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【 悪魔ちゃんと天使くん、~ その三十二、博打 】

サドクは、最後の最後にともう一度、アカシックレコードを確認してみる。
それだけ慎重になり、次の勝負こそはと必勝を願っていた。
書き換えられない未来を凝視する。

涅槃は、邦大と壺焼きシローの二人組に負ける。
勝負の結果を何度、検索してみても、涅槃の負けに終わっていた。
サドクが見た未来は、こうだった。

『僕は、僕の小鳥、銀杏くんを攻撃する事はできない!』

『おまっ!』

『ゆえに僕の小鳥、銀杏くんではなく天使の方を倒す。積年の恨みもあるしなッ』

邦大と壺焼きシローは、そう言うとサドクに襲いかかってくるのだ。
そして、サドクは思わず、邦大を殴ってしまう。
すなわち涅槃の反則負け。

これは今現状で、決して書き換える事のできない運命(さだめ)られた未来。

しかし、先ほどは、ここで油断をして、ロキに出し抜かれた。
ゆえに今度の今度は失敗は許されない。
彼は気を引き締めた。

「僕は、僕の小鳥、銀杏くんを攻撃する事はできない!」

予定調和の未来が現在(いま)へと変わっていく。
そして、現在は、過去へと変貌していく。
次に壺焼きシローが答える。

「おまっ!」

ここまできてもサドクは、一切、気をゆるめなかった。
そう。相手は不敗のギャンブラー、ロキ。
一瞬の隙が負けに繋がる。

「ゆえに僕の小鳥、銀杏くんではなく天使の方を倒す。積年の恨みもあるしなッ」

よし!
あとは、サドクが邦大をぶん殴れば、それで、この勝負は終了する。
彼の勝ちは予定から確定へと変わりつつあった。

「グット! 須木邦大らが星埜銀杏こと涅槃を攻撃できないとするならば……」

ここでロキが動いた。
しかもサドクが見落としていたロキの未来がこうであったように。
そうなのだ。サドクは涅槃と須木邦大、そして壺焼きシローの未来は確認した。

が、ロキの未来を見落としていたのだ。

「勝負は移行するぜ。すなわちサドク対須木邦大らの勝敗へとだ」

サドクが、しまった! と思った時はすでに遅かった。
彼は言葉を発するより先に手がでた。
そして……。

サドクの拳で、中空をひらひらと舞う須木邦大。

ロキが、さもおかしいとクククッと笑い、サドクに確認する。
壺焼きシローは、空を舞っている邦大を追って、右往左往して慌てている。
サドクは絶句した。

「バット! そういう事だ。サドク、お前はアカシックレコードを知らなすぎる」

勝負は移行した。
須木邦大が涅槃を攻撃できないと宣言した時点で。
ロキが中指と親指で、パチンと大きな音を立てて、言った。

「サドク、ハッキリと言ったよな?」

「ちくしょう! 思わず手をだしちまったじゃねぇか!」

「クククッ。そういう事だ。ハッキリと涅槃は負けると、お前は言ったよな?」

「ああ。ちくしょう。またしても俺の負けか?」

「お前、ギャンブラーの素質があるぜ。素直に負けを認めるって点ではな」

「もうここまで来たら、次の勝負しかねぇんだろ? ロキよ」

「ああ。そうだ!」

今、サドクの負けは存在を消される程度では払えない。
じわじわとハマっていく博打の無限地獄。
サドクの胃はキリキリと痛んだ。

「その前に一つ聞きたいんだが。いいか? ロキ」

サドクが痛む胃をさすりつつ言った。
この博打という地獄を抜け出すチャンスを見いだす為に敵に教えを請うたのだ。
生ける伝説である夜の国の王、不敗のギャンブラー、ロキに。

「お前は自分が負ける事をイメージできるのか?」

「負けをか?」

「そうだ。負けをだ。どうなんだよ?」

「そうだな。俺が負ける時は多分、今まで味わった事のない快感だろうと思うぜ」

「なんでそうなるんだよ。普通はあり得ないほどの挫折感だろうが?」

「目の前に俺を倒した強敵がいる。ワクワクしねぇか?」

「それが勝負師か……」

「そうだ。それだけで次の勝負のおかずになる。それが快感に繋がるってわけだ」

「うへぇ。負けが快感だとよ。あり得ねぇ~」

「ああ。快感だ。それが生粋の勝負師。つまり不敗のギャンブラーだ」

そんなやり取りをしている間に邦大たちは、次に行くであろう国に飛ばされた。
これまた不敗のギャンブラー、ロキの目算で。
次の国は……と。

大体、転生をせず、人間のまま六道で生きるのは想定外の出来事である。

しかし須木邦大たちは、人間のまま六道に存在している。
これは、例外中の例外であり、しかし、彼らが望んだ事でもあった。
須木邦大は自分の小鳥、星埜銀杏を求め。

そして壺焼きシローは邦大すら知らない思いを秘めていた。

彼の鍛え抜かれた肉体にその秘密があった。
しかし、ここでは無粋にその思いは語る事は止めておこうと思う。
とにかく六道の夜の国に彼らが来た事は、想定外であり、例外中の例外であった。

「さて、余計な話は抜きにして、次の勝負に移ろうか?」

ロキが言った。
サドクと涅槃はすでに二敗している。
いや、二敗どころか彼らは、この先、この化け物に勝つ事はできるのであろうか。

一体、いつ、ロキとの勝負は終わりを向かえるのであろうか。

それは彼らの心が折れた時。
すなわち次の勝負へ移れなくなった時。
もうロキには敵わないと二人が悟った時におとずれるのだ。

いや、もう一つある。

それは……。
ロキがサドクと涅槃を認めた時。
すなわち先に書いた自分を倒した強敵がいるとロキが認めた時だ。

その為には、涅槃の知恵とサドクの愛が必要だった。

情の体現者、悪魔である涅槃の知恵と叡智の伝道者、天使であるサドクの愛が。

彼ら二人の力が上手く、がっちり合わさった時、奇跡は降りてくるのだ。
それには、まず涅槃が回復しない事にはどうにもならない。
そしてサドクが堪え忍ばねばならない。

どちらにも難しい事だった。

そして、もう一つ。
実はロキは、負けたがっているのかもしれない。
なぜなら負けた時、感じた事のない快感を得ると言っていた。
いや、なにもこのサドクと涅槃の二人との勝負で負けたいというわけではない。
ロキが博打を打ち続けるのは、負ける事を望んでいるのではという事だ。
生まれてから今までの勝負でずっとだ。

負けを望んで……。

彼は、彼を倒してくれる強敵を求めてさ迷っているのかもしれない。
負けたいと博打を打ち続けているのかもしれないのだ。
生涯、不敗であるがゆえに。

博打という無限地獄を抜け出す為に……。

相反する博打を打ち続け。
そう思えた。

~ その三十二、博打、了。

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【 馬鹿とアホのはざま 】

…――馬鹿についての考察。

馬鹿と言う人間が馬鹿なのだという事は、実の所、かなり的を射ている。
その事象について、少々、ここに書きたいと思う。
すなわち馬鹿と言う人間が馬鹿な事を。
どういう事か。

人は、どれだけ気をつけようと自分の意識しない所で、馬鹿な行為を行っている。

それは人間である以上、愚かであるので、仕方ない事だ。
例えば、パチンコに行く人は実は分かっている。
パチンコはトータルで勝てないと。
それでも行く。

パチンコをやらない人間から言わせれば、愚かな行為でしかない。

例えば、日常的にタバコを吸う人間。
タバコは健康に悪く、自分の健康を害すると分かって吸っているのである。
高いお金を払って。

タバコを吸わない人から言わせれば実に愚かである。

これは例えばの話だが、その他にも、実に様々な愚かしい行為がある。
パチンコ、タバコは分かり易い例だが、分かり難いモノもある。
人は自分の気づかないところで愚かしいのだ。

それは人である以上、避けられない。

であるならば……。
馬鹿と言う人間は実は自分が愚かしいのだという事を知らないのである。
だからこそ他人に対して馬鹿と言ってのけられるのだ。
自分が馬鹿だと気づいていないから。

つまり、自分が馬鹿だという事に気づいていない馬鹿なのである。

ゆえに馬鹿と言うヤツが、馬鹿なのだと思う。
人に馬鹿と言う人間は、こんなに簡単な理屈にも気づかないのである。
馬鹿であるがゆえに。

以上で馬鹿についての考察を終わる。

*****

「よし。できた!」

「なにを書いてたんだ? 教授?」

「そのあだ名やめろよ。俺、普通の高校生だし。教授はねぇだろ」

「お前、頭いいモンな。教授ってあだ名、ピッタリだろ?」

「だからって教授は恥ずかしいから止めろって」

「なになに? 馬鹿についての考察?」

「どうだ。すげぇだろ?」

「…――難しくて、俺にはよく分かんねぇよ。馬鹿は馬鹿だろ? 違うのか?」

「お前、アホだな。こんなに簡単な事も分からないなんて」

馬鹿とアホのはざま、了。

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【 幽霊じゃないよw 】

俺さま「やっぱり、女は年上じゃないとな」

友達「えっ!?」

俺さま「だから、年上の女じゃないと俺の乾いた心は満たされないのさ」

友達「って、お前、自分の年齢知っている? 九十九歳だよ」

俺さま「だからこその年上だろ?」

友達「心の底から思う。お前、強いって……」

幽霊じゃないよw、了。

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【 DVDを買うの心 】

今日、荷物をお客さんのところに持っていった。
ただ、今日、運んだ荷物は、どうやら壊れているような感じがする。
品名を見てみる。

DVD。

なにか重い荷物が上に乗って割れたのではあるまいか。
俺は、荷物を揺すって確認してみる。
カラカラと音がなる。

やっぱり、このDVDは割れてしまっている。

荷物が壊れる。
それ自体は、よくある事だ。
梱包が甘かったり、荷扱いが荒かったり、理由は様々だが。
では荷物が壊れた時、宅配人は、どうするのか。

お客さん立ち会いの下、荷物がどうなっているのかを確認するのだ。

壊れていれば、当然、代品の発送を出し人に依頼し、壊れた荷物はひきとって帰る。
今回も、俺は、そうするつもりだった。
そうなる予定だった。

「あ。DVDね。壊れてるって? いいから、いいから」

しかし、お客さんが妙に優しかった。
まるで腫れ物に触るように俺をいなし、そして、さっさと帰らせようとする。
俺は宅配のプロだ。

そう言われても壊れているモノを配達する気はない。

「だから! いいから。帰ってよ」

遂にお客さんは怒り出す。
荷物が壊れていても怒らなかったお客さんがだ。
なんなんだ?
一体?

「だから! いいって言ってるじゃん。とっとと帰れよ!」

そこまで言われると、さすがの俺も引いた。
壊れていても平気とは……。
なんなんだ?

ん!

そうか……、DVDだ!

「ふぅ。やっと帰った。宅配人。ロリコンエロ天国を買ったなんて言えないしね」

と、お客さんが言ったとか、言わなかったとか。

DVDを買うの心、了。

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【 悪魔ちゃんと天使くん、~ その三十一、小鳥 】

「分かっているか? お前らは、お前ら自体の存在を賭けたんだぜ」

「なにが言いたいんだ?」

「本来ならば、今、ここで、すぐさま、お前らは存在を消されるんだぜ」

「なんだよ。だからなにが言いたいんだ?」

サドクがロキの含みを持たせた言葉にいらだち、突っかかるように言葉を吐く。
サドク自身、勝ちを確信した勝負で負けた事が引っかかっていた。
後々まで尾を引くようなヤツではないのだが。

それでも勝ちを確信したあとに負けるのは精神的に辛い。

一方、涅槃は自分が提案した二択での勝負が裏目に出た事を悔いていた。
思考に絶対的な自信を持ち、策略であればお手の物の彼女。
彼女にとって彼女の作戦は至高なのだ。

それで負けた。

…――いや、それゆえに負けた。

その一点が、彼女自身を苦しめ、そして彼女をせめ続けた。
ロキは、その心情の移り変わりを掴んでいた。
次の勝負に繋げる為に。

「ただな。博打の負けは博打で取り返せば、それでいいんだぜ?」

実は、この言葉は無限な蟻地獄への片道切符であった。
しかしサドクも涅槃も分かってはいるが、その切符を受け取るしかなかった。
なぜならば……。

今、現時点で、彼らは存在そのものを賭けて負けてしまったのだから。

そしてロキの側は実の所、この勝負を愉しんでいた。
そう。結局、彼は、二人の存在を賭けた勝負に勝った報酬はどうでもよかったのだ。
それよりも次の勝負を望んでいた。
勝負を愉しんでいた。

どうやら彼は、サドクら二人を絶望の淵に追い込み、潰す事を目指しているようだ。

ゆえに存在の消去などと甘い事を言わず、絶望の末、消す事を選んだ。
しかし彼は決して嫌みな人物ではなく、むしろ清々しかった。
そう。

彼の真の目的は、すなわち勝負に勝つ事のみ。

しかし圧倒的に。

だからこそ、今、勝ち名乗りを上げず、次の勝負へと二人を誘ったのだ。
彼らを絶望の淵に追い込み消す事は、手段だというだけの事。
圧倒的に勝つには、手段がそれしかなかっただけ。
彼は勝ちの報酬を求めていなかった。

ただただ彼への畏怖を二人に心の底に植え付ける事。

それだけが目的であった。
神からの神勅である創世に対する評価も彼にとっては余興でしかなかった。
すなわち真のギャンブラーとは、勝ち負けのみにこだわるモノ。

勝ちの報酬を求めるモノは、プロと呼ばれる一流のギャンブラーでしかなかった。

少なくとも彼の中では。

彼は不敗であり、超一流のギャンブラーなのだ。

逆に言えば常に圧倒的に勝つ。
これだけは誰にも譲れない価値観であり、彼が不敗のギャンブラーである由縁だった。
しかも彼は今、創世に関わるであろう天使と悪魔を前にしているのだ。

これ以上ない極上な美味しいディナーを愉しんでいたのだ。

「ナイス! 次の勝負、乗るか、そるか、それをハッキリと口にしてもらおう!」

「嫌みなヤツだな。乗るしかねぇんだろ?」

「グット。俺は無粋な事は言わないぜ。では次の勝負に移るとしよう!」

再び、彼がおもむろに中指と親指で、パチンと音を立てる。
サドクも慣れたモノで、次こそ、アカシックレコードを使い勝とうと画策していた。
涅槃は、自分の策が信じられないでいた。
先ほど裏をかかれたがゆえに。

「では、ゲストに登場してもらうとしようか」

「ゲスト?」

「そうだ。お前らもよく知ってるアイツらだ。おまっで分からないか?」

「おまっ? なんだよそれ。誰だよ。分かんねぇよ。誰だ?」

サドクは突如のゲストに不思議そうな顔をして、思い当たる人物を枚挙してみた。
しかし、夜の国に彼の知り合いは、一人としていない。
ゆえに彼の努力は徒労に終わった。

そこに!

壺焼きシロ―と須木邦大の二人が現われた。

須木邦大とは涅槃が星埜銀杏であった頃、言い寄ってきていた財閥の総裁。
そして邦大のボディーガードのマッチョマン、壺焼きシロ―。
確かに……。

「ぼっつあん。ここはどこでおまっ?」

「ぼ、僕に分かるわけがないだろう。壺焼きシロ―よ」

確かに、確かに、おまっという人物はいた! 壺焼きシロ―だ。
今回は、ぼっちゃんである邦大はオマケらしい。
サドクはそう思った。

「おっ! あそこにいるのは、僕の小鳥、銀杏くんじゃないか! アイ・ラビュー!」

「おまっ!」

いや、邦大はオマケではないな。
壺焼きシロ―を押しのけ、彼が堂々としゃしゃり出てきたのだから。
ロキは、クスリっとうつむきつつほくそ笑み言った。

「今からこの二人に戦ってもらう。もちろん相手は星埜銀杏こと涅槃、お前だ!」

なんと!
ロキは、涅槃の天敵である二人を人間のまま召喚して戦わせようと言うのだ。
しかも落ち込んでいる涅槃に天敵をぶつける。

これは鉄板で壺焼きシロ―、須木邦大組が勝つと思われる。

「サドク、お前が手を出したら彼女の反則負けとする。それがルールだ。いいか?」

ロキは、こともあろうか。
手負いの涅槃に天敵をぶつけ、更にサドクが手を出せないようにした。
これでは勝負にもならない。完全に涅槃の負けだ。

これは疑いもない事実であった。

しかしサドクは先ほどの勝負の件もあり、慎重になっていた。
すなわちアカシックレコードを何回も確認し、そして答えを出そうと考えていた。
次は負けられないと。

「いいぜ。俺が手を出したら涅槃の負けだな?」

「ああ。そういう事だ。了解したな」

「了解したぜ!」

「じゃ、お前は涅槃が勝つ方に賭けるか、それとも負ける方に賭けるか。どっちだ?」

「どうせハッキリと口にしてもらおうとか言うんだろ? 透けてんだよ」

「その通りだ。じゃ、ハッキリと口にしてもらおうか?」

「いいぜ。俺が賭けるのは涅槃の負けだ」

「グット! じゃ、始めるぜ!」

サドクは勝ちを確信した。
なぜならサドクが手を出せば涅槃の負けなのだ。
すなわち敢えてわざと手を出して、涅槃の反則負けにすればいいのだから。

もちろん、先ほどのように裏をかかれないようアカシックレコードも何回も確認した。

アカシックレコードを書き換えるのは、それなりの努力と時間が必要だ。
それが大きなアクションであればあるほどに。
彼は勝負の結末を確認する。

アカシックレコードによると勝負は涅槃の反則負けで終わる。

当然だろう。
サドクが手を出して、その時点で負けるのだから。
彼は、念には念を入れて、アカシックレコードをもう一度、確認してみる。

涅槃の反則負けは揺るぎない事実である。

もしこの事実を書き換えようとするならば、少なくとも一日は必要だ。
ロキという人物を持ってしてもだ。

という事は、この勝負中には書き換えられない。
結論として、アカシックレコードが示す未来は絶対であるとも言えるだろう。
サドクの口の端があがる。
勝ったと。

「だから、お前は甘いんだよ。アカシックレコードの見方をまったく知らないんだぜ」

しかし、それでもロキの自信は揺るがなかった。
決してアカシックレコードを書き換える事ができず、負けるという未来でも。
それが彼のプライドでもあった。

そうなのだ。
アカシックレコードは、過去、現在、未来が見える。
しかし、その取り扱いは実は繊細であり、決断力と判断力がないとまるで意味がない。
ゆえに神の叡智であるのだ。

そして、心力、真実を見抜く目を持つロキは、その扱いに長けていた。

だから不敗なのであり、生きる伝説だったのだ。
博打の負けは博打で取り返せばいい。
無限蟻地獄。

サドクは、その言葉の意味を嫌というほど思い知らされた。

じわじわと蟻地獄にはまり。
もがけば、もがくほど深みへ誘われるここで。
今はまだサドク自身、蟻地獄にはまっている事に気づいていなかったが。

そして、涅槃と壺焼きシロ―、須木邦大組の勝負の幕があがった。

~ その三十一、小鳥、了。

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【 ハッキリ、クッキリ 】

午前中、霊柩車を見るとラッキーだと言う。
そして逆に午後、霊柩車を見ると不幸になると言う。
はて。

午前中にも、午後にも、あまつさえ夜にも霊柩車を見た俺はどうなるのだろう。

果たしてラッキーなのか、不幸なのか。
どちらかハッキリして欲しい。
そう。

俺は霊柩車のドライバー。

今日も朝から晩まで、ずっと霊柩車と共にいる。
だって、霊柩車は職場だもんよ。
しょうがないじゃん。

そんな俺は、ラッキーなのか不幸なのか、一体、どっちなんだよ?

ハッキリ、クッキリ、了。

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【 そんなモンだろう 】

だ、ダメだ。AKB48のメンバーは全員出てくるのに首相の名が……。

そんなモンだろう、了。

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【 キャッとフード 】

疑問に思った。キャットフードの小魚味。もちろん試食はしてるんだろうね。

キャッとフード、了。

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【 悪魔ちゃんと天使くん、~ その三十、夜の国にて 】

「グット。まずはここからか」

まるで頓着しない格好をした男がつぶやく。
彼は六道の娯楽、夜の国の住人。
ギャンブラーだろう。

彼は、親指と中指をすり合わせ、パチンと音を立てる。

この行動にも意味はあるが、今は伏せておこう。
とにかく涅槃は最初に夜の国を選んだ。
彼女が一番、苦手な国だろう。

涅槃は愉しむという事を知らないで生きてきたのだから。

「お二人さんよ。まずは俺の勝ちから始まるってわけだ。オッケー?」

どうやら、この男は涅槃が、どの国を選ぶか賭けていたらしい。
そして、自分が思った通りに夜の国を選んだ。
ゆえに勝ったというわけだ。

再び、親指と中指をすり合わせ、パチンと音を立てる。

「本当にいいのか? 涅槃。夜の国はお前の苦手な歓楽街だぜ?」

「というか、ここまで来るのに不思議な空間を通ったけど、アレはなに?」

「時空の道管の事か?」

「時空の道管? なにそれ? なにかの設定?」

「もう。本当にお前には負けるよ。飽くまで、そのキャラでいくのな」

「なによ。そのキャラって! 失礼ね!」

「はい。はい」

今、涅槃が疑問に思った時空の道管とは六道の世界を繋ぐ、世界樹の枝葉。
すなわち世界樹の道管であり、各々の六道と繋がっている。
六道は実だと思ってもらえればいい。

そして六道を行き来する場合、ここを必ず通るのだ。

もちろん人間界、無、神界とも繋がっている。

人間界は根っこに。
そして無と神界は一番てっぺんである。
世界樹とは、この世界、そのものを形成する重要な植物であった。

ちなみに運命の女神ノルンは世界樹の根もとにあるウルズの泉に住んでいる。

ウルズの泉のウルズとは、ノルン三姉妹の長女ウルズの名に由来する。
そして、世界樹が枯れないよう常に水をたたえていた。
つまりウルズの泉は世界樹の栄養であった。

とにかく今、彼と彼女は世界樹の道管を通って、一つの果実に辿り着いた。

そこは夜の国と呼ばれる世界。
天使たちの国であり、六道の娯楽を担う歓楽街であった。
夜の国では、ギャンブルが、すべてであり、命すら賭けの対象になった。
逆に言えば……。

この国では勝者はすべてを手に入れる事ができる。

ただしギャンブルに勝ちさえすればだ。

「さて、もう勝負は始まっているぜ。油断しすぎだぜ。ベィビー」

ギャンブラーは静かにたたずむ。
しかし同時にどう猛な猛禽類ような目つきで狙いを定めている。
さりとて彼と彼女は、相変わらずな二人のままだ。

「と。夜の国で遊びたい所だが。遊びはあとだ。まずはロキに合わないとな」

「ロキ? 北欧神話の遊び人な神?」

「ま、遊び人には違いねぇけどよ。不敗のギャンブラーだぜ?」

「不敗?」

「そうだ。ロキは稀代のギャンブラーだ。生涯一回も負けた事がないんだぜ」

「ギャンブルは胴元が儲かるものなのよ。ギャンブラーに不敗はないわ」

そこまで、二人が話しているとギャンブラーが口をはさんできた。
ギャンブラーの瞳の奥には確かに射貫くような光が在った。
この平和な二人を射貫くような鋭い光が。

「だからこそロキは不敗なのさ。格好いいだろう?」

「って、お前、誰?」

サドクが不思議そうに言葉を口にする。
それはそうだろう。なんの予告もなしに男は現われたのだから。
風のように。

「お前、誰? ときたか。いいぜ。当ててみな」

「サドク! ダメ! コイツの口車にのっては。これは、ギャンブルよ!」

「グット。誰か当てられたらロキを紹介するぜ? どうだ?」

涅槃が慌てて、サドクを制しつつ、ギャンブラーとの間に割って入る。
この国では、勝ったモノはすべてを手に入れる。
逆に負けたモノは……。

「さ。坊主。乗るか? そるか? 俺が誰だか当てるだけでいいんだぜ?」

「でもな……」

「お前ら、ロキに会いたいんだろう?」

「ダメよ。サドク。ギャンブルなんて負ける派でしょ。君?」

「よく考えてみろ。不敗伝説のギャンブラーが、お前らに会うと思うか?」

「確かにな。よし。乗った」

「ダメよ! サドク。君みたいな軽率な人間が勝てるわけないわ」

涅槃が両腕を拡げて、強くサドクを制する。
しかし売られた喧嘩を買わないのは、サドクの性分に反する。
ゆえに止らないサドク。

「勝負!」

「面白いな。お前。よかろう。勝負だ!」

涅槃の心配を他所にサドクとギャンブラーの勝負が成立してしまう。
しかし、そこで彼女は、とっさに思考を転換した。
なんとか勝つ方法を考えた。

勝負は成立してしまったのだから止めるよりも勝つ方に思考がいったのだ。

いかにも機転の利く彼女らしい思考であった。
そして、この不利とも言えるギャンブルの勝率を上げる方法を思いついた。
彼女はこう言ったのだ。

「勝負の前に。この勝負、二択にしてくれない? だったら乗るわ」

「二択? フフフッ。お嬢ちゃん、面白い事を言うね」

「勝てば天国、負ければ地獄の二択だな?」

「そうよ。私たちはロキ以外、この国の人間を知らないのよ。分かってる?」

「いや、人間というより、人だけどな。ま、細かい事はいいか」

「とにかく、この勝負、二択にしなさい」

ギャンブラーは、またあの射貫くような目つきになり、瞳を光らせた。
まるで、この悪魔と天使、二人を品定めしているかのように。
もしかして彼は……。

「二択だったら、この勝負受けるんだな?」

「しょうがないわ。いいわよ」

「グット。よし。勝負だ! もちろんアカシックレコードを使ってもいいぜ」

サドクと涅槃は、ギャンブラーから出される二択を待った。
多分、ギャンブラーは、あの人物。
そう思える。

「一、ロキ。二、涅槃」

ギャンブラーは、そう言うとハンカチを取り出し、スッと口元を拭った。
赤いハンカチで、そこにはなにかが書かいてあった。
サッとハンカチを胸ポケットにしまう。

「不敗。敗れたり!」

サドクはラッキーだと思った。
涅槃は星埜銀杏であり、今、一緒に旅をしている悪魔だ。
一に決まっている。

「ふははは。馬鹿め。二択にしたのが間違いだったようだな」

「勝負は下駄を履くまでわからないぜ?」

「言ってろ。馬鹿野郎」

「じゃ、ハッキリと言ってもらおうか。お前はどっちに賭ける?」

「一に決まってるじゃねぇか! アホか、お前?」

「フフフッ。一か。本当にいいんだな?」

「当たり前だ!」

「お前らが賭けるモノは命じゃないぜ。その存在そのものだがいいんだな?」

「くどい。万が一、負けたら百万回でも消滅してやるぜ?」

「グット! じゃ、俺の勝ちだ!」

「!」

サドクと涅槃はお互い顔を見合わせ言葉を失う。
この勝負は、サドクの負け。
どういう事だろう。

彼は涅槃だとでも言うのだろうか?

「お前は一を選んだんだろ? だったら俺は二を選んだ事になるな」

「ああ。そうだな。その通りだ。だったら俺の勝ちだろ?」

「いや、正解は二だ」

「お前、自分の事を涅槃だとでも言うつもりか?」

「おい。おい。ちょっと待てよ?」

「なにがだよ。お前は一のロキなんだろ? 涅槃じゃねぇからな」

「誰が、口で言った選択肢が二択の選択肢だと言った?」

「!」

「そうだ。古典的な方法だがな」

そう。
彼は勝負の前にハンカチで口を拭っていた。
しかも、そこにはなにか書かれていて、もしかしてと二人は思った。

…――目の前にいる男。

それは紛れもなく不敗のギャンブラー、ロキであった。

そしてハンカチを取り出すと彼らの前に堂々と提示して胸を張った。
果たしてそこにはなにが書いてあったのだろう。
それは……。

一、涅槃、二、ロキと書かれていた。

「誰も、言葉で言った選択肢が、それだと言った覚えはねぇぜ?」

ロキが言った。
すべてはロキの計算だった。
始めの始めから涅槃に二択のギャンブルに持っていかせるように仕向け。
そしてあらかじめハンカチという小道具も用意していたのだ。

もちろん、他の手も何手も考えていた。

たまたま今回は二択のギャンブルになっただけの事。
不敗のギャンブラーは、他のシチュエーションでも勝てる算段を持っていた。
アカシックレコードに頼らなかった。
それが敗因でもあった。
サドクの。

「グッド。これはほんの小手調べだ。俺の不敗を敗れるかな?」

再び、ロキは親指と中指でパチンと音を立てた。

~ その三十、夜の国にて、了。

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【 中国産じゃないの? 】

敬遠される中国産の食品。だけどウーロン茶は福建省産が好まれる。

中国産じゃないの? 、了。

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【 サプライズ 】

朝、起きて、すぐにテレビをつける。
ニュース番組を見るのだ。
もちろん毎日。

今日も当たり前のように俺は、テレビをつけてニュース番組を見る。

そう言えば今日は特別な日だった。
しかし、この歳では……。
ま、いい。

「昨日、夜六時頃、東京都杉並区の路上で痴漢がでました」

俺は、歯磨きをしつつ、ニュースを見る。
東京の方で痴漢が出たらしい。
俺の家は名古屋だ。

「容疑者は高柳宏治(たかやなぎ こうじ)(36)と断定されました」

…――高柳宏治?

36歳?

俺の名前は高柳宏治。そして、年齢は36歳。
いや、いや、同姓同名で年齢もたまたま一致しただけだろう。
大体、俺は名古屋人なのだから。

「容疑者、高柳宏治は名古屋在住で、コンビニ強盗です」

ちょっと待て!
痴漢の話も意味が分からないが、コンビニ強盗?
いや、いや、名前も、年齢も、実家もたまたまかぶっただけで別人だろう。
俺をお構いなしにニュースは続く。

「更に容疑者、高柳宏治はオレオレ詐欺師でも稼いでいた様です」

そうか。
俺と同姓同名の犯罪者は飛んでもないヤツだな。
もし警察がきて、逮捕されそうになっても、きっと大丈夫だ。

なぜなら俺は頬に傷があるから。

それも、四十九針も縫った大けがの痕が。
これだけ目立つ傷だ。犯罪を犯したら、すぐに割り出される。
逆に言えば……。

この同姓同名の犯罪者とは違うとすぐに分かるはずだ。

昨日はスナックで飲んでいてアリバイもある。
というか、俺は犯人じゃないし。
ニュースは続く。

「容疑者、高柳宏治は頬に目立つ傷があり、のぞきの容疑もかかっています」

おぉーい!
これじゃ、まるで俺じゃないか。
俺は、昨日、一晩中、スナックで飲んでいたんだぞ。

しかものぞきって。

やってねぇし。
しかし、ここまで犯人が俺にそっくりだと言い逃れもできないぞ。
痴漢、コンビニ強盗、オレオレ詐欺、のぞきって。

俺は犯人じゃないッ!

*****

……宏治の友人「誕生日おめでとう。電波をジャックしたぜ。偽ニュースだ」

サプライズ、了。

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【 出歯亀が重要 】

私たちの愛は誰にも引き裂かれない。
なぜなら私と彼は目と目で通じ合っているのだから。
無言。色っぽいなのだ。

彼を見つめる。

うん。愛しているわ。
心の底から、貴男のすべてを。
もし、私が死んだら、貴男は生きていける?

少なくとも私は生きていけないわ。

貴男のいない人生なんて、とても考えられないから。
貴男は私を見つめる。
うん。

分かってる。

貴男も、そうなんでしょう?
私のいない人生なんて、決して考えられないのね。
愛している。

そう言いたいのね。

うん。
ありがとう。
この会話は私たちだけの秘密。
目と目で通じ合っている私たちだけの秘密なの。

「というか嫌いだし。生理的に受けつけないの。勘弁して下さい」

*****

……作者「と最後の言葉は二人を覗いていたモテない出歯亀の妄想だったり」

出歯亀が重要、了。

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【 すなわち譲り合いの精神 】

道のど真ん中をプルプルふるえて、ふらふらしているヤツが歩いている。
もちろん大渋滞が起こっていて罵声を浴びせるモノもいる。
ただ俺は分かるんだ。

プルプルふるえて、ふらふらしているヤツの気持ちが。

これはしょうがない事なんだ。
多分、俺がヤツの立場だろうとそうなる。
つまり、プルプルふるえて、ふらふらと道のど真ん中を歩くという事だ。

だから、みんな、少しだけ待ってあげようよ。ヤツを。

そんなにイライラしないでさ。
ヤツには、ヤツの事情があるんだからさ。
頼むよ。本当に。

「ってか! 誰がつくったんだ! こんな平均台みたいな道!」

すなわち譲り合いの精神、了。

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【 悪魔ちゃんと天使くん、~ その二十九、あるがままの二人 】

「神には、すべての六道を回れと言われている」

サドクが、いつになく真剣な顔でいう。
彼は基本なにも考えず、行き当たりばったりを好む性格だ。
涅槃とは対照的に。

それは天使の中にあって、珍しかった。

普通、天使は深い思慮と先を読んで行動するのが一般的なのだ。
なぜならアカシックレコードという予知とも似た力が備わっているのだから。
その中にあって彼は異端だった。

異端――…。

それは彼が悪魔になる予定だった事に起因する。

悪魔は深い情を持つ。
ゆえに表向き、考える事が苦手で、突発的な行動をするように見える。
人は自分が愛するモノに危険が及ぶと助けに飛び出す。
ごく自然な行動であると言える。

そして悪魔の愛は自分に関わるモノすべてに及ぶ。

だから考えなしに見えるのだ。
しかし、これは一般論であって、涅槃とサドクには当てはまらない。
彼らは、お互いがお互いとも入れ違っているのだから。

サドクは、元々、悪魔になる予定、涅槃は天使になるべくして生まれたのだ。

ゆえに彼は基本的には、なにも考えず、行動が先になるのだ。
言葉は悪いが言葉より先に手が出るタイプだと言える。
そんな彼が真剣な顔をして言ったのだ。

とても重要な事で、かつ必ず成し遂げなければいけない事なのだろう。

しかし……。
涅槃は、サドクの言葉を、さほど重要だとは捉えなかった。
彼女は天使になるべくして生まれた。

よって、自分自身の考えに従って生きていたのだ。

そして、彼女の価値観の中に神という判断基準はどこにもなかった。
彼女は悪魔や天使ですら信じていなかったのだから。
いや、ここまで至っても、いまだ……。
そう。

彼女にとって、いまだ悪魔や天使という存在に懐疑的であったのだ。

自分が死んだ事は分かる。
しかし、人が天使であり、悪魔であり、人間だったがゆえに。
三種の人がなにも変わらず人であったがゆえに、彼女はいぶかしんでいた。

そう。

生まれ変わりはしたが、人間に生まれ変わったと思い込んでいた。

いや、実際には三種の人はなにも変わらないのだ。
だから涅槃が人間に生まれ変わったと思っていても、なにも問題はないのだ。
悪魔にしろ、人間にしろ、なんにしろ結局は、変わらないのだから。

在るのは役割分担だけ。
人間とはすなわち情と知恵を持った矛盾した生き物。
そんな矛盾を抱え、それでも人間界で生き抜く事を義務づけられている。

矛盾の中で生きるからこそ魂は輝くのだ。

研鑽され、磨き抜き。
そんな人間たちすべてを愛す事を悪魔は宿命づけられている。
そして天使には叡智の伝道者として人間たちを導く事という役割がある。

ただ、それだけの事。

悪魔と天使、そして人間との違いは。
視点を変えれば、悪魔や天使は、人間より劣っているのだと思われる。
なぜなら魂の研鑽は人間界のみでおこなわれるのだから。

人間は、人間界という界と名の付く世界に住んでいる人なのだから。

いや、もう少し考えを推し進めると……。
悪魔や天使の魂は、もうすでに磨く余地がない状態だとも思える。
しかし、答えは出さない。

人間が、劣っている、優れているという事を明確にしても意味がないからだ。

在るのは、ただただ三種の人の違いは役割分担というだけにとどめよう。
しかしサドクが、まず涅槃に気づかせねばならぬ事。
それは悪魔という存在を認識させる事。

認識させる事。

それは途方もなく難しい事だった。
なにせ悪魔も、人間とはなにも変わらない人にすぎないのだから。
確かに人間界においては、彼らは超人的な力を発揮する。

たとえば、空を自由に飛んだりする事なのだが。

しかし、それは人間界で悪魔や天使は幽体と呼ばれる魂だけの状態だからだ。
簡単にいえば、それは幽霊の状態だとも言い換えられる。
だから姿も見えないのだ。

しかし、悪魔や天使も六道に戻れば、肉体を持った存在となる。

そう。
そこでは人間と変わらず、怪我もすれば病気もするのだ。
もちろん大空を自由に飛ぶ事も叶わない。

ゆえに悪魔や天使が、必要もない人間界への干渉はおこなわない。

超人的な力を発揮できるという事がネックなのだ。
神や魔王は天使や悪魔が助長する事を決して望んではいない。
だから人間界には行かせないのだ。

悪魔や天使たちが人間を見下すようになってしまう恐れがあるからだ。

そして必要があれば干渉する事もあるが、それは滅多にない事。
基本的に干渉せず、見まもるという立場をとる。
それが悪魔と天使なのだ。

「あぁ。涅槃、難しい事は抜きだ。お前は悪魔なんだよ。自覚しろよ?」

いかにもめんどくさがりのサドクらしいもの言いだった。
対して、涅槃もめんどくさそうに答える。
聞き飽きたと。

「そうね。私は悪魔に転生したのよね。そそ。悪魔なのよね。了解」

「お前、いまだに信じてねぇだろ?」

「だから信じてるわ。悪魔なのよね。了解って言ってるじゃない。了解?」

「うるせぇ! 妖怪だ! このわからんちん野郎!」

「そういえば、どこかの人たちの間で、この蠢き野郎! が流行ったそうね」

「そんな話、今は、どうでもいいだろうが」

「はい。はい。悪魔。悪魔」

と、こんな調子なのだ。
そんな涅槃に悪魔を自覚させるのは、どれだけ難しいのか分かるだろう。
サドクが鷹揚な性格な分、余計に難しい事に思える。

「ああ。めんどくせぇな。だったら一番始めに回る国をお前が決めろよ?」

「国? 国ってなに?」

「そっからかよ」

「なによ。分からないモノは分からないんだから仕方がないでしょ?」

「悪魔と天使が住んでる六道という名の六つの国だよ」

六道を形成する国は六つ在る。
夜の国、無の国、知の国、創の国、氷の国、治の国の六つだ。
それぞれの国には与えられた使命を持っている。

夜の国では、六道での娯楽を。

無の国では、六道での監獄を。

知の国では、六道での科学技術の研究を。

創の国では、六道での物資の生産を。

氷の国では、六道での治安維持を。

そして最後、治の国では、六道での政(まつり)を司っている。

それぞれの国は、それぞれに干渉し均衡を保っている。
そして、これは余談だが、人間界は六道各国のひな形であるとも言える。
すなわち……。

人間界だけで六道各国のすべてを具現しているのだ。

人間界は、神界、無と並んで界と称されるだけはあるのだ。
そして、世界が人間界、神界、無と六道を含め九つなのにも意味がある。
ユグドラシル。

すなわち世界樹が支える世界は九つなのだ。

そして世界樹は、この世界の創世から成長を続け、九つの世界を支えている。
ゆえに新たな創世は、新たな世界樹の芽吹きとも言い換えられる。
タネは悪魔と天使が持っている。

取りも直さず、今回の創世はのタネは涅槃とサドクが持っているのだが。

いや、持っていると言っても、目には見えない心の欠片だ。
サドクが、ここまで彼女に説明するのに要した時間、あしかけ三時間。
対して彼女は……。

「ふぁ~…。君の夢物語は終わった?」

と、いかにも退屈そうにあくび。
やはり彼女は自分の死は受け入れたが、それ以外は一切、受け入れていない。
のれんにうで押しで、叩いてもなにも響かなかった。

「涅槃。てめぇ。ぶっ飛ばしてもいいか?」

「どうぞ、お好きに」

「ちくしょう! 俺が女の子に手を出せない事を知って言ってるだろう!」

「ピーンポン! 正解! 当たり前じゃん。うり。うり」

そうなのだ。
これが涅槃の、星埜銀杏の真骨頂。
彼女は誰であろうとこうやって会話の先を走り、いなしてきたのだ。

今までサドクにしてやられていたが、ここで本領を発揮した。

今までの涅槃がぬるすぎたのだ。

そして実はサドクも。
そう。サドクもサドクのあるがままに収ったのだ。
ようやく、二人は、二人のあるがままである、あの頃に戻ったのだ。

ヘルメス・ディ・カイトという師と星埜銀杏という女の子に。

お互いの魂はようやく共鳴し合った。
二人、あるがままに。
ゆっくりと。

~ その二十九、あるがままの二人、了。

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将来、月に移住したいと思う今日この頃。現実的には一歩、一歩、着実に。基本を大事に。

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