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E★エブリスタ

では、▼以下より、私の世界をお楽しみ下さい。
     

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【 ジャンヌ・ダルク、~ 弐、後悔の夜 】

先に書いた通り、ジャンヌ・ダルクは神の啓示を受けた。
彼女は、オルレアンのシノン城でシャルル王太子と会い、それを証明する。
そして神の啓示を裏付けるよう……。

ジャンヌが参戦してからのフランス軍は快進撃に続く、快進撃。

ほぼ負けという状況をひっくり返し攻勢に回っていた。
そんなジャンヌを守る役として弓の腕をかわれた僕、そして怪力のモネル。
僕らは、2人は懸命に彼女をサポートした。

「ねぇ? ジャンヌが戦場に現われた時のイングランド兵の顔を見た?」

僕らは、これから明日の進軍の為の軍議を行おうとしていた。
モネルは腕を組んだまま、目をつむりうつむいている。
ジャンヌの視線は前を睨んだまま。

「こんなんだよ。こんなん」

僕は、わざと大げさにおどけてみせる。
この世の終わりという顔をして。

プッと吹くジャンヌ。

やれやれだと右上に視線を移し、苦笑いするモネル。

こんな冗談でも言っていないと、この戦争を戦い抜く事はできない。
戦争とは、人と人が殺し合う殺伐とした世界なのだから。
笑顔を忘れてはいけない。
それがポリシー。

そして、僕らは作戦会議所に集った。

ジャンヌは相変わらず真剣な顔をして、僕らを牽制する。
いや、威圧しているわけではないのだが、ジャンヌも軍団を任せられている。
その責任感からだろう。

「ここ数日は勝つには勝っているわ」

「ん?」

モネルがジャンヌに答える。
僕は、彼女のただならぬ態度に言葉を形に出来なかった。
しかし、そんな事はお構いなしに彼女は続ける。

「――…しかし、予定の半分しか進撃をする事が出来なかったわ」

「何が言いたい?」

相変わらず、モネルとジャンヌ、2人で会話を進めている。
確かに、僕らは殺し合いという戦争をしている。
真剣にならざるを得ないのは分る。
でも……。

「我々は一刻も早く、パリに入らねばならないわ。その事は理解してる?」

「おいおい。ジャンヌ。俺たちは精一杯やってるぜ!」

そうなんだ。
ジャンヌは自分にも厳しい分、他人に対しても厳しい所がある。
だからモネルの言い分も分る。

「モネル。あなたはいつも甘い。戦争に精一杯も、一生懸命も、ないわ」

「!」

「在るのは、結果だけよ」

「……」

モネルはジャンヌの剣幕に圧されて黙ってしまった。
いや、圧されたというより、納得できない何かが彼の中で生まれたのだろう。
僕も言葉を形に出来ないでいるけどモネルと同じ気持ちだったから。

「生きるか、死ぬかの極限で手を抜く人なんていると思う?」

「……」

僕は臆病だから焦る。
ジャンヌの剣幕はモネルを突き刺し、そして攻撃していたのだから。
このプレッシャー。これは、どちらも引かないなと思った。
僕は恐る恐る、言葉を形にする。

「――…ねぇ。ジャンヌ。ちょっといいかな?」

「何?」

「ジャンヌの言う事ももっともだけど。モネルの沈黙も僕には分るんだ」

「!」

「!」

ジャンヌとモネルがガタッと音をたてて、席を立つ。
どうやら僕は気に障る事を言ったらしい。
ジャンヌとモネルの。

モネルが机を拳で力一杯、叩く。
そして、怒りに任せ、僕に向かってがなり立てる。
ジャンヌは、腕を組んだまま黙っている。

「テメェに何が分る? 後方で弓を打っているだけのヤツによ!」

気圧される。
モネルは、それだけ本気だという事だ。
臆病な僕は、驚いたままモネルの言葉を聞くしかなかった。

「前線は危険なんだぞ。作戦会議中にヘラヘラ笑えるもんじゃねぇんだよ!」

僕は思わず目をつむる。
逃げたいと、心の中で弱い心がうずく。
確かに生きるか、死ぬかの瀬戸際で僕らは生きているんだ。

モネルの言いたい事も分る。

モネルは決して僕を責めているわけではないんだ。
ただ真剣に、それだけの事なんだ。
だけど僕だって……。

「止めだ。止め。こんな意味のない会議……、じゃな?」

「あっ……」

モネルは見限るように荒々しく、作戦会議室の天幕をはたき出て行く。
ジャンヌは終始、目をつむったまま黙っていた。
彼女も怒っているのだろう。
最後に一言、言った。

「スコール? どうやら今日は話にならないみたいね。終わりましょう」

「あっ……」

「ゆっくり休んで明日に備えなさい」

と、ジャンヌも落ち着いた感じで作戦会議室を出て行った。
後、残された僕は、もちろん落ち込んだ。

そうなんだ。

今の場合もそうだ。
僕は勇気がない。だから判断をミスする。
だから、みんなに迷惑をかける。

しかし、僕の勇気のなさは今に始まった事じゃない。

モネルの額には切り傷がある。
その切り傷は、僕の勇気のなさが原因なんだ。
そうあの時も……。

僕は1人、取り残された作戦会議室でうらぶれ思い出していた。

あの時の事を。
結局、僕はモネルやジャンヌにとって必要な人間なのだろうかと。
いや、必要ない人間なのかもしれないと。

「僕は、ダメな人間なのかな……」

この終わりのない問いに対し、僕は永遠に答えを出し続けた。
どれも、これも、正解だとは思えない答えを。
ずっと、ずっと永遠に。

誰かに、いつまでそうしているつもりだい? と声をかけて欲しくて。

それは空虚な願いで、僕は後悔し続けた。
あの時の事を思い出しつつ。
モネル、ごめん。

~ 弐、後悔の夜、了。

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↑僕は英雄ではない。
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【 いいわけ 】

俺は今日、悪友、大竹(おおたけ)に背中を押されて好きな子に告白する。
大竹は悪友だ。多分、俺の告白をどこかで見ているのだろう。
話のネタとして。

それでも俺は、好きな子に告白する。

たとえダメでもいい。後悔するのはまっぴら御免だ。
再度、自分の決意を確認して気合いを入れる。
俺はやるぞ!

来た!?
俺の好きな子、菜穂(なほ)ちゃんだ。
俺は俺でも不思議なくらい堂々と菜穂ちゃんの前に出た。

「あ。あの~…」

くそっ!
アソコまで決意を固めていたのに。
実際の菜穂ちゃんを前にすると尻込みをしてしまう。
多分、顔は真っ赤で、耳まで真っ赤になっているのだろうと思う。

「好きです! 付き合って下さい」

俺は、自分の心を鼓舞するように気合いで言葉を出した。
菜穂ちゃんは間違いなく可愛い。
俺なんかが……。

俺は俺の気持ちを気合いで言葉にしたら自戒の念が襲ってきた。

そうなんだ。
菜穂ちゃんは可愛い。
だから男なんてよりどりみどりで、不細工な俺なんかが……。

「あの。ごめんなさい。私……」

ほら。
やっぱり、俺なんかが告白していい子じゃないんだ。
でも、後悔はしていないぜ!

俺は、俺の気持ちをハッキリと菜穂ちゃんに伝えたのだから。

しかし、そこで……。
そうなんだ。そこで菜穂ちゃんから信じられない言葉が返ってきたんだ。
俺自身が後悔するとか、しないとか吹っ飛ばすような。

「私、大竹くんが好きなの。ごめんなさい」

ええっ。
マジで!? アイツにだけは負けるのは許せん!!
と、同時に俺の後ろの茂みから大竹が顔を出し、菜穂ちゃんに言った。

「菜穂ちゃん。マジ!?」と。

「やばっ。何で大竹がここにいるの!? 穏便に済ますいいわけなのに……」

いいわけ、了。

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↑ですよねw、確かにw
     

【 連載小説、ジャンヌ・ダルク 】

私が書く歴史物は基本、架空の物語であります。六話、完結。

お話、概要。

歴史に埋もれてしまった僕とモネル。
僕らは、確かに、この時代に生き、そしてこの戦争を戦った人間なんだ。
ジャンヌ・ダルクという時代に強く煌めく星の下で。
そして、戦闘へと赴く。
約束を胸に。

▼ジャンヌ・ダルク、~ 壱、今日という日
http://kokolost.blog.fc2.com/blog-entry-182.html
▼ジャンヌ・ダルク、~ 弐、後悔の夜
http://kokolost.blog.fc2.com/blog-entry-185.html
▼ジャンヌ・ダルク、~ 参、夜明け
http://kokolost.blog.fc2.com/blog-entry-190.html
▼ジャンヌ・ダルク、~ 四、日はまた昇る
http://kokolost.blog.fc2.com/blog-entry-201.html
▼ジャンヌ・ダルク、~ 五、最悪の日
http://kokolost.blog.fc2.com/blog-entry-204.html
▼ジャンヌ・ダルク、~ 六、終結の夕日
http://kokolost.blog.fc2.com/blog-entry-207.html

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↑笑うw
     

【 ジャンヌ・ダルク、~ 壱、今日という日 】

1431年4月。
僕たちの村は、イングランド軍に襲われた。
その蛮行の中で、唯一、生き残ったのが僕、スコールと親友のモネルだ。
僕たちは、あまりの惨状に涙し、そして愕然とした。

親も兄弟も殺されたのだから。

もちろん家や畑には、火を放たれ、村は燃えていた。
そして僕らの親や兄弟は兵士ではない。
どこにでもいる一般市民だ。

何故?

どうして?

……僕らの親兄弟は、何か罪を犯したのか。
僕らが強く思った疑問の答えをイングランド軍が持っているとは思えない。
この時、僕らは戦争とは、つまり、そういう事なのだと理解した。

そして僕らはお互いに誓い合った。

「僕たちの力で、この戦争を終わらせる」と。

そして時は流れる。1431年6月へと。
この年、5月にジャンヌ・ダルクという少女がフランス軍に従軍していた。
彼女は神の啓示を受け、この戦争を終わらせると誓った少女。

僕らにとっては救世主のような存在だった。

だから僕らは彼女の警護をかって出て、そして最前線へと向かった。
いや、僕らはジャンヌの警護を任された事が誇りだった。
彼女は神がかっている。

そして、その活躍はめざましく馬より早く走り1人で10人分の働きをした。

今も戦闘の最中だ。
ジャンヌは、1人、騎馬隊を追い抜き敵陣へと突入していく。
僕らは、そんな危なっかしい彼女を追う。

敵兵は、まるで木の葉のよう舞う。

軽いモノのように。
化け物じみた彼女の怪力から繰り出される太刀筋で敵兵が舞っているのだ。
それも1人ではない。5、6人、まとめて中空を舞っている。
更にジャンヌの足元から砂塵が舞い上がる。

辺りは敵兵と砂塵とが交じって舞い、先が見えない。

前線では混乱が起こっている。
これが、いつもの彼女お得意の戦闘スタイル。
混乱とは、士気低下を誘い、そして軍と兵を乖離させつつ、軍団を崩す。

たった1人で軍団を崩すのだ。

彼女が、いかに神がかった少女だという事が分ると思う。

しかし、そんな彼女にも隙ができる。
舞い上がった敵兵の中、それなりに腕に覚えのあるモノが突破してくる。
そして、フランス軍の中枢たるジャンヌ・ダルクに襲いかかる。

剣を大きく振りかぶった敵兵。

それはそうだ。
彼女は、常に最前線で戦い、そして、どんどんと敵中に突入していくのだ。
それは決して僕らでなくても、こう思うだろうと思う。

彼女は死に急いでいるのではないかと。

案の定。
彼女は彼女の命を落とすかのように敵兵の剣先へと自らの首を差し出す。
……僕は思わず目をつむってしまった。

しかし、そこは棍棒を持ったモネルが敵兵を蹴散らし、彼女を救う。

間一髪だ。
モネルはジャンヌに負けず劣らずの怪力の持ち主だ。
そして、彼の腕から繰り出される棍棒は敵の剣をへし折り、敵兵を倒す。

今回も彼の棍棒が彼女を救った。

しかし、そこでイングランド軍は動いた。
そう。接近戦では僕らに敵わないと判断したのだろう。
イングランド軍は後退しつつ、弓を使った遠距離戦に変えてきた。

モネルの頬を弓矢がかすめる。

「ちっ。ヤツら接近戦をあきらめ、弓に変えてきやがった」

モネルが呻く。
しかし、今こそ、僕の出番なんだ。
僕は、子供の頃から精密な作業は好きで、そして得意だった。

だから僕の放つ弓は正確無比に敵兵を貫く。

僕にとっては矢に放たれた矢を当てる事だって、さほど難しくはない。
かのウイリアム・テルとだって良い勝負をできると思う。
今も飛んできた矢もたたき落とした。

しかし、僕は臆病だ。

やったなとモネルとジャンヌが、僕を見つめて微笑んでいる。
確かに僕は弓の名手だと思う。
思うけど……。

僕は僕の放った矢で人が死ぬを見たくはない。

僕は甘いんだ。
だから判断ミスを犯す。
今も、モネルとジャンヌの2人は、僕を信頼してくれている。

しかし果たして僕は彼女らの期待に応え続ける事が出来るのだろうかと思う。

そして、今日も果てなき戦闘が終わる。
僕ら最前線で戦っている人間の気持ちは王に伝わっているのだろうか。
結局、ジャンヌも駒の一つであり、僕らの気持ちは……。

そう。
大局的に物事を見る人間には、最前線で戦っている人間の気持ちは分らない。
いや、決して分ってはならないのだ。

大局を見る人間とって、一兵士の気持ちなど。

10人の兵を生かす為に、たった1人の兵士の命など気にはしていけない。
それは、モノを考える事が苦手な僕だって分る定理。
多分、モネルだって分ってると思う。

しかし、それは僕ら自身が駒の一つだと認める行為であるのだが。

悲しいかな。
それが戦争の実情なんだと思う。
それでも最前線で戦う僕らは、意志があり、そして敵を殺している。

たとえ駒の一つだとしても。

それが正しい事なのか、あるいは己の心にあるがままに生きているのか。
それは、誰もが考える命題であり、答えのない問いだった。
だから戦争など……。

だから僕らは誓ったのだ。

僕たちの力で、この戦争を終わらせると。

この約束は僕ら二人の中で、とても大きなモノで、そして尊いモノだった。
そして、今日という日が暮れ、そして明日を迎えようとしていた。
殺伐した世界で唯一、僕が自然を感じる瞬間だった。
一日の終わりが。

「今日も終わったね」

と、誰に言うとでもなくつぶやいた。

~ 壱、今日という日、了。

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↑主人公が何故、ジャンヌ・ダルクじゃないのと言われたw
     

【 なぞなぞなぞかけ、その九 】

頑固オヤジの思考とかけて、将棋の穴熊囲いと解く。
その心は?

どちらも堅いです。

なぞなぞなぞかけ、その九、了。

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↑呼んだ?w
     

【 悪魔ちゃんと天使くん、~ その二十三、監獄を漂うモノ 】

ここは無の国。
無の国は、鈴音(りんね)という少女が一人で治めている。
しかし、治めているとは言っても、無の国には彼女以外、国民はいない。

いや、厳密には鈴音以外にも人はいる。

囚人としての咎人たちが、ここ無の国には収容されているのだ。
そう。無の国とはすなわち六道の中の監獄なのだ。
夜の国とは対象的な国。

…――少女。

そう語ったが鈴音は、少女ではない。

彼女は世界の始まりから、ずっとここを漂っている存在なのだ。

歳は計り知れない。
彼女は単に少女の姿がベストだと思っているだけだ。
儚く脆く、そして可憐なる少女の姿が。

そして無の国は鈴音以外の存在を拒否した世界。

つまり地面もなければ、空もない。
いや、それどころか空気すら存在を拒否された隔絶された世界。
そして咎人たちも、ここに収容されると存在を拒否され無へと帰していく。

鈴音は無の国で、唯一、存在を許された人なのだ。

彼女は何もない空間を漂っていた。
何かを考えるのでもなく、そして、何かを生み出すわけでもなく。
彼女は、ずっと一人、無の国をふわふわと漂っていた。

そして、つい今し方、サドクと涅槃ら二人の活躍が鈴音の耳にも入ったようだ。

彼女は興味がないと、クスッと一つ冷淡に笑った。
どうやら彼女とって彼らの出した結果は芳しくなかったようだ。
彼女は、それ以上を望んでいた。

一を言えば十ではなく百を返さないと彼女は満足しない。

彼女は世界の始まりから、ずっと悠久の刻(とき)を生きてきたのだ。
確かに人生、次の瞬間に何が起こるかは予測ができない。
が、驚くに値する事がなくなっていた。
彼女は世に辟易していた。

彼女の前に差し出された答えは、全て予測の範疇すぎないのだ。

ゆえに彼女を満足させられる答えは、どこにもないと言っても過言ではない。
しかし、彼女に見限られては、今回の創世自体、危ういモノとなる。
鈴音、彼女は六道のどの王よりも神に近い存在なのだ。
彼女は神のオブザーバー。

いや、オブザーバー以上は望まなかった存在。

なぜなら前の創世も知っているし、前の世界も知っている存在なのだから。
下手に議決権を持つと均衡が崩れ世界そのものがダメになる。
ゆえに観察者を望んだ存在。

「ふむ。まあまあじゃ。しかし、もっと余を楽しませてくれぬものかな」

今も、今回の創世の一部である涅槃の活躍を傍観していた。
もちろんサドクをも観測していた。
彼女は冷評した。

そして、また無の国の浮遊に戻り、今回の結果を神に報告した。

彼女の持つ心力は無我の境地。
心力とは、心の力であり、それを表に顕わしたモノを言う。
六道の王は、一人、一人、それぞれの心力を神と魔王より与えられている。
そして鈴音の持つ心力、無我の境地とは……。

すなわち、あるがまま。

つまり、なにごとにも縛られず、自然のあるがままを受け入れる事ができるのだ。
ゆえに神からの信望も厚くオブザーバーを頼まれているのだろう。
逆に言えば。

鈴音から見限られれば、それは疑う余地がなく完全なる悪を意味する。

なぜならば彼女の答えは、いつでも自然なのだから。
それが例え、どんな時であろうと。
その意味で言えば。

今のところサドクと涅槃の行動は悪だと判断されていない。

しかし、彼らは、いささか彼女の期待には応えられていないようだ。
思考を停止している鈴音は反応しなかったのだから。
そう。彼女は思考を停止している。

簡単に言うと彼女は考える事が面倒くさいのだ。

なぜなら悠久の時をかけて、この無の国で、ずっと考え続けたのだ。
そして、長い時間をかけ、彼女が出した答えは一つだった。
それは……。

例えアカシックレコードがあろうと次に何が起こるかは分らないだった。

人の人生とは不測の事態が常に起こり、そして人を煩わすものだ。
しかし、そこで鈴音は考える事を止めた。
思考停止したのだ。

なぜなら、何が起こっても楽しいと思えなかったからだ。

そう。
彼女の辿り着いた答えは何が起ころうと同じなのだ。
全てが予測の範疇であり、そして、大して真新しい事ではないという事。

ゆえに考えるだけ無駄。

良いも、悪いも、驚くべき事が何もないのだから。

そして……。
鈴音自身は悪魔であったが、アカシックレコードの存在は知っていた。
そして、天使たちの過信で命を落とす所をずっと見てきた。

アカシックレコードも万能ではない事を知っていた。

人生は何が起こるか分らない。しかし、鈴音は長く生き続けすぎた。
彼女は、ここまで生きたら死にたくはないとは考えている。
が、楽しみは、もうなかった。

裏を返せば、死んでいるのと同じなのだが……。

それでも思考停止をしてまでも生きる理由があるのだが、それは追々語ろう。
とにかく今は、彼女は、今回の創世をずっと観察してきている。
創世とは彼女の乏しい感情が微かに動く出来事なのだ。

そして、心力、無我の境地を持つ彼女の意見は神や魔王は尊重していた。

彼女は中立を保っていた。
中立を保つという事は、今のところ、この創世自体を認めているという事だ。
しかし逆に、見るに値しない創世だと判断しているという事にもなる。

つまり良くも悪くも普通の創世だと思っているという事だ。

全ては無我の境地の前に公平に判断された。
そして彼女は、フフフッと相変わらず冷淡に笑い、彼らに告げた。
その位の事では、決して余は満足をしないと冷ややかに。

「今のところ、そちらでは決して余は楽しめぬな」

と。

~ その二十三、監獄を漂うモノ、了。

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【 なぞなぞなぞかけ、その八 】

赤点滅の信号とかけて、女だらけの水泳大会のポロリシーンと解く。
その心は?

どちらも一時停止です。

なぞなぞなぞかけ、その八、了。

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↑やっと秋かw
     

【 信じるマン、第二十四話、軍師と魔法使い 】

「というかキム・キム、今、自分はフランス人だとか言ってなかったか?」

俺は疑問に思った事を普通に口にした。
そうなのだ。信じるマン、第一話を読み直してもらえれば、よく分ると思う。
キム・キムは……。

自分がフランス人だとバレてはいけないと思っているのだ。

それを前の話では、自分の事を生粋のフランス人だとか言ってるんだよ。
……うん? ちょっと待て。という事は。
そうなのだ。

あちらは桃軍師で良かったのだ。

そして、こちらは魔法使いで問題なかったのだ。

一旦、まとめよう。
そうなのだ。キム・キムはフランス人だとバレてはいけないと思っている。
そして、キム・キムは、どう見ても生粋の中国人だ。

キム・キムは自分の事を実はフランス人だという中国人なのだ。

格好は中国人、そのもの。
あっと、やっぱり桃軍師の話は、いいのか。
桃軍師がこちらのピンクであれば、中国人だと思わせる事ができる。

ま、つまりアレだ。

キム・キムは、生粋のフランス人で、格好は中国人なのだ。
って余計にこんがらがるって。
実は狙ってる。

そうなのだ。実は今の俺は、神に買収されているのだ。

神の不手際を誤魔化す為にまとめるとか言って、混乱させているのだ。
とにかくピンクという魔法使いの件は間違いがないようだ。
しかし、前の話で自分の正体をばらしている。
キム・キム自身が。

「アイヤー! あり得ないアル!」

「おほほほ。わたくしはおかしいと思ったのですよ。ローズ・ホワイト?」

「ウソつくな!」

俺が、キム・キムとミン・ミンの間に入って叫ぶ。
とにかく今の今まで神自身が混乱して、変な事を書いてしまったのだ。
神が勘違いしているのにミン・ミンが気づいているはずがない。

もう、ともかくアレしかない。

誤魔化そう。

「わたくしは、もとより、そのつもりですわ」

「そうアルな。それしかないアル」

ウホッ!
キム・キムとミン・ミンが同調している。
これは、何とも奇妙な光景で、俺自身、信じられなかった。

なぜなら水と油な二人なのだ。

これを神の御業と言わずして、何を神の御業と言うのだろうか。
と賢明な読者を誤魔化すには、これ位しないとな。
と神の言葉が聞こえたような気がした。

「桃軍師!」

ミン・ミンが、あちらのピンクに命令している。
そう。そろそろ戦闘に突入して、誤魔化そうという神のお告げがあったのだ。
あちらのピンクは背筋を伸ばした。

「そういう事だ。俺たちの戦闘は仕組まれていたんだよ」

ナオッちが言う。
低く、くぐもった重い殺意に満ちた目で。
そして、羽扇をスッと上から下へと動かし、進軍を指し示す桃軍師。

「……誰に?」

俺は決して戦闘に突入してはいけないとナオッちに聞く。
その疑問は至って普通で、当たり前の事。
ナオッちは答える。

俺たちを絶望させるような答えを。

「それは俺たちの軍師。すなわち桃軍師の緻密に練られた計算にさ」

桃軍師。
さすがにあちらの信じるマンの軍師を張っているだけの事はある。
俺たちが、作者の都合とか考えている間にも彼女の作戦にハマッていたのだ。
しかし、こっちだって負けてないぞ。

信じるマン、ピンク!

「おッほほほ」

そうなのだ。
こちらのピンクは計算なんて出来ない。
しかし、魔法的とも言える信じるマンの変身を解明しているのだ。

俺たちは全員揃って変身した。

そして、あちらは全員揃って普通の人間に戻っていた。

さて。
桃軍師。どうでる?
今、俺たちはマンモス級のパワーを持っているんだぞ。変態だけど。

「実は、ソコまで計算しておったわ」

桃軍師は、軍師らしく堂々とした感じでつぶやいた。
そして問題ないとまたもや羽扇を動かす。
すると……。

「ようよう。キム・キム、お前、フランス人だとバレてもいいのか?」

向こうの怪人27号、すなわち青がキム・キムに脅しをかける。
そうなのだ。やっと誤魔化せたっぽいアレをネタに。
本当に絶妙な計算だと思う。
神かお前は?

俺は桃軍師に妙に感心してキム・キムを見た。

すると彼女が、ピンクに命令して向こうを変身させるようにと指示を出した。
いや、彼女としても、向こうが変身できないのは不本意なのだろう。
先ほど勝負とか言っていたからね。

そしてピンクは、キム・キム信奉者で何でもいう事を聞く。

俺の朋友も、桃軍師の殺意を芽生えさせる笑い声でやる気満々だ。
もう俺たちは戦うしかない所まできていた。
マジですか。いやだよ~…。

「背に腹は代えられないアルな。しょうがないアルよ!」

心にもない事を。
お前、この状況を楽しんでいるんだろう!?
あり得ん。なんで俺たちが理由もなく戦わなくてはならないんだよ。
お前の趣味に付き合ってだ。

「マコっち、ヤツらを倒すアル! 戦隊モノは戦ってなんぼアル。GO!」

GO! じゃねぇ!
何だか、ピンクが加入して、色々、面倒くさいぞ。
とにかく俺は戦わないからな。分ったか。ウンコ、キム・キム。

俺は、そう誓ってナオッちの方を見た。

やっぱり目が怖いよぉ~…。
白目の部分が充血して真っ赤になってるし。
赤い眼にポツンとある黒目が余計に狂気がかって怖いッス。

「信じるマンは無敵アル! GO!」

うるせぇ!
この自己中女、キム・キム! お前が戦えよ!
口には出せなかったが、俺は、心の奥底で強くそう思った。

第二十四話、軍師と魔法使い、了。

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↑特攻w
     

【 ストレス 】

我々はピタゴラ星人。
地球人から見れば、我々は宇宙人だという事になる。
我々は月の裏側に基地を作り、地球人たちを監視し続けている。

地球人の素行は、我々が監視し続けなければならないほど蛮行に満ちている。

戦争はなくらならいし、自然も破壊され続けている。
地球という星は、我々の星に比べれば、何とも風光明媚なモノか。
人間という生命体がいなければ……。

しかし、それもまた自然なんだろうと考えている。

ゆえに我々が、人間の蛮行を監視し続けなければならないのである。
もちろん我々は直接的に人間へ干渉するわけではなく。
自然災害などで間接的に干渉する。

人間が環境破壊を進めれば、我々の科学で、自然災害を人為的に起こすのだ。

つまり自然が怒ったと人間に理解させるわけである。
そうやって、我々は、ずっと人間を監視し続けてきたのである。
今日は日本の四草めぐるを検体とする。
さて、どうだろうか。

「ネコっていいよな。いつも寝ていられる」

「ニャー」

「いいな。お前。ストレスなんてないだろう?」

「ニャー、ニャー」

「俺も人間じゃなくネコに生まれたかったよ。本気で」

我々は動物の言葉を我々の言葉に変換できる万能翻訳機がある。
もちろん四草めぐる氏の言葉も変換されている。
四草めぐる氏の言葉どころか……。

ネコの言葉も翻訳できる。

では翻訳しよう。

ネコ、曰く。
つうか、カブトムシはいいよな。
俺たちより、自由気ままで、食いたい時に食いたい放題だし。

何より、人間に気を遣わなくていいだろ?

人間は機嫌が悪い日、俺たちネコに八つ当たりするし。
今日は飯抜きとか、普通にあるしな。
カブトムシていいよな。

俺は、カブトムシに生まれたかったよ。本気で。

「キチ、キチ! キチチッ!?」

もちろんカブトムシのこの言葉も万能翻訳機で翻訳できる。
さて、カブト殿は何と言っているのだろうか。
翻訳、翻訳。

カブトムシ氏、曰く。
つうか、宇宙人はいいよな。
アイツら悩みなんてないんじゃないのかと思う。

大体、地球という星に縛り付けられ、宇宙に出られないのが苦痛だ。

その点、宇宙人はいいよね。
今の人間が持つ科学力の数倍先をいっているから。
俺たちより寿命も長いし、何より宇宙の理を知っているっぽいし。いいよね。

俺もカブトムシじゃなくて宇宙人に生まれたかったよ。本気で。

*****

ピタゴラ星人A「……よし。Bよ。勤務交代だ」

ピタゴラ星人B「それにしてもアレだよな。地球人っていいよな」

ピタゴラ星人A「ん?」

ピタゴラ星人B「自然豊かな地球に住んでいるんだからストレスないだろ?」

ピタゴラ星人A「確かに俺たちはストレス社会に生きているからな」

ピタゴラ星人B「ま。言っても始まらないけどね」

ピタゴラ星人A「さ。仕事だ。仕事」

ストレス、了。

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↑ピタゴラ星人w
     

【 ケムマキ・キムゾウ 】

「今、中国って大変なんだってな」

「うん?」

俺は今、麻雀を打っている。
今日は昼からいまいち流れが悪く、ツイていない。
昼間も博打。

繁華街でパチンコを打って負けていた。

何としても昼間の負け分をこの麻雀で取り戻したいと思っている。
挽回するには、この手を役萬まで仕上げねばならぬ。
二、三回、回せば、何とか……。

「中国。街は、PM2.5でモクモクなんだろう?」

「ああ。らしいな。お、来た、来た」

俺の意識は役萬へと向かって、対面のヤツの言葉を流した。
しかし、上手く回したようで役萬をテンパった。
よし。勝負だ。

「ん? もしかして、お前、テンパった?」

「さて、どうだろうね」

「怖い。怖い」

この手は、ダマで役萬だ。
わざわざリーチをかて、ツモを確定する事はない。
とりあえず警戒はされているが、まだ確定していないだろう。
ダマで勝負!

「ま、ところで、さっきの話。中国の事」

「ん? PM2.5の話か?」

「そそ」

「何を怖がっているんだよ。所詮、中国の話だぜ。日本には関係がないよ」

「でも、そうも言ってられないんだ。昼間、パチンコに行っただろ?」

「ああ。でも、中国と関係があるのか?」

「モクモクだっただろう?」

「モクモク?」

「タバコ。タバコの煙でモクモクだったって事」

「確かに。そう言えば、ここも……」

「おっ! 来たよ。ツモ! タンピン、イーぺー、ドラ、ドラ。満貫」

俺は、役萬は対面に煙に巻かれた。
PM2.5やタバコの煙のようにモクモクとした煙たい満貫に。
そして、俺のツモ牌が、ポロリと山から崩れた。

「……それだ!」

タバコの煙で、目が染みて涙が出てきた。
決して、悔し涙ではないからな。
クスン。

ケムマキ・キムゾウ、了。

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↑ニン、ニンw
     

【 見えちゃう人、十一、記号化 】

「もうあきらめて、プロレスデビューしなさい」

あちらの山本宗が、優しく言う。
優しく言ったところで、インチキマンだろ? 嫌に決まっている。
……早麻理は、グーパンを握ったまま動かず構えている。

早麻理は一体、何がしたいのか?

僕には、分からなかった。
僕の意識の上をあちらの山本宗の言葉がつらつらと流れている。
僕は、あちらの山本宗の言葉を何も聞いていない。
早麻理は相変わらず、黙ったままだし。

「君は黙ってリングに立っていれば、それでいいんだよ」

山本宗が、一通り、まくし立てた後、告げた。

確かに頭はいい方ではない。
大学は絶望的。
勉強も面倒くさいし、ならば高校を卒業した後。
インチキマンとしてリングに立つのもいいかもしれない。

痛い事もないんだろう?

いや、早麻理のグーパン以上に痛いモノはない。これは断言できる。
だからこそ僕には、うってつけの職業なのかもしれない。
あちらの山本宗の言葉は一切、聞かなかった。

が、何故だか黙っている早麻理を見ていると僕にはうってつけかもと思った。

携帯に出ろと命令したという事は、そういう事なんだろう?
違うのか? 早麻理? 黙ってないで何か言って。
僕は少々、慌てた。

いつもいつもうるさい事を言って命令する早麻理が黙っていたから。

「あのよ」

お、やっと早麻理がしゃべり出した。
くるぞ! 嵐が!
クッ。

「あのよ。お前、死んだ後、魂の研鑽が必要なのを知っているか?」

魂の研鑽? 何それ?
えっ。というか、それだけ? 嵐は?
そうか! 分かった。入り口だけは平穏なんだな。ここから!

「今のテメェの魂レベルじゃ、地獄行きなんだわ」

地獄?
あの~…、お話がよく見えないんですけど。
というか天国とか地獄とか、生きてる僕には関係ないと思うんですけど。

「でよ。お前、明日、死ぬ事が決まっているんだわ。これが」

なんと!
今、何と仰った?
明日、僕が死ぬとな? 確かに死兆星は見えたけど。

アレは、ギャグではなかったのか!?

僕が死ぬ。
考えた事もなかった。
いや、実際、早麻理の死ぬギリギリのグーパンで何回も臨死体験してるけど。

本当に死ぬなんて、考えもしなかった。

「でよ。俺はお前を鍛えていたわけよ。魂の部分をな」

何と! 早麻理は僕を育てていたのか!? 天国に逝かせる為に。
何となく、そうかなとは思っていたけど。
だけど、そうしたら……。

そう。
早麻理の魂のレベルは天国へ逝けるレベルなのか?
早麻理は少し考えた風に首を傾げ、僕に対して、こう続けた。

「俺も赤点なんだわ。だからお前を鍛え、自分も鍛えていたんだよ。OK?」

……明日、死ぬ。
何が起こって、どう死ぬのか、それを知りたかった。
しかし、肝心の早麻理は、それっきりグーパンを握り、黙ってしまった。

「宗さん、インチキマンもいいモノですよ。何もしなくてもいい」

相変わらず熱い調子で、あちらの山本宗が続けている。
もうプロレスの話なんてどうでもいい。
どうせ僕は明日、死ぬんだ。

いつも僕をからかうだけの早麻理が真面目に言ったから余計に信憑性がある。

しかも早麻理は幽霊で死後の世界の事を知っているからね。
僕は、半分投げやりに言った。早麻理に向けて。
頼む、死ぬギリギリで殴ってくれと。

早麻理は応えてくれた。

*****

「やっと早麻理の真意が見えましたね。宗さん」

「早麻理ちゃん。やっと会えたね。数時間ぶりだけど何日も前に思えるよ」

「そうですね。宗さん。かなり久しぶりのような気がしますね」

……吸い込まれそうな蒼い目。
そして、ショートボブのさらさらヘヤー。
改めて可愛いと思う。

「でも今は、そんな事を話している場合ではありませんよ」

「そそ。僕、死ぬんだってね。あり得ないけど」

「早麻理は私の知らない事を知っています。だから余計に信憑性があります」

「でも早麻理が知らない事を早麻理ちゃんも知っているんだろ?」

「……はい。だから早麻理は殴ったんでしょう」

「という事は僕が死なずに済む方法を早麻理ちゃんは知っているの?」

「いえ。ただ早麻理にも手に負えないから殴ってこの場を作ったんでしょう」

「そっか。本当に死ぬのかな?」

早麻理ちゃんはさらさらヘヤーを軽く風で揺らしつつ言った。
ほんのりと香るシャンプーの香り。
フローラルだ。

フェミニンな早麻理ちゃんには、ぴったりの香り。

というか夢の中で風とか香りとか、本当にリアルな夢だと思う。
そして、僕は、夢の中の早麻理ちゃんに恋をしている。
これは真剣な気持ちだ。

「私は無事に成仏する方法を見つけましたが、また問題が起こりましたね」

「そうだね。僕が死んでは意味がないし」

「大体、何で早麻理は、宗さんに死因を伝えないのでしょう?」

「そうだね。意味が分からない。魂の研鑽とか何なの。本当にあり得ない」

「……今回は私たちの話し合いを邪魔しないようですね」

「確かに! いつもだったらこの辺りで、早麻理の気付けが入るのに……」

「それだけ重要だと思っているんでしょう」

「早麻理のヤツ……。僕たち二人で答えを出せっていう意味なのかな?」

「多分。早麻理の手には負えないんでしょう。何となく分かります」

「僕が死なずに済む方法か。答えを出せって方が無理」

「無理ですか……」

「大体、何で死ぬのかも分かっていないんだよ。そんなの答えなんてないよ」

「そうですね。誰が死を決めているのかも分からないんですから……」

「くそっ。早麻理のヤツ、一番、やっかいな事を丸投げか」

「……申し訳ありません」

「いや、いや、早麻理ちゃんが謝るところじゃないよ。早麻理のヤツだよ」

「……早麻理は私で、私は早麻理ですから」

「うーん。今、ちょっと疑問に思ったんだけど、いい?」

「はい」

「もし早麻理ちゃんが、無事に成仏したら早麻理の方はどうなるわけ?」

「私たちは一応、別人格なので早麻理は残ると思います」

「だったら成仏しても意味ないじゃん!」

「ハッ! 確かに……」

「そっか。早麻理を成仏させるには、早麻理ちゃんは関係ないって事ね」

「本当に申し訳ありません。私が成仏すればとばかり考えていて」

「でもそれで、ちょっとした事を思いついた」

「何です?」

「夢の中の早麻理ちゃんが成仏しても、リアルの幽霊な早麻理は成仏しない」

「はい。そうだと思います」

「だとしたら僕の死を避ける事ができるかもしれない」

「どうやってです?」

「ふふふっ。腐っても早麻理だね。僕には絶好の場だったよ」

「どうしたんです? 何です? 私には、さっぱり分かりませんが……」

「ふふふん。そろそろ早麻理の気付けがくるな!」

「宗さん。本当に私には意味が分かりませんが、どうしたんです? 宗さん」

*****

「答えは出たか? ああん? ボンクラ?」

ボンクラときたか。……でも本当にいい場だったよ。
僕は死を回避できる方法を見つけたんだ。
もし死を記号で捉えていれば。

そう。死を決める人が死を記号で捉えていれば、僕は死なずに済む。

「どうやら答えが出たようだな。俺はテメェのそれに従うぜ」

珍しい。
早麻理が僕の答えに従うなんて。
ま、いいや。これで全ての問題が解決すると思うから。

「とびっきりヘビーなヤツを頼むぜ。宗?」

期待していていいと思うよ。早麻理。
できれば、早麻理自体も成仏をさせたいと思うけど、それはまた今度。
今は、僕の死を回避する事だけに集中しようと、そう思う。

僕は、またほくそ笑んだ。

十一、記号化、了。

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↑何事もゆっくりじゃw
     

【 真夏の怖い話 】

管理人さん、ブログをお借りします。

今から、俺が真夏にピッタリの怖い話をしよう。
先に忠告しておくが、この書き込みは実際にあった話であり作り物ではない。
何から話そうか……。

その昔、俺たちはこの地方で幽霊病院と名高い、廃墟に行ったのだ。

人数は三人。
男ばかり、三人で、その廃墟に向かった。
その時、事前に準備もせず、廃墟に向かったので、懐中電灯すらなかった。

なので俺たちはタバコを吸う時に使うライターで進入した。

何事もなく廃墟を一通り見て回った。
そして俺たちは、行き止まりの通路でタバコを吸う事に決めた。
その行き止まりに行くには、ちょっとした階段を下らなくてはならなかった。

タバコに火をつけるとライターは一時、消す事にした。

ライターをずっとつけていた事で、ライターは熱を発していたのだ。
そして俺たち三人はタバコを吸い雑談をした。
幽霊病院も大した事ないなと。

行き止まりの通路で、俺たちは、こんな話をした。

……更に昔、このメンバー三人で夜景の綺麗な名所に向かった時の話をだ。
その頃、俺たちは無線を使って話をしていた。
FMバンドを使った無線だ。

夜景を見に行った時、俺たちは二台の車で向かっていたのだ。

そして山を登って目的地に向かっていた。
俺は先を走る友達に無線を使って、もうちょっと遅く走ってくれと伝えた。
了解と返事があった。

すると無線が混信し、まったく知らない人の声が入った。

ハッキリと。
FMバンドという混信が、ほぼない無線で。
その声は、地からわき出るような低く重い声で、俺たちにこう言った。

「ここら辺は事故が多いからな。気をつけろよ」と。

まるで自分が事故にあったように。
その話を俺は、この廃病院の行き止まりの通路で初めて友達に明かしたのだ。
すると友達は一つ身震いをすると、変な事言うなよと答えた。

そこで俺以外の友達、二人はタバコを吸い終えた。

吸い終えた友達は言った。
まだ、この廃病院を探検し尽くしていないとばかりに。
ゆっくりと立ち上がり、行き止まりを引き返し、新たな場所に向かって。

「もう少し、この廃病院を探検してみるわ」と。

ライターは、まだ熱かったが、騙し騙しライターをつけて。
俺は一人、行き止まりの通路に取り残された。
いまだタバコを吸っていたのだ。

一人取り残された俺は何故だか、背筋がゾクゾクしてタバコを消した。

そして友達二人を追って、少々、小走り気味に階段を上がった。
すると俺を追い越すように階段を上る白い影が見えた。
俺はあり得ないと思った。

俺は唯々絶叫し、何とかして先に行った友達二人に合流しようとした。

もちろん全力疾走し、友達二人を追った。
友達二人は、俺のただならぬ状況を目の当たりにして、混乱した。
ここでも、また非日常な摩訶不思議な事が起こったのだ。
あり得ない非日常だった。

と、このお話の全てが実際にあった事であり、作り物でもなんでもないのだ。

君が死んだら意味が分るよ。
なぜなら、この書き込み自体、あの世からの……。
そうなんだ。だから言っただろ? このお話は、実際にあったお話だと。

……最後に。
管理人さん、ありがとうございます。

真夏の怖い話、了。

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↑世の中、知ってる事が全てじゃないのだw
     

【 見えちゃう人、十、死ぬ前に 】

僕が聴衆の一人をランダムで選び、先ほど準備したカードを手渡した。
そして僕は後ろを向き、一枚、カードを選んでもらった。
これで透視の舞台は整った。

早麻理が聴衆の一人が選んだカードを見てきて、僕にささやく。

ハサミのマークの描いてあるカードを選んだと。
僕は、また少し早麻理にハメられるのではと思ったが彼女を信じる事にした。
信じるしか道はなかったし、ハサミのマークのカードもあったから。

不本意ではあるが。

いや、こんなインチキショーをやっている時点でアウトだ。
そして僕が、早麻理に聞いたマークを言い当てようとした、まさにその時!
あっちのプロレス団体広報の山本宗が動いた。

「皆さん、この透視はインチキだ」

ざわめく聴衆。
そして、山本宗に視線が集まった。
山本宗は意気高々にふんぞり返り、言葉を続けた。

「……いや、でもインチキと言っても手品の類ではありません」

あれ?
僕の予想と違う。
山本宗は、口八丁で手品の類と関連づけて……。

「この子は幽霊に選んだカードのマークを見させてきていたのです」

って、幽霊だって分かってるし。
それもストレートに聴衆に向かって、叫んでいるし。
ちょっと待って、超能力と霊能力、どちらが胡散臭いと思う?

超能力も霊能力も確かにどちらも胡散臭い。

だって、どちらも今の科学で証明されていないのだもの。
ただ、どちらかと言えば超能力の方が、若干、霊能力より怪しいかな。
だって霊関係で言えば、法事はするし、水子や人形もちゃんと供養するから。
あっちの山本宗は、ほくそ笑んでいる。

ただし、いくら超能力より、霊能力の方が信憑性があったとしても。

そう。
山本宗の言った事は、かなり突拍子もない事なのだ。
そして今までの流れで分かった事がある。

あっちのプロレス団体の山本宗も僕と同じで見えちゃう人なんだ。

……ならば。
そう。さっき、早麻理ちゃんと作戦会議をした作戦を実行する時なのだ。
しかも流れは僕らが考えた早麻理不必要論に傾きつつある。
ふふふとあっちの山本宗が笑う。

「幽霊というのはウソで、実は……」

幽霊はウソ?
何を言い出すんだ。あちらの山本宗は何が言いたい?
僕は豆鉄砲をくらった鳩のような顔をした。

「私はプロレス団体広報でして、今、レスラーをスカウトしにきたわけです」

山本宗が、自分の身分を素直に聴衆に晒す。
そして、自分は宝物を手に入れたのだと、胸を張って続ける。
スカウトって、僕?

「インチキマンというリングネームで、ヒールをやらせようと思っています」

インチキマン? 新手の中華まんか?

「だから先ほどインチキと言ったのです。驚かせて済みません」

……インチキマンってなんだよ。格好悪い。
そして、あちらの山本宗は、更に宣伝をするように続ける。
どんどんと僕を追い詰めるよう。

そうなんだ。

成仏の件は、いい方向に動いているんだけど、プロレスの方は……。
間違いなく僕はデビューさせられそうになっている。
そんなぁ~…、インチキマンなんて嫌だよ。

「ちくしょう。あっちの山本宗のおかげで、全部、台無しじゃねぇか」

早麻理は、早麻理で、飽くまで超能力でいきたいらしいし。
ていうか、僕の平穏で平和な日常は、一体、どこに。
聴衆は、あちらの山本宗に魅入っているし。

「いいじゃねぇか。プロレスデビューしろよ。インチキマン!」

聴衆の一人が言った。
それを皮切りに堰を切ったように聴衆が騒ぎ始めた。
将来、有望なプロレスラーを祝福するよう。

いや、みんな、そんなどうでもいい所、祝福しなくていいから。

むしろ迷惑だから。
そんなインチキマンなんてリングネームで晒し者になるのは、御免だ。
しかもヒールをやらせるつもりって、絶対、嫌だ。

どうにも収まりのつかなくなった聴衆を尻目に僕は、こっそりと逃げ出した。

……もうだって、逃げるしかないでしょ。
聴衆は、完全にあっちの山本宗の味方だし、プロレスデビューなんて嫌だし。
とにかく、早麻理、これで分かっただろう? 残り10%の確率。

一割はでかいよ。

十人いれば、一人はいる計算だからね。
僕は、怖かったので、お金は全て置いておき無事に家に着いた。
僕は、早麻理にもう二度と超能力なんて言い出すなよと強く言いたかった。

「そうだな……、確かに」

早麻理は何かを考えていたようで、空を見つめつぶやいた。
早麻理が考えるなんて、珍しすぎる。
よからぬ事か?

いや、違うな。
これは早麻理ちゃんの考えた事を反芻しているんだ。早麻理のヤツは。
意図せぬ出来事ではあったにしろ、早麻理にはいい薬だった。

だって実際的に早麻理の教育は、一見、僕にとって意味のない事に見える。
その事実だけで充分なのだ。何度も見直す必要なんてない。
一見でいいんだよ。

早麻理のように直感で生きている(?)幽霊には。

「俺は、お前ぇに必要ない幽霊なのかも知れねぇな。どう思う? 宗」

やっぱり、このヤン姉ぇ、早麻理のヤツ、自重し始めたのかも。
これは、僕らが願った事であり、結果オーライか?
真面目に成仏を願う早麻理ちゃんと僕の。

そこで、僕の携帯が、けたたましく鳴り響いた。

……知らない番号。
いや、知りたくもない番号だと思う。
このタイミングで、しかも、あの情熱を持ったアイツからだろうと思うから。

僕は携帯の着信を無視した。

すると早麻理が、いきなりとんでもない事を僕に告げた。
決して僕が望んでいないにも関わらず。
電話に出ろと。

だって、アイツしかいないじゃん。

せっかく逃げてきたのに、また捕まりにいくようなモノだよ。
しかし、早麻理は、これで最後だとグーパンを握った。
そして北の空で死兆星が一段と強く輝いた。

……インチキマンか。何だよ。そのあまりに適当で最悪な名前は。

僕は、そう思いつつ、のろのろと携帯に手をかけた。
嫌だなと心の底から思いつつ。
プロレスか……。

と携帯に出る前に、ちょこっとだけ心の準備をする時間があった。

ふぅ~っと深いため息をついて。
すると携帯の相手は妙に明るい声で、僕に対応した。
相手は、やはりヤツ、プロレス団体広報のあっちの山本宗だった。

十、死ぬ前に、了。

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↑自分でオタクと自覚している分、いいと思うw
     

【 海猫さんが行く、四、~ 絶叫 】

海猫さん、今日は真面目に原稿に向かっています。
そそ。海猫さんは、少女漫画家です。
お目々キラキラ系。

前に少年サンティに持ち込みに行ったのは、気の迷いです。

その気の迷いで世の中の厳しさを知ったのですが。
今日は、とにかく描くという事を目標に海猫さんは動いているようです。
そういえば……。

海猫さん、この前、ギャグ漫画を描いていたんですよ。

もちろん少女漫画ベースですがね。
飽くまで彼女の目的は、リボンやなかよしなどの少女漫画ですから。
しかし、この残暑が厳しいなか良く頑張っていますね。

海猫さん。

一心不乱に漫画を描く彼女は輝いています。
そそ。ギャグ漫画の話。

海猫さんはギャグ漫画を描いたつもりだったのですが、なぜかホラーに。

そうなんです。
なぜかホラーとしての評価が高かったのです。
いや、評価と言っても、両親と姉妹、そして職場の人ですが。

決して出版社の編集さんではありませんよ。

でも、なんでホラーに見えたのか。

だって海猫さんの絵。
北斗の拳ばりの体と輪郭にお目々キラキラですから。
だから少年サンティに行ったんですが。

おっと。
そんな余談を語っている間に海猫さん、休憩を入れるようですよ。
その隙に、ちょっと原稿を拝見して見ましょうか。

「すでに死んでいる」

と。
原稿の一番、上のページにデカデカと書体で書かれています。
気を取り直し、次のページを見てみましょうか。

「後、二枚、めくったら死ぬ」

と。
次のページにも、書体でデカデカと書かれています。
もしかして後、二ページも。

「猶与は後、一枚だ。世の中の厳しさを知った」

サンティの事でしょうか。
でも、これは漫画というのでしょうか。
全て書体で書いてあり、ある意味、小説なのではと思います。
しかし、この字、鬼気迫るモノがありますね。
怖い。

海猫さんの原稿、一応、最後まで読んでみますが期待しない方がいいですね。

では、最後の一枚を。

「……実は、これ漫画じゃなくて遺書だから。決して止めないでね」

って、何を!
休憩に行って帰ってこない、海猫さん。
どこまで行ったんだ!? 人生の休憩、あの世までか?

海猫さぁぁぁん!

~ 絶叫、了。

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↑こういうのを描こうよw、海猫さんw
     

【 悪魔ちゃんと天使くん、~ その二十二、策士 】

「よく、ダイバー自身が百億円を目指し、湖底に潜らなかったな」

サドクが、笑顔で涅槃の元に戻ってきて言う。
彼が言った事は、もっともだった。
しかしここにも計算はある。

「……私の計算をなめないでね。私は天才なのよ?」

「ふははは。自分で自分の事を天才って言う天才はいねぇよ」

「うるさい! 成功したでしょ?」

「まぁな」

そう。

ダイバー自身も潜れないように彼女は計算していたのだ。

どういう事か?
それは、同盟を組んだ人々の監視。
彼女は、この集団が必ず出来ると信じていた。

そして、ダイバー自身が潜る事を阻止しようとするだろうと考えていた。

しかし、彼女の中では、ここで憂慮すべき、一つの要素があった。
それは同盟を組んだモノたちがダイバーを取り込まないか。
それが彼女の計算の穴であった。

彼女は同盟を組む集団にダイバーが与しないか、それが気がかりだったのだ。

しかし、彼女は、それを想定して番組を作った。
つまり、ソコに行くまでに百億円は湖底に沈んでいると分らなかったのだ。
ダイバーであろうと下準備が出来ないと湖底に潜る事はできない。

そして彼女の話術は巧みだった。

とにかく急がなければ、百億円はかすめ取られると人々を煽ったのだ。
ゆえにダイバーたちは潜る事を考えず、ソコに向かった。
しかし、ソコに行けば潜る事を知る。

湖底にあると気づくのだ。

ゆえにダイバーは自宅へ戻り、準備をするのではないかという疑問が浮かぶ。
しかし、そこも人心掌握に長けた涅槃の計算がある。
百億円を目指すダイバーは一人ではない。

自宅に戻って準備をしている間に他のダイバーに百億円をとられるのだ。

だから同盟した人々の協力を得る事が大事になってくる。
それは監視を任せ、潜る為の準備をする。
これが大事なのだ。

確かに同盟を組んだ人々にダイバーが関与していたグループもいた。
そして、そのグループは全面的にダイバーをサポートした。
なにせ彼らは百億円を目指しているのだ。

ダイバーはキーパーソンだった。

そして彼らは援軍の来ない籠城作戦ではなかった。
彼らに与するダイバーが準備を整え、帰ってきたら百億円が手に入る。
そう信じていた。

しかし、彼女は、ソコまで計算し尽くし、この作戦を敢行した。

そうなのだ。
ここで忘れてならないのが……。
ダイバーを取り込む事の出来なかった集団の行動だった。

人間とは愚かなモノで他人が成功するのは疎ましく、そして狡猾だった。

つまり準備に戻ったダイバーの足を引っ張ったのだ。
もう二度とこの湖に戻って来られないよう。
時には暴力も辞さなかった。

なぜなら彼らには百億円がかかった決して引けない勝負だったのだから。

それを怖がり、同盟を組んだ集団に属さないダイバーもいた。
いや、自分がダイバーだと打ち明けないモノもいた。
そしてこっそりと戻り……。

しかし、そういったモノも、この勝負からは除外されていった。

百億円が沈んでいる湖は多くの衆目に晒されていた。
ゆえに準備は出来ても、湖に潜れなかった。
潜ろうとすると邪魔が入るのだ。

「ただよ」

サドクが涅槃に言う。
何かを心配して、そして、彼女の計算が甘い事を指摘した。
これだけ計算し尽くした策略にケチをつけたのだ。

「なによ。サドク。これで、皆、お金についての見方が変わったでしょう?」

「まぁな。ただよ。一つ抜け落ちてるぜ?」

何が抜け落ちているのだろう?
彼女は不思議に思い、サドクに聞き返そうとした。
ダイバーの問題以外、何が抜け落ちているのか、彼女には分らなかった。

「今回の作戦は日本限定なんだよ。人間は世界中にいるんだぜ?」

「!」

そうなのだ。
今回のミッションは人間にお金の無力な面を知らせる事だった。
確かに涅槃の計算は緻密だった。

しかし彼女は日本人であり、グローバルにモノを考える事が出来なかった。

日本では皆にある種のお金に対する虚脱感を知らせる事ができた。
しかし、お隣の韓国や中国、ヨーロッパ各国には……。
一番、お金に囚われているアメリカも。

「まぁ。その件については日本人が世界のお手本となりにしておくか」

サドクが神に与えられた猶予は七月の終わりまでだった。
そして、事件が沈静化したのも七月の終わり。
時間はなかった。

「涅槃。お前の悪魔になって初めてのミッションは頑張りましょうだな」

「……先に言ってよね。世界中だって」

「俺は人間たちにお金の無力な面を知らせるって言ったぜ?」

「だって私、日本人だもの。そこまでは考えないわ」

「甘めな。お前は悪魔になったんだぜ。これからは世界の事を考えないと」

「悪魔なんて本気で信じてると思う?」

そう。
この期に及んでも涅槃は自分が人間だと考えていた。
もちろんサドクが天使だという事実も、いまだに信じていなかった。

「ふははは。まだ信じていねぇのか? いい加減、頑固だな」

「だって何も変わっていないもの」

「悪魔はな。魔王のアガペーをその身に宿すんだぜ?」

アガペーとは?
一般的には神の無限な愛と解釈されている。
しかし、この世界では神と魔王を置き換え、魔王の無限な愛なのだ。

「……アガペーって何?」

涅槃は、ゆっくりと疑問を口にした。
人間の星埜銀杏として、生きてきた時には決して感じられなかった愛情。
しかし今、彼女は今、魔王の無限な愛をその身に受けている。

「お前は基本的に情ってモノを信じないだろ?」

「そうね。情ほど愚かモノはないわ」

「そう言うと思ったぜ。だがな。アガペーを受けている今は違うはずだ」

「何が違うの? 前と何も変わらない。アガペーなんて信じないわ」

「ゆっくりとだ」

「ゆっくりと? 何が、ゆっくりとなの?」

「人が変わるのは、ゆっくりとなんだよ。だからお前もゆっくりとだ」

「……」

「ゆっくりとお前は悪魔に染まっていくんだよ。今に分る」

サドクは涅槃に情をが芽生える事を予見した。
そして、サドクは自分が天使になる事で、捨てたモノを回顧する。
彼女が情を手に入れるよう。

彼もまた天使になる事で失った愛おしいものがあったのだ。

そして彼は言う。
今回のミッションで彼女が得ようとしていたモノを。
そう。サドク、彼がヘルメス・ディ・カイトではないかという疑問を。

「そんな事より、仕事をこなしたわ。君の正体を教えなさい!」

「甘い。今回のミッションは頑張りましょう止まりだぜ」

「誤魔化すつもり?」

「ふははは。正当な評価だ。次に期待しろ」

サドクは彼女の言葉をピッシャリと一刀両断にして、笑った。
このネタは基本的に動くのを面倒くさがる彼女を動かす為のエサであった。
いつか彼女が自力で動き出すまでの。

……サドク。

彼も、また一流の策士であった。

~ その二十二、策士、了。

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↑何を考えて、こうなった?w
     

【 なぞなぞなぞかけ、その七 】

高校生とかけて、澄み渡った雲一つない大空と解く。
その心は?

どちらも青いです。

なぞなぞなぞかけ、その七、了。

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↑後ろの落書きがポイントw
     

【 悪魔ちゃんと天使くん、~ その二十一、百億円という重荷 】

人々は涅槃の手の中で踊っていた。
彼女は奇っ怪なテレビ番組を放映し、百億円を賞金にした。
人々は、それを信じ、自分が百億円を手に入れるのだと奮起していたのだ。

しかし、彼女は最後の最後で難攻不落な罠を張っていた。

現金で百億円を用意したのだ。
そんなに簡単に手に入れられないと思い知らせた。
そう。

地図に示された場所。

……ソコはダム湖の湖底だった。

月は七月になっていた。
そろそろ蝉たちが鳴きだし、汗ばむ日。
田舎の湖の湖底深くに、現金、百億円は強固な金庫に入れ沈められていた。
普段は人のいない湖の周りには恐ろしいほどの人々がたむろしていた。

あちらで、ケンカがおこり、こちらで同盟を結ぶモノたちがいる。

湖の周りでは、様々な人間模様が繰り広げられていた。
百億円を手に入れる為だけに。
蝉たちは嘲笑った。

自然は、お金など問題にせず、ただソコにたたずんでいるだけなのだ。

しかし、ここで彼らに問題が起こる。
集まった人々は誰も湖の底に潜る事が出来なかったのだ。
そうなのだ。

ダイバーを雇おうとしても、決して現金では雇う事ができない。

なぜなら現金で百億円が沈んでいるのだ。
ダイバーを雇ったしても百億円を見つけたらダイバーが持っていってしまう。
百億円で雇われれば話は別だろうが、そうしたら意味がない。

ゆえ、集まった人々誰一人として潜る手段はないし、ダイバーも雇えない。

現金、百億円の場所は特定できたが、手に入れられない。
そんなジレンマが更に疲れを加速させた。
同盟を組んだ人々は監視した。

誰かが抜け駆けして、何とか潜る手段を見つけ、百億円を奪わないか。

すると同盟を組んだ人々に、また不可思議な事が起こる。
これは涅槃の計算の内だったのだが。
疑心暗鬼という敵。

いつまで監視を続ければ自分に百億円が手に入るか皆目見当がつかないのだ。

しかし、いつ何時、抜け駆けされるか分らない。
ゆえに監視は続けなくてはならない。
援軍の来ない籠城作戦だ。

士気は落ち、長引けば長引くほど、疲労はたまっていく。

すると判断力は鈍ってくるモノで、仲間であるはずの同盟者をも疑い始める。
抜け駆けをしたモノと組んで、自分を裏切るのではないかと。
下手に賢いモノほど他人を疑った。

疲れとはそういうモノだ。

しかし中には頭の回る輩もいた。
今、湖に集まっている人々を相手に商売を始めるモノが出てきたのだ。
もちろん商売を始めた人も、最終目標は沈められた百億円だ。

しかし、そこで、またジレンマが噴出する。

そうなのだ。
小銭を稼いだ所で、この事件で日本という国自体が機能していないのだ。
すなわち現金というモノを行使できる場面がないのだ。

「ふふふ。お金なんて、そんなモノよ」

と涅槃はほくそ笑んだ。
これは彼女の緻密に計算された策略だった。
彼女は、人々に現金という道具がどういったモノかハッキリと示したのだ。

そう。

お金は、道具でしかないと。

お金とは支払う側と受け取る側の両者が納得して始めて形を成す。
つまり逆に言うとどちらか片方でも納得しなければ、まったく形を成さない。
平常では、暗黙の了解であるが……。

こうやって非日常を作ってやるとお金というモノが浮き彫りになるのだ。

日本中が狂喜乱舞して、数週間が経った。
人々は次第に百億円という夢から覚め、日常を望み始めていた。
そして、一人、また一人と、湖から引き上げていくモノたちが目立ち始めた。

結局、湖底深くに沈められた現金、百億円は重荷にしかならなったのだ。

彼らの人生の中では。
疑う事にも疲れ、夢は夢だと。
中には現金、百億円は沈められていないと言い出すモノもいた。

現金、百億円をあきらめきれない人間の風説の流布だ。

それに乗ったモノも多数いて、どんどんと湖の周りから人は消えていった。
いや、同時に、やっと今し方、湖に着いたモノもいるのだが。
その人数以上に消える人数の方が多かった。

新たに湖に着いたモノ、そして、どうしてもあきらめきれないモノたち。
しかし、いくらあきらめきれないといっても無駄なあがきだ。
結局、彼らに湖の湖底には辿り着く手段がない。

決して彼らは百億円に手が届かないのだ。

そうして時間が経つにつれ……。
人々の記憶から、この事件は少しずつ薄れていって、平常へと戻っていった。
しかし、この事件は人々の記憶の中にお金の空しさを刻みつけていた。

確実に。

しっかりと。

~ その二十一、現金、百億円という重荷、了。

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↑ねがいましてはw
     

【 なぞなぞなぞかけ、その六 】

延長十三回まで完投したピッチャーとかけて、訪問販売員と解く。
その心は?

どちらも粘ります。

なぞなぞなぞかけ、その六、了。

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↑その昔、私もピッチャーになりたかったw
     

【 コロシアイ、~ 十二の巻、決意 】

僕の名は、大川浩平(おおかわ こうへい)。
運動神経は抜群で、リトルリーグでは、四番、ピッチャーを任せられていた。
そしてリトルでの大会があった日。

大会を楽しみにしていた僕は、この世界に招集された。

しかも、あと一つ勝てば、全日本選手権制覇の快挙まできていた。
すなわちリトルリーグ・ワールドシリーズに出場出来る所まできていたのだ。
ゆえに僕は勝負にこだわった。

僕の魂は燃え上がった。
相手の魂が抜ける程の敗北感を与えるまでに。

だから僕は敗者をキョンシーにする能力を得たのだ。

僕のほとばしるほどの情熱は、悪い方向へと向かったんだと思う。
しかも僕の考えが足りず、僕自身が相手の生殺与奪権を握れる事を喜んだ。

死なないんだからいいだろう位のという稚拙な考えで。

僕は兄ちゃんに負けて、それを思い知った。
誰かが、僕の前に現る。誰?
そして笛を吹く。

≪ピィー、ピィッ!≫

「おほん! 私は石崎裕一郎。君の名前は?」

「……はい。大川浩平です」

誰か知らない大人の声で、威厳があった。
まるで先生に叱られているように。
誰?

「君は凉くんに負けたんだってね。彼から聞いたよ」

「はい」

「残念ながら君は、この戦いで敗北したんだよ。意味が分るかい?」

「……僕は負けたんですか」

「そうだ。君はこの戦いから降りるんだ。つまり死ぬって事だ」

し、死ぬ!?
そんな。嫌だ。僕は死にたくない。
確かに僕は勝負をして、負けたんだ。それは分るけど……。

嫌だ! 死にたくない!

「い、いやだ。死にたくないです!」

「うぅん? そんなに我が侭を言われてもな。これは殺し合いなんだよ」

「石崎さん、どうか僕を殺さないで下さい。お願いします」

僕は勝負に負けて、初めて事の重大さに気づいた。
そう。キョンシーにされる側になって。
初めて……。

「浩平くん、石崎さんではない。石崎先生だ。以後、先生と呼ぶように」

そうなのだ。
これは、殺し合いなのだ。
僕は、殺し合いという、この事実を甘くみていた。

すなわち僕の能力が相手をキョンシーにする能力だったが為に。

僕は石崎先生に懇願した。
どうか、僕を殺さないで、お願いしますと。
僕は今まで、キョンシーにしてきた人たちの声が聞こえたような気がした。

そう。

つまり僕が遊び半分で殺してしまった人たちの声が。

石崎先生は険しい顔をしている。
それは、そうだろう。

僕は、軽い気持ちで遊び半分に他人を殺しすぎたのだ。

石崎先生が、ゆっくりと僕の方を直視する。
その眼差しは真剣で、強く。
かつ優しく。

「私はね。君にも生きるチャンスがあると思っている。それが教育だ」

「教育……ですか?」

「そうだ。私は幸いな事に中学で教鞭を振るっていた」

「中学校の先生なんですか。石崎先生は……」

「そうだ」

「……先生。本当にごめんなさい」

僕の瞳からは、溢れるほどの涙が零れ落ち、凄まじい程の後悔をしていた。
その背中をポンポンと軽く、石崎先生は叩きつつ言った。
僕の心を救うように。

「そうだ。人間はいつでもやり直せるチャンスがあるんだ。分るかい?」

「ヒグッ……僕には、ばかりばぜん」

「大丈夫だ。私が君を人間としてやり直させてあげよう」

「じんげんとしでですか?」

「そうだ。人間として一からやり直させてあげるよ。ダメ人間はいないんだ」

「イグッ……ぼんどうにごめんなざい。ごべんなざい」

「いいんだよ。過去は変えられないが、未来は変えられるんだ」

「あい」

「それに君も負けて分っただろう? 殺される側の人間の気持ちが……」

「あい」

僕には、この石崎先生の温かい言葉が、どれほど嬉しかったか。
そして、これから先、決して他人を殺してはいけないとどれほど後悔したか。
そこに石崎先生の檄が飛ぶ。

「では、浩平くん。キョンシーにしてしまった人たちを解放するんだ」

そうだ。
僕は、僕が優位に立つ為にキョンシーとして縛っている人たちを解放する。
それは、涼先輩との勝負に負けた僕としては当然の事。

「そうだ。それでいい。過去は問わない。大事なのは未来(さき)だ」

キョンシーたちは、生者となり、次々とフィールドから弾き出されていく。
しかし、あの肢体をバラバラにしてしまった女キョンシーは……。
そう。僕が奪ってしまった生命(いのち)は……。

「思いっきり、後悔しなさい」

「ず、ずびばぜん」

「そうだ。死なないからいいなどと二度と考えない事だ。分ったか?」

「あい」

石崎先生の言葉は僕の中心に突き刺さり、優しく僕を導いてくれている。
僕は、この殺し合いはケンカの延長戦だとばかり思っていた。
自分自身の甘さを痛感した。

「では、戻ろうか。君が人間らしく生きられる世界へ」

「戻る?」

「そうだ。私たちは幸いな事に日常に戻る術を手に入れようとしているんだ」

「……石崎先生、本当にこの殺し合いから脱出できるんですか?」

「ま、私の見立てでは、あと二人位、仲間にできればな」

「そ、そうなんですか?」

「ああ。私の能力は今はまだ秘密だ。しかしきっと戻れる。心配するな」

「はい。先生」

「そうだ。それでいい。では凉くんたちに会いに行こう」

そうして僕は頼もしい石崎先生と別れた。
そう。涼先輩と会う為に。
僕の涙は止った。

これから先、決して人を殺してはいけないという決意の元……。

~ 十二の巻、決意、了。

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↑リトルの覇者w
     

【 海猫さんが行く、その参、~ 慎重にね】

さて、今日も漫画家志望の海猫さんが行きますよ~!
期待している人も、そうでない人も、この物語を書いている張本人も。
皆々様方、よろしくですぅ。

海猫さん今日、賞学館にきていますよ。

持ち込みでありんす。
しかも賞学館へ事前に電話で予約して、遂にその日を迎えたわけでありんす。
しかし海猫さん、ここで大きな失敗をしてしまったようですよ。
そそ。

賞学館には一階、ロビーに受付があるんですが……。

彼女は受付をスルーして、直接、編集部へと向かったようなのでありんす。
通常ならば、受付から編集部に連絡がいくモノらしいのですが……。
そんな海猫さん。どうなったのでしょう?

「ねぇ……」

少年サンティ編集部前から海猫さんの弱々しい声が聞こえます。
編集部内部では編集さんたちが忙しそうに働いています。
海猫さんは、声を絞ります。

「ねぇ。お願い。誰か私の存在に気づいて……」

と。
そうなんです。受付を通っていない海猫さんは完全に無視されていたのです。
そして彼女は出ない声を絞り出して、必死に待ち続けます。

待つ事、一時間と少々。

あっと。
今、やっとこさ一人の編集さんが彼女の存在に気づいたようですよ。
海猫さんの顔がパーッと笑顔になります。

「あっ。持ち込みでぇすぅ!」

海猫さんは必死に愛想をふりまき編集さんを呼びました。
しかし、彼女の必死の愛想もまったく無力。
気づいた編集さんは……。

海猫さんから視線を外し、何もなかったかのように自分の仕事へ戻りました。

おう! コラ? 新人、なめてんのか?

と言いたい所ですが、なにせ海猫さんは新人ですからね。
怒りの矛先を次の原稿を描く力にしたようです。
結局、彼女は半日待って帰りました。
あきらめて。

ていうか、海猫さん!?
週刊少年サンティを発刊している出版社は二個右隣のビルだからね。
海猫さんが行った会社は、実はナックル編集部ですから。

ちなみにお隣は週刊慎重を発刊する慎重社です。

~ 慎重にね、了。

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↑今は昔w
     

【 なぞなぞなぞかけ、その五 】

春夏の甲子園とかけて、イタズラな風がめくるスカートと解く。
その心は?

どちらも熱いです。

なぞなぞなぞかけ、その五、了。

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↑昭和という時代w
     

【 悪魔ちゃんと天使くん、~ その二十、大移動 】

今、テレビの画面からは、摩訶不思議な映像が流れている。
この番組は涅槃が作ったものだが、実に奇妙だ。

何が奇妙なのか?
テレビという媒体は普通、鑑賞するものだ。
しかし涅槃の作った番組は視聴者が参加できるように工夫されていたのだ。
とは言っても、投票をするなどのありふれた参加型番組ではない。

テレビの画面では、お宝の地図が放映されているのだ。

しかも地図は点滅している。
もちろん録画して静止画を見る事はできるのだが……。
涅槃自身が出演していて、地図だけでは分らない微細な部分を解説している。

そのヒントを頭に入れて、地図を見ないと地図自体、意味不明なのだ。

彼女は、実に、いやらしく巧妙な作戦をとったものだ。
そして、お宝とはキャッシュで百億円。
涅槃のポケットマネーだ。

その番組を目にしたモノは、すべからく、まず、自分の耳と目を疑った。

こんな摩訶不思議な番組で、百億円が手に入るのだ。
そんな馬鹿なと思わない方がおかしい。
そして食い入った。

そう。
ここでも涅槃は緻密な計算し尽くされた話術を駆使していたのだ。
彼女は基本的に人間関係を嫌う。

しかし、決して彼女のコミュニケーション能力が劣っていたわけではない。

単に人間が嫌いなのであり、話すのが面倒くさいだけなのだ。
ゆえに、この番組の唯一のコメンテーターである彼女は奮闘していた。
怪談を語る時の稲川淳二氏のように。

百億は夢物語ではないと視聴者の皆に発信していたのだ。

それを信じさせるには、更に一つの工夫があった。
大きなウソを信じさせる場合、小さな信用を積んでおく事が大事なのだ。
つまり、この場合で言えば……。

百億円とは別の地図を表示させ、その解説を提示する。
しかも百億円より、ヒントが直接的で地図も明瞭なモノなのだ。
そして簡単に見つけられるようにする。

いわゆる百億円が隠されている地図の前哨戦的なモノを放映するのである。

そして、そこには適当な現金が隠されているのだ。
それを見つけたモノは驚喜する。
本当だったと。

そして次は百億円を手に入れようと涅槃の作った番組に食い入るのだ。

もちろん今回の賞金、百億円は本当に隠してあるのだが。
なにせ彼女が星埜銀杏だった頃に国家予算を超える資産があったのだから。
百億など痛くもかゆくもない。

「いや、はや。とんでもない番組を考えたモンだな。あの性悪も」

東京スカイツリーを制圧し、電波を従えたサドクが言う。
これはもう制圧しておく必要もないと。
サドクの予測は的中した。

ジャックされ予定していた番組を放映できないでいた民放各社も乗ったのだ。

つまり制作側の人間たちも仕事を放り出し、涅槃の番組に食い入った。
そして、この難解な涅槃の番組を解析しようと試みた。
新宿アルタ前でも人の足が止っていた。
そしてワンセグをみる若者も。

皆、この複雑怪奇で晦渋な番組の謎を解こうとして全力を尽くしていたのだ。

謎が解けて、お宝の地図の意味を知った人間がちらほらとでてきた。
人々は、先を越されるなとソコに向かって動き出した。
しかし、ここで問題が起こる。

ソコに行く為には自家用車では向かえない。

なぜなら日本中の人間がソコに向かっているのだ。
自家用車などで向かったら渋滞に巻き込まれて動けなくなるだけだ。
では、タクシーでも使うか?

それも、あまり賢い答えではない。

なぜならタクシーの運転手も、ライバルの一人なのだから。
当然、電車、飛行機、船なども動いていない。
みんな、ソコへ向かったのだ。

結局、誰も彼もソコへは歩いて向かうしか手は残されていなかった。

そして歩き疲れ、コンビニに入る。
しかしコンビニの店員も真面目に仕事をしているわけがなく……。
コンビニを始め、どこもかしこも閉店休業で、人々の疲れは癒されなかった。

疲れた人は現金を持っているのに、どこも相手をしてくれなかったのだ。

たまにテレビを観ていない人がいて車を走らせている。
疲れた人々は、ヒッチハイクを試みる。
そして、車の運転手に言う。

五百万やるから、俺をソコに連れていけと。

するとテレビを観ていなかった、ある意味、幸運な人も気づく。
自分の知らない所で、何かあったなと。
そしてテレビを観る。

テレビを観た瞬間、疲れていた人と車の運転手は、すぐにライバルとなる。

もちろん自家用車で向かった人も大勢いる。
いるが、とんでもない数の人が自家用車で向かってしまっていたのだ。
予想通り、渋滞していた。

遂には歩いた方が早いと車を放棄して歩き出す。

そして自家用車で向かった人々も、疲れた人となっていた。
それでも涅槃の作った番組は放映され続けた。
ソコへ行けと。

そして今、持っている現金は、まるで意味をなさずチープなモノであった。

それなりの現金を持っているのに肝心の店が開いていないのだ。
そして、移動手段にも、現金はまったくの無力だった。
人々はそれに気づき始めていた。

「でも人間って、本当にアホなのな。もちろん天使も、悪魔もだけど」

スカイツリーの展望台からサドクが下界を見下ろし言った。
彼の足の遙か下には、多くの人が移動していた。
我先にソコへと。

さて、どうなるのやらとサドクは思った。

~ その二十、大移動、了。

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↑急げ! 急げ!
     

【 海猫さんが行く、弐、~ GO! 海猫! 】

海猫さん、今回も行きますわよ!
今回は、次に新しく描く漫画を何にするか決めますわよ!
さて、次はどんな題材で漫画を描こうかしら。

スポ根?
いや、いや、スポ根モノは、もう三回ほど描いたのよ。
野球とサッカーとゲートボール。

じゃ、恋愛モノ?
いや、いや、恋愛モノも四回ほど描いた。
純愛、エログロ、BL、そして、悲恋モノを描いたわよ。

そうしたら冒険モノ?
いや、いや、冒険モノは一回描いた。
読み切りでは収まりきらず、何話か触りの部分を描いた漫画があるのよ。

えっ?
一つの作品に大体、何ページ使ったのかって?
それは某少年漫画誌の基準に従って三十一ページ、もしくは四十五ページよ。

えっ?
そんなに、たくさん描いたなんて大変だったろうって?
いや、いや、そんな事はないわよ。

だって全部、私の頭の中で描いただけで、原稿には起こしてないから。

GO! GO! 海猫! 行け! 行け! 海猫!
じゃ、また機会があったらね。
では、では。

GO! 海猫! 、了。

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↑海猫さんではないですよw
     

【 なぞなぞなぞかけ、その四 】

希望の大学に行く為に上京する高校生とかけて、暴投と解く。
その心は?

どちらも見送ります。

なぞなぞなぞかけ、その四、了。

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↑ダルでもやるんですねw
     

【 海猫さんが行く、壱、~ ベタと言います 】

「海猫(うみねこ)さん、この漫画で何が言いたいんです? さっぱりです」

海猫とは私の名前。
そして、私は、今、大手出版社に漫画の持ち込みをしている。
しかし編集さんが私の原稿をチラッと一瞥した後、辛辣な言葉を言われた。
確かに絵が下手だし、お話もいまいちだけど……。

熱い魂だけは誰にも負けないわ!

だから私は編集さんに、こう言い返してやったの。
毅然とした眼差しで編集さんを見つめて。
ハッキリと。

「あら。そうですか。私に才能がないと。しかし熱き魂がありますわ」

「魂ね。海猫さん、それ以前に……」

「みなまで言わなくて結構ですわ。わたくしはわたくしの道を行きますから」

「……いや、本当に分ってるのかな? この人」

私はサッとガラステーブルから原稿を持ち上げて、失礼と家へと向かった。
編集さんは唖然として口をポカーンと空けて惚けていた。
結局、私の熱意は伝わらなかったのだ。

インク瓶を千個使い切り、入魂した、この原稿へ注がれた熱き魂が。

私は、それでも負けない。
いつかきっと私の価値に気づいてくれる編集さん、そして読者はいると。
さて、帰ったら、また原稿に向かう事にしよう。

入魂! 入魂! の繰り返しだ。

「ていうかさ。始めから終わりまで真っ黒に塗ってあっただけだけど」

ベタと言います、了。

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↑海猫さんは、この中に熱き魂を込めたのですw
     

【 趣味、DVD鑑賞 】

今日は給料日だ。
給料日は、決まってDVDを買い込んで、少しの贅沢をする。
これは俺の恒例行事で、月一回の楽しみだ。

しかし俺はここ最近のちまたに出回るDVDを鑑賞し尽くした感があり……。
タイトルを選ぶ時にジャケットを吟味して、当たりを探す。
せっかくの月一回の贅沢なのだ。
失敗は許されない。

今回も時間をかけただけはあり、良い感じのDVDを借りてきた。

さて。
明日は休みだし、今日は寝ないでDVD鑑賞としゃれ込もう。
もちろん、コンビニで食料と飲み物(※注、ビール)を買い込んである。

ああ。幸せだな~…。

*****

母「お父さん。あの子の部屋からまた……」

父「ああ。俺も気になっていた。なにせ月に一回、一晩中だからな」

母「そうなんですよ。お父さんの方からあの子に何か言ってやって下さいな」

父「でも、アイツも男だからな。しょうがない部分もある」

母「だからといってAVを一晩中、鑑賞するのはどうかと思いますけど」

父「壁越しにあん、あん、うるさいしな。分った」

母「お願いしますよ。お父さん」

趣味、DVD鑑賞、了。

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↑しかも、こっちなので更に始末が悪いw
     

【 連載小説、見えちゃう人 】

カテゴリ、ツンデレなのか? ヤンデレ? 不明w、十二話。以下、続刊。

お話、概要。

僕の理想の女の子、早麻理ちゃん。
彼女は夢の中では優しくて可愛い子なんだけど、一旦、起きると……。
死んでいて、幽霊で、それでも僕をパシりに使うヤン姉ぇ。
ああ。何で、僕は幽霊が見える体質なんだろう。
つくづく自分を呪う。
そんなお話。

▼見えちゃう人、壱、缶コーヒー代、払え!
http://plaza.rakuten.co.jp/kokolost/diary/201301270002/
▼見えちゃう人、弐、告白
http://plaza.rakuten.co.jp/kokolost/diary/201301290001/
▼見えちゃう人、参、笑って泣け
http://plaza.rakuten.co.jp/kokolost/diary/201302230002/
▼見えちゃう人、四、死ぬ気
http://plaza.rakuten.co.jp/kokolost/diary/201302240001/
▼見えちゃう人、五、全部で二万三千四百円になります
http://plaza.rakuten.co.jp/kokolost/diary/201303030001/
▼見えちゃう人、六、愛羅武勇
http://plaza.rakuten.co.jp/kokolost/diary/201303080001/
▼見えちゃう人、七、アホくさっ
http://plaza.rakuten.co.jp/kokolost/diary/201304100001/
▼見えちゃう人、八、この世の終わりへ
http://plaza.rakuten.co.jp/kokolost/diary/201304180001/
▼見えちゃう人、九、成仏へのプロローグ
http://kokolost.blog.fc2.com/blog-entry-158.html
▼見えちゃう人、十、死ぬ前に
http://kokolost.blog.fc2.com/blog-entry-173.html
▼見えちゃう人、十一、記号化
http://kokolost.blog.fc2.com/blog-entry-175.html

*****

▼外伝、リアルでも
http://plaza.rakuten.co.jp/kokolost/diary/201303170002/

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↑とびっきりホットに書いてやるぜ!w
     

【 見えちゃう人、九、成仏へのプロローグ 】

男は小さなプロレス団体の広報担当だった。
僕は男から渡された名刺によって、その事実を知った。
名を山本宗(やまもと しゅう)。

僕と同じ名前だ。

これは奇跡的に近い偶然だったんだけど、僕も山本という名字なのだ。
彼は僕の旗を見て、宗という名前に惹かれたんだそうだ。
でも超能力とプロレスとどんな関係があるの。
僕は不思議に思った。

「甘ぇな。お前、こんな胡散臭いヤツに心を許すんじゃねぇよ」

早麻理が口を挟んでくる。
しかし、山本宗は僕の心に切り込んでくる。
同じ名前なのが、よほど気に入ったのか、にこにこと柔和な笑顔で。

「テメェ、何か、とんでもない事を考えてねぇか?」

早麻理が僕をいさめる。
確かにこの山本宗は、胡散臭い。
けど、彼の話は僕にとって、かなり美味しい話だ。

「ま、いいけどよ。テメェの超能力は俺がいねぇと使えねぇから」

そう。山本宗は、僕をプロレスラーとしてデビューさせたいらしいのだ。
僕はお世辞にも力のある方だとは思わない。
が、超能力でなんとかしろと。

山本宗はそういった。

でも、ちょっと想像してみた。
僕がパンツいっちょで、リングに立っている姿を。
ガリガリのもやしが、ひょろりと真っ白なリングの上にいる。

……確かに絵にはなるかもしれない。

ただしネタとして。
多分、怪しいマスクでもかぶらされて……。
そういえば、この前、読んだ本に一般人がプロレスラーになる話があった。
その本の主人公は、オムツをはかされて、三角帽子を被らされて。

劣等生というリングネームだった。

さしずめ僕は、インチキというリングネームでも付けられるのであろうか。
多分だったけど、一番、現実的な事を考えた。
プロレスは基本インチキだからね。

山本宗は、それを裏付けるように僕に、こう言った。

「君はリング上に立っていればいいんですよ。相手が勝手に舞いますから」

「それが、超能力って事なんですか?」

「はい。ただ本当に能力を使って頂いても問題ないですが」

……僕は思った。
もしかして、この山本宗という人間、残り十%の人ではないのかと。
そう、早麻理が見える残り十%の人。

僕と同じく見えちゃう人なのではないのかと思った。

そう。
僕の超能力をインチキだと見破ったんだから。
……どうなんだろう。素直に聞いた方が早いが、早麻理が構えている。

これは聞くなという合図だろう。

早麻理の死ぬギリギリのグーパンが発動しているから。
とにかく僕は、山本宗の話を丁重に断り、次の超能力を発揮しようとした。
それが、早麻理が望んだ事だから。

「では次の能力、透視をご覧にいれましょう」

……また早麻理の前時代的な台詞の書かれた台本を読んだ。
山本宗は、僕の事をジッとみている。今にもインチキだと言わぬがばかりに。
やっぱり、コイツは、残り十%の人間。

僕は、そんな宗を横目にソロリとカードを十枚ばかり取り出した。

そして聴衆に一枚、選んでもらう。
それを僕が透視して、当てようというモノだ。
もちろん早麻理が、その一枚を見てきて、僕に報告するだけのお話。

「ククッ。宗さん、ネタはバレているですよ。いいんですか?」

一応、有志にだが、お金をもらっている。
ここで山本宗がインチキだと大声を上げれば、いかんともしがたい事になる。
そう。どちらを信じるかという話になってしまうのだ。

プロレス団体の広報の山本宗を信じるのか。
それとも超能力なんてインチキ臭いモノを披露している僕を信じるのかだ。
……僕は怖くなった。

それは当然だろう。なぜならインチキを暴かれたら。

もちろん幽霊が関係しているなんて山本宗は言わないだろう。
それより広報担当なのだ。

口八丁で、手品か何かと関連づけインチキだと言うつもりなんだろう。

いや、初めの始めからこの超能力はインチキなのだ。
僕が、怖くなるのも当たり前だろう。
後ろめたい気持ちと同時に。

だって、真面目にウソをついているんだから。

早麻理がグーパンの用意をして、さっさとやれと急かす。
しかし、僕は早麻理に反抗した。早麻理のグーパン以上に怖かったから。
そして固まった僕にグーパンが飛んできた。

*****

「あの。宗さん。あちらの宗さんは怪しいですよ」

「……ああ。僕はまた気を失ったのか」

「そうです。私、やっと成仏する方法を見つけたんです」

「えっ! あっ!?」

「ふふふ。そうなんですよ。成仏できるんです」

「本当に!?」

僕は嬉しい反面、寂しい気持ちを持った。
成仏してしまえば当然、早麻理ちゃんに会えなくなるという寂しさを感じた。
でも、この報告は、僕にとっても早麻理ちゃんにとっても朗報だ。

「その為には、プロレス団体の広報、山本宗を使うんです」

「どういう事?」

「もう一人の見えちゃう人に早麻理を暴かせるんです」

「暴かれたらどうなるの?」

「早麻理はきっと自分の必要性を見失います」

「えっ。なんで?」

「……多分ですが。早麻理は宗さんを鍛えていたんです。本当に多分ですが」

「ま、確かにそういう風には思っていたけど。本当に?」

「いえ。飽くまで多分でしかありません。楽しんでいた風もありますし」

「だよね」

「飽くまで多分ですが、鍛えていたとしたら」

「……したら?」

「鍛えようがなくなるんです」

「えっ? なんで?」

「端からみて幽霊が憑いていないと何もできない人になりますから」

「そっか! 確かに早麻理にとっては、そうなるかも」

「そうです。端からみてでも充分なんです。早麻理の必要性が薄くなります」

「自分が必要とされていないと自覚すれば、確かにそれはあり得る」

「そうです。自己矛盾に陥るのです。幽霊であるがゆえ」

「だったら、とっととあっちの宗に、このインチキショーを暴いてもらって」

「そうです。そうです。あちらの山本宗は怪しいですが、使えます」

「ただどうやって暴いてもらうかだよね」

「そうですね。早麻理にもガツンと分かるようにが重要です」

「……うーむ」

「それにこの方法には一つ問題があります」

「問題?」

「……早麻理が宗さんで遊んでいたとしたら、意味がないんです」

「そっか……、早麻理が僕を鍛えてるんじゃなかったら」

「そうです。意味がないんです」

痛ッ。

*****

……と、そこで僕の意識は無理矢理、リアルに引き戻された。
再び早麻理の往復ビンタによって。
果たして早麻理は。

僕は新たな命題を抱えて、インチキショーを続けるハメになった。

山本宗はほくそ笑んで、不気味さを醸し出している。
聴衆は僕が気絶していた事により、より一層、好奇な視線を送っている。
一度、念動力を見せて気絶した事により。

「では、透視を始めます」

と僕は早麻理の書いた台本を読んだ。
早麻理の本意を探る為に。
あちらの宗は笑う。

まるで僕を売り込むようにでもあり、貶めるようでもあり。

九、成仏へのプロローグ、了。

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↑もぅ-、勘弁w
     

【 なぞなぞなぞかけ、その参 】

そうめんとかけて、音楽と解く。
その心は?

どちらも流します。

なぞなぞなぞかけ、その参、了。

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↑夏だねw
     

【 信じるマン、第二十三話、桃軍師 】

俺は、この変態体質を治す為に最大限に信じる気持ちを高めた。
しかし、ちょっと油断をすると自爆機能が発動する。
そのギリギリ限界を見極めつつだ。

「レッドしゃん。無駄な事をしているでちゅな」

大真面目な俺に怪人27号が嬉々として茶々を入れてくる。
お前は信じるマンを気に入っているんだろう?
だったら一人でやってくれ。

俺は信じるマンを卒業し、普通に就職して普通に幸せな家庭を築くんだ!

その幸せへの一歩を今、まさに踏み出すんだよ!
しかし、あまり真剣に信じるマンを治そうと信じると自爆する。
前に世の中は反復練習だと言った。

信じる事をギリギリで調整する事にも何回か練習したらできるようになった。

大体、自爆機能が発動するタイミングを掴んできたのだ。
よし。順調だ。俺は、絶対にこの体質を治す。
心意気も万全だ。

「だからレッドしゃん。僕らの体質は、それ以前の問題なんでしゅよ」

「……どういう事だ。怪人27号?」

「普通の体になった瞬間、自爆するように設定してあるアルよ」

怪人27号の代わりにキム・キムが答えてくれた。
この変態体質の元凶であり、倒すべき悪である存在のキム・キムがだ。
いや、元凶だからこそ。

その言葉には真実味があって、まず間違いないだろうと思う。

しょんなぁ~…。
普通の体に戻ったら自爆するの。
せっかく、この変態体質から普通の体に戻れると思ったのに。

鬼、悪魔、ウンコ野郎!

「フッ。レッドよ。大体、普通の体って、どういう状態をいうんだ?」

くそっ。
イエローのヤツ、また哲学チックな事を言って馬鹿にする気だな?
普通の体は、普通の体だよ。それ以上、何がある?

「普通は普通だよ!」

「じゃ、右腕がない身体障害者は普通の体ではないんだな?」

「……いや、差別じゃないけど普通なの!」

「もう一つ。精神障害者は普通の体ではないんだな?」

「もう嫌。この人たち」

イエローは、たまに脳天に引っかかる事を言って、俺を困惑させる。
イエローはネコで、人間ですらないのだが。
そんなのに負ける俺って……。
本当に嫌ッス。

「普通の体でも病気になるんだ。信じるマンも病気の一種ではないのか?」

いや、この信じるマン体質はキム・キムの作り出した人災であって。
病気や事故などの不慮の事態ではないのだよ。
多分、言っても無駄だけど。

「おッほほほ!」

うほっ。
イエローとアホな談義をしていたらピンクが不意に笑った。
不意を突かれたので当然、信じるマンに変身した。

「なんだ? どうした!?」

怪人27号とイエローも当然、信じるマンに変身して、なんだと驚いていた。
同時に俺の目からは光線が迸り、そして屁がぷすぷすと漏れた。
もしかして、ここでか? ここでご登場ですか?
ミン・ミン!

「おほほほ。そうですわ。わたくしの事をお忘れですか?」

いや。
忘れたくても忘れられないお人です。
アホ姉妹の姉の方……。

そう。キム・キムの双子の姉であるミン・ミンだ。

もちろんあちらの信じるマンを率いて。
しかし嬉しい事もあった。
それは……。

向こうのレッド、高倉直海ことナオっちだ!

うぉぉん。やっと会えた。心の友よ。
俺は、花粉症モドキを何とか抑えて、我が心の友を直視した。
そこには果たして。

怪人27号兄弟を凌ぐほどの真っ赤な殺意の目に染まったナオっちがいた。

こわいよ。
どうしたんだよ。ナオっち。
せっかく俺が共感できる唯一の友達だったと思っていたのに。

「吃吃(※注、日本語では、ほほほ)」

なんだ!
そうか。アレか。あちらにもピンクが加入したんだな。
そして、よく分らない言葉で笑っている。

多分、中国語だと思う。

もしかして、あちらは強制変身ではなく……殺意に満ちるのでは?
そうなのだ。あちらのピンク、桃か。
諸葛亮孔明のようなヤツ。

葛巾をかぶり、羽扇を手に向こうの信じるマンを指揮している。

こっちは魔法使いで、あちらが軍師。
この場合、こいつらは、逆の方がしっくりくるな。
もしかして、また作者のヤツ、適当に書いて、後悔しているのではないか。

こっちの総帥は中国人っぽいのにフランス人じゃないと言っているし。

向こうは中国人ではないと言っているんだよ。

本当は逆の方がしっくりくると思う。
向こうが魔法使いで、こちらが軍師の方がいいと思う。
率直に考えて。

「これは。これは。間抜けな格好したアホですね」

桃軍師が言う。ピンクを嘲笑しつつ。
しかし、こちらのピンクも決して負けてはいない。
桃軍師を前に、桃軍師の痛い箇所を毅然と言ってのけたのだ。

「というか時代遅れのアホみたいな格好をして賢くなったおつもりですの?」

「キィー。貴殿は、それが最新ファッションだと言うおつもりか?」

「プッ。女子で貴殿とかあり得ないし」

「魔法使いなど媚び媚びではないですか。今や、時代は軍師なのですよ?」

そうのだ。
これは後から分った事なのだが。
ムン・ムンは始め、ミン・ミンの所に勝負をしに行ったのだ。

しかし、ムン・ムンは、そこで無視をされた。

ゆえに信じるマンの強制変身を手土産にキム・キムに仕官を申し出た。
向こうの桃軍師は、逆の道を辿ったのだ。
本来ならば……。

って、作者の都合ばかり考えても仕方がないよね。

正直に言いなさい。
逆の方がしっくりきていたと。
ムン・ムンを魔法使いにしたのは間違いだったとね。

「うるさいアル! いくらマコっちの発言だとしても許さないアルよ?」

なんでお前がキレるんだよ。
俺は、作者の落ち度を突っ込んでいるのに。
もしかしてアレか。お前は権威主義者で、神には逆らえないと考える口か?

キム・キム、神も万能ではないんだ?

まず、そこに気づけ。

というか、ミン・ミンたちの登場で、また事態はこんがらがった。
しかも殺意に目が染まったナオっちを前にして。
とにかく朋友よ。目を覚ませ!

「フフフッ。マコっち。俺はお前を殺すぜ」

いやぁ~!
そんな事、言わないで。
気をしっかり。あのしゃべれると思った時のように!

「吃吃(※注、日本語では、ほほほ)」

やっぱり、アレが問題なんだ。
こちらの強制変身も、やっかいな能力だけど。
それ以上に力を発揮する、とてつもなくやっかいな能力だな。

「おほほほ。ローズ? どうです? わたくしたちの桃軍師は力は?」

「大した事ないアル。というか……」

「何ですの?」

「私はキム・キムアル! ローズとか中国人じゃあるまいし」

「ローズはローズですわ。生粋の中国人ですわ」

「私はキム・キム。お前はミン・ミンアル。生粋のフランス人アルね!」

と油断をしたら、こっちでも勝手に戦火が上がっているし。
しかもこんがらがるような意味不明な戦火が。
もう嫌。何とかして。

「とりあえず……」

「そうアルな。とりあえずアル……」

なにさ。何なのさ。二人して。
どこをどう考えても不吉な予感しかしないんですけど?

「勝負アル!」

やっぱり。
しかも俺の朋友が、殺意に満ちた状態で。
更に言えば、俺は目から光線が迸り、屁がぷすぷす漏れている状態で。

嫌ぁっぁぁあっぁぁぁぁぁっぁぁぁっぁぁっぁっぁぁ。

第二十三話、桃軍師、了。

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将来、月に移住したいと思う今日この頃。現実的には一歩、一歩、着実に。基本を大事に。

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