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【 Mメーク、18 ゲーマーという生き物 】

「きゃはっ。いい感じに荒野だね。おほ。揺れる揺れる」

 琉宇の運転が荒い。とてつもなく荒い。普通に運転していれば車は左右に揺れる。いや、上下に揺れる事もあるが思ったほど揺れていないもんだ。今、彼の運転するキャンピングカーは上下に跳ねている。跳ねていると表現したがまさに的確な表現でありそうとしか言えない。走行の衝撃で舌を噛みそうになる。

「怖いよ。先生」

 心細くなったのか蓮花が藍色の瞳に不安を灯し俺を上目遣いでみる。今度は車が左右に軋む。まるで振り子のように振られサスペンションが沈み軋んだのだ。俺達はシートベルトをしていて放り出される事はない。しかし、これだけの振動だ。もしかしたらシートベルトすら振り切るかもしれない。

 今度はジャンプだ。

 車が数秒間宙を舞いそのあとガクンとフロント部分が沈むような重い衝撃が俺達を襲う。琉宇よ。お前なにをしているつもりなんだ。カーチェイスでもしているつもりか。映画やゲームばりにだ。しかもダカールラリーも真っ青な荒野を全力疾走するキャンピングカーなんて車高が高くバランスの悪い車でカーチェイスか。

 正気の沙汰じゃないぞ。頼む。正気に戻ってくれ。

 ……荒野で盗賊団に襲われ逃げる為に疾走する。いかにもゲームっぽいシチュエーションだな。琉宇が目の色を変えてこの状況を楽しんでいる意味がよく分かるぜ。琉宇的には燃えるんだろうな。ただな。これは現実なんだ。ゲームじゃない。俺達はノンプレーヤーの盗賊団に襲われているんだぜ。

 分かってるか?

「さあ。香車、行きなさい。歩兵が誘い込んだ場所に全力突進しなさいッ!」

 そんな事を告げる綺麗な声が聞こえた。

「あ。しまった。そんな馬鹿な。制御が利かない。クラッシュするよ」

 香車と呼ばれた槍隊が琉宇の運転するキャンピングカーの先回りをして槍をタイヤに突き立てたのだ。槍に攻撃されバーストするタイヤ。同時にスピンし横倒しになるキャンピングカー。そう。俺達はものの見事に仕留められたのだ。襲ってきたノンプレーヤー達の集団に。

「先生……大丈夫?」

 蓮花がシートから放り出されドアにぶつかり額を擦りむいて血を滲ませていた。痛そうに血が滲んだ部分に右手をあてている。お前こそ大丈夫か。そういう俺もシートベルトが首に絡まり危うく首を吊るところだったがな。琉宇はというと倒れた衝撃で膨らんだエアバッグに埋もれていた。

「大丈夫もなにもないぜ。それにしても琉宇のヤツ、無茶しすぎだ」

 車外を見渡す。今はキャンピングカーが倒れた衝撃で土埃が舞っていて視界が悪くてなにも見えない。しかしあの土埃の先には盗賊団がいるんだろうな。そうしてシートベルトをなんとか外し軽く咳をしてから琉宇を見る。琉宇はエアバッグから脱出して盗賊団がいるであろう前方を注意深く凝視したまま言った。

「あはは。ボクの腕だったらノンプレーヤーごとき盗賊団なんて軽くぶっちぎれる計算だんだけどね。もしかしてMメーク参加者が絡んでいるのかな」

「……そうかもしれないな。油断するな。琉宇、レン」

 油断という言葉がピッタリと似合う二人に注意を促すように言った。

「う、うん」

 蓮花は不安そうに返事をする。琉宇は俺の言葉に答えず今だ前方を警戒している。どうやら琉宇のヤツも気づいているようだな。こいつらはMメーク参加プレーヤーが統率する確固たる兵団なんだと。今度はなんの天才のお出ましだ?

「桂馬、遠隔警戒。銀将、前へ。飛車と歩兵、援護」

 キャンピングカーが倒れたあと舞った土埃がゆっくりと晴れていく。晴れた視界の先には百人単位の集団がずらっと並んでいた。俺はヤツらの右腕を確認してみる。右腕に腕輪はなかった。とりあえずノンプレーヤーだと見るべきだろうな。まだ確定ではないが。おそらくな。

「……もしかしてあれは棒銀のつもり?」

 琉宇がつぶやく。

「棒銀?」

 俺は突拍子もない言葉を聞いてしまって咄嗟に聞き返す。

「うん。将棋の戦法の一つ棒銀だよ。駒を打つ将棋ほどハッキリと分からないけどなんとなくあの陣形は棒銀の様にみえるよ。由牙さんはどう思う?」

「銀将、援護。歩兵、一歩前へ。敵を牽制せよ」

 そうだ。琉宇の言う通りかもしれない。声が指示する銀将や歩兵、桂馬とは将棋の駒に準え(なぞらえ)た兵種なんだ。そして盗賊団を統率するあの声はつまりリアルで駒を使わない将棋を指しているつもりなんだろうな。

 今度は天才棋士のご登場か?

 俺は生前、常々思っていた。棋士とだけは勝負をしたくないとな。何故ならヤツらの頭の中には一億と三手先を読む先見性と先人達が編み出した途方もない種類の戦型、そしてその対処法を持っているからだ。もちろん俺達、勝負師が重要視する大局観ですらヤツらは持ち合わせている。

 ゆえに棋士とは相対したくないとずっと思っていた。

 …――琉宇が戦略の申し子であれば棋士とは戦術のスペシャリストなのだ。

「さて王は詰んだぞ。投了しろ。大人しく出てこい」

 Mメークの参加者だと思える声は冷たく事実を伝えるように言った。確かにヤツに統率された盗賊団達は完璧な包囲網を完成させていて、まったく逃げ出すようなすき間もないほどに重いプレッシャーで俺達に迫っていた。

「……だってさ。どうする? 由牙さん。でも素直に出ていくのもしゃくだよね」

 琉宇が不敵に笑う。小悪魔の様な無邪気な顔で。その微笑みは今だあきらめておらず敵が言った投了の督促にはまったく応じるつもりがないようだ。しかしこの状況下でなにをするつもりなんだ。俺達は完全に包囲されているんだぞ。そしてヤツらには詰みまでの手筋すら見えている。八方塞がりだ。……待てよ。そうか。こんな絶望的な状況はゲームなんかではよくある事なんだ。

 …――つまり琉宇がいかんなく才能を発揮できるフィールドなんだ。

「琉宇、なにか手があるのか。あるんだったら任せるが?」

「ちょっと出費がかさむけどいい手があるよ。一応、経費は三分割って事でいいかな。よかったらボクに任せておいてよ。絶対に逃げ出せるからさ」

 琉宇が味方になって初めて分かった。こいつのゲーム脳には不可能という文字がないんだ。つまりゲームでのシチュエーションとは不可能の連続でありそれを克服し続ける事が琉宇に課された義務の様なものだったんだ。

 彼が天才ゲーマーであり続ける以上。

「モブっ子。君はいいかな?」

 蓮花の瞳が不安で揺れる。彼女は琉宇との勝負で五十万ペロ手に入れた。しかし服を買って、そしてここに来るまでの経費を三分の一を払っていた。ガソリン代や食べ物、水道光熱費などその他諸々な。

 つまり手元にカネがあまり残っていなかったのだ。

 しかしいくら手元にカネが無くともMメークの納金ノルマは無情にも毎日粛々と課される。もしノルマを達成できなければペナルティーを喰らう。しかも一週間連続でノルマを達成できなければ……。

 つまり彼女は出費がかさむという言葉に怖じ気づいたのだ。

「琉宇くん。そのいい手にいくら位お金がかかるの。蓮花、あまりお金がないよ。破産したらリタイアなんでしょ。そうならないかな」

 蓮花の表情が曇る。正直だな。しかしそれ位、臆病な方がいい。

「琉宇。それは俺も聞きたかった事だ。いくらいい手でもとんでもないほどカネがかかるんだったら俺達は破産する。つまりいくらここを切り抜けられてもMメークからリタイアさせられては本末転倒だぜ。どれ位かかるんだ?」

 琉宇が頬を膨らませる。

「もう、これだから貧乏人は困るよ。ここで有り金全部盗賊団に巻き上げられでもしたら一緒でしょ。破産だよ。経費で破産するか、盗賊団に破産させられるかの違いでしかないでしょ。もっと自由に考えようよ。フリーダムにさ」

 ま、確かに琉宇の言う事にも一理はあるな。

 相変わらずの正論は健在だな。

「……貴殿らに告ぐ。雌雄は決した。素直に投了しろ。大人しく出てこい」

「ああ、言ってるけど?」

 琉宇がやれやれだと親指で盗賊団を指して言う。そうだな。ぐずぐずしている場合じゃないな。ここは琉宇の妙案に乗るか。俺と蓮花の納金ノルマは琉宇とギャンブルでもしてその場その場でしのぐ。そうすれば万事が上手く解決する。

 分かった。琉宇の案に乗るぜ。

「琉宇。任せた」

「そうこなくっちゃね。で、モブっ子はどうする? 乗る?」

 相変わらず表情が曇っている蓮花。やっぱり納金ノルマが怖いんだろう。心配するな。今回は特別に俺がなんとかしてやる。お前も琉宇の案に乗れ。

「レン、心配するな今回は特別だ。俺がなんとかする。お前も琉宇の案に乗れ」

「先生……」

「もう。モブっ子。本当にトロいね。敵は待っちゃくれないよ」

 琉宇が業を煮やしイライラと催促する。

「う、うん。ごめん。蓮花も乗るよ。お願い。なんとかして、琉宇くん」

 蓮花が意を決し言った。

「よし。二人の同意はとれたし目にものを見せてやるよ。天才棋士さん」

 と言って笑った琉宇の横顔は掟破り、型破り、常識破り、そしてもう一つおまけに奇想天外な悪魔的とも言える様な企みを隠し持った邪悪な顔つきだった。

18 ゲーマーという生き物、了。

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【 Mメーク、17 ルール 】

「人間なんて自分より弱いヤツを求めているもんさ。由牙さんもそう思うでしょ」

 琉宇のヤツ……。なんだか小難しい話を始めたな。

 今、琉宇の運転する背高のっぽなキャンピングカーで移動している。四角を基調としたレトロな感じの車だ。ただし俺から見てレトロであってもフルムーンでは最先端の技術だろう。なにせ車自体存在していないだろうからな。

 それにしても腕輪のアイテム屋にはこんな物まで並ぶのか。

 俺は妙に感心した。

 そして車は一路ある街を目指していた。目的地は商業都市ラプーン。ラプーンはフルムーンに存在する四つある大陸の内、俺達がいる大陸の支配国アッシュの首都。カネや物流の拠点だ。……琉宇の説明によるとだが。

 そしてカネはある所に集まるという琉宇の提案でラプーンを目指す事となった。

 しかしキャンピングカーでの移動なぞ目立つぞ。こんな目立つ移動方法は反対だったんだが、琉宇が自信満々に言った。大丈夫。ノンプレーヤーに襲われても手はあるし、ボクはいつもこいつで移動しているからねと。

 その自信に押し切られてしまった。

 琉宇の言う手とは、どうせ車のない世界での話だ。オーバーテクノロジーなスピードで振り切るとかいったところだろうか。大体、察しはつくぜ。安心はできないが移動に時間をかけているわけにもいかないしな。

 しかし琉宇は生前も子供でありフルムーンに転生してからも子供だった。つまり免許などというものは持っていないだろう。フルムーンという世界で無免許などと野暮な事は言わないが、正直、まともに運転ができるものかと思った。しかし意外な事に運転は滑らかだった。ま、こいつの事だ。運転もゲームで覚えたんだろうな。

 …――それにしても弱いヤツか。

 確かに俺は勝負師だ。そして勝算が高いのは弱い相手であり弱い相手とぶつのもやぶさかじゃない。が、弱い相手とばかりぶっていると己の腕がなまる事も知っている。ゆえに強い相手に挑む事は嫌いじゃない。己を磨くという点では負けると分かっていても勝負をする事はある。

 この世には俺すらも知らない強者は確かに存在するんだ。

「琉宇。なんでそう思うんだ?」

「ふふふ。ボクは人間なんて信じないんだ。努力して強くなった人間を一刀両断に斬り捨てる人間なんて大嫌いなんだ。由牙さんには分らないかな?」

「……」

「弱い内はいいけど弱い人間が強くなったら嫌われるもんさ。話が違うってね。始めから強い由牙さんには分からないかな。モブっ子もそう思うでしょ」

 琉宇が前を見て運転したまま蓮花に話を振る。

 相変わらず蓮花の事をモブっ子と呼んでいる。他意はないのだろう。始めにそう呼んでそれが定着しただけだ。いや、今となっては逆に愛着の証明なのかもしれない。それが分かっているのか蓮花は嬉しそうに答える。

「私は先生以上の強い人を知らないよ」

「ま、そうだね。由牙さんは強い。だからボクは惚れたんだけどさ。ボクがどんなに強く成長しようと由牙さんはそれ以上に進化するだろうからね。だから嫌われない。そういう事だよ」

 甘いな。甘すぎるぜ。

 恋人達がいちゃつくクリスマスのケーキより甘い認識だぜ。俺以上に強い人物は確かに存在する。Mメークの参加者だけで考えてもな。大体、俺は多対一の戦いに持ち込まれれば為す術がないんだぜ。麻雀で考えれば一目瞭然だ。どんなに天才的な打ち手であろうと他の三人に組まれれば負けは確定する。

 そんなものは常識であり常套手段だ。

 それともあれか。軍隊で考えてみればもっと分かりやすい。一騎当千の将軍がいたとして一人で千人を斬る事ができる猛将でも一万人に攻め込まれればどうだ? しかも相手の軍に自分以外の一騎当千な猛将がいないとは言い切れないんだぜ。そんなのが混ざった一万人を相手に天才一人でどう立ち向かう? 戦いってのは数が重要なんだ。数は最強の兵器だ。

 大体、多対一が苦手なのは琉宇も一緒だろう?

 蓮花に至っては一対一でも苦しいだろうしな。ま、でも説明するのも面倒くさいしやるべき事がある。前々からやろうと思ってた事だ。そう。神のヤツから情報を聞き出すのだ。琉宇の相手ばかりしていられない。適当な事を言っていないしておくか。

「琉宇、レン。俺は強くない。俺より強いヤツはごまんといる。それに強さなんてものは時と場合によるもんなんだぜ。つまり琉宇やレンだって環境さえ整えば俺なんかより強い場合もあるんだ。しょせん強さなんて物差しは一律じゃないんだ」

「むう。由牙さん。難しい事を言って誤魔化してる。大人の悪いクセだね。都合が悪くなると難しい事を言って煙にまく。正直、答えるのが面倒くさいんでしょ」

 琉宇が茶色い瞳でイタズラっぽく笑う。車窓から爽やかな風が舞い込み彼の紅い髪を揺らす。まるで風のリズムに乗って踊っているようにも見える。風は俺の頬にも届き心地よさを感じさせてくれた。

「……」

 それにしても琉宇のヤツは相変わらず正論を吐くな。その正論はどこからくるんだ。人生経験か。いや、子供に人生経験を問う方が間違っている。やっぱり理屈っぽい性格なんだろう。実は俺よりお前の方が難しい事を考えるのが得意なんじゃないか。

 そこに蓮花が割り込んでくる。

「そうだ。そうだ。先生は誤魔化してる」

 蓮花、お前は至ってはなにも考えてないな。そのヘンテコな顔が証拠だ。相変わらず顔を見ればなにを考えてる事が分かるヤツだ。でもその考えなしを琉宇にもちょっとは見習って欲しものなんだがな。ただし蓮花のレベルでは困る。難しいバランスだな。どっちもどっちって事か。

 ま、いい。今は神のヤツを問いただす方が先決だ。

「誤魔化している。そう思うんだったらそれでいい。それより二人とも俺にはやるべき事があるんだ。ちょっと黙っててくれないか」

 俺は自分の赤いネクタイを締め直す。

 そうだ。俺達は琉宇に勝ったカネで服を買った。真っ黒のスーツ上下にインナーは白のカッターシャツ。そして赤と白のラインが入ったサスペンダーを買った。子供用のスーツで黒色とはなかなか無い代物だったが腕輪のアイテム屋には幸運な事に売られていた。そしてこのスタイルは生前の俺の戦闘スタイルでもある。

 これで気も引き締まるってもんだ。

「琉宇、レン。俺はこれから神と交信する。いまだ聞けてない情報を引き出す為にな。だからちょっと黙っててくれないか。気が散る」

 蓮花は灰色の裏ボアニットコートに白と黒のボーダーゆるTシャツを合わせた意外とお洒落な服を選んだようだ。彼女から学校でいじめられていたと聞いていたからファッションセンスは人並み以下かと思っていた。これは偏見でしかないのだが地味なヤツほどいじめやすいものはないからな。

 が、蓮花の選んだ格好は今どきの女子中学生らしい格好だった。

 なかなか見られる格好じゃないか。可愛いと思うぜ。……それにしても地味なヤツほどいじめやすい。そうか。琉宇の言った努力をして強くなったヤツってのがちょこっと理解できた。そうなのだ。いじめていた弱く地味なヤツが努力して強くなったら確かにより一層嫌われるものなのかもしれない。琉宇の言ってた通りに話が違うとな。

 ま、でもいじめられていたヤツってのは弱くても嫌われてはいるがな。

 それに強くなればそれなりに認めてくれるヤツも出てくるはずだ。うむ。分かった気になったが、やっぱり琉宇の言う事は究極的にいまいち分からない。

 しかし琉宇が闇を抱えてる事はなんとなく感づいた。

 と余計な事を考えていても始まらないな。とにかく今は神のヤツと交信し情報を引き出せるだけ引き出す。それが今後の指標になるし、もしかしたらこの馬鹿げた世界フルムーンの真実も知れるかもしれない。俺はステータスを確認した時やアイテム屋を呼んだ時のように腕輪に左手を添え考えた。

 神との交信と。

 裁縫針の先をちょこっと刺したような痛みが右腕に走る。どうやら神との交信のやり方は間違っていないようだな。成功だろう。さて神よ、どう出る?

「はいはい。呼ばれて飛び出しましたよお」

「神よ」

 頭の中にあの鬱陶しいしゃべり方をする声が響く。俺は低い声で牽制する。蓮花や琉宇には重要な情報を与え、俺にはフルムーンやMメークの説明を簡潔に済ましてくれた神へのボディーブローだった。

「始めに聞きたい」

「はいはい。天花由牙さま、なんでしょうかあ。ボクに答えられる事だったらなんだって答えますよお。遠慮しないで聞いて下さいですう」

「何故、俺が知らない情報を他の参加者達は知っているんだ。Mメークの参加者には同等の権利が与えられるんじゃないのか。これじゃ俺が不利だぜ」

「……」

 神のヤツが黙りやがった。つまり今の現状では俺が不利だと認めるわけだな。認めたのならば俺の聞く事に答えないという反応はできないはずだ。Mメークの他の参加者と差が無いようにする為にな。俺が不利でなくなるようにだ。

「Mメークにはまだ俺に知らされていないルールがあるんだろう? それは死に直結するような残酷なルールがだ。違うか。答えろよ。神」

「……鋭いですねえ。確かにありますう。これは上柳琉宇様にも波栖蓮花様にも話していない事ですう。由牙様はきっとその事実に気づき聞いてくると踏んでましたからねえ。だから敢えて伝えなかったんですよお」

 神のヤツ。琉宇と蓮花が俺の仲間になっている事を知っているのか。いや、知られていても別に構わないが俺が申告する前に知っているのは頭では理解していても正直気持ち悪いな。

 大体、神のヤツは俺が知るヤツで間違いがないはずだ。

 それが誰なのか。今は分からない。が、少なくとも俺の性格を熟知していて、あの命を張った博打で打つ予定だった奇策の存在すらも知っているヤツ。そんなヤツは限られている。

 いつか尻尾を掴んでやるぜ。

「そそ。またルールを聞かれるのは面倒くさいので大体ですけどお、詳しいルールを今から一気に説明しますねえ。天花由牙様、なにかメモをとれるものはありますかあ?」

 そう言った神はMメークの詳しいルールを説明してくれた。ただし大体というだけあってまだ隠されたルールが存在するんだと思う。が、これだけも知れたのは大きな収穫だった。以下にMメークのルールを記しておく。

Mメークルール ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

原理原則。
・どんな手段を使ってもいいので、この世界にいる人間達から十億ペロ集める。後述するが集める総額は高騰する事もある。そして人間達とはプレーヤーとノンプレーヤーを含めたフルムーンに存在する人間すべてをさす。

付随ルール。
・お金を集める為にとる手段は基本的になんでもあり。殺して奪ってもいいし盗んでもいい。もちろん真っ当に稼いでもいい。
・舞台はフルムーンの世界すべて。
・もし仮にこの世界の真理を解き明かし不当に元の世界に戻る事があれば発覚次第、魂の消滅もってしてこのゲームからのリタイアとする。
・リタイアした人間は死ぬ。
・死とは現実世界も含めその存在の一切を抹消するものなり。
・チュートリアル期間を終えたプレーヤーは一日毎に世界銀行への納金ノルマが発生する。
・一日の納金ノルマは貯めた金額に応じてその額が高騰していく。
・ノルマを達成できない場合クリアーの金額が高くなっていく。すなわち始まりは十億ペロでありノルマを達成できない場合に限りクリアー必要額が十億ペロからどんどんと高騰していく。
・一週間連続でノルマを達成できない場合リタイア。つまり死。
・他人を使ってお金を稼ぐ事も原則可能。他人とはつまりプレーヤーであり、ノンプレーヤーの事をさす。
・納金は世界のどこかにあるという世界銀行の個人口座に腕輪を使って振り込む。
・世界銀行を襲う事も可能。その場合、襲撃が成功した場合に限り全ての参加者の納金金額や貯蓄がゼロになりMメークは再スタートする。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 大体、こんなところだ。あとで蓮花と琉宇にも教えてやろう。それにしてもこんなに細かくルールが設定されていたなんてもっと早く気づくべきだった。一番最後のルールに至っては聞いていなかった自分の愚かさを呪うレベルだぜ。勝負事において一発逆転の手は常に手の内に準備しておくべきだ。

 つまり所持金ゼロから再スタートはそういった類の手なのだ。

 しかしその一発逆転の手に頼る事なく勝負を終えるのが一番ベターなんだがな。それから最後に神は言っていた。ルールに表記があるが毎日の納金ノルマがあるらしい。しかし今まではノルマがなかった。チュートリアル期間だったようなのだ。つまりフルムーンに慣れる為の準備期間だという事だ。

 しかし今日から一日一万ペロの納金ノルマが課されると言っていた。

 もちろんノルマを果たせなければそれなりのペナルティーを喰らう。それ以上に一週間連続でノルマを達成できないとゲームオーバーなのだ。もし仮に琉宇との勝負で負けて五十日間も琉宇の下で働き続けていたら命が危うかった。お試し期間も終わるだろうし安い賃金で働きつつ納金ノルマをこなすのは難しいからな。

 やっぱり俺の踏んだ通りだったぜ。

 改めてあの勝負負けていたらと考えると冷や汗が止まらないぜ。

 しかしまだまだMメークの全貌は見えていないがとりあえずで確認したい事はあらかた聞いた。あまり神を問い詰め過ぎて俺が不利になるように振る舞われたらやっかいだ。今回はここまでにしよう。神との通信を終えた。

 と安堵のため息を吐いた瞬間ッ!

「歩兵(ふひょう)。先制攻撃です。タイヤを狙いなさい。パンクさせるのですッ!」

「盗賊団だ。大丈夫。ヤツらは追いつける手段を持ってない。まくよ」

 と琉宇が言いアクセルを全開にスピードを上げた。腕輪をしていない男達の集団が俺達が乗るキャンピングカーを攻撃してきたのだ。俺と蓮花は加速の衝撃で車のシートに張り付けられた。琉宇は楽しそうだ。レースゲームをしている気分なんだろうな。ほとほと馬鹿がつくほどのゲーム脳だなと思った。

「きゃはっ。追いつけないでしょ」

 琉宇、目が怖いぞ。そんなに楽しいか。俺達は襲われているんだぞ。それにしてもあいつらはノンプレーヤーだろうか。そんな感じはする。ただし可能性の一つとしてMメーク参加者が統率しているかもしれない。油断はできないぞ。

 でもな。だからこそ俺は反対だったんだ。こんなキャンピングカーでの移動なんて目立つ方法はな。大体、車なんてこの世界にはないだろうからな。それこそ琉宇と初めて出会った時、お前が言ってた言葉をそっくりそのまま返したい気分だぜ。

『こんなに目立つ移動方法を使うなんて襲ってくれって言ってる様なもんだぜ。馬鹿だろ。馬鹿でしょ?』とな。

 そうは思ってみたが納得して乗っていた俺も同罪だなと思い直した。

17 ルール、了。

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【 Mメーク、16 ボクの真実 】

「じゃ、始めの約束通りお金を払うよ」

 琉宇が自分の口座からお金を引き出している。

 琉宇の行動を見ていると分る。お金も腕輪の力で転送されてくるらしい。あらためて腕輪の重要さがよく分かった。そして今回の勝負の賭け金は確か一万ペロだったな。よし、これで服が買える。こんなボロ切れともおさらばできるぜ。自分のボロをまじまじと見つめ長かった琉宇との戦いを振り返った。

 …――終わった。

 そう思った。もうこれ以上なにもないと思った。

「でもね……。由牙さん、本当に一万ペロぽっちでいいの?」

「ぽっちだと?」

 俺は琉宇の言葉の意味が分からず咄嗟に聞き返してしまう。大体、一万ペロとはいくら位の価値があるんだ。確か前に神のヤツがペロはフルムーンの国際通貨で日本円に換算して一ペロ、一円の価値と考えていいと言っていたな。

 一ペロ、一円。

 ちょ、ちょっと待て。マジか。

 …――一ペロ、一円の価値しかないだと!?

「あはは。これで正真正銘打ち止めだよ。由牙さん達はボクの最終最後の罠に引っかかったんだよ。そうなんだ。一万ペロって日本円で福沢諭吉さん一枚分の価値しかないんだよ。一万ペロしか賭けなかったのはゲームの世界にあまり免疫がないプレーヤーをハメる為の罠さ」

 あんな死闘を繰り広げ、そしてギリギリで勝ったというのに一万円ぽっちだと。

 確かに最近やっとゲームというものを理解つつはあったがそれでもゲームというものに疎い。日本円で一万円と言われれば金額をつり上げる交渉をしていただろう。一万ペロがかなりの金額に思えたのだ。甘いな。そんな親切はない。相手は敵なんだからな。一万ペロと言われて安易に勝負を受けてしまった俺に非がある。

 今だフルムーンという世界に慣れてない証拠だ。

 甘かった。

 大体、一日の労働の報酬が二人で二百ペロという条件に誤魔化されてしまった。もし元いた世界で俺と蓮花が一日フルで働けば軽く一万円は超えるだろうと計算していたのだ。ゆえに二百ペロがそれなりの価値があると勘違いしてしまっていた。端的に言うと二百ペロは実質二百円でしかない。二人で一日フルで働いて二百円ってどれだけブラックなんだよ。

 それを言葉巧みに誤魔化されてしまった。

 まるで一万ペロが云百万もの価値があるかのようにな。やっぱりゲームに対する理解度と戦略の点でいえば琉宇の方が一枚上手だったという事か。さすがは生前、無敵のPCという異名を持った天才ゲーマーだけはあるな。

 …――やっぱりタネ銭はお互い晒してそれから勝負する方が妥当だな。

 ふっ。負けたよ。

「うふ。でも由牙さん達は特別。一応、負けた時の保険として支払う金額を誤魔化してはみたけど、まさかこのボクがゲームの対戦で負けるとは思わなかったからね。だからこれはボクを負かした由牙さん達へのプレゼントだよ。賞賛。受け取ってよ」

 そう言うと琉宇は腕輪から手元に札束を具現化させた。

「……」

 札束はどう見積もっても百万を下らない。束ねた厚さは一センチくらいか。一万ペロだとあきらめていた俺は琉宇が渡した金額に驚いていた。

「由牙さん。受け取ってよ。Mメークでボクのいいライバルになってくれる事を期待しての金額さ。ライバルがいるとボクも強くなれるからね。それにボクにはまだまだ貯金があるからさ。心配しないでね。そして最終的に勝つのはこのボクさ」

 そう言って笑った琉宇の顔にはなんの企みもないような気がした。それでも受け取る事を躊躇する俺。勝ちの報酬が始めに設定した金額よりも大きくなるなんてシビアな世界で生きてきた俺は経験した事がなかったからだ。

「先生」

 俺がカネを受け取るのを躊躇していると蓮花があか抜けた笑顔で割り込んでくる。お前の言いたい事はその表情を見れば大体、分かる。

「利用できるものはなんでも利用するのが勝負師なんでしょ。くれるって言うものを拒むのはおかしいよ。善意を受け取ろうよ」

 そうだろうな。善意だろうな。企みを感じない。が……。

 しかしその善意が足元をすくう事だってあるんだぜ。この勝負は誤魔化されたとはいえ飽くまで一万ペロという約束で始まった勝負なんだ。それを百万ペロだと。俺は施しを受けない。そして勝負師としてのプライドが許さない。

「レン。俺にもプライドがある。この勝負は一万ペロという約束で……」

 俺の言葉をさえぎり蓮花が言葉を積み重ねる。

「プライド……、それを先生が言うの。タバコを奢ってもらったあと蓮花の顔を見てなにを思ったのさ。先生は言葉には出さなかったけど蓮花は知ってるよ」

 ……。

「……ちんけなプライドになんかに縛られるなか」

 俺はつぶやいた。

「そそ。タバコを奢ってもらった時、先生はそう考えていたんじゃないの?」

 彼女は目の前にある大金が欲しい訳じゃない。大金に負けたわけじゃない。それどころか純粋にMメークで生き残り、最終的な勝者になる事を最優先にして考えている。そうだな。この際勝負師のプライドなんて些末な問題でしかない。

 それよりももっと大枠で考えMメークで勝ち残り優勝する事を目指すべきだ。

「……琉宇。今回はお前の好意、ありがたく受け取っておくぜ」

 俺はカネを受け取ると改めて琉宇に礼を言った。

 琉宇は嬉しそうに笑いそして俺達に札束を手渡した。金額は百万ペロ。俺と蓮花の取り分は山分け。つまり一人、五十万ペロの取り分だ。

「そそ。この金額にはボクの好意も含まれているんだよ。ボクはね。実は生前女子だったのさ。そしてここに転生する時に男になったんだ。だから普通に男が好きなんだよ。由牙さん、なにが言いたいか分かる?」

 はあ? 生前は女で男が好きだと!?

「そそ。そしてボクは由牙さんに惚れてしまったのだ。その勝負勘と計算できない行動にね。モブっ子とはライバルだよ。だからさ。ねえねえ。お願いがあるんだ。百万ペロもあげたんだから一緒に行ってもいいでしょ? 由牙さん、嫌だとは断らせないよ。あはは。もうお金は受け取ったんだし返却不可だよ」

 一緒に行動する為の戦略だったのか。くっ……。

「……ライバル」

 蓮花の藍色の瞳が揺れる。琉宇がライバル宣言をして動揺したらしい。いや、でも待て。琉宇よ。お前は男だろうが。俺も男だ。男同士でそんなもんは俺の理解の域を超えているぞ。いわゆるBLってやつか。

 決してボーズ・ラブじゃないぞ。

 ……って、俺よ。なにを言ってるか自分でも分かってるのか。蓮花や琉宇、こいつらといると調子が狂いどんどんと威厳がなくなり自分が勝負師だという事実すら忘れちまうぜ。シリアスこそが俺の専売特許であり俺自身なんだ。

 その俺がBLなどと……。

「それにボクといるとなにかと便利だと思うよ」

 その可能性は考えていた。おそらく琉宇の腕輪のレベルはこのMメークという馬鹿げたゲームに参加している天才共の中でもかなりの上位に入るだろうな。なにせ家という桁が違うものを購入し所有しいるんだからな。

 それは分かるが……。

 対価として俺のケツが四六時中狙われるって事になるな。俺はロリコンじゃないしショタコンでもない。男である以上、ショタコンよりまだロリコンの方がマシだ。大体、恋人や伴侶は作る予定はない。ましてやそれにもなり得ない琉宇などは……。

「あはは。由牙さんの意外なところみっけ。意外と男女関係で動揺するような人だったんだね。酸いも甘いも噛み分けた大人だと思ってたんだけどさ」

 くっ。形無しだとでも言いたいのか?

「男女関係の面だけで言えばボクの方が大人だよ。ま、でもそんな欠点があるってもの人間くさくて可愛いけどね。確か悪魔の罠師って呼ばれた勝負師だったよね。これからよろしくね。由牙さん」

 よろしくしない。絶対によろしくしない。俺は男だ。

「うふ。琉宇くん。私もよろしくね」

 蓮花がにこやかに右手をさしだし握手を求める。無邪気。そういう表現がピッタリな笑顔。全てを解き明かし真実を見抜くような優しい表情だった。

「うるさい。モブっ子。君はボクの恋敵だよ。恋敵には気を許さない。モブはモブらしく名無しで風景の一部にでもなっててよ。分かった?」

 と言った琉宇の顔もの言葉とは裏腹に満面の笑みだった。ただし蓮花が差し出した右手は力強くはたかれ、琉宇の天の邪鬼な性格がよく表れていた。

「あはは。私は先生のなんでもないよ。琉宇くんが先生を好きなんだったら全力で応援するからね。本当にこれからよろしくだよ」

 と笑った蓮花は琉宇の気持ちをあり余すところなく十全に理解していた。

16 ボクの真実、了。

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【 Mメーク、15 決着 】

 第二形態の魔獣は第一形態に比べ背中に血管の浮かび上がった羽根を生やし、蒼い角も二本に増えている。第一形態ですら凶悪な成り立ちだったのに第二形態になってその凶暴さにますます拍車がかかったようだ。

 そんな魔獣をダガーがなくても倒す事ができる方法だと。なんだ。それは。

「あれ。由牙さん。気づかなかった? ロココが第二の攻略法をしゃべっていたんだよ。これだけ言ってもまだ気づかないかな。あはっ。君も鈍いね。モブっ子と一緒だよ。ハッキリと言うよ。やっぱりボクの敵じゃないね」

 ロココが第二の攻略法を言っていただと。自分の記憶を頼りにロココがなにを言っていたのかを考えてみた。そんな事を言っていれば聞き逃すはずがない。しかし幾ら記憶をたどってみても見当がつかない。なんだ。分からない。

「冷静な由牙さんらしくないね。ロココは君らにもこう言ってたんでしょ。ボクはその場にいなかったから多分だけどさ」

 そう言った琉宇の顔はなにかを企んでいるかのよう邪悪だった。

 そして似てない物真似を始めロココの発言を再現した。その調子が暗に俺達を小馬鹿にしているようで神経に障った。しかし俺は勝負師だ。そんな言葉には惑わされる事はない。こんな時ほど冷静にだ。

『うむ。普通にも倒せる。が、少なくともレベルが十以上は必要じゃろうな。お主らの前にここを訪れた少年ですら決して魔獣には敵わんよ』

 琉宇よ。その場にいなかっただと。簡単にバレるウソをつくな。ロココの発言を一字一句間違いがなく再現しているぞ。どこかに隠れて聞いていたな。俺達はまったく気づかなかったがな。

 いや、今はそんな事を考えているべき時じゃない。

 そうか。しまった。抜かったぜ。そうだなのだ。ロココは確かに魔獣を倒す方法、つまり琉宇が言う第二の攻略法を明かしていたのだ。一見するとこの発言は決して普通の方法で倒せないかのように思えるが違うのだ。

 裏を返せばレベルが十以上あれば魔獣を倒せると言っているも同じなんだ。

「そうか。分かったぞ。そういう事か」

「そそ。鈍いね。レベルが十以上あればダガーがなくても魔獣は倒せるんだよ。やっと分かった? ボクはレベルを十以上にしてきたのさ。だからここに来るまでに時間がかかったんだよ。でも気づくのが遅いよ。ボクの勝ちッ!」

 そうか。魔獣が第一形態だった時、ヤツが背中に背負った大剣で魔獣を倒そうとした場面で気づくべきだった。あれはやけくそなんかじゃなく実力行使でも魔獣が倒せるという確固たる事実に基づいた行動だったんだ。だからか。抜かった。そうして琉宇の大剣が鈍い音を立てて空気を切り裂き魔獣へと襲いかかる。

 レベルが十を超えた確かな実力に裏打ちされた一撃だった。

 …――琉宇は自分の勝ちを確信した。

 俺はそこで微笑む。

 まだ勝負の決着はついていないぜ。ここからが俺の真骨頂なんだぜ。琉宇よ。その目に俺の戦術を焼き付けろと。そして罠という名のドミノは気弱な小さな花のつぼみを大輪の花へと変化させ気高く咲き誇る。

「琉宇よ。確かによくよく考えられた綿密な戦略と戦術だったな。だがな。俺の方が一枚上手だったようだぜ。俺の罠はここまででワンセットだ」

 タバコを指で弾き捨てる。

「レン。今だ。俺が渡しておいたダガーで魔獣にとどめをさせ。できるだろう?」

「うん。任せておいて先生。蓮花、頑張るよッ!」

 同時に呼応するかのよう蓮花が物陰から飛び出し、俺が手渡しておいたダガーを魔獣へと突き刺す。さしものの凶暴な魔獣も本物の秘剣で刺されてはひとたまりもなかったのだろう。最後に大きな雄叫びをあげると倒れて動かなくなった。

 そう。蓮花が本物である魔獣を倒せるというあのダガーを持っていたのだ。

 それにしも冷や冷やだったぜ。蓮花に任せるのは心臓に悪い。ここでまたこけられでもしたらそれこそ流れはごっそりと琉宇の方にいってしまってただろう。そして俺達の負けは確定しただろうな。

 ま、任せる以上は信じるしかないがな。

 信じた以上、心の中で祈るしかなかったがな。しかし前科がある。本当に心臓に悪いぜ。どうやらこの賭け、最後の最後まで俺達に流れがあったようだな。そして決めるところは決めてくれて嬉しいぜ。

 蓮花、よくやった。

「モブっ子……」

 琉宇は絶句していた。それはそうだろう。蓮花をモブっ子などと断じて舐めてかかっていたんだからな。そしてその舐めていたモブっ子に出し抜かれたのだ。寝耳に水だったんだろうな。

「そういう事だ。まさか気弱で戦いに向いていないレンがあのダガーを持っているとは思わなかっただろう。あまつさえ魔獣にとどめをさすなんてな」

 蓮花の存在。

 それは琉宇にとって心理的な落とし穴だった。気弱で戦いには向いていない蓮花はノーマークだったんだろうな。そんな心理的な落とし穴を巧みに使い最後の最後、雌雄が決するまで罠にハマった事さえ気づかせなかった。それこそが悪魔の罠師の異名を持つ天花由牙の罠だぜ。

「でもじゃ……。由牙さんが持っていた魔獣の第一形態にとどめをさしたダガーはなんだったの。あれも偽物? でもあれで魔獣を倒したじゃないか。第一形態に過ぎなかったけど確かに倒したじゃないか」

 琉宇は信じられないと目を白黒させる。

「甘いな。琉宇。なんで俺達がお前より早く魔獣に遭遇する必要があったのかを考えれば自ずと答えが分かるはずだぜ。なぜだと思う?」

「先生。蓮花が答える」

 蓮花が右手を挙手して割って入ってくる。また調子に乗ってるな。魔獣を無事にしとめ大役の任を果たした事を喜んでいるんだろう。その満面の笑みを見れば一目瞭然だ。やっぱり蓮花は思っている事が素直に顔にでるな。もう慣れてしまって文句を言う気も起こらない。

「なんで琉宇くんより早く魔獣に遭遇する必要があったのか。それはね。魔獣の力を測る為なんだよ。つまりね。己を知りて敵を知れば百戦危うからずなのだ。えへへ」

 彼女は得意そうに鼻頭をこする。

 というか孫子の兵法なんて小難しいものをよく知ってな。いや、知っていたというよりたまたまどこかで目にしたんだろうな。それを知ったかぶって言ったというのが正解だろう。その顔を見れば分かる。本当にやれやれなヤツだぜ。

「レン」

「なに。先生。えへへ。正解?」

 ちょっと考えれば分かるだろう。俺達は魔獣とまともには戦っていない。百戦危うからずもなにもないだろう。ただの一戦もしていないんだからな。

「正解のわけがないだろう。頼むから黙っててくれれ。シリアスな流れが台無しだぜ」

 蓮花の無邪気さにはほとほと困る。俺は蓮花が持つこの独特な雰囲気に知らず知らずの内に惹き込まれ甘くなり、脆くなったんだろうな。俺ともあろうものが情けないぜ。ま、でも成長する可能性もあるし佳しとするか。

「そうか。今、モブっ子が力を測ったと言ったよね。由牙さん、もしかして……」

 琉宇は信じられないと目を見開いている。

「ああ。さすがだな。それだけで察するか。多分、それが正解だぜ」

 俺は低い声で答える。さすがは天才ゲーマーだ。初めて会った時に様々な事象を見通した観察眼は今でも健在なんだな。ま、でも今はその観察眼も辛いだけか。自分自身の負けを確信する為だけに使われているんだからな。

「第一形態である魔獣の体力を測っていたんだね」

「そうだ。一発でとどめをさせる瞬間を見極める為に魔獣の体力に注視した。そして琉宇、お前に体力を削らせたのさ。魔獣が死ぬギリギリまでな」

「そういう事か。やられたよ」

 琉宇は手で目を覆い天を仰いでいる。

 つまり俺の持っていたダガーはこれまた幻術で装飾した偽物だった。その偽物のダガーでも一発で倒せるまで魔獣の体力を琉宇に削らせのだ。そして美味しい所だけをぺろっと頂いた。ゲームなんかでよくあるレベルを上げたいキャラにとどめをささせるあれのちょうど真逆だ。俺はゲームなんかはしないがなんとなくうろ覚えで知っていた。蓮花の孫子のにわか兵法と同じだな。

 そして本来ならばここで蓮花にとどめをささせる予定だった。

 俺は実力行使で倒せるとは思っていなかったからな。ただし琉宇が第二の攻略法を明かすであろうギリギリまで切り札である蓮花の存在を伏せとどめを待った。俺の切れるカードの内で最大の威力を持つであろう切り札で琉宇の隠し持っている第二の攻略法をねじ伏せる為にとどめを待ったのだ。

 少なくとも第二の攻略法がなんなのかそれが分かるまではな。

 そしてそれが功をそうし魔獣の第二形態なるものの存在を知るまでに至った。それはのは来るべくして来た幸運だった。流れを制したものだけが手にする幸運だった。そして第二形態の存在を知った瞬間、流れは完全に俺達のものだと確信したぜ。

 しかし結末の結末まで賭けの連続だったと思うぞ。

「そして由牙さんは魔獣に第二形態がある事も知っていたんだね。じゃないとモブっ子に本物のダガーを渡しておけないからね。いつ知ったの?」

 俺はまたタバコを取りだし火を点ける。

「ボクですらこんな場所の中ボスごときが第二形態を持っているなんてロココに会うまで知らなかったのに。そうか。ロココに聞いたんだね。そうでしょ」

 琉宇が言う。俺は煙を燻らせ口から吐き出し答える。

「残念だが不正解だ。俺はゲームに疎いんだよ。第二形態なんてものは魔獣がその正体を現すまでは存在すら知らなかったよ」

「えっ。でもそれじゃ……」

 琉宇が信じられないとまた黙る。俺の言葉を待っていたのだ。第二形態の存在を知らないのに何故、モブっ子、つまり蓮花にダガーを持たせておいたのか。そしてとどめをささせたのか。それが分からなかったのだ。

「ふふふ。賭けだよ」

「賭け?」

 俺はまた煙を愉しみ一旦、呼吸を置いた後、言葉を紡ぎ出した。

「俺は勝負師だ。賭けて勝つ事が生き甲斐だ。だから賭けた。琉宇、お前が切り札を隠し持ってる方にな。つまりお前が言う第二の攻略法がブラフじゃないって方に賭けたのさ。この勝負の勝敗をな」

「……」

「もちろん俺は分の悪い賭けはしない。勝てるという算段があって初めて賭ける気にもなるんだぜ。悪いが行動は逐一観察させてもらってたよ。そして俺の中で確信したから賭けたんだよ。お前は最後の最後でお前の持ち得る最大の切り札を切ってくるとな」

 琉宇の表情が和らぐ。

「そうか。由牙さんは勝負師だったんだね。そしてボクが第二の攻略法を編み出す事すらも読まれてたって事か。そしてそれがあると踏んで切り札をモブっ子に持たせておいたんだね。ボクが見えない場所に切り札を隠しておいたってわけだ。ボクがボクの切り札を発動するまで……」

「そうだ。それが俺の賭けだ。それに勝って場に出ていた全てをさらえたんだぜ」

 俺は天を仰ぎ煙を吐き出した。これで終わったと勝利を確信しタバコの煙を愉しんだのだ。長かったな。琉宇との博打も。そう思った。

「完敗だよ。認めるよ。あはは。勝てなかった。今までゲームの対戦で誰にも負けなかったこのボクがさ。こんなに悔しいのは初めてだよ」

 琉宇は空を見上げ小さくつぶやいた。

 瞳には悔し涙が滲んでいた。横顔もまた悔しそうで、しかし同時にスッキリとしたように爽やかな笑顔だった。彼はその率直な性格と言動に違わず、最後まで真っ正直で素直だった。しかしそれは不思議と嫌な感じを受けず、逆に好感すら覚えた。

 俺は応えるように笑った。

 いつの間にか曇天だった空の雲が割れ、そこから温かな陽光が幻想的に漏れ伝い俺達を照らし出していた。それはまさに琉宇という名の曇天の空が心を開き、その優しい陽光を見せてくれているようだった。

 そして、あれほどまでに琉宇を嫌っていた蓮花もまた自然な笑顔を見せていた。

15 決着、了。

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【 Mメーク、14 琉宇の戦略 】

「あはっ。ボクの到着を待っててくれたの? 間抜けだね。せっかくボクより早く魔獣を倒せるチャンスだったのにさ。きゃはっ。後で後悔しても遅いよ」

 琉宇は到着と同時に間の抜けた素っ頓狂な声で俺達を小馬鹿にする。それはまたまともな正論だった。ヤツらしいと言えばヤツらしいな。蓮花に目配せをして隠れてろと合図する。彼女は俺から渡されたものを胸の前で力強く握ると黙って頷き、そして魔獣と俺、そして琉宇から見えない草むらに隠れた。

 琉宇の手にはダガーがある。

 …――魔獣を一発で殺せるという曰く付きのあのダガーが。

「由牙さん。なにを考えているのか知らないけどさ。ボクは君らと違って間抜けじゃないからさ。ちゃんと手を打ってあるんだよ」

「甘いな。お前はすでに俺の罠にハマっているんだぜ」

 勝負師特有の鋭い視線で琉宇を牽制する。牽制でヤツがハッタリをかましたのか否かがハッキリとする。つまりなにか奥の手を隠しているのか、いないのかが分かる。俺に睨まれて、それでも尚、自信を失わないのは勝負師か、それともなにかに裏打ちされた自信があるという事だ。

 睨み続ける。

「えへへ。甘いのはどっちかな。なんでボクがここに遅れて来たのかも知らないでさ。このゲームには、もう一つの攻略法があるんだよ。それすら知らないでさ」

 ……もう一つの攻略法。

 確かにそんなものがあればこの勝負まだどっちに転ぶか分からない。ブラフだと思いたいがヤツの自信満々な態度は少しも色あせなかった。つまりなにかに裏打ちされた自信があるんだろう。ヤツは奥の手を隠している。その奥の手が分からない。知らないまま勝負するのは痛い。が、それでも時は流れていく。

 ヤツにはヤツの言う通り、もう一つの攻略法なる奥の手が存在するんだろう。

 天才ゲーマーか。なんとも面倒くさい相手だ。しかしこれでカードは全て出揃った。今のところ勝負の行方はヤツの方が一歩リードしているといったところだろうか。やっぱり蓮花の軽率な行動が痛かったな。

 ま、それすらも計算の内だがな。

「じゃ、もう一つの攻略法は隠したままでサクッと魔獣を倒しますか。由牙さん達はそこで指をくわえて見ててよ。この勝負、ボクの勝ちだね」

 ヤツの紅く立てた髪が風で揺れる。吊り上がった茶色い瞳に火が灯る。その目は暗殺者のそれだった。やっぱりあいつはゲーマーなんかじゃない。暗殺者だ。いや、ゲーマーなのかもしれないが、それでもヤツの動きは吐く言葉と一緒で冷酷無情な暗殺者のそれだった。

 …――正確無比に相手の急所を射貫くアサシン。

「えへへ。今まで隠していたけどさ。よっとッ」

 ヤツが握る十字架をモチーフにした立派なダガーは魔獣の装甲が一番薄い箇所を適確に突いていく。その動きに一切の無駄はなく、まさに贅肉がはぎ落された美しい工芸品の一端に触れているような錯覚さえ覚える。

 やはりと俺は確信した。

 …――ステータスを見た時、隠されていたヤツのスキルを。

 ヤツが背中に背負った大剣が怪しかったのだ。あんなに小さい体であんなに巨大な剣は扱いづらいだろう。フェイクだ。真にヤツの得意なエモノはダガーなどの短剣。そしてヤツの隠されていたスキルは数々のゲームを攻略する内に身につけたであろうその精密な動きに関係するものだ。

 つまり正確に相手の急所を突く暗殺剣。

 ヤツの動きを見ているとそれがハッキリとした。暗殺剣は敵の寝首をかく剣術だ。敵に悟られればその意味が薄くなり最後には意味がなくなる。ゆえに大剣を背負ってそれを使いこなすかのように見せかけていたんだろう。小さな身体で大剣を扱うというインパクトで敵を油断させる為にな。

 つまり暗殺剣のスキルを持っている事を悟られないようにする為だ。

 今回のこのミッションを勝負の題材に選んだのもロココというノンプレーヤーが持つあのダガーがミッションのキーを握っていたからこそだろう。ダガーこそが琉宇がもっとも得意とする武器なんだからな。その上、いまだ開示すらしていないもう一つの攻略法を隠し持っている強かさ。

 琉宇の行動は精密に計算され尽くしている。

 戦略か……。

 確かに琉宇の緻密な戦略に脱帽の念を禁じ得ない。それだけ綿密に練り上げられた作品とも呼べるような戦略なのだ。しかしな。俺だって戦略の面においても戦術の面においても決して負けてはいないぜ。ここからが本番だ。

 琉宇のダガーが魔獣の急所を捉える。

「これでお終いっと。由牙さん。なにを狙っていたのか知らないけど残念だったね。もうこれ以上はないよ。顔を洗って一昨日出直してきなってね」

 ダガーは確実に魔銃の急所に刺さっていた。

「……甘いな」

 俺は懐に忍ばせておいたタバコを手に取り、マッチで火をつける。そして煙を胸一杯吸い込み、目を細め、ゆっくりと煙を吐き出す。

「あれ? なんで?」

 魔獣は暗殺剣を喰らっても倒れなかった。それどころか、猛り、あの冷酷な息を荒々しく吐き出し、今にも巨大な蒼い角を琉宇に突き立てようとしていた。茫然自失になる琉宇。またタバコを美味そうに吸う俺。

「まだ分からないのか。言っただろうが。お前はすでに俺の罠にハマっていたんだぜ。ゲームをゲームとでしか認識できないような幼稚な思考が敗因なんだぜ」

「……なんでだよ。ボクの暗殺剣が利かないなんて」

 琉宇はダガーをポケットにしまうとエモノを背中に背負った大剣に変え、魔獣を攻撃し始めた。暗殺が成らないと悟ったんだろう。暗殺じゃなければ多少不得手でも大剣の方がダメージを与えられる。つまり実力行使に切り替えたのだ。魔獣を倒す為にはなりふり構っていられない状況になった事がよく分かった。

「悪いな。今度はお前が慌てる番だ。そして言っておこうか。これだと決めた勝負手を変えるのは愚策だぜ。少なくとも俺は手を変えないのが信条だ」

 俺はタバコを指で弾き捨てた。

「もうそろそろだな。じゃ、勝ちを拾いにいくか」

 そういった俺の手にはロココが持っていたあの十字架をモチーフにした細かい細工が施された立派なダガーがあった。さっきまで琉宇が持っていてポケットにしまったあのダガーが。

 魔獣を倒せるというダガーは始めの始めから俺の手の中にあったのだ。

 琉宇と蓮花が魔物の皮集めに奔走している最中、俺はロココとギャンブルをしていたのだ。もちろん始めはロココに他愛のないものを賭けさせて敢えて負け続け、どんどんとエスカレートしていくように仕向けた。そしてここ一番で全てを奪い返したのさ。そこでロココの頭に血が上った。

 そうして魔獣を一発で倒せるというダガーを賭けさせた。

 あとは大方の予想通りだ。勝負に勝ちダガーをかすめ取ったのだ。だから言っただろう。ロココが熱くなる人間で助かったとな。そしてダガーをかすめ取った事を琉宇に悟られないよう幻術魔法を使わせてもらった。琉宇が手に入れたダガーは結局、偽物だったのだ。それを俺の幻術魔法で本物と思い込ませた。

 つまり、お前は俺の戦略で偽物を掴まされたんだよ。分かったか。甘ちゃん。

 琉宇、お前の戦略もなかなかだったが俺の戦略も捨てたもんじゃないだろう?

「悪いな。俺達の勝ちだ」

 俺は頃合いを見計らって魔獣を殺せるというダガーを魔獣に突き立てた。さすがに曰く付きのダガーだけはあり、あの巨大なイノシシの体躯を持った魔獣を一発で仕留めた。しかも、それはとてもあっけなく……。

「ま、負けた。このボクが……」

「甘いな。結局、お前が言っていたもう一つの攻略法も無駄になったな」

 俺はまたタバコを取りだしマッチを擦って火を点けた。ゆっくりと煙を楽しむ。琉宇を見る。彼はうなだれ落ち込んでいた。……と思った瞬間ッ!

「なんてね。あはっ。また騙された。甘いね。このボクがゲームで対戦して負けるはずがないでしょ。なんて言っても無敵のPCの異名を持つこのボクがさ。しかも相手はゲームを知らない素人だよ。絶対に負けないよ」

 琉宇が息を吹き返す。

 …――同時に虫の息だった魔獣も息を吹き返す。

「こいつには第二形態もあるのさ。そこまで読めてこその真の攻略法だよ」

 ヤツの言う通り、魔獣には第二形態があり第二形態に変化した魔獣は体力がフルに回復していた。第一形態の魔獣にとどめをさしただけでは勝負は終わっていなかったというわけか。だったらもう一度、あのダガーでとどめをさせばいい。俺はそうしようと魔獣に突き立てたダガーを取り戻そうとした。

 しかし思いの外、魔獣が暴れ、それはまったくできそうにもなかった。

「ダガーがなくても倒せる方法はあるだんだよ。それが第二の攻略法さ。ボクがこの勝負の前に入念に準備しておいた第二の攻略法だね。ちょっと時間はかかっちゃったけどさ。それもこれもこの時の為なんだよ。あはっ。ボクの勝ちッ!」

 と琉宇が笑った。

14 琉宇の戦略、了。

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将来、月に移住したいと思う今日この頃。現実的には一歩、一歩、着実に。基本を大事に。

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