないか?」

俺たちはロッカー。
今日も、飢えたオオカミたちを奮い立たせる。
オオカミたちよ。決して、飼い慣らされたブタには食いつくな。

「テンキュウ! アイラビユー!?」

*****

「……お疲れ。今日のライブも最高だったよ」

「あ。ども。社長。お疲れッス」

「今月の給料、色つけておいたから。次も、この調子で頼むよ」

「はい。頑張ります」

サラリーマンというモノ、了。

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【 公務員 】

俺たち仲良し四人組は無事、大学生活を終え、社会人へとなった。
四人とも、みんな、就職は公務員志望だった。
希望通りに公務員になった。
全員。

そして、今日、社会人になって久しぶりに四人が集まり、飲む事となった。

「おう。元気か?」

「ああ。すこぶる元気だよ。そっちはどうよ?」

「ご心配なく。元気すぎる位だ」

「ところで……、今日の帰りの運転は誰がやるんだよ。みんな、飲みたいだろ」

「ああ。アイツだ」

「ああ。アイツか。って、お前、運転じゃないのかよ。飲んでるだろ!?」

「大丈夫。大丈夫。捕まりゃしなから。飲むべ。飲むべ」

「はい。俺、一応、警察官なんだけど」

くわっ。

公務員、了。

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【 ステマっぽいもの 】

俺は海釣りから渓流まで、どんな場所でも幅広く、釣りを楽しむ釣りバカ。
さすがに仕事を放棄してまでは釣りに行かないが。
それでも、かなりの釣りバカ。

そんな俺が、最近、見つけた穴場とも言えるポイント。
どんなサルだろうと釣れるであろうポイント。
入れ食い状態。

本当にそんな場所があるのかって。

ま、君だけは特別だ。
その穴場とも言えるポイントを特別に教えよう。
ほら、そこの三丁目の角をまがった駐車場の隣りにある……。

釣り堀だ。

ほら、ほら、入れ食いだぜ?

ステマっぽいもの、了。

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四草めぐる

Author:四草めぐる
将来、月に移住したいと思う今日この頃。現実的には一歩、一歩、着実に。基本を大事に。

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