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では、▼以下より、私の世界をお楽しみ下さい。
     

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【 予知アプリ、~ 其の四、死 】

私が、スマホを受け取ると、セールスマンは名刺を置いて帰っていった。
去り際に見せた彼の笑顔は最後まで、冷ややかだった。
遠くに霞み消えるセールスマン。

スマホを見る。
ヨちは起動しているようで、スマホは通話状態になっていた。
まず、当面の不安を解消しようと思った。

私は、すでに殺されると、ヨちに予知されているのだ。

だから、死を避けるにはどうしたらいいのか。
それをヨちに聞こうと思ったのだ。
ヨちに向かって話す。

「家にいたら殺されるんだったら、一時間ほど散歩をするけど、どうかな?」

ヨちが答える。
その声は、あのセールスマンのように冷ややかなものだった。
まるで地獄の底から響いてくるようなトーン。

「散歩は止めた方がいいです。殺人鬼が追ってきて、あなたは死にます」

逃げてもダメか。
逃げてもダメ。だったらどうするか。
いっそうの事、警察に保護してもらおうかと考えた。

「だったら警察に駆け込むわ。それでどう?」

「警察は信用できません。何故なら殺人鬼は警察官なのですから。死にますよ」

うおっ。
何と、私を殺す殺人鬼は警察官だったのか。
確かに私の知人に警察官はいる。ソイツが、私を殺すのか。信じられない。

……しかし、ヨちの予知は絶対。

つまり、今、私の頭の中に浮かんだ人物が私を殺すのだ。
背筋が凍るような感覚を覚えた。
死にたくない。

しかし、明るい材料もある。

それは、私を殺す殺人鬼が誰だか分かった事。

これだけでも、ヨちを手に入れた価値があるというものだ。
どうすればいいか。
考えた。

「空手八段の男友達を呼ぶわ。彼に撃退してもらうの。それで、どうかしら?」

「止めた方がいいです。その友達も殺人鬼とグルですから。死にますよ」

なんと、警察官の他にも共犯者がいたのか。
空手八段の彼は、親友だったのに。
裏切られた気分だった。

そこまで、ヨちに言われて、私には打つ手がなくなった。

「じゃ、どうすれば、いいっていうのよ。死にたくない。どうすればいいの?」

「お客さま、どうしようもないのです。あなたの死は決定しています」

ヨちに、とんでもない事を言われた。
よりにもよって、私の死は決定していると言われたのだ。
避けられないと。

「ヨち。どうしても死は避けられないの? 私は、まだ死にたくないわ」

「そう言われましても、死は決定事項なので、悪しからずです」

スマホから聞こえてくるヨちの声は、どことなく笑っているようだった。
まるで、私の死を楽しむように。
私はうなだれた。

「そうだ。さっきセールスマンにもらった名刺!」

藁にもすがる思いで、セールスマンに電話をかける事を思いついた。
そう。セールスマンに文句を言おうと思ったのだ。
ヨちの予知を撤回してくれと。

「はい。もしもし……」

セールスマンは、コールしたら、すぐに出た。
しかし、あの冷たい声だ。
私は焦る。

「あなたね。ヨちの予知を撤回してよ。私は何をしても死ぬのよ」

「やっぱり、ヨちの予知は当たりましたね」

「何を言ってるのよ。私の言葉にちゃんと答えなさいよ」

「いえ。お客さまはクレームを入れるというヨちの予知ですよ。当たりましたね」

「あっ!」

クレーム。私は気づいた。
セールスマンと約束をしていたのだ。
クレームを入れても、一切、受けつけないという約束を。

「当社では、クレームは一切、受けつけません。あなたも死を受け入れて下さい」

セールスマンは、ぴしゃっと斬り捨てた。

「あ。あ……」

電話が無情にも切れた。
そして、また魔法のアプリ、ヨちが起動した。
同時に。

「お客さま。残念ながら時間切れです。ほら、後ろに殺人鬼がいますよ」

私の人生の最後に、そういうヨちの言葉が耳に貼り付いた。
ヨちの予知は、どんな予知でも絶対に当たる。
薄れいく意識の中……。

私は痛感した。

*****

「ふふ。毎度あり。あなたには巨額の保険金がかけてあるんですよ」

セールスマンが脱力した手からヨちがインストールされたスマホを拾い上げる。
相変わらず、冷たい笑顔で言葉を続ける。
重苦しいトーンで。

「今日、絶対に死ぬ人間を予知で見つけ、ヨちを売りつけるんです」

どうやら死んだ人間にヨちなど必要ないと、スマホを回収しているようだった。
そして、スマホを回収したセールスマンは死体を見つめる。
冷ややかな目つきで。

「文句は言わせない。つまり我々が保険金を手にしても文句が言えないんです」

セールスマンは死体から目を離し、冬の晴れた空を見上げる。
その口元は、つり上がり、笑いをこらえている。
まるで死神のように。

「そう。文句が言えない。誰もね……」

誰も……。
殺された本人が文句を言えない約束をしているのだ。
つまり、本人以外の誰も文句は言えない。

本人が文句を言わないと、セールスマンと約束しているのだから。

「最後に、何故、テレビ番組名など分かったかですが……」

セールスマンが、ほくそ笑む。
まるで全ては自分の手の中にあると言わぬがばかりに。
その笑顔は、とても邪悪で、この世のものだとは、思えなかった。

「今は、ヨちの予知とだけ言っておきましょう。またお話する機会があれば……」

と言った。

~ 其の四、死、了。

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【 予知アプリ、~ 其の参、代価 】

「予知アプリ、ヨちって高いんじゃないの?」

不安に思っていた事。
それは、ヨちの値段が、とんでもなく高いのではないかという不安。
何故なら予知などというモノの代価なのだから。

もっと、かみ砕いて説明すると。

株式相場。
この銘柄を買うと上がるかどうかヨちに聞けば、負けなしの大儲けができる。
ヨちが上がると答えたものだけを買えばいいのだから。
先物だって、FXだって……。

どれだけであろうとお金を稼ぐ事ができる。

ヨちの予知で、大金持ちも、まったく夢ではないのだ。
そんなものなのだ。
ヨちとは。

そんなヨちが安いわけがない。

後払いであれば、稼いだ後に払えばいいのだから問題はないのだが。
そんなに美味い話が転がってる訳がないだろう。
美味い話があればみんな、買う。

セールスマンも苦労して、セールスをする必要がない。

それでも私の下にセールスに来たという事は、それなりにメリットがあるはずだ。
私は、上目遣いで、ゆっくりとセールスマンを見つめる。
どんな値段が提示されるかと不安に思い。

「値段の話だけど」

「はい」

「ヨちは高いの? 私、お金、あんまり持ってないわよ」

ストレートに不安をぶつける。
しかし、それでも、まったくといっていいほど笑顔を崩さないセールスマン。
私は畏怖した。

「いえ。お金は一切、頂きません」

おののいている私を尻目に、セールスマンは言葉を続ける。
お金は、一切、頂きませんって。
答えを待った。

「お客さまには、ある約束をしてもらいます。それが、お代になります」

約束?
お金は、やっぱり、いらないの?
てっきり法外な値段を請求されると思い込んでいた私は拍子抜けた。

でも、安心はできない。

どれだけでも稼げるヨちを手に入れる為の約束だ。
それこそ絶対に、容認できないような約束なのかもしれない。
また出方を待った。

「心配しないで下さい。簡単な約束ですよ。そんなに、こわばらないで下さい」

セールスマンは、にこやかに言った。
しかし、その目は、どこか冷ややかで、見下しているようだった。
私は背筋を伸ばす。

「クレームを入れない」

「へっ?」

クレームを入れない?
つまり、買った後に文句を言わないって事よね。
あまりに簡単な約束だったので、また拍子抜けして、素っ頓狂な声を出した。

「クレームを入れないですよ。約束は、その一点でございます」

「クレーム……」

「ご購入後、当社では一切、クレームを受けつけません。よろしいですか?」

何よ。
そんなに簡単な事なの。
色々と不安がって、損したじゃないのさ。

「どのような事になろうともです。本当によろしいでしょうか?」

どのような事?
ちょっと言葉に含みがあるけど、ヨちさえあれば、何も問題がないだろう。
さっきの殺人予告すら、ヨちの予知で回避、出来ると思うから。
ヨちの予知があれば、不安など何もないと思う。

「もちろん……」

ん?
まだ何かあるの。
私は、彼の顔を真っ直ぐに見つめた。

「もちろん、お客さまがクレームを入れる事はヨちの予知で確認しております」

へっ?
私、ヨちを買った後にクレームを入れるの?
どんな不満があるというのだ。
クレームって……。

「なので、契約書にサインとハンコを頂きます。クレームを受けつけない旨です」

受けつけないも何も、サインしなければ死が待ってるんでしょうが。
私は、セールスマンの言葉を待たず、うなずいた。
そして契約書を手に取る。

契約書は、とても簡素なもので、クレーム以外の事は書いてなかった。

落とし穴はないか慎重に確認したが、何も問題はなかった。
私は名前を記入し、その後、捺印した。
これで契約完了だ。

「はい。確かに……やはりヨちの予知は当たりましたね。あなたはヨちを買った」

買った。
少々、語弊はあるかもしれないが、確かに買った。
そして、ヨちの予知は成就した。

やはり、ヨちの予知は絶対なんだろうと思いつつ、スマホを受け取った。

~ 其の参、代価、了。

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【 予知アプリ、~ 其の弐、ヨち 】

「あたなの見る番組は、NHKの浪漫秘孔ついてあげるよ、ですね」

マジでかッ!
私が見ようと思っていた番組を的確に当てやがった。
しかも、この浪漫秘孔ついてあげるよという番組は録画してあるものなのだ。

つまり、適当に言っても当たるものではない。

今、放映している番組であれば、いいかげんに言えば当たる事もあるだろう。
しかし、浪漫秘孔ついてあげるよは、今、放映していない。
ハードディスクに録画してあるものだ。
信じられない。

ゆっくりと玄関を開ける。

「完全に信じたわけじゃないからね。少しでも怪しかったら帰ってもらうわよ」

「心得ております。では、商品の説明を……」

セールスマンが、スマホを掲げる。
スマホは、黒の本体に赤いラインの入った普通のスマホだった。
これといって、特筆すべき特徴のない何の変哲もない、ありふれたスマホ。

「スマホは、至って普通でございます。悪しからず」

また心を読んだかのように言葉を繋ぐ。
予知アプリなるものも怪しいが、彼も、また怪しいと感じた。
スマホを見つめる。

「特記すべきは、当社の開発した魔法のアプリ、ヨちでございます」

ヨち……。
何だか、字面に誤魔化されそうな可愛い名前だと思う。
しかし、そのヨちが、さっきまでの私の行動を予知したアプリなのだろうか。

「百聞は一見にしかずです」

そう言うと、彼はスマホを手渡してきた。
私は、やはり、いぶかしげにスマホを受け取り、しげしげと眺めた。
こんなもので、本当に未来が予知、出来るのだろうかと。

「ヨちは起動してあります。耳に当てて下さい」

耳に当てる。
つまり、今、このスマホは通話状態になっているという事だろうか。
察するに、ヨちの予知は、会話形式で聞こえるのだろう。
恐る恐るスマホに左耳に当てた。

「……」

何も聞こえない。
どれだけ待っても、まったく何もしゃべらない。
確かに通話状態にはなっているが。

「あの……?」

「はい」

「何も聞こえないんですけど。本当に予知されるの?」

私が不満げに言った。
するとセールスマンは、にこやかな笑みを崩さず、穏やかな口調で答えてくれた。
魔法のアプリ、ヨちの使い方を。

「何をするか、アプリに告げて下さい。そうすれば答えが返ってきます」

何をするか。
つまり、先ほどのセールスマンが当てた事は、私にヨちを売ると告げたのだろう。
そうしたら、結果が返ってきたという事か。
結果とは、私が買うという事。

でも、それじゃ、何で私がお菓子を食べながらテレビを見ると分かったの?

それにテレビ番組名まで……。

少し不思議に思ったが、それより、今の私は好奇心の方が勝った。
だから、ヨちにテレビを見ると聞いてみた。
すると……。

「ヨち。これからお菓子を食べながらテレビを見るわ」

「それは止めた方がいいです」

問いかけると魔法のアプリが答えてくれた。
一応、それらしく、ヨちと名前を呼ぶような感じで、遊び心を入れて。
でも止めた方がいいって?

「止めた方がいい? 何でよ。楽しみにしているのよ」

「忠告します。死にます。家でテレビを見ていると、知人が殺しにきますよ」

何と!
家でテレビを見ていると殺人鬼が来ると言われた。
セールスマンは言っていた。予知アプリの予知は絶対に当たると……。
ぎょっとして、視線を移す。

セールスマンは相変わらず、ある意味、鉄仮面のような笑顔を浮かべている。

そして、うなずく。
予知アプリ、ヨちの予知は絶対だと。
そして、そこで、無情にもセールスマンが、スマホを取り上げる。

「お客さま、お試しは、ここまでです。悪しからず」

私は殺されるのか。
だったら、どうすれば殺されないのか。
テレビを見ていると殺されるという状況の中で、一番ベストな行動は何なのか。

答えをヨちに聞きたかった。

聞きたかったが、セールスマンがそれを許さなかった。

予知アプリの予知は絶対。
私の未来を見事に当ててみせたセールスマン。
予知アプリの予知が正確なのは、まず間違いがないだろうと思う。

『いえ。あなたは、わたくしの売るモノを買います』

確か、そう言っていた。
つまり、死を回避する為には、ヨちを買わなくてはならないという事か。
それを予見したから、私にヨちを売ろうと思った訳だ。

絶対に買わなくてはならないお客。

それが私だ。

あくどい商売だな。
いや。でも、何も知らなければ死は確実に私の下に舞い降りただろう。
つまり、逆に言えば、忠告してくれたともとれる。

しかし、どちらにしろ、買うしか死を免れる方法は思いつかない。

不安げにセールスマンを見つめた。
彼は、やはり、冷酷ともとれる冷たい笑顔だった。
その手には……。

魔法のアプリ、ヨちのインストールされたスマホを持って。

~ 其の弐、ヨち、了。

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【 予知アプリ、~ 其の壱、セールスマン 】

今、玄関に怪しいセールスマンが、きている。

セールスマンは、黒いスーツの上下に黒いネクタイ。喪服を思わせる出で立ち。
顔は、切れ長の目に優しげな口元。年は二十代前半だろうか。
イケメンだが、どこか影がある。

「こんにちは」

私は、そんな彼をドアの覗き窓から、いぶかしげに覗いている。
そして、意を決し、答える。
怖々と。

「新聞だったら間に合ってます」

「新聞? 違いますよ」

「じゃ。何を売りつけにきたんですか。何もいりませんよ」

少々、強い調子で言い放つ。
私は、普通のOLであり、お金など、まったくといっていいほど持っていない。
いや。

逆にお金を持っていたとしても、無駄なモノを買う気はない。

だから、セールスマンを追い払おうと思ったのだ。
セールスマンが、ほくそ笑む。
勝ち誇ったように。

「何もいらないですか……」

「そうですよ。だから、ここにいても時間の無駄です。帰って下さい」

「いえ。あなたは、わたくしの売るモノを買います」

何と、セールスマンは自分の売るモノを買うと自信満々に言い放ったのだ。
何たる傲慢な態度であろうか。
気分が悪くなった。

「わたくしが売るモノは、予知アプリのインストールされたスマホ」

スマホのセールスマンだったのか。
ただ、一つ疑問に思った。
予知アプリ?

「予知アプリの予知によって、買う事は分かっています」

予知……。
時系列的にみて、その時点で発生していない事柄について予め知る事。
確か、こんな所だったと思う。

普通に考えて、予知とは未来に起こる事を当てるのだろう。

「当社の開発した予知アプリの予知は絶対です」

馬鹿らしい。
確かに今、世の中にはアプリが溢れている。
その中に予知のアプリがあったとしても、なんら不思議ではない。

しかし……、それが絶対に当たる予知となると話は別だ。

絶対に当たるのであれば、それは占いの類ではない。
馬鹿らしいが、超能力とも考えがたい。
アプリなのだから。

「そんなものが、あるなんて信じがたいわ。騙すつもり?」

私の反応は、至って普通だろう。
一般的に言って、予知など、それがアプリになっているなど信じがたい。
だから、この怪しいセールスマンと取り合わない事にした。

「帰って下さい」

「……予知アプリの予知です。あなたは、これからテレビを見てお菓子を食べる」

「!」

ちょっと待って。
何で、その事を、この彼は知ってるの。
そう。私はセールスマンを門前払いにした後、テレビを見てお菓子を食べようと。

……そう思っていた。

その為に近くのお店に行ってお菓子を買っていた。
いや。それ位の事であれば適当に言えば、当たる事なのかもしれない。
信じられない。

「そのお菓子は、カントリーマアムですね」

「何で、その事を……」

彼の言う通りだ。
いや。私が買い物に行っている時に後を付けてきたに違いない。
そこまで悪趣味なセールスマンだったのか。

今、ここにいる彼は……。

「では、もう一つ」

「はい?」

「あなたは、ジュースも飲むでしょう。買い置いてあるコカコーラゼロをね」

もっと前からか。
どこまで、私の事を調べているんだ。このセールスマンは。
コイツ、悪趣味にも、ほどがある。

いや。
それほどまでに、予知アプリなるモノを売りつけたいのか。
大体、どれ位、前から、調べているのよ。
やめてよ。訴えるわよ。

「わたくしが、あなたの事をつけていたとお思いでしょう。違いますよ」

セールスマンが心を見透かしたように告げた。
そして、続く言葉で私は陥落した。
彼を信じたのだ。

セールスマンが言い放った、その言葉とは、とても信じがたいものだった。

~ 其の壱、セールスマン、了。

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【 月夜のゼロ、後編 】

「思い出して下さい。彼女からの最後のメールを。そうすれば……」

僕はゼロの言いたい事が分からなかった。
ただ分かった事は、確かに僕は今でも彼女の事が……。
いや。でも。

「今でも彼女は君の事を愛していますよ」

「だから!」

「最後のメールを思い出すのです。そうしたらなにが言いたいか分かります」

ゼロは、まるで、からかうように笑い告げた。
このしゃべるネコは、一体、清香のなにを知っているのだろう。
彼は使者だと言った。

すなわち彼女の投影なのか?

僕が、彼女に持っているイメージの投影。
確かに僕の中で、彼女はお洒落なネコのイメージがある。
そして、これは夢なのだ。

会った事もない彼女を都合よく、イメージ化したモノがゼロではあるまいか。

僕は、そう思った。
そして、僕は、ゼロが言ったように最後のメールを思い出した。
そうすればゼロの言うようになにかが分かる気がして。

> 勇也くん、おつこんちw
> 清香です。
>
> 今日は、驚きの報告をしちゃいます!
>
> なんと、私、文学賞を獲っちゃいまして、なははなのですw
> 勇也くんもどんどん賞に挑戦して獲っちゃおうよ!
> 未来はきっと明るい!
>
> 私にだって獲れるんだから、勇也くんだったら絶対に大丈夫だって!
>
> 忘れないでね!
> その為には日々精進あるのみだよ!
> 生きている限り、誰にだって、そのチャンスはあるんだから!
>
> 頑張れ!
>
> 私はゴールしちゃったんだよ;;

確か、こんな感じのメールだったと思う。
ゼロは、なにが言いたい?
なにが分かる?

「分かりませんか? 彼女はゴールに辿り着いてしまったのですよ」

ゴール?
いい事じゃないか?
すなわちプロ作家になったって事だろ?

「ま、いいでしょ。その話はおいておいて、君はなにがしたいんです?」

なにか、はぐらかされたような。
でも、今までゼロと話してきて、コイツはこういうヤツだと思っていた。
だから、さして気にもせず、ゼロの質問を考えた。

今を正直に生きるか。
確かに、僕は、いいモノを書く為には、まだまだ勉強不足だ。
たとえ進学せず、就職するにしてもだ。

そうなんだ。
進路なんて、僕の夢の前には、さしたる問題ではないんだ。
大学に行けないから就職っていうのが問題なんだ。

勉強不足ならば、勉強をすればいい。

もっと面白いモノを書きたいならば、もっと書けばいい。

そうか。
僕の夢は、プロ作家になる事じゃないんだ。
僕は、みんなが面白いと言ってくれる物語が書きたいだけなんだ。
いや、みんなじゃなくてもいい。

清香が、面白いと言ってくれる作品を書きたいんだ。

「清香は君が頑張る事を望んでいます。君は今、必死に頑張っていますか?」

ゼロが、微笑みながら僕に告げる。
僕は、今までの自分が甘ったれていた事を思い知った。
そしてゼロは続ける。

「彼女は、ゴールしてしまったのです。だから次は君に夢を叶えてほしくて」

「……そうだな。ゼロ、僕は甘かったよ。もっと頑張らないと」

「そうです。それが彼女の望みです」

僕は僕自身が面白いと納得して、そして彼女を笑顔にしたかったんだ。
僕にとってプロ作家は、通過点でしかないんだ。
それ以上に……。

「おっと。時間のようですね」

ゼロは懐から懐中時計を取り出して、時間を確認して言った。
ゼロは最後まで、英国紳士で格好良かった。
僕は、ゼロを見つめた。

これからは、もっと頑張って、彼女に面白いと言ってもらう為に。

僕は今宵の月夜の下、ゼロによって生まれ変わった。
また天空の星の一つがきらめいた。
私はここにいると。

まるで清香が、そう言ったようにきらめいた。

*****

「おはよっ。おっ、寝不足だな?」

友達が僕の顔を見るなり、僕の寝不足を言い当てた。
そう。昨日の夜、僕はゼロというしゃべるネコと話をして寝不足だった。
あれは夢だったとゼロは言ったが。

僕の中で、ゼロは確かにいて、とても夢だとは思えなかった。

寝不足が、いい証拠だ。
今でも耳の中にゼロの言葉が聞こえてきて、僕を勇気づけてくれている。
僕は、昨日、不思議な体験をして生まれ変わった。

ゼロというしゃべるネコのおかげで。

「……お前、就職するんだったよな。でも大学に行けば遊べるぜ?」

ふふふ。
ゼロのヤツだったら、きっと、こう答えるんだろうな。
君は今、必死に頑張って生きていますか? と。

そうなんだ。
僕の夢にとって進路が、就職だろうと、進学だろうとまったく関係ない。
在るのは、ただただ小説を書き続けるという事。
みんなに面白いと言ってもらう為に。
清香に認めてもらう為に。

やっと分かった。

なぜ彼女が三年後にゼロを僕の下へ使わしたのか。
僕が、高校三年生になって、進路が大学じゃなければ小説家になれないと。
そう思うと考えたのだろう。

そんなモノは、どちらだっていい。
大事なのは、今、必死に頑張っているかどうかなんだと。
そう言いたかったのだろう。
清香は。

「ふふふ。勇也くん、よく分かっているじゃないですか。頑張って下さい」

と、耳の中でゼロが言ったような気がした。
僕は、九月の突き抜けるような秋晴れの空を見つめて、心に誓った。
いつか……。

いつか、きっと小説家になると。

僕は、僕の瞳から涙が零れないよう、必死で上を向いた。
そう。僕は分かってしまったんだよ。
彼女は。

清香はもう……。

ゼロは、なにも言わなかった。
いや、彼は、きっと言葉にできなかったんだ。
清香が、すでにこの世からいなくて、死んでいるという事実を。

僕は、最後のメールを思い出し、ゼロの言葉を聞き、そして分かったんだ。

> 私はゴールしちゃったんだよ;;

という一文の意味を。
もしかしたら文学賞を獲ったという話もウソかもしれない。
いや、清香だったら、充分にあり得る話だ。

僕を発奮する為に。

そして彼女が最後に書いた話が、月夜に現われるゼロというネコの話なんだ。
だから彼は、彼女の使者だと言っていたんだ。
今を正直に生きたという話も。

君は、最後に、いい話を書いたんだね。

自分の生を燃やし尽くし。

そして、ゼロに、僕に、君の夢を託したんだね。
自分は、もう生きられないからと文学賞を獲ったとウソをついてまで。
だから敢えて、三年後だったんだ。

僕が迷う三年後。

…――そして、君をいい想い出にできる三年後だったんだ。

清香。

君の事は、ずっと忘れないよ。

君は僕の中で、ゼロというネコに姿を変えて生きているから……。

天高く馬肥ゆる秋の空、見えない星が、またきらめいた。
私は、いつまでも、ここにいるよと。
僕は微笑んだ。

ありがとう。

本当にありがとうと。

月夜のゼロ、後編、了。

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四草めぐる

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将来、月に移住したいと思う今日この頃。現実的には一歩、一歩、着実に。基本を大事に。

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